紙の本
努力は報われると信じている・信じていた・信じられない・信じたい人に贈りたい
2015/09/01 01:46
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投稿者:けい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ作家としてデビューできた著者の実体験をベースにしたらしいものですが、油断ならないフィクション。基本的には、エッセイとして読んでも大丈夫だと思います。
しかし、努力しないで作家になる、とはどういうことか?
答え、意外な真相は最後に明らかになります。この点からしても、著者はミステリ作家になるべくしてなった、という気がしますね。いや、おぼろげに途中から答えが分かる人もいるかもしれません。読者が正しく真相を推理できるというのも、すぐれたミステリの証。
作家になることに限らず、成功には努力、運、才能など、さまざまな要素が必要。でも、やっぱり、努力していない人には幸福と成功は手に入らないように思います。そして、幸福は「支え」と「愛情」なくしてはありえない。タイトルと著者に文句をつけるようで恐縮ですが。言い訳めいたことを書けば、「支えと愛なくして作家になる方法」というタイトルではけっしてないことが、素晴らしい。
雑誌のショートショートコーナーに投稿を続けた日々のこと、執筆と会社勤めのこと、同僚に小説を書いていることを知られたときのこと。その日々は読者にとっては「苦しい努力」以外のなにものでもありません。
ようやく編集者の目に才能が見出される個所のドラマチックなこと!
さて、これまで私が頑張ってきたことは努力なのか?
これから、あなたがやることは努力なのか?
この本を読むと、努力という言葉の見え方が鮮やかなどんでん返しのミステリのごとく変わるでしょう。
ピンとこなかったかたも大丈夫。解説でちゃんと解説されていますから。
電子書籍
日常生活の物語が好きな活字中毒の人には良い本
2022/09/27 23:08
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投稿者:Yodoyabashi - この投稿者のレビュー一覧を見る
活字の本書いても生活出来ないだろうと確信していたので、最初から目指しませんでした、というのは自分のことですが、部分的に同じ時代を生きているので分かるところも多い話でした。
著者にとっての最初の商業出版『邪馬台国はどこですか?』が出るまでのお話なのですが、出版された年の12月には買ったので、私もなかなか優秀な読者です。「このミステリーがすごい! ’99年版」(1998年12月発行)で書評を読んだおかげです。
この本を読んだ後、『邪馬台国はどこですか?』を再び手に取りました。短話の寄せ集めなので、どの順番で本にされたかな、などを興味を持って見直します。キリストの話もブッタの話も、自分の中で定説になっていて忘れていました。話のネタを仕入れたのは、この本だったのですね、と気付くという。ほのぼのした会話の中で毒を吐く綺麗なお姉さんがいる、という漫画ではよくあるパターンではあるのですが、毒舌なのを楽しんで読みました。続きのお話まで買って読んでいます。『崇徳院を追いかけて』が区切りかなと思います。
『なみだ研究所へようこそ!』など、著者の作品をいくつか読んでいると、この作品はここでアイディアを見つけたのか、というのが出てきます。結局のところ著者の書きたい本しか書いてないじゃないか、という気もするのですが、出版してもらえるまでは本当に大変なんだな、って分かります。タイトルに「努力しないで」って入れられてはいますが。
そして出版してもらえるまでの壁を、短期間で乗り越えてしまう人の多いこと。沢山の見たことのある作家の名前が出てくるので、色々思い出してきて読書意欲が湧いてきます。そんな意味でも活字中毒の人には良い本です。
鯨 統一郎の著作を一つも読んだことのない人には関係ない話なので、誰にでもお薦めではなく、星は4つにしました。最後に、うちのご飯も「おいしいね」
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鯨さん自身と思われる伊留香総一郎が主人公。作家を目指しています。会社勤めをしながら作家を目指す事17年。デビューまでの道のりが綴られています。
この作品、実話を元にした小説って事なんですが、どこまでが実話でどこまでがフィクションか全く分からないんです。鯨さんだし、まさかほぼ全部フィクションじゃ??と疑う自分もいます^^;
そしてそう思わされるのも作者の術中に陥ってる気がします。
自分の才能を信じて努力し続ける(本当に続けるところがすごいし難しい!)姿には感動。まさか鯨さんで泣くとは思わなかったって、よく感想に書かれていますが、ほんとそうです。
奥様の陽子さんがまたよくできた人で(どこまで実話?)。収入が減り続けても、夫の夢に向かって一緒に頑張る。素晴らしい家庭ですね。
私はこのような奥さんにはなれそうもありません(笑)
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「覆面作家の自伝(的小説)」って...
その存在の根本からして胡散臭いような(^ ^;
「なるほど、鯨氏らしい」と思える部分と
「意外とそうだったのか」という部分とがあり、
鯨ファンには二度おいしい内容かと(^ ^
また「なかなかデビューできない小説家志望の
青年の奮闘記」としても素直に楽しめます(^ ^
日々の精進と繰り返す挫折、同期の出世を見た焦り、
家庭との両立の大変さから一度は諦めた夢、
どうしても捨てきれなかった「書きたい衝動」....等々
ストーリーやエピソード自体に目新しさはない。
が、結果が分かっているとは言え、
読んでて素直に感動できるのは何故だろう。
鯨氏に無償の愛を注ぎ続ける「できすぎた奥様」に
こんな奴いる訳ねーしーとか思いながらも
ついホロリとさせられてしまうのも口惜しくて嬉しい。
この魅力を言葉で説明するのは、私には無理だ(^ ^;
最後に、この本はものすごく「タイトルに偽りあり」。
当人は「好き」で「やらずにいられない」からと
毎日欠かさずネタを集め、小説を書いているので、
「努力とは呼ばない」のでしょうが...
より上を目指すための準備・練習・精進などの
一連の行動を「努力」と呼ぶならば、
これほど努力している人は滅多にいないのでは。
そのことは、鯨氏の小説を一度でも読んだ人ならば
同意していただけるのではなかろうか。
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全ての、何かの夢を追いかける人たちに読んでほしい。
衝撃的な題名だと、読み進めるうちに判るだろう。そして、結末を知る人たちでも最後の数十ページは胸打つ文章と思うだろう。
なにかを目指す事。夢。ここまで生々しい物でも、作品として美しくなるのだな。
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「邪馬台国はどこですか」のデビュー作に
いたるまでの鯨さんの、悪戦苦闘の日々。
タイトルとは大違いの内容です。
投稿するも、いつも落選(しのぎを削っていた
ライバルの名前、著名な方々。みんな、デビューまでは
同じような日々をすごしていたのですね)。
働きながら、夜は執筆。
気づいたことがあれば、宴会中でもメモ(この
メモをめぐって、会社までやめてしまう)。
そしてそんな夫を支える奥さんが、
漫画のような素晴らしいお方。
貧乏な生活にも耐え、一度作家をあきらめた旦那
さんを支えて、家族一緒に豆腐料理でしのぐ。
こんな支えがあってのデビュー、ラストは感動します。
あと、鯨さんの原稿を持ち込んだ東京創元社の
担当の方の熱意と心意気も、素晴らしいです。
やっぱ、東京創元社いいなぁと思いますよ。
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デビュー作「邪馬台国はどこですか」を読んだのは、「本の雑誌」の紹介が切っ掛けだったと思う。宮部みゆきさんが褒めていると知ったのも大きかったはず。
一読して、なんて面白いこと考える人だと驚いた。次々に人が思いもしないことを考え付く発想が豊かな人っているんだなと素直に感心していた。
中でも「悟りを開いたのはいつですか」というブッダをテーマにした話が一番納得した。
それがこんな苦闘の中から産まれたなんて。
泣きはしなかった。でも結果も判っているのに、P300の辺りは主人公と一緒にドキドキし、ヤキモキし、ヘトヘトになった。そして一気に怒涛のカタルシス。
鯨さんが作家になってくれて、有難いと思う。感謝の意も込めて星5つ。
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タイトルで判断すると失敗します。著者の私小説と言えば言い過ぎかもしれませんが、一番適当な表現だと思います。デビューまでの紆余曲折が描かれています。テンポよく、共感しやすい内容です。奥様がステキです。たくさんの本が出てきますので、読書を刺激します。
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2015年最後の一冊です。
怖かった。お金がなくなっていく様子、一次にかすりもしないで落ちていく姿を我が身に置き換えて震えていました。
努力しないで~というタイトルですが、めっちゃ努力してるように見えたけどなあ。
豆腐をステーキと思い込む子供が泣ける。
ただ嫁さん目線で見ると苦しい。
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20170709
作家で10年生き延びる方法を読んで、非常に面白かったので、順番は逆になったが本作を読んで見た。
作家になるまでの17年に及ぶみちのりを淡々と記載していて、大変面白かった。
途中、何度かウルっとするところもあった。
また、小説を書くための準備、方法も記載されていて大変参考になった。
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"小説とは思わず、ハウツー本かと思って手にした。
著者の自伝的小説。これは、いい物語に出合ったうれしさと、この表題が何とも言えない感動を醸し出している。
好きで好きで仕方のないことを毎日毎日続けることで、夢が実現する。本人は好きで好きでやっていることなので、努力じゃないですよね。
内助の功と、ひたむきな情熱、これを忘れずに生きていかないと!
元気をもらった良書です。"
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読む前は、作家になるためのマニュアル的な本の類いと思っていたが、作家志望の男・伊留香総一郎が『邪馬台国はどこですか?』でデビューするまでの経緯がたどられた感動的な小説だった。特に妻の陽子さんは立派だと思う。作家という職業は、相当な覚悟がなければ目指せないものだと実感させられた。エンターテイメントが他人のために書く小説であるのに対し、純文学は自分のために書く小説だと、主人公の伊留香が考えている点に関しては、なるほどと思った。続編の『作家で十年いきのびる方法』もぜひ読んでみたい。