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美しい文体 暗い世界観 罪悪感 無邪気な子供の残酷さ。
皆川さんの濃いエッセンスがぎゅっとつまった感じだった。
私にはわかりづらい作品も多かったけど。
結ぶ を思い出した。
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掌編・短編集。
理屈とリアルが好きな自分。
でも、皆川博子さんが好き。
咀嚼しながら読み進めないと目から溢れちゃうから時間をかけて読んだ。
周りの音が消えた瞬間があって幸せだった。
情景を思い浮かべる時に幸せを感じる美しさがある。
あとがきを読んで、慎ましく、でも揺らがない印象を受け、益々惚れる。
失礼を承知で申し上げたい事は、
「んもう、本当にカッコいい!」
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これまで読んだ皆川作品と違い、ところどころに詩がちりばめられていました。
短編集だったけど、幻想的なのが多かった印象。
幻想的なものの中では、指を飼う話が好きだったなあ。
あと一番好きだったのは、戦時中の女子校で上級生に恋をする話かな。
この人が書く戦時中の日本の話はねっとりしていて豊富に水分を含んでいて、とても好きです。
いま85歳くらいのはずだけど、もっとたくさん作品を書いてほしい。
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1990年代後半から2013年までの20年間に、様々な雑誌に掲載された単行本未収録の幻想小説だけを集めた21編の短編集。
編者の日下三蔵氏の解説にもあるように
時代が皆川博子に追いついたのか、
ここに来て旧作の刊行が相次いでいるけど、
そもそも本当に書きたかったものは幻想小説だという皆川さんだけに、
(当時は幻想小説だけでは世間から認められない風潮があったようです)
売れなくとも細々と書き続けた幻想小説の数々は
まさに真骨頂と言える
高純度の幻視世界を見せてくれる。
中でも、
自殺した弟の通夜の席で、ある男に教えられた喫茶店。
影を剥がされる快感に性的興奮を覚えた女性の末路は…。
中井英夫の「影を売る店」を踏まえたトリビュート短編
『影を買う店』、
屋根裏部屋の手作りの断頭台。
無邪気なまま、残酷な遊びにハマっていく子供たちが怖い!
『猫座流星群』、
家族を空襲で亡くし感情を失った少年が、
疎開先の蔵の中で見る甘やかな幻想。戦争がもたらした悲恋に胸が締め付けられた
『沈鐘』、
窓越しに隠れて聴く官能的なピアノの音色。
戦時中の女学校を舞台にした少女の悲しき恋。
傑作「倒立する塔の殺人」の三年前に書かれた原型となる短編。
『柘榴(ざくろ)』、
碧、玄、春の3人の少年少女が織り成す、叙情的で切ない一編。
ミステリー仕立ての巧みな構成にも唸った
『更紗眼鏡』、
深い森に住む父と娘と三人の兄。
ある日、黄金の馬車に乗った青髭の男が現れ、娘は連れ去られてゆく。山城に囚われた娘が開かずの扉で見たものとは…
グリム童話をリライトした
『青髭』
が深く心に残った。
ページをめくるたびに思考を蜜の壺と化す、
艶やかで甘美な世界。
溢れでるロマンチシズムとエロティシズム。
生と死の狭間を匂いたつほど残酷に淫靡に描きながらも
決して美しさを損なわない流麗な文章。
純度100パーセントの耽美と退廃と官能の濃縮エキスがたっぷり詰まった物語の数々に
読む者の心は陶酔に浸り、異世界をさまよう。
それにしても、いつから本を読むという行為が
後ろめたさを無くしてしまったのだろう。
僕の学生時代はいかに今に抗い抵抗するかを
それぞれが無意識に競いながら、
自分が思う『好き』の領域を自ら探し見つけては
一人こっそりと増やしていった。
(たとえば映画、たとえば音楽)
読書は知識を得るために読むものではなく、
そこに込められた意志への憧れであり、
不良性がある危険なものだからこそ惹かれた。
そして小説は本来、一人でコソコソと読むもので
タバコや酒などのように常習性があって体に悪いものなんだと思う。
だからこそ人を絶望から救えるのではなかったか。
だから僕は今でも読書という行為は基本、「背徳」だと思っている。
背徳だからこその抗えない魅力。
学生時代から僕らは
「毒」を摂取したくて本を読��でいたのだ。
純度100パーセントのいけないもの。
皆川博子にしか書けない
淫らで美しいもの。
できうることならばこれからもまたジャンキーな僕たちに
新しい「毒」が供給されますように。
隠れてこっそりと読む読書こそが
甘い蜜の味なのだから。
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1990年台~2013年までに書かれた短編幻想小説21編。
「幻想」や「奇想」、著者が偏愛するテーマのものばかり。
恐ろしくて面白い。
湿った井戸の底に引きずりこまれるように躊躇いながら読む。
読んでいるうちに恐ろしいものを近くに感じるのだけど、それでも読み終わるのがもったいなくて少しずつ読む。
好きだ。
2017.11再読
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知的にして幻想奇譚、耽美にして陰鬱。まさに皆川ワールドの断片にして結晶体。
いや凄かった・・・そして自分の不勉強さを実感する・・・中井英夫に森茉莉、ロートレアモン伯爵、恐るべき子供たち、ベルトラン・デュ・ゲクラン、ハウプトマン、吾妹子と我が兄・・・。
「影を買う店」影を剥がされる性感とは・・・森茉莉作品も読みたいな~~。
「使者」やや少年愛と薬物幻覚という危うい世界を生きる男の話。怖いです。
「猫座流星群」タイトルがネズミをいたぶり殺す子供たちの暗喩だと気がついたときの鳥肌といったら・・・。
「陽はまた昇る」変わりゆく時代とお国様、話し合う人外共は何者なのか。
「迷路」皆川作品に出てくる弟ってどこぞの屋上から投身しがちだよな、死にがち。
「釘屋敷/水屋敷」子どもは大人に釘を刺され大人に水を差す存在、って掛かってるんだと気がついたときの鳥肌。
「沈鐘」泉鏡花訳の読まなきゃ・・・。同性愛と思わせといてさすが皆川節、二転三転します。
「柘榴」少女同士のエスとか懐かしい・・・ラストの描写がさすがすぎる。
「真珠」未亡人同士百合オチ・・・だと・・・。
「断章」最高潮に幻想小説、体内に水を飼う母こそ海。
「こま」また弟しんでる・・・怖・・・。
「創世記」谷敦志氏の写真がまたすげえんだ。
「蜜猫」掲載したアンソロ読んでたけど皆川先生の書く父親もクズ多いんだな・・・。
「月蝕領彷徨」結ばれなかった恋人達、でも結ばれることが許されなかった兄妹の暗示してる気が・・・。
「穴」こういう図?的なものを使ったトリッキーなのも書いてるんだな皆川先生。
「夕陽が沈む」うその世界的な。わりとポップにトチ狂っててすきです。
「墓標」妹がしんだことが認められなくて墓穴掘り返す兄貴・・・あまつさえ妹の子を・・・すげえ・・・。
「更紗眼鏡」歪な三角関係は万華鏡だからこそ。
「魔王」シューベルトかと思ったらまさかの北欧神だってござるオチ。
「青髭」兄貴の人数とかはグリム版が下敷きかな。
「連禱」ちょうど矢川澄子女史訳の『七つの人形の恋物語』を読んでいて運命を感じた・・・。
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「本書に収録されている作品は幻想、奇想----つまり私がもっとも偏愛する傾向のもの----がほとんどです。
消えても仕方ないと思っていた、小さい野花のような、でも作者は気に入っている作品たち。
幻想を愛する読者の手にとどきますように」----皆川博子
【収録作品】
影を買う店
使者
猫座流星群
陽はまた昇る
迷路
釘屋敷/水屋敷
沈鐘
柘榴
真珠
断章
こま
創世記(写真=谷淳志)
蜜猫
月蝕領彷徨
穴
夕陽が沈む
墓標
更紗眼鏡
魔王 遠い日の童話劇風に
青髭
連祷 清水邦夫&アントワーヌ・ヴィオロディーヌへのトリビュート
解説の日下さんも書かれていますが、この本は「幻想のための幻想」というべき、素敵な一冊です。トリビュートは別にしても、何編かわけがわからない。
倒錯に倒錯を重ねた『沈鐘』が一番好きです。
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前半は姉と弟、厳格な父親(そして弟が夭折する)という人間関係が多い。そういうテーマで編んだのかと思ったが、たまたまなよう。
「影を買う店」
弟の通夜の席で聞いた、彼が生前よく行っていたという喫茶店。
「使者」
詩人志望の青年からの手紙を受け取った出版人。普段ならば無視するであろう手紙に返信したのはその署名が維持ドールであったからだ。彼にはかつて、同じ名のイジドール・デュカスの詩を誰よりも早く知りながらその価値を見いだせなかった失意があった。
「猫座流星群」
姉弟の遊び相手として、少し年上の使用人の息子である勝男がやってきた。彼は手作りプラネタリウムで流星群を見せ、いらないおもちゃで戦車を作り、小さな断頭台を作った。
「陽はまた昇る」
アンソロジー『黄昏ホテル』収録。少女と<風>の沈むホテルに関する会話。
「迷路」
方向音痴である私は銀座のとある画廊へとたどり着けずに迷っていた。
「釘屋敷/水屋敷」
釘のびっしりと刺さった柱のある釘屋敷、座敷に井戸のある水屋敷。
「沈鐘」
蔵の中のその井戸は、女が身を投げたとき、千切れた振袖が残ったために振袖井戸というのだ、と彼は言った。そうして、西洋の山の姫と鐘造りの伝説を語った。
「柘榴」
アンソロジー『エロチカ』収録。N先輩がきっと好きなやつ。
「真珠」
口づけする口の内から真珠が次々にあふれるという夢。
「断章」
水の話。
「こま」
今、昔、映画。
「創世記(写真:谷敦志)」
「蜜猫」
部屋が増殖する家と猫と私。
「月蝕領彷徨」
視覚的な詩。
「穴」
視覚的な詩というか絵というか。ルイス・キャロルみたい。
「夕日が沈む」
『命を大切に』が浸透した結果、切断された指さえ死んではならぬと生き延びるようになり、それは熱帯魚のように愛好されるようになった。
「墓標」
視覚的な詩と小説。母の店にやってきた東京からの子連れの客。彼はブラック・アートというマジックを見せる。
「更科眼鏡」
視覚的な詩と小説。川に笹舟を流す子供。
「魔王 遠い日の童話劇風に」
「青髭」
「連禱 清水邦夫&アントワーヌ・ヴォロディーヌへのトリビュート」
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短編21編が、すべて皆川さんらしいとしか言えない幻想小説でどれもが一つ読むたびにもう一度読み返したくなるようなとても濃いものでした。モノクロの中に時々赤や青などの原色がすっと差し込まれるような強烈な印象を与えてくれるもの、終始全く音を感じないほどどっぷり浸かってしまうものなど、皆川さんの世界がぎっしり詰まっています。時間のある時にゆっくりじっくり一つずつ堪能したい本です。好みはすっと世界に入れる「迷路」「更紗眼鏡」。印象深かったのは読後題名がじわじわと沁みこんできた「墓標」。時間をおいて再読したいです。
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1995年からの2013年に発表された、単行本未収録の21編の幻想小説をまとめた短編集。
初出媒体も一編の長さも様々だが、どの作品も耽美、退廃、官能、死の色が濃厚でありながら品がある。
皆川博子愛にあふれる編者の後書きによると、「幻想のための幻想」である「純粋幻想小説」だと言う。まさに、作者の作り出す特異な世界に幻惑されるのを楽しむための作品集。
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海外を題材にした長編モノが好きなのだが、筆者の真骨頂は幻想小説に「昇華」されていると個人的に確信している。
20篇の短編は彩鮮やか、が一貫して貫くのは生と死が蠢く空気感、幻想を超え蠱惑的とでも言おうか。
執筆は60歳台から70歳代の20年にわたっているとはいえ、とてもそれを現実的に認識できないほど凄い。
表題の「影を買う店」と「猫座流星群」「柘榴」が脳裏に食い込んだ・・とはいえいずれ劣らぬ秀逸作揃い。
「影を」戦争で国内が荒み退廃した社会の中の姉と弟・・湿気を帯びた性的サデックスの高まりに う~~んというひりつく状況と転変。読み終え「やがてひっそりと・・」という想い
「猫座」はとてつもない残酷な設定と流れ、何れの人物ももっとも嫌悪を抱きそうな輩ばかり。子供の残酷な遊びとは言い切れ過ぎない絞首刑
「柘榴」アルアル設定の戦時中女子高・・流れるピアノ曲の官能的な旋律・・映像的
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喫茶店の隅の席に、いついってもM・Mを見かけないことはなかった。書き物が終わったM・Mが立ち去った後、残された薄い影を店主がさりげなくはがす。-表題作「影を買う店」-
単行本未収録の作品をまとめた幻想小説集。
不思議で、一見とりとめのない話が脈絡なく絡み合うようなショートストーリー。すじのある話が好きな私には、正直戸惑うものが多かった。
「更紗眼鏡」が一番好きかな。
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「影を買う店」は面白かった。
「影をはがす」という表現も面白かった。
私的に、影をはがす=命を削るということではないかと思った。
削られるのか、はたまた削るのかは分からないけれど。でも、影というものがある限り私たちは生きている訳。つまりは影が剥がされることによって薄れていくというのは死に向かっているということを表現しているのかもしれないと思った。
店に通う度に、死に向かって行く。
死にたい気持ちも、時が経てば変わるってことはないんだよね。そんなの、理想論に過ぎないよね。。
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現実世界を歪んだガラス越しに見るような、地続きの幻想掌編小説集。
表題作もいいけど釘屋敷水屋敷も好き。