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同時期に発生した首都圏連続不審死事件の影に隠れた形となった鳥取連続不審死事件。筆者が述べているように現代の地方都市における貧困層の現状を浮き彫りにするような事件である。
生活保護、地方経済の崩壊、不景気、家庭の崩壊等々。これらの出来事が不運にも重なって起こったことは明白。数々の嘘で6人あまりの男から金を騙し取り、特に贅沢な生活をするわけでもない上田美由紀容疑者の目的は?本当に殺人を犯したのかも結局現在までわからずのまま。死刑判決は妥当だったのだろうか?
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[2013.20]鳥取連続不審死事件について著者の取材によって書かれた本。1人目の不審死が起きた時はまだ、高校生で、まさか鳥取県でそんなことが起きているなどとは全く知らなかった...
しかし今、この本でこれまでの事件の流れを大まかにつかむことができた。
この取材姿勢を見習わなければならない。
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2009年、小柄で肥満体型の30歳半ばの女性の周囲で多くの男性が不審死する事件が続いて起きた。
一つは首都圏、もう一つは鳥取。
木嶋佳苗の事件にマスコミが殺到する中、著者は鳥取の事件の取材へ赴く。
そこには、木嶋佳苗の事件の"婚活詐欺"や"セレブな生活"とは真逆の、錆びれた繁華街で働き5人の子供を育てる上田美由紀の姿が浮かび上がる。
新聞記者や刑事までもが、美由紀に惹かれて金を騙しとられ、命を落としていく。
事件が写し出す都会と地方の格差とは……。
上田美由紀との面会の様子、検察や弁護団の様子を読むと、この事件の真相は決して明らかにならないだろうと感じた。
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どんなホラーよりも怖かった。
読みながらずっと、この世にぱっくりと口を開けた真っ黒な裂け目、が頭に浮かんでいた。どうしようもなく底の見えない裂け目に引きずり込まれていくような、じわじわとした恐怖感。どんなホラー映画よりも幽霊よりも、怖いのは現実だと思った。こういう世界が自分と同じ地平に存在する。心が底冷えした。
東の木嶋佳苗、西の上田美由紀、ということで気になっていた事件。木嶋事件は佐野眞一と北原みのりの本を読んでいたので、果たしてこの事件はどんな事件だったのかと気になって手に取った。年齢、体型、男、金、不審死。事件の概要は同じかもしれないけど、木嶋とは正反対にある得体の知れなさだった。人間って本当に理解不能な存在だ。
木嶋佳苗も上田美由紀も病的な嘘つきなのだろうけれど、木嶋の嘘がファンタジーなら、上田の嘘は…なんだろう、生存本能とでも言うのだろうか。とにかく生々しかった。進行中の控訴審の行く末が気になる。きっと事実なんて明らかにならないんだろう。
しかし、最初から最後まで陸の孤島、日本の底辺と書きとおされた地元のみなさんがちょっと気の毒だった。都会の人が地方を描くとやはりこうなるのかなー。日本中、どこにでもあんな地方都市はあると思う。
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読みながら、上田美由紀さんのことを、ある意味羨ましく感じていた。良きにつけ悪きにつけ(良いにこしたことはないのだが)これほど人々に注目されることは、一般社会の中で平凡な生活を送っている平凡な人間には、滅多にないことだし、まして青木理さん――ラジオ番組を聞いてファンになり、本書を読むきっかけになった――のようなモテモテでカッコいい男性がはるばる逢いに来てくれる(用件はアレですが・苦笑)。
平然とウソをつける。異性が自分に夢中になって、言う事を聞いてくれる。青木さんは『誘蛾灯』という表現をしたが、俗っぽく言えば“フェロモン”を発している。特別な能力、才能と言えるのだろう。この能力を、上手に、正しく使ってさえいれば、彼女は思い通りの、素晴らしい人生を歩めたのかもしれない。
恐らく、あまり聡明でも、頭脳明晰でもないのだろう。そして、やはり聡明でも頭脳明晰でもなく、大勢の他人の中で揉まれた経験も浅い男性のみに、通用する“フェロモン”だったのかもしれない。それでも、好きな男性を“いい気分に”させたり“癒し”たりして喜ばせることができるひとを、率直にその部分だけは、いいなあと思った。繰り返すが、上手く立ちまわってさえいれば、あるいは起こらなかった悲劇だったのかもしれないと思ってしまうのだ。
ところで、以前別の本の感想にも書いたけれど、私は死刑制度には反対です。どんな人間であれ、人間として他の人間の死を公然と望む姿勢に嫌悪感を覚えるし、自分が支払った税金が人殺しに使われることに憤りを感じるから。他人の死を(声に出して)望んで良いのは、我が子を殺された親だけだと思っているから。袴田さんの件のように(彼はどうにか免れた訳だけれど)、万が一にも冤罪で死刑になっちゃった、なんてことが、高度に発達した文明社会であるところの現代日本で、あってはならないことだから(実は、そうなってしまった件もあるかもしれないらしいのだが、真相は闇の中。怖くてたまらない)。そして、こういう大きな事件になると、シケイシケイとお祭り騒ぎをする、世の中の人間たちが、気持ち悪くてたまらない。あんたらそんなに、人が死ぬのがウレシイかと、いつも毒づいている。
本の中で多くの頁が割かれている、カラオケスナック・ビックでのエピソードが一番面白かった。あのダンディな青木さんが、デブの年増ホステスに翻弄され当惑する光景を目に浮かべると、ついニマニマしてしまう。是非またビッグに行って、できれば私が聴いているラジオ番組で、そのときの出来事を教えていただきたいものだ。(2014-03-23L)
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ルポライターの青木理氏の著作。
○鳥取県で2009年に発覚した、連続不審死事件について、加害者、被害者それぞれがどのように死に至ったのか、その背景や動機について取材したもの。
○著者の中立的な立場からの取材や記述は、先入観を持っていた自分の認識を変えるもので、とてもリアルで面白かった。
○事件はまだ公判中(上告中)なので、結論は出ていないが、著者による、加害者、検察・警察、弁護団それぞれの”無能さ”についての言及が、とても印象深い。
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鳥取連続不審死事件を追ったルポ。首都圏で注目を集めた木嶋佳苗の事件に比べて取材の難しさなどからも取り上げられることの少なかった事件だが、著者の天邪鬼さでこちらを狙い、そしたらその木嶋佳苗から獄中ラブコールを受けた、というなんだかすごい本。
この事件を語るときには鳥取の辺境ぶりを外すことは出来ないが、そのシーンごとの合間に被告が勤務し、多くの男との出会いの場となったカラオケスナックでのやりとりが挟まれる。最初はさっぱり居心地が悪い、いわゆるデブ専のスナックなのだが、取材を重ね、訪問を重ねるうちに著者はそこの風景にはまっていくように見えるし、読む側もなんだか慣れてくるというか、人が理解できてくるというか。なかなか始まらない公判を経て、最後の面会は圧巻である。なぜこんな女に夢中に、と人はいうが、その片鱗が見える。人って恐ろしい。
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交通インフラの遅れにより陸の孤島となってる街、インスタントのカレーとラーメンの消費量が全国一位の街。疲弊した地方の場末も場末のスナック。ここから全てが始まった。
あたかも誘蛾灯に誘き寄せられたように男達がひとり、またひとりとカネをむしり取られ家庭を捨て命を落とす。
その中心にいるのは冴えない太った子持ちの中年女。
一体何が男達をそうさせたのか。
著者はその訳を知りたくて取材を進める。そこから見えてくるものは、目が眩むようなありとあらゆる女の武器を駆使する美由紀という一人の女の実像だった。
『セックス、妊娠、双子、三つ子、五人の子ども、ウソ、自傷、自殺、泣き落とし、気遣い、癒し、甘言、熱烈なラブ・レター。』
ウソとゴミにまみれ、折り重なるように子供達と暮らすアパートで、それでも男達はひと時夢を見たのだろうか。
げに恐ろしきは女。
そして自らを誘蛾灯に身を投げ込んだ男の性。
最後の最後、掲載された一葉の写真で全身総毛立ってしまった。
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あー、いるいるこういう人って思った。人と話す時に優位に立とうと悪気なくウソをつく、ついてしまう。
ちょっと説明的な文章のところ(鳥取の地形的な説明とか)、飛ばし読みしてしまった。地方のこの環境が影響していつのはわかるんですが…、スンマセン。
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なぜ妻子と別れてまで美由紀と付き合うのか、美由紀には金を毟り取られるだけなのに、という問いに対して、大田が言った
「女なんて多かれ少なかれ、そんなとこ、あるやろ。あんたのカミさんかて、カネ、カネって言うやろが(笑)」
という言葉にドキッとさせられた。
自分とは接点のない女性だと思っていた美由紀が、ぐっと身近に感じられた瞬間だった。
最後の著者と美由紀の面会のシーンは、読み手も美由紀に翻弄されてしまい、イライラするけど、もっと話が聞きたいような変な感じを味わった。
弁護士ともこんな感じでやりとりしていたのかも…と想像したり。
裁判のあり方や警察、検察側の問題に対する著者の考え方も散りばめられていて、興味深く読みました。
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鳥取という日本で一番小さな人口の少ない県の風景と、そこで起きたと目される事件。事件そのものというより、鳥取の社会と人の印象が深い。
最初「えっ。なんでそうなったの?」と思うのだけれど、だんだんと、彼女に惹かれていく故人の心境が「ああ、そうなるかもしれない」と思えてくるから怖い。
よく、確固たる信念を持て、と言われるけれど、バブル崩壊後は信念を持つのが辛い時代であり、地域性故か、余計に陰鬱で未来が見えない状況だ。その中で「自分」を手放して、彼女に振り回されたい……どうせ辛いなら、彼女のために、と思う気持ちがわかるような気もする。
私は、ノンフィクションは事実を求めていない(書き手のフィルターを通すので、事実とも言い切れないと思うのだ。また事実なんてものも、立場によっては見方が異なる訳だし)。なので、書き手の心象が描かれているものに惹かれる傾向がある。そういった意味で非常に読みがいのあるノンフィクションであると思う。
他の作品も読んでみたいと思うと共に、続編でないかなぁ。
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全国にこの誘蛾灯がどれくらいあるかを妄想する
インタビューに応じたママさんは、そこいらいにいるデフォルトママ
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テレビのコメンテーターとしてよく見る青木理さんの作品を読んだことがなく、とっかかりの1冊として手に取った。「木嶋佳苗」と言うと、「ああ」とわかる人でも、ほぼ同時期に鳥取で同じような事件があったことを覚えている人は、私の周りには少ない。そこに斬り込んだ作品。
書かれたのは2013年。死刑は2017年に確定している。この女性が、「息をするようにうそをつく」のだったとしても、ちょっと食い足りない気がする。
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フリージャーナリストが鳥取連続不審死事件を追う。警察の捜査や裁判の在り方、事件の真相を追うというよりは、なぜ刑事や新聞記者といった男性達があのような女性に惹かれ人生を狂わせたのか?というのが主題。同時期の埼玉の事件も同じような扱いでメディアに取り上げられていたが…そんなに謎か?殺人まで行ってしまうとアレだがそこまで行かなければ男女関係には多かれ少なかれありそうな話と言い切れないのがマスコミか。笑うセールスマンのある話を思い出したわ。
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日本の裁判って、こんなにいい加減なのかと、初めて知った。到底、女一人でできる犯罪と思えないにも拘わらず、単独犯罪だと結論して、不思議に思わないこの、恐ろしさ。