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タイトルからは政治のにおいが香るが、理性や感情、意識や無意識といった、人間の内面に関わることに興味のあるあらゆる人に勧められる素晴らしい一冊。「本書は、皆で仲良くやっていくことが、なぜかくも困難なのかを考える本だ」「道徳は文明の発達を可能にしてきた、人類の類まれなる能力であることを本書で示したい」らしい。直観と理性の関係、道徳の起源、人間の持つ政治の道徳的基盤、私たちが集団を志向する理由などが、論理的かつ明快に説明される。個人的には、リチャード・ドーキンスやダニエル・デネットといった新無神論者が否定する宗教に存在意義を見出しているところ、集団選択を肯定しているところがおもしろかった。
印象に残ったところメモ。
・成功の秘訣をたった一つあげるとすれば、それは他者の考えを把握して、自分の視点からと同程度に、他人の視点からものごとを見通す能力だ。
・悪臭を嗅ぎながら他人を裁くと、より厳しい判断をする。
・乳児は、社会環境を理解する能力を先天的に備えている。→人間はけっして、空白の石板として生まれてくるわけではない。
・人間は、他人の言葉に異を唱えるのには長けていても、ことが自らの信念になると、ほとんど自分の子どものごとく扱い、疑ったり、失う危険を冒したりはせずに、なんとか守ろうとする。
・私たちは何かを信じたいとき、「それは信じられるものなのか?」と自分自身に問う。これに対し、何かを信じたくない場合には、自分自身に「それは信じなければならないものなのか?」と尋ねる。
・自然の畏敬を感じると、集団志向のスイッチがオンになる。
・世俗的なコミューンの9%、宗教的なコミューンの39%が長期間存続した。後者の圧倒的な勝利。
・新無神論者が高コスト、非効率、不合理として捨て去る儀式の実践こそは、人類が直面するもっとも困難な課題の一つをつまり親族関係なくしていかに協力が可能かという問題を解決してくれるのだ。