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「エンダーのゲーム」映画公開に合わせて発売された新訳版。長らく絶版だった旧訳版は叙情派SF短編集の傑作として評価が高く、一度読んでみたいと思っていたところでした。新訳版が出たので張り切ってゲット。
一読しての印象は、クラシカルでセンチメンタル。残酷なテーマの作品が多いけれど、感傷的な筆運びでしっとりと巧いことまとめています。
好きな人はたまらなく好きなんだろうなぁ、と思える作風ですが、鴨には残念ながら今ひとつピンと来ませんでした。センチメンタリズムが鼻についてしまったかなぁ。新訳版なのに一部の翻訳が稚拙なところも気になります。でも、「エンダーのゲーム」は良かった!この作品だけ他の作品とはベクトルが全く異なるイメージです。長編版は未読ですが、たぶんこの作品は短編の方が引き締まって良いような気がする。うん。
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20140402読了。
いつもはSFだ、ということを意識して読むことはないのだけど、この短篇集はたまにそう思いながら読んだ。地球外のことになると完全に現実世界から切り離して読めるからいいのだが、日常に近いところで話が進んでいるものは、ゾッとすることがあったのだ。
全体的にストーリーがよく考えられていて読み応えのある短篇集。特に『エンダーのゲーム』『呼吸の問題』『死すべき神々』『無伴奏ソナタ』の4編が印象に残った。
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まず、この文庫本の最初に『はじめに---作者への公開書簡---』が置かれています。この文章が書かれた時代のアメリカにおけるSF作品への状況が透けて見えてきます。
その上でこの短篇集を読むと、なかなかドロッとキテるな、というのが第一印象。『はじめに…』にも書かれている「”本格”SF以外に目を向けようとしない狭い範囲の読者のためだけの作家ではないのだ。」がよくよく分かってきます。
作者のあとがきにはこう書かれています。
---これらの短編すべてで繰り返されているモチーフがある---残酷なまでの苦痛と、グロテスクなまでの醜悪さだ。繰り返しあらわれる主題もある---死の愛好、喜びに対する支払いきれないほど高い代償、因果応報への非現実的な信頼だ。
この文章が全てを語っています。確かに”本格”SFを愛好する私のような人にはチト辛い短篇集でした。
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「無伴奏ソナタ」http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11940.html … 読んだ。タイトルに騙された、駄作以下の紙の無駄。あとがきも無内容だし、解説も幼稚で浅薄だし。解説者はこれをベタ褒めしているけどあんまり良質の読書をしてきていないなあ、ミステリとSFでは読解力はつかないというのは真理だな
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完全に表紙とタイトルの響きに惹かれて購入し、読んだ。
筆者と作品について何も知らず、
勝手に現代的なゴリゴリのリアルでハードなSF
を書く人なのではと想像していたのだが、
多少グロく、幻想的で、ちょっと日常を踏み外した
ところにある「世にも奇妙な物語」的と受け止める。
確かに表題作は本のタイトルに選ばれるのも当然だが、
この中で一番は《大衆》の物語であり、
《支配者》の物語であると思う。
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SF短篇集。
SFといってイメージするのはスターウォーズのように超越したテクノロジーを使った戦闘などでしたが、この本の短編はいかにもSFな物語というよりは作者の人生観をSFというジャンルで表現しているような印象を受けました。
宇宙人やタイムマシンが当たり前に出てきますが、それらの登場人物や道具を使って人生の考え方や人の生き方を話に落としこんで、1つ1つの話が教訓や寓話のように生き方の指標を示すような物語になっていると感じました。
11の短編の中では、タイトルになっている無伴奏ソナタとアグネスとヘクトルの物語が気に入りました。人の幸せや向き不向きについて考えさせられる話が少し寂しげで綺麗な話だと思います。
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『エンダーのゲーム』の前身と思われる同名タイトルの短編を含む11の短編集。もしかしたらこの作家は短編の方が上手かもと思うような、クオリティの高いものばかりでした。
本のタイトル作について。
生後6ヶ月で受けたテストで見せた音楽への“天才性”により、クリスチャンは音楽の<創り手>となることを定められる。
彼は両親から引き離され、自然の中で聞こえる鳥の歌や風の歌、雷の音、つららから落ちる水滴の音、リスの鳴き声といった音楽を与えられた<楽器>のみで奏で、そして<聴き手>はそれらに聴き入る。
<創り手>であるクリスチャンは<聴き手>になることは許されないのであるが、ある時一人の<聴き手>がクリスチャンにバッハを聴かせる。
クリスチャンの音楽に変化を感じ取った<見張り手>から、彼は音楽を禁じられ、他の仕事に就くこととなる。歌うことも、奏でることも、手拍子を取ることも禁じられたクリスチャンはどうなるのか。
と、こんなところであるが、この短編集を出版するにあたっての編集者から作者への書簡が前書きとなっており、それもまた味があっておもしろかった。
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読んでて、エンタメってこういうものだったって思い出した。とくに「エンダーのゲーム(短編版)」。11才の少年が他の誰にも思いつかない戦術でめくるめく大活躍… って、そう、最近忘れてたけど、そういうのがエンタメだった。リアリティとかどうでもよくて、とにかく面白ければいいんだよ。
「ブルーな遺伝子を身につけて」は、正統派SFっぽい顛末に加えて、宇宙服らしき「モンキースーツ」の語感がツボ。猿のスーツなんて不格好なはずなのに、何故かスタイリッシュ。
「アグネスとヘクトルたちの物語」…ステンドグラスの絵の裏表をひっくり返して見ているような話。どっちも表だしどっちも裏。民族弾圧による死の運命から義両親に助けられた過去を持つアグネスは、同じような立場の人間を救おうとして、その結果数十億の人類を死に追いやってしまう。けれどもその一方で、異種生命のヘクトルたちを過去の自分と同じように死の運命から脱出させる。それが皮肉なのか正統な結果なのか、想像の余地を残す形で淡々と語られて面白い。あとは、原理のわからないものを使ってその結果、という内容は、原発なんかを利用してる現実に照らし合わせると笑えない。
「開放の時」、これが一番好きかも知れない。乱視の視界みたいに、いくつもの世界が重なって現れて、主人公は一番良い世界にあたった時に死ねるって話。奥さんは主人公の死によって子供が居る世界を獲得して、哀しみはするけどほっとする。主人公には救いはないんだけど、ちょっとした達成感とともに死んでいく。複雑な幸福感がある話。
「陶器のサラマンダー」も切なくて良い。「無伴奏ソナタ」は、そこまで。他の短編は面白かったけど上4つと比べるとオーソドックス。でも十分に面白かった。
全体を通して、死と生に敏感な作者なんだと感じる。意味のある生き方に強い関心があると言い換えてもいいかも。その上でしっかり読者を引き込む要素を備えてて、主張とかテーマとかに必要以上に傾倒しないのがかっこいい短編集だった。
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王様:「無伴奏ソナタ」を書いたのはそなたかな?
オースンスコットカード:はい。わたくしでございます。
とか言ってる場合じゃなくて。
かの有名な「エンダーのゲーム」を含む、実に11編もの短編集。正直、もうお腹いっぱいです。どれもこれもどうにもこうにもあまりにも抽象的で寓話的。SFを読んでいるというよりは高尚な文壇作品を読んでいるという印象が拭いきれなかった。抽象的にもほどがあるだろ!と文句を言いたい。だって読んでいてちっとも面白くないんだもの。あと、著者のあとがきもつまらんかったな。
比較的とっつきやすくて面白いのはやはり「エンダーのゲーム」だ。長編もあるらしいが読んだことはない。なのにこんなことを言ってはあれだが、この短編で十分に完結しているのでは?子供時代を戦闘ゲームに捧げたエンダーたちの「ぼくらはこれからなにをするんですか?」という問いかけには誰も答えることができないだろう。
表題作の「無伴奏ソナタ」は、これ面白いんですか?と聞きたい。どこが面白いんですか?と聞きたい。僕にはわからなかった。。。
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怖い、恐い、コワイ。広くいろんな意味で。
「エンダーのゲーム」の背景に対するクールで静かな恐さ、「王の食肉」のタイトルそのままの生々しさ、「タイムリッド」の軽く乾いた感じ、などさまざまなコワさの11編。
残酷で、時に人の心の罪悪感を突く。
思うようにならなさ、無力感が漂う。
どれもが怖くて、虚しいような悲しさもあった。
当初、多少の苦手意識を抱えながら読んでいたけれど、今はいい意味でもう一度読みたいという気になっている。
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翻訳された海外の小説を読んで
ムッとしてしまうことは通常ないのだが、
多分、著者と担当編集者のドヤ顔が透けて見えるせいで
若干不快感を催したに違いない。
(新装版なのだから、あの序文は外せばよかったのに……)
気を取り直して、
全11編中「まあまあ面白かった」作品について。
「エンダーのゲーム」
異星人の攻撃から地球を守るために設立された
バトル・スクールで
指揮官へと成長していくエンダー少年の物語。
映画化された長編『エンダーのゲーム』の
ベースになった短編。
後続の様々なバトルもの作品に
多かれ少なかれ影響を与えたと思しいが、
秘策があるとはいえ、子供を矢面に立たせるなんて、
どんなディストピアだよ!
と、憤りを覚えると同時に、
楳図かずおの名作短編「Rôjin」を連想した。
また、人材不足と言いつつ
指導者にも訓練生にも女性が一人もいない点に
不自然さを感じた。
少年たちがブチッと切れて
軍内で反乱を起こす展開だったら
拍手喝采したと思うけど(笑)。
大仕事は片付いたから、
後は幸福な余生を送ってくれたまえ……って言われた
12歳男子は、その先どうやって生きていくのだろう。
〔注〕長編版未読、映画も未見、
読了した短編版のみの感想です。
「王の食肉」
イカ型(?)宇宙人夫婦である王と王妃に
侵略・征服された土地で、
人々が生き延びるためにやむなく選択した
グロテスクな手段。
「解放の時」
楳図かずおの古い短編に少し似た感触。
主人公の会社経営者は、
恐らく「二つの現実」の間を行き来していて、
一方に身を置いたときに、そこと他方とのギャップに
違和感を覚え、混乱するのだ。
妻が情緒不安定で
支えが必要な頼りない女性であるか、
逆に、しっかりした快活な女性であるか……が、
最大の差異。
どちらを望んでいたのか、いずれにせよ、
彼はquietus[原題]によって
悩みから解放されたのだった。
「無伴奏ソナタ」
法律の強い縛りで高度に管理されながら、
市民に窮屈さを感じさせない世界。
乳幼児期に音楽の天才と認められ、
一種の英才教育を施された
クリスチャン・ハロルドセンは、しかし、
30歳にして掟を破り、以後、生活が一変した……。
皮肉で残酷な話だが、人間の感情も芸術も
本来自由であると痛感させられた。
終盤、趣味で音楽を演奏する青年たちが、
作曲者の背後の事情はどうでもいい、ただ、
生み出された楽曲が素晴らしいから
自分たちはそれを愛しているのだと語るところが
素晴らしい。
作品を理解するために
作者のバックグラウンドを知るのは
大切なことではあるが、個人的に、
世の中の多くの人は周辺情報に関心が強く、
作品をじっくり賞味するより、例えば、
作者が華麗な経歴の持ち主であるとか、
ハンディキャップを乗り越えたとか、
個性的過ぎる家族に振り回されて苦労してきた、
だとかの個人情報に心を動かされがちで、
そういう意味で「頭一つ抜きん出た人物」が、
仮に作品の内容が凡庸だったとしても
作り手として高く評価されがちではないかと
常々思っている。
私は物語としての虚構に
強い関心を抱いているだけなので、それらの情報は
二の次という態度を取っているけれども……。
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「SF好きならどう?」と同僚に勧められたのが
この人の「エンダーのゲーム」という作品。
長編と短編があるようですが、
バトル物SFに興味があまり向かなかったので
短編版のこちらを選択しました。
で…
エンダーのゲームに関しては
ガンダムみたいなロボット系のSF好きなら
長編版のほうが楽しめるかもしれません。
その他、短編もなかなか面白い作品が多かったです。
単に「面白い」というより
数年後「あれ…なんか、こんな話どこかで読まなかったっけ…」って
忘れた頃にウズウズしてしまうような、
何か知らないうちに妙な種を植え付けられるような内容が揃っています。
個人的には
・王の食肉
・深呼吸
・四階共用トイレの悪夢(←独りでトイレに行けない怖さ)
そして
・磁器のサラマンダー
です。
磁器のサラマンダーは泣いてしまった…
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「エンダーのゲーム」を代表作に持つSF作家の短編集。同著には「エンダーのゲーム」の短編版も収められているので、著者の作品未経験者には入りやすい一冊かもしれない。
外国のお伽噺から残酷フィルターをとっぱらったかのような作品がとにかく上手い。人体が欠損しまくる話が特に面白く、「王の食肉」と「無伴奏ソナタ」はここ数十年間のSF短編の中ではトップクラスに面白かった。
是非、荒木飛呂彦に漫画化してほしい「四階共用トイレの悪夢」などバリエーションのある理不尽さが書けるのも凄い。
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さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。
もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。
国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。
SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる作品も多く、その不気味さも相まって面白い作品も多かったです。
「王の食肉」は人間を食べる外来生物とその生物に仕えた〈羊飼い〉と呼ばれる人間の物語。ぱっと読んだ雰囲気ではB級ホラーっぽいあらすじになるのですが、そこを描写の気味悪さで引っ張ります。そしてラストの展開でまったく味わいのちがう作品に変わり、アイディアとテーマの見せ方の巧さを感じました。
「ブルーな遺伝子を身につけて」もSFにホラーの雰囲気をまとった作品。化学戦争で地球から逃れた人類。それから数百年。宇宙飛行士たちが再び訪れた地球には、生き残った人類が生活していたが……
地球で生き残った人類とともに生活しているアメーバ状の謎の生物。その正体が分かったときの不気味な感じと衝撃の一方で、どこか説得力もある奇妙さもあり印象に残りました。
他にもSFだけでなく怪奇小説の雰囲気の強い作品も多数収録されていて、著者の多彩な一面を垣間見ることのできる短編集でした。
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「エンダーのゲーム」が気になって読み始めたが、宇宙を舞台としていないわりと現実に則した短編も多く、読んでいてダレることがなかった。友人や家族との何気ない会話や出来事をきっかけに、これほど多様な物語にまで膨らませて作品に仕上げる作者の力量に驚かされる。「エンダーのゲーム」の長編も読んでみたいと思えた。