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紙の本

生真面目な義母と義息の不器用な物語

2013/12/19 00:06

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

ここ最近はSM調教や大胆な寝取られといった挑戦的なテーマを愛情の糧とする意欲的な作品を主に竹書房ラブロマン文庫より上梓してきた作者だが、フランス書院文庫からの4作目は、生真面目で頑固で不器用なるが故に我慢に我慢を重ねたヒロインが最後の最後に想いを盛大に決壊させるギャップ破壊力の路線を踏襲したものとなった。これはこれで作者らしいテイストである。

後妻として現れ、義母となったヒロイン(39歳)に想いを寄せる高校生の主人公(17歳)。あくまでも「母」として振る舞ってきた義母から話が始まるため、義息たる主人公の想いを知って狼狽し困惑するという前段階がしっかり描かれている。そのため前半は合体直前の寸止めだったり前戯的な戯れ止まりだったりで官能的には今少し物足りない印象でもある。義母の実妹(35歳の叔母)が後から登場する辺りで変化も生まれるが、逆に奔放で積極的でもある叔母もまた甥っ子たる主人公の秘めた想いを知るにつけ、からかい半分の誘惑を仕掛けてその真意を測るような展開があるために義母の時と似たような官能描写で留まっている。

義母の懊悩や叶わぬ夢との諦念もある主人公の想い、そして、それらを俯瞰しつつも主人公への愛情めいた気持ちが芽生え始める叔母といった切なさを湛えた心情描写に重きを置いた流れには往年の誘惑作品らしさを感じるものの、同時に何とも言えないもどかしさも漂っている。

このもどかしさは叔母も同様だったようで、義母を挑発しつつ(官能的に)先に進むことで腰の重い義母にスイッチを入れさせる、その直前までの旗振り役として暗躍(?)するのが後半である。ここにきてようやく合体の場面も増え、淫猥度も増してくるのだが、本作のクライマックスは、相応に「女」への変貌がカラダには去来していながら「母」そして「妻」の矜持が歯止めをかけていたばかりに結果としておあずけをずっと喰らい続けることになった義母の豹変とその後である。

根負け気味ながらも全てのしがらみから自らを解放し、自由な気持ちで素直になった義母の変化は激しい。ここまでの叔母にもあったショタコン的偏愛にも写る主人公への肩入れは凄まじく、これまでの鬱憤を晴らすかのように妹(叔母)には義息を触らせたくない、合体などもっての外といった独善的可愛らしささえ垣間見せる有様となる。それでいながら自分は淫らに乱れ三昧でトロトロに蕩けてしまっては形無しでもあるのだが、これによって官能的な山場でもあった最後の3Pがちょっと変わった形になってしまったのは多少好みの分かれるところか。

この一幕から3ヶ月を経た、父(夫)の不在時に昼夜を問わず交わりまくる爛れっ放しな生活がエピローグでさらりと綴られるが、個人的にはこの部分を最終章にボリューム満点で描いていればさらに淫猥度が増したようにも感じた。それでも最初と最後で見事に印象が変わった義母を見るにつけ、読み終わる時にしてやったりのグッジョブ的な開放感が得られるのは庵乃作品らしいと言うしかない。

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