投稿元:
レビューを見る
<オオカミを野に放て、と著者は言う>
この本をチェックした経緯を忘れてしまったのだが、多分、新聞広告だったのだと思う。表紙のオオカミにやられてしまったのだろう。いい写真だ。
副題は「生態系での役割と復活の必要性」。
表紙にも記載された編著者の肩書は「日本オオカミ協会会長」(日本オオカミ協会HP)である。編著、となってはいるが、多くの部分を編著者が執筆しているようだ。
主張はクリアである。
日本でイノシシやシカが増えて害獣化しているのは、頂点捕食者であるオオカミが絶滅してしまったためである。これは明治期、金銭目当ての乱獲に、政府の駆除方針が重なったためと考えられる。その際に流布された誤ったイメージ(オオカミは人を襲う凶暴な生きものである)もあり、オオカミ復活(=外部からのオオカミ導入)に抵抗感を示す人が多い。
だが、著者は、柵で耕作地を覆うのも、狩猟によって害獣の数を制限するのも、狩猟で得たものをジビエとして消費するのも、いずれも欠点を伴う策であり、生態系の要石であるオオカミ導入に勝るものはないとばっさり切り捨てる。
オオカミの再導入に対する反対勢力への著者の苛立ちや怒りは非常によく表れている。ちょっと表れすぎだと思えるほどだ。
オオカミを導入すれば野生動物問題の解決につながるのに、偏見がそれを妨げているのだ、と著者は言う。オオカミのイメージを悪化させた「赤ずきんちゃん症候群」というのも、なるほどなくはないのだろう。
狂犬病を蔓延させる可能性、希少動物を根絶やしにしてしまうことへの恐れ、人畜に対する危害。個々のことについては、著者が言うように反論も可能なのかもしれないが、要はそうした数々の危惧は、生物導入による「制御不能」状態に対する恐れだと思うのだ。
大丈夫だという主張があろうと、多くの人が納得するためには、やはり本格的な導入の前に、「予備実験」が必要だろうと思う。おそらくは実際に導入したら予測していなかった事柄が何かと生じるものだろう。それは人々に擦り込まれたオオカミへの「恐怖心」や「偏見」とはまた別に、「生物」という存在にはつきものの「自律性」や「自己増殖性」から生じる予測不能性なのだ。
適切な候補地で、十分なモニタリングを行った上で(そして万が一何事かが起きたときの対処法も練った上で)、予備実験が行われるのであれば、その結果をとても知りたいと思う。
絶滅してしまった(と思われる)ニホンオオカミは固有種とされているが、この説には疑問もあるようだ。著者が言うように、ニホンオオカミがハイイロオオカミの亜種であるならば、外来種の導入とは話が違うことになる。このあたりも興味深い視点である。
オオカミ復活には非常に魅力を感じる。というよりも、オオカミそのものに魅力を感じるのかもしれない。
野を駆け山を走り、獲物を狩る獣。
いにしえの人々に一度は神と崇められた彼らが、また日本の大地に帰ることは可能だろうか。
*参考文献が本文中に挿入されているのだが、少々見にくい。章末なり巻末なりにまとめて欲しかった。「○○��、前出」と書かれていると、あれ?どこだったっけという感じ。
内容的には『ジビエを食べれば「害獣」は減るのか』と重なる部分も多いが、この本は参考文献に挙がってはいなかった模様(←見落としかもしれませんが)。
*オオカミはヌートリアも狩るかな・・・? 生息域が重ならない&獲物としては小さいかもしれないな。
*シカがすさまじいほど森林生態を破壊するのは、反芻胃が強力にさまざまなものを消化するからだという。イノシシは単胃なので、木の皮まで食べたりはしないが、彼らの困るところはとにかく猪突猛進し掘り散らかす点。
*イノシシの生態はほとんど知られていないんだという。生息密度もわかっていない。表に出てくるのは、農作物の被害量や捕獲頭数程度。
投稿元:
レビューを見る
明治時代に日本人がオオカミを絶滅させたことの歪みは、100年以上経った今になって現われてきた。天敵がいなくなったことにより、シカなどの野生動物は増えに増え、農作物や樹木を片っ端から食い散らかしている。この乱れた生態系を正常化させ、シカを適正水準に戻すためには、頂点捕食者たるオオカミを復活させるしかない。本書はそう主張する。
一般通念に反して、オオカミが人を襲うことは極めて稀であるという事実は重要だ。現代日本においては餌付け等による人馴れにさえ気をつければ、オオカミによる人身事故の可能性は限りなくゼロに近いという認識は、より広く知られるべき事柄であろう。
しかし、4人の執筆者はオオカミ再導入を目指す「日本オオカミ協会」に属していることからも分かるように、本書は「学問的な本」というよりも「政治的な本」というべきかもしれない。オオカミ再導入のリスクを過小評価している向きがあるのは否めないし、記述の重複にはうんざりさせられるし、とりわけ反対派・慎重派を執拗に「赤ずきんちゃん症候群」と揶揄しているのには閉口させられた。
とはいえ、オオカミ再導入が真剣に検討されるべき課題であることに変わりはない。だからこそ、より誠実で公平無私な立場からオオカミ復活の是非を論じた本が望まれる。
投稿元:
レビューを見る
日本でオオカミが絶滅に追い込まれてから一世紀が経ちます。
オオカミが絶滅した理由は、明治政府が報奨金を出して駆除したからだと知っていましたか?!
人間による駆除の結果絶滅したなんて知らなかったので、とてもショックを受けました。
著者の丸山氏は、オオカミを日本に復活すべく一生を捧げているような方で、それこそこの本ではオオカミ再導入に関するすべての疑問・反論・誤解にこたえています。
オオカミ導入の利点は様々ありますが、一番は、シカやイノシシやサルが増え過ぎて崩れた生態系を元に戻せるというもの。もはや狩猟や駆除では個体数調整が追いつかないそうです。
特に頂点捕食者がいないために増えすぎたシカの被害は甚大で、下草ばかりか原生林も食い荒らすおかげでさまざまな植物が危機に瀕し、山地でもカモシカやライチョウなどが激減、さらには各地で裸地化や土砂流出が発生しているのです。
また、オオカミが人を攻撃し殺傷する習性をもつ「蛮獣」であるとされている点に対しては、人間が野生の草食動物を家畜化した時代から始まる偏見であるとばっさり。
特に中世欧米では宗教的な理由もあり、オオカミを悪者扱いする民話が隆盛を極め現代のオオカミの印象に繋がってしまっているだけなのだそうです。(赤ずきんちゃん、三匹の子豚など)
基本的にはオオカミは人は襲わないらしい。。
その他、オオカミ導入は、ハブの駆除のために導入されたマングースの失敗と比較されるそうですが、マングースは中間捕食者で、オオカミは頂点捕食者なので同じ失敗はないそう。そもそも同列に考えること自体が間違えだそうです。(だいたい100年前は日本各地に存在したのだし)
他の種類のオオカミを導入したら以前とは違ってしまうのでやはり生態系が崩れるのでは、またはニホンオオカミはまだ存在すると信じている団体からは、外国のオオカミを導入したらニホンオオカミが本当に絶滅してしまうという意見もあるそうですが、日本のオオカミはハイイロオオカミであり、ニホンオオカミという固有種ではないそうなので心配ご無用です。。
その他、狂犬病の危険性もオオカミのなわばりなどの習性から、危険度の低いことの説明もありました。
とにかく、丸山氏の熱意には脱帽です。
とはいえ、人間を100%人間を襲わないとは言い切れないし責任は持てないし、家畜だって狙われるかもしれないので、実際には導入は難しいのではないかなと思いますが・・・
でも、たった100年前には存在したものを、日本政府が絶滅させ、地球には同じ個体種が存在することがわかっているなら、個人的には元通りにすべきじゃないかと思います。
(ヨーロッパ各地でも過去にはオオカミ駆除をした歴史があり、国内絶滅に追い込んだ例は多々あるそう。でも今はその行為を反省し、再導入して成功している例もあるそうです。)
日本に野生のオオカミが存在するってロマンがあるなあ~なんて思ってしまうのは軽すぎですが、同じような蛮獣のクマは「森のクマさん」などの童謡や「プーさん」などのキャラクターとして愛されているのを見るにつけ、イヌ科を愛する私としてはオオカミに肩を持ちたい。。
まずは知床半島だけにでも導入できないものだろうか?あそこなら人間への影響はかなり低いんじゃないでしょうかね?!
投稿元:
レビューを見る
TVでオオカミ輸入の話を見たから、
興味を持って読んでみた。
TVで見たときはただ怖いと思ったけど、
どうしてそんな話になったのかは分かった。
でも、今の日本に連れてきて、本当にうまく行くのかな?
投稿元:
レビューを見る
【由来】
・ダイヤモンド書評
【期待したもの】
・
※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
・
【ノート】
・
【目次】
投稿元:
レビューを見る
面白かった。個人的には、とても関心があるし、検討の価値があると思う。オオカミの再導入について、丁寧に検討されているのだが、論理が飛躍していたり、やや攻撃的な表現があるのが残念。