紙の本
純度の高いフーダニット
2018/03/05 02:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
閉じ込め症候群になった妻のローラが順調に回復していっているが、ドライデンは妻との新しいコミュニケーションのとり方に苛立ちを覚えていた。そんなときに、発掘現場からは、白骨死体が発見され、ドライデンはその事件を記事にするために、関係者から話を聞いていく。本編の合間に、ちょこちょこと、意味深な過去のパートが挟まれるが、これが推理のヒントだったり、うまい具合のミスリードだったりといい感じに読者の興味を引き付ける。次作にも期待。
投稿元:
レビューを見る
現在の遺跡発掘現場はかつての捕虜収容所施設ということで、埋蔵文化財の他に脱出用に掘られたと思われるトンネルやら白骨体やらが見つかるという、なんとも過去へのロマンに溢れています。
が、発見された白骨体はなぜか収容所の中へと進んでおり、しかも銃殺されているという不気味で魅力的な謎が提示されており、第二次世界大戦の影が色濃く残る事件と相成って作品世界は哀愁に満ちており大変暗い。
新聞記者の主人公がかなり忙しいです。白骨体について調べているうちに様々な問題が絡んでくるのではなく、最初から一気にあらゆる問題をどかっと抱え込んでいます。
章の合間にある過去の物語を読んでいる読者としては想像がつくことでも、主人公はどうしてその推測をしたんだ?と置いてかれることが多かったです。勘ででもいいから、聞きまわっているだけでなく主人公の思考の描写がもっと欲しかったですし、物語の流れがいまいち掴めずテンポよく読めませんでした。
かつての戦争が現代に新たな事件を呼び起こし、家族や人々の愛憎にまで影響を与えている濃密な人間ドラマは楽しい。
現代の英国の田舎町が舞台ですが、なんとも古風な雰囲気が漂っており、ゴミ処理場から絶えず立ち上る有害な霧が良い演出効果を果たしています。
終始息苦しい物語ですが、霧が晴れていくとともに明かされる謎、すべてが白日の下に晒され青空が覗くラストは気持ちがよく、墓石に刻まれた言葉がじん、と胸に響きます。
投稿元:
レビューを見る
冒頭で提示される謎の美しさに、ただただ、陶然。「何故、遺骨は収容所の方向に頭を向けて殺されていたのか?」……くぅ~~~!(悶)
テンション高く、霧とスモッグの立ち込める泥沢地帯へと旅立ったのであります( ^ω^ )
舞台は、英国東部の小さな町・イーリー。
イタリア軍とドイツ軍の捕虜を収容した一帯から遺物を発掘していたヴァルジミーリ調査隊を、地元の新聞記者であるフィリップ・ドライデンが取材の為に訪れます。
そこで、収容所跡地から捕虜達が掘ったと思われる抜け穴と、その中に横たわる骸骨が発見されますが、人一人がやっとこさ通るのが精一杯のそのトンネルを、骸骨は何故か『収容所から脱走する』のではなく『収容所の中に戻る』態勢で発見されます。これは良い謎ですよぉ…←
不審を覚えたドライデンは、かつての捕虜達が作ったコミュニティや関係者達の調査を始めるのでした。……。
この魅力的な謎に対して、主役のドライデン含むキャラクタが残念ながら全体的にプアです。とは言え、シリーズ三作目である今作から読んだから、そう感じたかもしれませんが(汗
ある事情で運転ができなくなったドライデンの足となって車を回すハンフに魅力を感じないし(これは勝手にワトソン役だと思ってた私が悪いかもしれませんが…)、事故の後遺症で意識はあるものの言葉を交わすことはできないドライデンの奥さんのシーンは、息苦しい情景が続く世界観を益々閉塞的なものにしています(°_°)
もちろん、読んでる最中に感じたその圧迫感があるからこそ、物語世界をより堪能できたと言い換えることもできたかもしれませんが、冒頭の謎に痺れまくってしまった私には、ちょっとこの辺の陰鬱な世界は苦しかったです。
でも、ドライデンの奥さんに対する感情の機微の描写は、胸に迫るものがあったなあ…。
一つの骸骨を手掛かりに大戦時代の地元の歴史を探求していき、やがて意外な人々へと辿り着くドライデン。
彼の推理過程は、足で稼いだ証拠固めと閃きによって支えられたものではありますが、これはもう仕方ないですね。ホームズみたいに、裾に付着したシミや証言の綻びを突いて云々する机上の空論的推理を寄せ付けない骨格を持ったミステリです。
そして、何と言ってもドライデンが調査の果てに辿り着いた衝撃の結末。
長い間暗く狭い「月の地下道」に横たわっていた一人の男性の、あまりに残酷な末路に、最後はやっぱり胸が塞がれるような息苦しさを覚えたのでした。
投稿元:
レビューを見る
かつて捕虜収容所だった発掘現場で見つかった奇妙な遺体。脱出用と思われるトンネル内を収容所に向かい這い進んでいたのだ。
ドライデンは新聞記者の仕事とは別に独自の調査を始める。
時々整理しないと混乱してしまうほど複雑に絡んだ人間関係が読みどころ。
ところどころ伏線が貼ってあるので事件の真相は途中でだいたい予想がつく。
それでもそこに至る道筋と、事件とは別にドライデンを取り巻く人間関係の変化は濃密だ。
時々はっとするような表現があり、被害者の最後の一言などぞくりときた。こういうところ、すごくイイ。
移ろう関係のなかで、ドライデンと彼の『閉じ込められている』妻がどうなるのかも気になる。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ3作目。
1作目に比べると自然描写は抑え目で、展開がスピーディになっている。ストーリーを引っ張る謎の使い方も良かった。
予定調和で終わる謎と、予想を裏切られる謎のバランスが絶妙。
投稿元:
レビューを見る
原題の「Moon Tunnel」。冒頭は、そのトンネルのシーンから。
前二作と変わらず、叙情と具体のバランスがとても良い。
淡々と描いているのに、しかも殺人事件が起こっているのに、冷た過ぎず、感情的過ぎず。
どこか優しい視点をずっと感じながら読めるのだ。
翻訳も上手なんだろうなあ、と思うよね。
小さなエピソードをきちんと重ねて出来上がったレイヤー。
最近、そういうミステリーが好きな自分を発見しつつある。
投稿元:
レビューを見る
ローラが急激に回復していて、びっくり。
ドライデンは、犬嫌いで憶病者という描写があるけど、周りの人間からは、そう見えないと思う。
兄の横恋慕のせいで、弟(兄によって殺害)と兄本人(弟の元恋人で、現在の兄の妻)が殺される。嫉妬の恐ろしさ。
今回も、犯行のきっかけや犯行動機が心に残り、すごく良かった。
投稿元:
レビューを見る
新聞記者ドライデンシリーズの第三弾。
発掘現場から発見された遺骨。
捕虜収容所から脱出用トンネル内で撃ち殺されていたが、
収容所へ向かっていたように見受けられた。
死体の身元を確認しようとするドライデン。
しかし、発掘作業を行っていた教授が殺される。
寝たきりの妻が、インターネットを駆使して
ドライデンを助けるようになってきたなと思ったら、
もう一人の相棒タクシーの運転手ホルトが死んでしまう?
と心配させられたけど無事でよかった。
行方不明の高価な絵画は発見されるだろうなとは思っていたが、
ドライデンの叔父の納屋で発見されたことにして、
わざとオークションにかけさせたのは面白かった。
投稿元:
レビューを見る
主人公ドライデンの受難
『水時計』では「水害」、『火焔の鎖』では「火災」、『逆さの骨』は「土」?
前二作に比べ前半やや単調ではあるが、このシリーズから匂い立つ感覚には、相変わらず魅了される。
警察物とは違った「新聞記者」のお仕事を絡めて登場人物から得ることができる「謎解き」とは別の読書感が、心地よい。
あと一冊が愛おしい。
投稿元:
レビューを見る
かつて捕虜収容所だった場所で発見された奇妙な骸骨。そして数日後に発見された新たな遺体。果たしてこの場所で何が起きているのか。
ところどころ掴めないなぁ、と思っていたらシリーズ三作目でした。
事件自体は続き物ではなく一作ごとで完結しているものなのですが、謎は魅力的でも展開が地味で面白みに欠ける、というのが正直な印象。