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君島久子先生の文、後藤 仁の絵によって、岩波書店から出版された絵本です。2013年11月15日発行。〔ISBN 978-4-00-111242-9〕
Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館「The White Ravens 2014 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。
この絵本の出版は、岩波書店創立100周年、岩波の子どもの本創刊60周年を記念する出版事業の一環となります。文は中国文学・民話研究の第一人者である君島久子先生(国立民族学博物館名誉教授)によって過去に訳された「犬になった王子」(民話集『白いりゅう 黒いりゅう』所収、1964年、岩波書店)を、先生が絵本用に書き直されたもの。作画は私が日本画を用いて一年余りをかけて丹念に描きました。中国の少数民族・チベット族に伝わる民話を元にしており、原話の題名は「青稞(チンコウ)種子的来歴」です。
〔絵本のあらすじ〕
穀物のない国の勇敢で心の優しい王子が、美しくて思いやりのある娘ゴマンの愛によって救われ、苦難の旅を乗り越え麦のタネを手に入れるまでを描く、壮大な冒険物語です。犬になった王子の姿は、気高くもかわいらしいです。宮崎駿「シュナの旅」(徳間書店)(のちにスタジオジブリのアニメ映画「ゲド戦記」の原案となる。)の原話にもなった名作を初絵本化。チベット族(チベット・中国四川省)の民話。
絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁
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チベットの人々の主食の材料となる大麦の来歴を語る民話。
チベット プラ国のアチョ王子は、民を救うため、穀物の種を求めて苦難の旅に出る。蛇王の洞穴でやっと種を手に入れるが、見つかって、犬の姿にされてしまう。それでも王子は果敢に種を国に運び、心優しい娘ゴマンの愛の力で元の姿にもどり、2人は結ばれ、国は豊かになる。
ストーリーに起伏があって面白く、君島久子氏の文章が味わい深いのは、この本の大きな魅力だが、私は、何と言っても日本画家後藤仁氏の画に惹かれる。凜々しい王子、清楚で美しいゴマン。丹念に描き込まれたチベットの風俗・自然。どのページも、そのままずっと眺めていたい美しさである。
このような本格的な美しい日本画を、絵本の画として味わうことができるのは、子どもたちにとって幸せなことだと思う。この画の魅力が、やがて、チベットの人々や文化への、親しみや敬愛の気持ちを育てていくのではないだろうか。
昨年3月、後藤氏の画による「ながいかみのむすめ チャンファメイ」(福音館書店 こどものとも684号)を書店で見て、目が釘付けになった。こんなに早く、氏の次の作品を手にすることができて、嬉しい。
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チベットの民話。
物語と絵の世界観がマッチしていて素敵でした。
読む前は王子が犬になったままで終わるのかとドキドキしましたが
ラストは物語にふさわしいハッピーエンドで楽しめました。
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2014.1.5
【経緯】
図書館。
【書き出し】
大むかし。チベットのプラ国に、ゆうかんで、こころのやさしいアチョという王子がいました。
【感想】
•小学生のときの国語でスーホーの白い馬を読んだときの気持ちになった。
•王子が男らしくていいな!
•チベット民謡いいな!
•踊りながら意中の殿方に果物を投げるって難しそう
•選ばれなかったからって犬に投げたゴマンを笑った男の器の小ささ!
•ごまんを引き立たせるためとはいえゾタンとハムツォの表情の描写がちょっと酷い
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「白いりゅう 黒いりゅう」岩波書店に収められた中国の昔話のうちの一編を絵本におさめたもの。
私が個人的に、おはなし、ストーリテリングで聞いて好きな話でしたが、絵本が出ているというのを知って読んでみました。
君島さんの文は物語で聞いたときに素晴らしいのは知っているし、絵本として見たときにとても上質な絵で、チベットの風土が美しく描かれていて、主人公のアチョ王子も、ロウルの村長の娘、ゴマンも実に美しいのです。
おはなしで聞いたときとはまた違う味わいがあります。とても素敵な絵本でした。おはなしと絵本との違いはあるのですが、とても美しい風景なのです。後藤さんの描く絵は、王子だけでなく犬まで美しいのです。
小学校中学年以上、約15分。
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勇敢で心優しいアチョ王子は、国のために、おいしい穀物がなるという種を手に入れるため、九十九の山を越え、最後にはたった一人、蛇王から種を奪うも、犬にされてしまう。
ここまででもじゅうぶんドラマチックな展開だけども、ここからさらに、ピンチの最中、山の神からもらった玉をのみ、犬になってしまう。。
とっても美しい、恋の物語でした。
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自分のために大人になってから購入した絵本は本書で2冊目だ。宮崎駿「シュナの旅」の原案となった物語で、本書が出版されたと聞きネット書店で注文した。日本画で描かれた柔らかい絵で、幼児向け絵本とも、はたまた漫画とも違う。チベットの伝承民話なので(行ったことはないが)彼の地を想像し、ページとページの間にある情景を思い浮かべながら楽しませてもらった。
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勇敢な冒険物語とロマンチックな恋物語の、ワクワクドキドキを一度に味わえる絵本でした。
そして絵がとても美しいです。
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https://www.youtube.com/watch?v=KDU1foIGi1A
このお話は、宮崎駿の「シュナの旅」で知ったのが最初。どのように人間たちが穀物を手に入れたかについての民話。
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チベットの民話。
主食となるツァンパの原料である大麦をどのようにして手に入れたのか、アチョ王子の冒険を通して描いている。
壮大なストーリーと、美しい絵に引き込まれる。
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「白いりゅう黒いりゅう」でも読んでいたけれど、やっぱり話がいい。話がよければ本でも絵本でもいいけれど、昔話らしくない(?)絵もすてきでした。
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『シュナの旅』の原話にあたるチベット民話。
チベット・プラ国にアチョという名の王子がいた。
プラ国にはヤクや羊の乳や肉のほか、食べものがなかった。
山の神のところにおいしい穀物の種があるという言い伝えを聞いた王子は、その種を手に入れる旅に出ることにする。多くの家来を引き連れて出かけたものの、困難な旅路の間に家来は次々死んでしまい、残ったのは王子ただ1人。
やっとの思いで山の神のところにたどり着いたが、山の神は種を持っているのは自分ではなく、蛇王だと告げる。蛇王は人間に種をくれることは決してなく、やってきた人間を犬に変えて食ってしまうという。
それでもアチョの決心が固いことを見て取った山の神は、秘策を授け、1つの道具をくれる。そして、何があっても気を落とさず、東を目指せという。
こころから愛してくれるむすめにであったとき、おまえはすくわれるだろう
アチョは種を手に入れられるだろうか?
こころから愛してくれるむすめには会えるだろうか?
タイトル通り、アチョは蛇王に犬にされてしまう。けれども艱難辛苦の果て、物語は幸福な結末を迎える。
そして、アチョの壮大な冒険は、チベットの広い地域に豊かな実りをもたらす。
1964年に刊行された「白いりゅう 黒いりゅう」(岩波書店)に収録されるお話の1つを絵本とした。絵は日本画で、チベット各地を写生旅行し、その後、じっくりと作画したもの。民族色豊かで味わい深い。
*蛇や龍が出てくる(龍の方はお話に実際には登場しないのですが、蛇王の親戚か友人の竜王というのがいるらしいです)ところが『モルドヴァ民話』をちょっと思い出させます。チベットとモルドヴァ、だいぶ離れているのですが、中央アジア経由でお話が伝わったりすることもあったんでしょうか。
*アチョの生まれたのがプラ国、蛇王から逃れて向かう先がロウル地方、というのですが、現在だとどの辺を指すのか、いま一つよくわかりませんでした。現在のチベットの大きな都市と言えばラサですが、プラ国はあまり大きな国ではなさそうな印象です。9世紀半ば以降、いくつかの地方国家があった時代があるようなので、そうした国の1つであったのかもしれません。
*ここでいう大麦は、青稞(チンコウ)麦(別名、裸麦)という大麦の一種で、これを粉にするとチベット人の主食のツァンパになります。
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『風の谷のナウシカ』から辿ってきた。
なるほど宮崎駿さんが好きそうな世界であるかもなと感じた。
絵も雰囲気に合っててよかった。
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『シュナの旅』のもととなった民話。王子が自国のために、いぬの日(※)に蛇王から穀物の種を盗むが、見つかって犬に変身させられて……。
本書では「いぬの日」の説明がなかったので、本作が収録されている『白いりゅう 黒いりゅう』(1993年、岩波書店)から引用しておく。
※いぬの日:このお話をつたえた四川省アパチベット族自治州のうち、最大のギャロンチベット族の集居地である四土部に住む人びとの間に、この「戌日」に神をまつる風習があります。
本書と『白いりゅう 黒いりゅう』の訳者は同じ人(君島久子)だが、本書では少し説明が省略されているので、読み比べてみてもおもしろい。山にいたおばあさんは、実はその土地の神だとか。
また、宮崎駿は『シュナの旅』のあとがきで、蛇王ではなく竜王と書いている(「いぬの日に、蛇王が湖の竜王を訪ねる」と本書で書かれているので、宮崎駿の勘違い?)。ただ、本書にある後藤仁の絵は、竜でも蛇でもなく、悪魔のそれである。