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黒部源流地域は、かつて全くの未開の地であった。
しかし、その山に分け入り、逞しく生きている山の男たちがいた。
時に、彼らは山奥で人を襲うとか、カモシカを密猟するなどの嫌疑をかけられ、時に山賊と呼ばれることがあった。
その山賊たちの巣窟である山にある三俣小屋を引き受け、山賊たちと交わり、そして自らも山の人となった、伊藤正一氏が記した、山賊たちと山の記録。
山小屋の主人の実際の経験や、直接山賊たちから聞いた話は、作り物ではない生々しさを持っており、かつ、冷静な記録として非常に面白い。
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少し前の時代にはこんなことがたくさんあって、登山はすっかりレジャー化してしまってるけど、こんなふうに山に溶け込んでみたい(迷いこむのも熊が出るのもオーイって声がするのも嫌だけど)不思議な話がたくさんで、わくわくしながら読んだ。
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昔黒部の山奥には山賊がいた、らしい。
話は終戦から30年代のころ。
終戦直後、廃屋同然だった三俣山荘を再建しようとする伊藤氏、が小屋には山賊が住み着いているらしい・・・
しかし手をこまねいていても埒があかない、怖々小屋に行ってみることにする。
山賊とは世間がイメージで作り出した人たちのことで、山で猟をしたり魚を捕ったりしながら暮らす人々のことだった。
小屋の再建に力を貸して貰ったり、猟の仕方を教わったりしているうちにいつしか仲間意識のようなものが芽生え、小屋での共同生活が始まる。
なにしろ彼らは山を知り尽くしているのである、力強い仲間だ。
そんな暮らしの中での怪談めいた話や、河童やかわうそなど実在が明らかではないものたちの話や、遭難にまつわる不思議な話など、小屋番ならではの興味深い話は尽きない。
日本の山の中でももっとも奥深い黒部の源流、高天原や雲ノ平を思う存分歩き、夜は三俣山荘でこの本を再読する、目下の私の目標になった。
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久しぶりの山岳もの。山のノンフィクションというとほとんどが生死を彷徨うような事故や事件を扱った物といったイメージを持っていたが、この本はタイトルからして面白そう。
そう思い、手にとって読んでみると、期待通りの面白さであった。戦後の黒部に存在していた山賊の話に始まり、昭和30年代後半までの北アルプス黒部川源流付近の様子が記録されている。
「笹まくら」の主人公も、戦争忌避するなら山賊になるという生き方も、実際には可能であったのか、なんて夢想しながら読み進む。
登山から遠ざかり数十年が経ってしまったが、この本を読むと北アルプスへの登山欲が湧いてくる。
ただし山で遠くから「オーイ!」と声をかけられても「オーイ!」と返さないように気をつけること。
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山賊なんて昔の話に違いない、と思ったらなんと昭和、しかも戦後のこと。山賊というと物騒だが、元は猟をして山で暮らして来た人々である。
狩り場が突然、国立公園指定され獲物のカモシカが特別天然記念物の保護獣に。彼らは違法者として「山賊」になってしまったのである。荒々しくとも頼もしい「黒部の山賊」の逸話である。
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山の恐い話が不思議。
本当にあるんだろうなあ、と思えました。
今度からやっほー、と叫びます。
ジャムがとてもかわいい。写真映り考えてそうなとこがまたかわいい。やっぱ犬は色々わかるのだなぁ。
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良書。
どこまで本当の話なのか疑問だが、かつて北アルプスには凄い人々が居た。今の日本人には失われたスキルを持っていた人達。生活に密着した、必要に迫られた山での生活する技術、知恵、経験。
現代の登山は、レジャー化、スポーツ化していると思わされる。
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黒部ダムが出来る以前の、まだ厳しい黒部山中に生きていた山の鉄人=山賊たちとの山の日々を綴った一冊。
四人の山賊の個性が際立ちすぎて創作じゃないかと思うほどですが、巻末に写真入りプロフィールありです。
すごく印象的なエピソードとしては、川ぞいを歩きながらスイスイと川魚を釣っていたというもの。生活で鍛え抜かれた名人芸とはどれほど美しいものなんだろうなと思った一節でした。
山賊たち以外には、飼い犬ジャムについて記した章が印象的。
伊藤さんがジャムを家族と言う時、ペットを家族という現代人とは全く重みが異なります(良し悪しの問題ではない)。
物理学者を目指したという伊藤さんが、ところどころで山の怪を素直に描いているのも良かったです。大袈裟でないところがリアル。
それにしても個性豊かな山男たちと渡り合って山暮らしを続けた伊藤さんもすごい。今年6月にお亡くなりになったそうです。お話を聞いた人、聞き書き集でも出してくれないかな。
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これは特に登山を趣味とするような人でなくても、充分読んで楽しめる作品だ。
「高熱隧道」や「黒部の太陽」で描かれているように、厳しい自然環境に囲まれている黒部源流地域における山男たちの暮らしぶりが、素朴な飾らない文章で綴られている。
時代も昭和20~30年代が中心と、まさに前記2作品と前後して重なる。
あくまでサラリとした口調で書き記されてはいるが、現代よりも遥かに衣食住の環境が整っていない当時に、これほどタフなサヴァイヴァルをしていた著者や山賊たちの屈強さたるや、それだけでも充分憧憬の対象になり得る。
物の怪だってそりゃ出ることだろう。
嗚呼、早く私も北アルプスへ行かなくては。
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終戦間もないころ、北アルプスの三俣山荘を譲り受けた筆者だったが、山荘に近づけずにいた。
黒部の山奥には山賊がいて、崩れかけた三俣山荘をねぐらにしているというのだ。
実際に、漁師や登山者が山賊に襲われたと話す。
意を決して行ってみると、小屋にいたのは話の面白い紳士的な男数人だった。
これが筆者と山賊たちとの出会いだった。
終戦期から黒部の主として山小屋に居続けた伊藤正一氏の、山賊たちとの日々と、山の物の怪や動物たちとの日々をつづる。
かつての黒部を見ることはできないが、読んで想像することはできる。
そこには山賊たちの足跡が残っているはずだ。
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登山の厳しさ、楽しさ。そして、不思議だけど、自然とは不思議で壮大なもんだと思わせてくれる。読んで良かった! 良本です。登山好きな有人には勧めていきたいですね。
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自分の趣味は読書と山歩きだが、この本の存在を知らなかったことに少し恥じている。
北アルプスにも興味があって、白馬岳、槍ヶ岳など登ったこともある。今年は表銀座や日本の秘境と言われている雲の平にも行きたいと思っていたほどだ。
自分が山に行く時は登山計画に沿って行動することが多く、その土地の由来や経緯などはあまり調べてはいない。突然広がる素晴らしい景色や珍しい花々との出会いが山の楽しみであり醍醐味でもあったからだ。
そんな価値観に一石を投じたのが本書だ。山に行く時の楽しみがまた1つ増えてしまった。今度、北アルプスに行ったら「ここに山賊が居たのか」とか「オーイ」と聞こえたら「ヤッホー」って答えようを思うようにもなった。
それにしても山はおもしろい。本当におもしろい。
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最近近場の山を登る機会があり、登山もいいなと思い読みました。山賊と聞くと物々しいですが、独語は何か爽やかな気分。山の怖さや奇妙さ美しさが伝わってきて、黒部源流に行きたくなる一冊でした。
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センチメンタルでドライで最高の傑作。山小屋でオヤジから聞けたらどんなに良かっただろうと思うが本でも充分味わえた。
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巻頭の地図と本文を見比べながら読みました。
歩荷が、三俣山荘構築に使う木のながーーーいのを運んでいる写真が途中にありましたが、あんなの持って歩いたら遭難しちゃうよ!!昔の人ってすごかったんだなーと感じます。
お山に行きたいなーー。以前、あの辺りには何度か登山しているけれども、その時のことを思い出し思い出し読んだ。また行きたいなー。
お山の雰囲気、空気感がピタッと伝わる、良い本でした。