投稿元:
レビューを見る
「バブル期の広告代理店」ってもう、これ以上バブリーさはないってくらいだったことは想像できるが。
そんなバブルの波にもまれながらも、しかも父親の意味不明な失踪のツケを背負いながらも、一本の道を歩き続けた男の人生は、小さく生きることで自分を守っている今の若者に新鮮に映るだろう。
こんな風に生きることはできないとしても、こんな人生もあったんだ、とちょっと肩の力が抜けるかも。いや、逆にもうちょっと肩に力を入れてもいいかって、思えるかも。
実はこれ「その先の日本へ」ってCMで各賞を総なめした方の自伝的小説。
投稿元:
レビューを見る
タグボート・岡康道の自伝的小説。
中でも印象に残った文章。
幸福とはどういうものだろうか。それまで僕は「幸福とは不幸を回避すること」に近いように思っていたが、そうではない。不幸を相手に回し、充分に闘い、最後にはやっつけてしまうことが、幸福なのではないか。
投稿元:
レビューを見る
元電通トップクリエーター、初めての自伝的小説。
「僕のことを好きになってくれる対象を、僕はこれから見つけなければならない」(P100)、「幸福とは不幸を回避することに近いように思っていたが、そうではない。不幸を相手に回し、充分に戦い、最後はやっつけてしまうことが、幸福なのではないか」(P173)、「コミュニケーションの能力であり、大人とはその能力が高いベテランのことだ」(P345)、「順調と退屈は似ている」(P358)が示唆に富んでいると思う。
投稿元:
レビューを見る
○クリエイティブ・エージェンシーTUGBOATのクリエイティブ・ディレクターである岡康道氏の著作(自伝的小説)。
○書き下ろしの小説ということだが、著者自身の自伝的小説でもあり、フィクションとノンフィクションが混在したもの。だからこそ、その波瀾万丈ぶりや“現実感のなさ”が、とてもリアルに伝わってくる内容。
○多様なテクニックが盛り込まれているでもなく素直なストーリー展開に、やや落ち着きすぎている感はあるが、それを補って余りある具体的な場面描写、主人公の心理状態の表現が、とても素晴らしいと感じた。
投稿元:
レビューを見る
今年亡くなった父親との関係が、重なり、興味深く読んでしまった。僕は、出来の悪い営業マンという点、父親は、母親を大事にしていた点が、全く違うが…。
投稿元:
レビューを見る
自伝的小説らしい。本当の部分とフイクションの部分があると思うからそう思って読まないと納得できない。でもまぁ面白い。
投稿元:
レビューを見る
タグボート岡さんの自伝的小説。
つまらなかった。代理店に入社するまでは特に。
村上龍さんの小説のような時代背景、描写が逆に気持ち悪く全く読みすすめなかった。
代理店に入社してからのエピソードはようやく興味が持てた。少しだけ。
元々営業だったんだなぁ、とか。
ただ、クリエイティブエージェンシーの成り立ちや信念などがわかったことは収穫かと。
んー、それしかなかったか。
投稿元:
レビューを見る
TUGBOATの岡さんの自伝的小説。
これは、吉田の物語なのか。岡さんの物語なのか。
吉田として読み進めるが、岡さんの人生は面白いなと思う。自分を中心に考えて動いてるんだが、憎みきれない存在。子どもの頃にやってたイタズラを「それ、アートだよ」と言われた時に気付いたんだけど(←これは僕の話)、イタズラってスゴくクリエイティブだと思う。イタズラ好きだった吉田も最後はクリエイターになるけど、やっぱ繋がってんだ。傲慢とも表現されてるけど、きっと誰しも生きる上では傲慢なんだよ。父や同僚、友人、かつての女性との関係も描かれてて単純に小説として読んでも読み応えあると思う。
広告業界のことも詳しく書かれてて勉強になる。廃刊になるまで、密かに愛読してた広告批評が懐かしい。TUGBOATのCM大好きだ。
投稿元:
レビューを見る
身長183cm。早稲田大法学部卒。コネなし電通入社、営業局配属。営業がとにかく嫌で、難関のクリエイティブ局への転局試験をパスし、CMプランナーに。JR東日本の「その先の日本へ」キャンペーンでその年の広告賞を総ナメ。その後、部下3名引き連れ、日本初のクリエイティブエージェンシーTAGBOATを設立。酒・タバコは遣らず、スーツしか着用せず、趣味はアメフト。年間50本の映画・50冊の本・50試合のベースターズ観戦を自身に課す。先頃還暦迎えるも、ますます意気軒昂な苦みばしったミドルクリエイター。
そう、広告業界では知らぬ人はいない御仁が書いたディテール感満載の自伝的小説はこんな話。
19歳の時に父が5億円もの借金を踏み倒して失踪。謎だらけの父親との葛藤を縦軸に、三丁目の夕陽そのものの少年時代、学生運動鎮静後の寂寞感横溢の青春時代、バブル期の狂瀾な広告業界、友人「小田嶋 隆」への畏敬の念、トップクリエイターへの成長譚…を横軸にした、読み手によって、様々な読み方ができる小説。はたして主題である縦軸より横軸の方が面白いっていう主客転倒は、どうかと思いますが…。 赤裸々な内容でありつつも、放埓な父親と同じ血が自身にも流れているという「抗い」や「複雑な内面的葛藤」の叙述はなく、置かれた状況・現実に淡々と立ち向かうクールさで貫かれている。そう、小説の中でも岡さんは二枚目で格好いいのだ。
投稿元:
レビューを見る
先日、亡くなられたTUGBOATの岡康道さんのたぶん、自伝的な小説。
仕事のジャンルもレベルも規模感も違うけど、広告業界の片隅にいる人間として岡さんの訃報を聞き、読みたくなった。
フィクションということだけど、岡さんより更に遅れてきた世代の人間として、バブル前後の広告業界も含めて時代とか人生のようなものを感じることができた。
投稿元:
レビューを見る
多分以前途中で読むのをやめた本。
若宮は、小田嶋隆さんのことだろう。
二人とも随分と恵まれた人生だったんだなぁと感じる。
人は、なにも選べないまま生まれてくる。
全ては、配られたカードと、配られるカードの偶然が織りなす物語り。
どうやらあまりフィクションではない物語、自伝は、それが羨望の対象となるようなものであれぼ、そう楽しい気持ちで読めるものではないんだ、というのが感想かな。
岡さんの広告表現。
散文的で叙情的。
湿度のある恋愛めいた「文学的」なものを、上手にクライアントを口説いて成立させる印象。
売らんかな、ではなく、人を巻き込む自分語りな「作品」という印象があった。
なんか、そんなところが、「広告好き」の心をざわつかせる、そんなスターだったように思う。
小霜さんとかとは随分異なるタイプと思った。
岡さんも小田嶋さんも亡くなった今、ようやく読み続ける気になれた。
岡さんが亡くなった年齢まで、自分には、後10年しか残されていない。
そこまで届くかどうか。
あるいは、長々と先まで行くのか、全く分からない。
「『どうやっても、うまくいく』中学生のときのような誤った全能感に酔っていた」(p291)
成功のパイは限られていて、ちょうど同じだけのその裏側、不遇はこの世に存在する。
どちらかといえば、裏側を耐える会社生活をなんとかやり過ごす毎日だが、10年は10年。
どう会社で生きるか、よく考えることは重要なことと改めて思う。