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フランスにおけるお菓子の発展史をからめつつフランスという国の成立前史から現代までの歴史をたどる。ただ歴史だけ勉強すると暗記になってしまいがちだけれど、時代ごとに特徴的なお菓子を知り、重要な素材の一つ砂糖の入手についての背景などを知ることで、政治や経済について流れのある知識となるのがいいと思う。
お菓子の専門家からみればお菓子の部分についてはちょっと物足りないかもしれないけれど、一般の読者にはちょうどよく、きれいな口絵もあり、知らなかったお菓子をいつか食べてみよう、と思えてくる。
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フランス菓子は世界一?
著者はカントリー風のお菓子も良いには良いが、なんだか冴えない印象だと述べている。
少し言い過ぎのような気もするが、確かに映画『マリー・アントワネット』にでてくるようなお菓子にふさわしいのは素朴な茶色いお菓子ではなく、真っ白な生クリームに柔らかなカスタード、うっすらと頬をそめたような桃色......。
デパートの地下にあるお菓子売り場に行けば、人が群がっているのは入り口近くのフランス菓子を扱う店。
人気なのは間違いない。
著者は和菓子については対抗関係にない、全く別の「美」であるとして同じ土俵においていないことを付け加えておく。
フランスの歴史をお菓子とともに歩むのは面白い見方である。
その中で大事なのが「精髄」というもの。
これがフランスの根幹にあるのだそうだ。
精髄は国土と不可分でそこを離れてはあり得ないもの。
終章では、その「精髄」がグローバル化のなかでどう保つのかにまで言及している。
初めは甘くなかったお菓子が大航海時代を経てどんどん甘く、美しくなっていく様子は読んでいて楽しい。
紅茶の世界史のようで、初めはごく小さな地域の物語が、ある時を境に大きく広がっていく様子は歴史の面白さを感じさせる。
女性差別がまだまだ根強かった頃、女性には真の美食能力はなく、グルメにもワイン通にもならないが、甘いものには通じていると考えられていたそうだ。
また、チョコレートは女性を気絶させるほど院微な飲み物で色欲と結びつけられたとも。
全く何の根拠もないが、18世紀になるとその女性性がお菓子界を牽引するようになっていた。
動物の時代から植物の時代へ......。
この力関係が変わっていったのも興味深い点である。
以前紹介した『お菓子の由来物語』を隣において見てもらった方がより具体的にお菓子の姿がわかると思う。
(本書の参考資料でもある)
本書ではかわいらしいイラストが巻頭にカラーで載っているが、お菓子自体の写真はなく、聞き慣れないお菓子だとわかりにくいのではないか。
主に歴史上の人物、場所については写真も使われているが、肝心のお菓子はというと、イラストなので残念な気持ちになる。
とはいえ、一国の歴史をじっくり学べるのでフランス史に興味があれば有意義な読書になると思う。
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お菓子を通じてフランス史を俯瞰している本。
ジュニア新書だけあって、平易な文書で書かれており、読みやすい。
お菓子は生きるために不可欠なものではない「余分なもの」であるがゆえに「文化の精華」である、という切り口から、フランス文化史を語る内容になっている。
フランス史>お菓子の歴史という比重になっている印象。全体を俯瞰する、あるいは興味を持つきっかけとしては優れた本だと思う。
ただ、かなり駆け足で語られている印象なので、ある程度の知識があるか、これをきっかけに他の本などで学ばないと、理解しきれないようにも思う。
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フランスの大まかな歴史をそれとともに歩み発展してきたお菓子を題材に書かれており飽きずに読むことができる。フランスが与える文化的な影響なども感じることができる。
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単に歴史を追うだけでなく、時代ごとにお菓子の発展がどう関わっていたか書かれている。歴史上の名のある人物たちとお菓子の意外なつながりがあり、興味深い。フランスの歴史をお菓子でたどるという一風変わった切り口で、味わい深い一冊となっている。
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Flâneur 遊歩者/散策者
デュマの大料理事典読んでみたい!と思って検索したら、通常版はプレミア価格、特装版はその上を行くので手が出ないっ。
岩波さん、そのうち文庫化もお願いします…orz
お菓子分もうちょっと多めだったらな~。
口絵も絵よりは写真が良かったです。ぐぐりながら読んだり。
フランス人のイメージ戦略すごいなぁ。しみじみ。
少し前に「チョコレートの歴史」と言う本を読んだのだけど、チョコレートのところで同じエピソードが取り上げられていてふふっとしてしまいました。
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フランスの歴史を学びながら、国王・皇帝、ブルジョワ、カフェ、科学技術が、フランスのスイーツを進化させたと説得力あふれる歴史を学べる。
偉大な政治家の名前も大切だが、食の文化史も重要だと著者は、読者に問いかける。
これから、パリに旅行する人や職業として職人になる人にも、おすすめしたい良書。
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趣味が高じて本出しちゃった、みたいな本。 フランス史、と書いてあるものの、特に序盤などはフランス以外の部分も多い。簡単にではあるが世界史の流れも書いてくれているので、背景知識がゼロでも常識程度の世界史の知識で何とかなると思う。読んでいてとても楽しい。
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いろいろなケーキを目にすることはあっても、その由来は知らずにいたので読んでみた。お酒や絵画と同じく、ケーキもそのストーリーを知ることで楽しめると感じた。
ル・ププランというお店で、サントノーレというケーキを一目惚れして購入し、そのいわれを調べたのが本書を読んだ遠因だが、スイーツにそこまで興味がない私でも興味深く読むことができ、ケーキを好きになったと思うので、とても印象に残った本となった。
本書に限らず、児童文学は大人にとっても面白い本が多いと感じる。
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カトリック教会は食事と食卓において社会のエリートたちを文明人にふさわしい礼儀正しい立ち居振る舞いと慎ましやかな社交のできる人間に育てていこうとした。
フランスには甘いものやデザートと女性が結び付けられる傾向があった。女性は甘いものを通じてこの好みを子供と共有するとされていた。
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お菓子、それはフランスの歴史を彩る武器。
お菓子の歴史ではなく、フランスの歴史とお菓子。なぜフランス料理であったり、フランスのお菓子だったりが、一流の物として世界にフランスのイメージを作ったのか。フランスがフランスたる拠り所とは。
イタリアからやってきた洗練された食文化。それを取り込み、発展する宮廷文化。フランス革命によって、市民のものになる食文化。砂糖を使えることの意味。庭園や建築と共通する飾りへの興味と追求。鉄道建設と地方の名品がパリに集まること。そして、戦争と植民地、技術革新と新しいお菓子。
フランスは、このグローバル社会の中で、フランスであることをどこまで守るのだろう。また、どこまで「フランス」を広げるのだろう。今まで通りにはできない、きっとフランスには難しい時代。憧れの「フランス」はもうイメージの中にしか存在しなくなるかもしれない。フランスのこれからを見守りたい。
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お菓子のはなしをベースにした簡潔なフランス通史。お菓子の話題以外は重要なところだけポイント絞って概説してくれてわかりやすい。個人的に白眉はカトリーヌどメディシスがくるまえのフランスでは肉を手掴みだったりとか、イタリアの文化が入って洗練されあのだなということ。あと、受け入れるフランス。砂糖大好きフランス。ゾラの胃袋のはなし読んでみたいと思った。パサージュ。
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フランス史をザクッと振り返りながらお菓子の歴史も振り返るという本。フランス料理・菓子が現代に至るまで賞賛されたのはイメージ戦略によるものだというのは納得してしまった。中高生の時に読みたかった。
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「岩波ジュニア新書」の池上俊一さんの一連のヨーロッパ各国史の著作、スペイン史に続いてフランス史を読了。「情熱」という抽象的なコンセプトを軸にしようとしたスペイン史に対して「お菓子」という実体のあるものをテーマにしたこちらの方が構成としては成功している感じがします。
ともあれ、フランス史の概略を掴むのによい本でした。
なぜヨーロッパ史を概観しているかというと、ヨーロッパ史を知らないとアメリカ史の背景がよく分からないということがよく分かってきた(笑)から、なんですよね…
歴史は面白い。
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東大大学院教授池上俊一著 岩波ジュニア新書
生きるためには不可欠ではないのに生活に
甘美なうるおいを与え幸せを与える不思議な食べ物。おフランスで発展し国家戦略としてどのように利用したかがよくわかります。ゴーフル、ドラジェ、ビュッシュドノエル、マカロン、クグロフ、シャルロット、マドレーヌ、サヴァン、ブランマンジェ、ルリジュース、タルト・タタン、ミルフィーユなどほとんど食べたことないですがどれも優美な響きでおじさんも憧れます(笑)