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献本でいただいた1冊となります。副題の「マビノギオン」とは、イギリスはウェールズに伝わるケルト民族の神話(伝承)とのことで、アーサー王伝説に連なる話もあるとかないとか。
こちらの「マビノギオン物語・シリーズ」は、原典となる物語の中から、「マビノギ四枝の物語」を現代風のファンタジーにリライトしたもの、となるのでしょうか。
本書はそのうちの第1弾、主人公は「ダヴェド大公プウィス」、人間界の王となります。そのプウィスが、冥界の王の一人アラウンと邂逅するところから物語は始まります。
アラウンの望みは、同じく冥界の王の一人であるハヴガンを倒すこと。一度はアラウン自身の手で倒したものの、相手の策略にはまり滅しきれずに劣勢となっているとかいないとか。そして、そんなハヴガンを倒すには異世界の助力が必要となると、、この辺りは王道な設定です。
そうして、魂を取り替えて“プウィスはアラウンの身体で冥界”に、“アラウンはプウィスの身体で人間界”に、それぞれ戻ります。メインはアラウンの体となったプウィスが、ハウガンを倒すまところまで。途中様々な試練に挫けそうになりながらも、“女神”との運命的な出会いもあったりと、テンコ盛りです。
面白いのは、神は絶大な力を持つ存在ではあるが、絶対視はしていないとの点。この辺り、一神教が浸透していない、神と人が分化する前の時代を伺えて、なかなかに興味深く。
また、プウィスたち人間世界でも「旧き民」と「新しき民」の相克があったりと、この辺りは民俗学的に紐解いてみるのも面白そうです。
なお後半の物語において、プウィスは「嫁取り」をするのですが、こちらの構造が「古事記でのオオクニヌシ」との共通点があって、なかなかに興味深かったです。ギリシャ神話のオルフェウスもそうでしたが、東西の異なる文化圏の物語構造が似るってのも、不思議です。
とりあえず続きが気になりますね、、“国譲り”の概念もでてきたりもするんでしょうか、なんて。