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わたしは今慄然としている。少なくとも10人以上の連続変死事件が起きたこの尼崎事件の内容を読めば読むほど、わたしが事件を知るキッカケになった北九州監禁連続殺人事件との関連性があぶり出されるのである。北九州は7人の死者を出している。ただ、わたしが気に入らないのは、主犯角田美代子の自殺を隠れ蓑にして、角田ファミリーの7人が、果たして強制されて殺人したのか、或いは進んで自らの親族を殺したのかわからないことだ。その全容の解明がまだ明らかにされていないまま、どうやら次々と結審しているらしいことだ。
この本は、尼崎事件について書かれた詳しいルポの中の一冊である。それでも著者の認めている通り、事件の全容は不明のままだし、角田美代子の生い立ちは分かっても、彼女の人心コントロール方法はヒントぐらいしか書かれていない。読んだあとは、わたしは北九州事件のように裁判で明らかにするのだと思っていた。しかし、少しネットでググると兵庫の検察も裁判所も、兵庫県警や香川県警の失態を隠すかのように早々と幕引きを図ったようだ。それを汲んでか、ほとんどの容疑者が控訴しなかった。もしかしたら、もっと大きな闇が隠されているのかもしれない。
わたしがこのワイドショーネタのような事件に興味を持ったのは、遺族には申し訳ないが被害者に対する義憤からではない。このような、親族が親族を殺すような、しかも連続殺人をする人間の「システム」に興味があるからである。
北九州事件は、究極のマインドコントロールだったと思う。密室性、絶対的な権力者、通電による思考能力をなくさせる環境、それぞれを疑心暗鬼にさせ密告を奨励し孤立化させる仕組み、罪の意識の植え付けと殺人に無感覚になる価値観の変換。小さな綻びで事件は表面化したが、ひとつ間違えれば永遠に事件化されなかった可能性もある。一方尼崎事件は、被害者並びに被害親族が倍化しているし、容疑者も多くなり、「民事不介入」という新たな技も使っているという「新味」もある。しかし、全ての家族が何回も脱走していて、北九州のような徹底的なマインドコントロールではなかったのは明らかである。だから、いつかは事件は表面化したと思う。
わたしが空恐ろしく思うのは、徹底していなくても、子供が親を殺し、親族が姪を殺すような殺人が、この「密室性、絶対権力、環境、孤立化、価値観の変換」というシステムでは可能だったということだ。
わたしの問題意識は何処にあるか。そうです、これは戦時における「兵士の作り方」と同じだと思うのである。教育基本法の改悪、秘密保護法の成立、そして教師の政治活動の密告を奨励するような現政権のもとでは、この本にあるように価値観の変換が起こり、「戦時環境下」での「敵を殺す」事をなんとも思わない時代が来ないとも限らない。いくつかの条件が揃うと、人間という者は「やってしまう」のだ。わたしはホントに身の毛がよだつ想いだ。
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怖い…
単純な感想としては、その一言に限る。
筆者の書いていることが、全てでないとしても現実に起きた事件、また今この時にも似たような状況が存在する事にただ驚いた。
Kindle Unlimite
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恐かった。怖ろしかった。「事実は小説よりも奇なり」と言うけれど、確かに普通の人間であれば考えつかない残酷な事件だ。鬼畜の所業とはこのことを言うのだろう。フィクションにありがちな硬さやまどろっこしさはなく、なかなかの筆力で小説のようにスラスラ読めてしまった。そして小説よりも胸にズシンと来た。インパクトが強すぎる。さてこの本から得た教訓は、警察はアテにならないと言うこと。また自分たちだけで解決しようとせず早い段階で弁護士などに相談するのが得策だと思った。
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余罪あるなぁ‥。
これだけ?やないんだろう。
だって64年やもんね。
民事不介入‥、
殴られるんが他人なら、動いてくれるん?
身内がろくでなしなら、仕方ない。
殺されてもあきらめよう、なのか。
なんじゃそりゃ。
脅されて、庇って、黙るん 当たり前やろ。
忖度せい。
変えろ、法律。
イラつきました。
環境、大事やね。子供は保護して。
ダメな親からは離したげて。
加害者は、被害者でもあるから。
怒りが込み上げる。
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尼崎連続事件のノンフィクション。読むのが辛くなって途中から流し読みする。恐怖で支配されたためこのような悲劇が起こった。でも、やはり何故ここまでひどい目にあっても逃げなかったのかが理解できない。
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尼崎連続変死事件のルポルタージュ。
あの事件は当時TVの報道で見て、かなり衝撃を受けた。マンションのベランダに設置された「監禁小屋」はまだ記憶に新しい。今回この本で詳しく内容を知って、その異常さに改めて戦慄した。戦後まもなくの時代とかではなく、これがごく最近の出来事だということに驚く。
推理小説なら投げ出しているレベルで人物相関図がややこしい。身内や関係ない人をも巻き込んで、角田美代子という一人のおばさんが、暴力と洗脳でこんなに人を支配してしまえるものなのか。茉莉子さんや猪俣光江さんなど、救える命もあっただけに、警察が民事不介入ということで周りの訴えをことごとく無視していたことに怒りを覚える。角田美代子はその尋常ならざる洞察力と人を操るすべを、会社経営とかもっと正当なことに使えなかったのだろうか…。
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恐ろしすぎる。家族を人質に取られ、暴力で支配された人間は家族をも傷つけるのか…
これが21世紀の事件ということが信じられない。警察は忙しいのかもしれないけど、こういう事件を見過ごしてきたということは罪深いし、責任を誰も取っていないというのも腹立たしい。
自分がこういう事に巻き込まれた時に家族を守れるんだろうか。自分は大丈夫と思っていても、身内や知り合いから飛び火してくることもあるので、弁護士の知り合いを何人か見つけておきたいところである
…
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尼崎連続変死事件を追ったルポ。当時報道で見てた時はなんだかよくわからなかったが、本書を読んでなるほどこれは全容を理解するのは大変だわと納得。小説より奇なりな実話であるが何より恐ろしいのはこの事件、ある一線を超えなければこんなに話題にならなかったのだろうという読後感。確率低くても自衛の心が必要。書いてないけど地域性の問題もあるのだろうが。
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ここ日本では、俺みたいにのほほんとした日常を過ごしている人が大多数だろうけど、こんな荒んだ闇と地獄の日常を過ごしている人がいるということに戦慄を覚える。
それにしても民事不介入。わかっちゃいるけど、もうちょっと何とかならんのか。
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生まれ育った環境や境遇は、人の価値観や人格を形成するのに少なからず影響を及ぼすのだろうとは思うが、私には角田美代子という人物が全く理解できなかった。
でも、確実にこういう人間が存在していた、もしかすると今もどこかにいるのかもしれないと思うと恐怖しか感じない。
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我々の記憶に新しい、被疑者自殺で全貌解明が絶望的となった“尼崎連続変死事件”。その真相に迫った執念のルポ。
マスコミが挙って報道した事件当時、被害者の数も逮捕者の数も多く、またその殆どが“1人の女を介した親戚関係”にあるという、とんでもない事件だったのは記憶していたものの、新聞などで人物相関図を見たらとてつもなくややこしかったので読むのを放棄していた一冊。
いや、もっと早くに読めば良かったです。
この事件より10年ほど前に、北九州監禁殺人事件があり、これも1人の人物による親類への洗脳、監禁、暴行、殺人であったことを思い出した。
角田美代子のような怪物がどのようにして生まれたのか、なんとなくわかった気になった。
読めば読むほど、警察への不甲斐なさ(民事不介入を理由に相談に行っても対応してくれず、最後には角田美代子の自殺も止められず)を感じてしまった。
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【もし悪魔という存在を具現化するとしたら,それは一目見てわかる邪悪な顔ではなく,このような屈託のない顔をしているだろう】(文中より引用)
家族間での殺害といった特異な手法により,日本中を震撼させることになった尼崎連続変死事件。留置所内で自殺した角田美代子の生い立ちをたどりながら,いかにしてこの凄惨な事件が引き起こされたかに迫るノンフィクション。著者は,事件及び戦場ルポで高い評価を得る小野一光。
ここまで読者を絶句させる作品も珍しいのではないでしょうか。見知らぬ家族の中に文字通り巣喰い,金と命と尊厳を巻き上げられるだけ巻き上げていくその行為に,恐怖以上の何かを感じました。数ある事件ノンフィクションの中でも出色の一冊です。
読んだ後にドッと疲労感に襲われます☆5つ
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p.86 通常声掛けは年配の女性の役目ですので、「美代子が男たちに直接声をかける想像は誤っている」と感じました。
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ネット等では載ってない事件の詳細や、美代子の過去の事などもたくさん載っており勉強になった。家系図は複雑すぎて、結局のところ最後まで全ては理解できなかった。美代子の生い立ちは両親にあまり構ってもらえないという、かわいそうなものであったが、それを理由に罪のない人を傷つけ追い込み殺してもいい理由にはならない。恵まれない過去があったとして、そこからどうするかというのは、その人次第だと思った。本当に異常な事。少し思ったのは著者の方は熱血型で、情がふかそう。著者の方の主観が少し強い感じがしましたので、読む時は注意してください。
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こわいこわいこわい。
ひとりのなんでもない中年女性がどうして、何人もの人を死に追いやり身内を死に追いやったのか。
時間をかけてひとりひとり糸をつなぐように聞き出していった。
人物相関図を見ても結局よく把握できなかった。家族が全滅していたり、逮捕と死亡が絡まりめちゃくちゃになっていた。
彼女が自殺してはいおしまい、ではなく、類似した組織があちこちにあるような記述が一番怖かった。
まったく関係なくても、ある日突然そうなってしまって、しかも警察は助けてくれない、となると結局どうしたらよかったんだろう。
負の連鎖は断ち切れないのかな、救いは、ないのかな。