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イスラム教、ユダヤ教、キリスト教が広まった土地の背景と考え方の違いなど、なるほどと思うことがたくさん。
荒野の宗教であるイスラム教、ユダヤ教が他者への喜捨を重視するのは、そうしなければ、相手が死んでしまうから、一方でキリスト教は農耕と結びついたので、自分のテリトリーを守ろうとすること、など納得。グローバリズム=「アメリカスタンダード」であり、イスラムという他の文化背景を排除することが、資本主義には都合が良い、という件にはハッとしました。同時に読んでいるエーリッヒ・フロムの「愛するということ」にもこの資本主義的グローバリズムについては同じ観点があり、人間の思想は50年たっても変わっていないということに驚いた。
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自分のフレームでの理解では、異文化を理解することはできない。イスラムを理解するには、フレームの根本を問い直すことになる。
イスラム国を「国家」という概念では、とらえきれないのは、ここにある。
そして、解決への道筋もこの二人の対話のような方向にあると思う。
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下の弟に薦められ読んでみる。
思想家、内田樹氏とイスラーム学者中田氏との対談。
殆どイスラームの事を知らなかったので勉強になる。
アメリカの世界戦略は、すでに国家を形成している非イスラーム圏に対してはグローバル化を進め、国民国家を解体する方向で圧力をかける、元々遊牧民で国、自分の領土と言う概念が薄いイスラーム圏に対しては逆に国民国家を強化し規制しやすい体制に持っていこうとしている。と言う意見は面白いが、イスラームの中でも利権に目が眩みまた宗派の違い、自己利益の為に資本主義に同調するものもいる。現在の混乱をアメリカのせいにしているように聞こえるが、イスラームの中でも団結して資本主義にNOと言えればこんな混乱にはならないのではとも思う。
イスラームの国々でもこれからますます豊かになっていくと思うが、その中で「富を分け合う」文化を成熟させていけるか、資本主義の欲に負け、シフトして行ってしまうのかは、イスラームの人達の心の問題ではないだろうか。
【学】
イスラーム
礼拝を日に5度
豚と酒禁止
男性の服装は膝からお臍までを隠せ
偶像崇拝禁止
ラマダン、施しの文化、食べ物、水が少ない土地で皆で分け合う、共有の文化
・イスラームの宗教感
イスラームこそが、アダム以来の予言者たちの宗教、オリジナルであり、キリスト教はイエスの福音を直弟子の後に続く世代が謝って解釈し歪曲して作り上げたもの。ユダヤ教はモーセの律法をイスラエルの民が歪曲、改編を重ねたものをラビ達が集大成したもの。
ユダヤ教、キリスト教、イスラームの3つの宗教の共通理解として、人類の太祖アダムこそが神から教えを授かった最初の人間です。
アダム、ノア、アブラハム等はすべてイスラームを説いた予言者であり、モーセ、タビィデ、ソロモン、イエス、ムハンマドは、このイスラームを説く予言者の系列に属するとイスラームは考える
・ハラール
イスラームが食べてよいものを許可する「ハラール」だが、むしろイスラームの教養に反する大罪だと思っている。本来ならば、個々の食べ物については、一人一人が神に聞き、自分で決めるものが、権威を装ってハラールを決めている。イスラームには聖職者はいない。
昔は国境何てものは無かった。帝国主義列強の国とり合戦で切り取られた領域が元となり、それが後に独立して国家になった。
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2014年6月、テロ組織ISILの指導者がイスラム教の指導者であるカリフに就任して、カリフ制を復活させることを宣言した。この事件より前からイスラム学者の中田考氏がカリフ制の再興を訴えていたと知り、本書を手に取ってみた。
本書はユダヤ哲学の研究者でもある内田樹氏との対談をまとめたものであるが、前半は内田氏の視点からの比較文化論やグローバリゼーションへの警鐘が中心で、中田氏の視点からの中東情勢分析、イスラム的世界観は後半に述べられている。興味深いのはやはり後半の方で、現代にカリフ制を再興させる意義については、なるほどと考えさせられるところはある。しかし、この本の内容だけで何かを判断できるほどでもないというのが正直な感想。
中東やイスラムは地理的にも、感情的にも遠い世界で、あまり縁のない話というのが多くの日本人の感覚だったと思うが、もう他人ごとでは済まされない状況になりつつある。まずは様々な視点から現代を見ることから始めたいと思う。
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テロ関連でお勉強。面白かった。たしかに今のグローバリズム一本化体制は少々危険でもあり、こちらのサイドからみるとカリフ性もそんなに悪いものにも見えない。
日本の知性が今はアニメや漫画産業に吸収されているというのはなんとなく同意。一部だけどね、一部。あと信頼やコミュニティの話も結構良かった。
もっと詳しくは中田さんの別の書を参照。
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中田さんと内田樹さんの対談で、内田さんがうまいこと中田さんの考えを引き出してると思う。中田さんの考えは他の著書でも書かれてるようなことなんだけど、例えばカリフ制に至る道としてEUのようにまずは人と資本と移動を自由にしましょうってこととか具体的な話があった。
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[次なる潮流へ向けて]国家やイスラームを中心とする宗教について2人の専門家が縦横無尽に語り合った作品。次世代の共同体を担保するシステムやネットワークはどのようなものであるべきかについて、新鮮な議論が交わされています。対談者は、哲学者のエマニュエル・レヴィナスを集中的に研究した思想家の内田樹と、大学四年生のときにイスラームに入信した学者の中田考。
イスラームの政治動向について、積極的に1人称を用いて語ることのできる数少ない日本人である中田氏の考え方は、多くの日本人にとってイスラームのある側面を解する際に非常に有意義ではないかと思います。また、反グローバリズムという点で中田氏と共鳴しながらも、日本人という視座から国民国家の持続を希求する内田氏のポジションが、中田氏に対する迎合でも拒絶でもない微妙なスポットに会話を落とし込んでいる点も読み応えがありました。
〜西欧のキリスト教は結局政権に関わるんです。なぜかと言うと、彼らの政教分離の原点は、「世俗」と「宗教」の分離ではなく、「国家」と「教会」の分離だったからです。〜
めっけもん的な新書でした☆5つ
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才気煥発というか、様々な思いつき・アイデアを展開する内田に対し、イスラームの立場から具体的かつ穏当に応じる中田。しかしその中田の主張が「カリフ制」という、ややアナーキズム的なユートピア思想であるところがおもしろい。そうした視点からながめた、現在のアラブ世界の政治状況が自分には目新しく興味深かった。
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【由来】
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【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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内田:
ユダヤ教、イスラム教、キリスト教は互を相互参照しながら体型を築いていったkという気がしますね。(略)進行の深さを魂の純良さを持って示すのか、学識の豊かさでし召すのかというあたりの力点の置き方がこの3つの宗教では微妙に違う気がします。
キリスト教⇒人間の魂の清らかさ
ユダヤ教⇒知性的な成熟
イスラム教⇒両方
イスラム教はもともと遊牧民の宗教。つまり、国境自体を意識しない。クロスボーダーな集団だった。これは国土、国民を絶対とし、国境を死守する、現在の「国民国家」とは折り合いが悪い。
いま「グローバリズム」が叫ばれているが実態は「汎アメリカ化(アメリカン・グローバリズム)」。だが、その勢力を伸ばし、世界を「フラット化」するにはイスラム教は邪魔。
なぜなら、イスラム教は同一の儀礼、儀礼の言語、同一のコスモロジーを共有しているので「汎アメリカ」の強力な対抗勢力となりうる。
だが、そのイスラム圏を分断するために、欧米の宗主国はそれぞれの支配層へエージェントを残していった。彼らは国家の利権の名のもと、自らの権益を守るため、イスラム圏の分裂を固定化している。
アメリカはダブルスタンダード。
日本や韓国の非イスラム圏は自由貿易によって市場を解放させ、食料自給率を低め、英語公用化か勧め、固有の文化や商習慣を廃絶し、国民国家としての自立性・主体性をなし崩し的に無化していく。
逆にイスラム圏には正当性の乏しい独裁国家を応援して、境界線を厳しく分断し、内部の連帯が取られないようにする。
イスラーム的に正しい政府をつくろうとすると、国を超えてムスリムが選ぶカリフが必要となるが、それは国民国家に縛られたままでは難しい。
だが、イスラム圏の分裂を修正するために著者のひとりである中田氏は「カリフ制復興」を掲げている。そのため、アメリカには目をつけられている。
<感想>
イスラム圏が国民国家と折り合いが悪く、下手をすると『不倶戴天』になってしまう道筋は、内藤 正典著「イスラームから世界を見る」からでもぼんやりとはうかがい知れた。
が、本書では内田氏と中田氏では「国民国家」の是非について対談を通して、その点がもっとはっきりと指摘されている。
特にアメリカのアレルギーとも言うべき激しい拒絶反応の理由がよりはっきりした。
が、いくら「カワユイ」が相手の攻撃衝動を削ぐための戦略だと言われても、「みんなのカワユイ(^◇^)カリフ道」のネーミングセンスはどうかとおもう(笑)
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目からウロコでした…ってわたしはキリスト教徒じゃないですけど。
イスラムに対する考え方がすごく変わった。そしてグローバリゼーションはアメリカの推し進めるビジネス的な戦略であるということも。
今英語で授業する学校に勤めてる。日本人なのに英語で授業してる。すごく違和感なんだけどね。まぁそういう学校があってもいいと思うの。
たださ、思うのはなぜ彼らが英語を身につけるためにこの学校にいるかってことなんだよね。
痛いこと書いてあったな。同年齢集団からアドバンテージを取るためであって、インターナショナルな人間を育てるためではないと。目的はひたすらに内向きであると。
少数の子はきっと目的を持っていたり、最初は目的なんかなくても外向きな考え方に変わっていくことのできる子たちだと思う。でもきっと違うんだよね大部分は。私たちはそれをどう引き上げていくのかっていうのが課題になるんだと思う。
私の目指すところっていうのが不明瞭で。そのためのヒントをもらえたって気がする。「真の国際人を育てるということ。」っていうか。互いの違いをしっかり認め合うことができる。自分のできることを人のために貢献できるような人間に育てる。
そのことが主軸になっていくのかなと、ちょっと思った。
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レヴィナスを中心にユダヤ思想を主な研究領域としてきた内田樹が、イスラーム学者の中田考を招きイスラーム思想の現代的可能性について対話をおこなっています。
ユダヤ教とイスラム教というバックボーンのちがいだけでなく、さらに国民国家が破滅的なクラッシュを起こしてしまうことの危機を訴える内田に対して、中田は「カリフ道」の復興を説くという点でも、両者の立場にはかなり大きなちがいがあるのですが、本書ではアメリカを中心とするグローバリズムへの対抗思想という点で両者の議論は一致点を見いだしています。もっとも、だからといって刺激に欠けるということはなく、まったく異なるバックボーンからともにグローバリズムへの批判がみちびき出されてくるというところにおもしろさを感じました。
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非常に面白い。イスラーム学の第一人者、中田考と内田樹の一神教問答。イスラム教とキリスト教、ユダヤ教の共通点と違いがわかるとともに、イスラム、西洋諸国、日本などの国の成り立ち、文化、歴史、政治、関係性等々が見えてくる。
P48で中田氏が「日本では「ケチ」と言う時、強欲と吝嗇を分けませんが、イスラームにおいてはまったく違う概念なのです。強欲なのは構わない。しかし吝嗇は最大の悪口なのです」と発言したのに対し、「内田氏は嫌煙という発想は本質的に吝嗇の文化」と話を展開する。
なるほど、日本も煙草を分け合うような文化から西洋風に変化してしまったけれど(領域国民国家)、イスラムは今も共有の文化なのだ。
P92からの「日本とユダヤの意外な関係」も目から鱗。1900年ごろ、ニューヨークの銀行家ジェイコブ・シフは、ロシアで行われていたポグロムについてロシア皇帝に恨みを抱き、当時ロシアとの開戦に備えて戦時公債の引き受け手を探していた高橋是清と会ったことを奇貨として日本を財政的に支援してロシアを打倒しようと考え、実行したという話。シフと世界のユダヤ人の金融のネットワークの支援で合計二億ドルの戦費を調達できたことで、日本は日露戦争に勝てたのだという!
最後に中田氏はカリフ制の再興を主張。1924年にオスマン帝国が解体し(カリフ不在となった)、伝統的なイスラームのあり方を捨てたたことにより、かつてあったネットワークや共生の感覚、施しの精神がうまく発揮されず、国家間、派閥間の争いや貧富の差ばかりが助長されることになったという。そこでカリフ制を復活させ、すべてのムスリムが一つの神による一つの法に従うことによってムスリムとして生きる――その秩序ある生き方を蘇らせたいという。
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イスラム、ユダヤ教に関する討議はもちろんとても勉強になったし面白かったのだけど、現在のアメリカ主導のグローバリズムに関する話が特に面白かった。
今の英語教育、グローバル化というのは結局日本が繁栄する手段というよりアメリカ主導の資本主義の中で個人プレーでどう成功するかの手段にすぎない。わたしもなんとなくグローバル人材という耳触りの良さで英語を勉強したりや海外勤務を希望したりしていたのだけど、自分が目指していたものは一体何なんだ??と考えさせられた。
もう少し自分の働き方というか、行動の軸を詰めて考えたい、と思わせられた本だった。内田樹の本ってだいたいそうなるんだけど。
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大学時代に中世ヨーロッパ史を専門としていて、キリスト教の考え方や歴史はある程度勉強していた。その中で、現代日本においてイスラームを信仰する人というのはどのような感覚・価値観を持っているのか非常に興味を持っていた。そのため、本書を通してムスリムの考え方の一端を窺い知ることができて良い体験ができたと思う。内田氏中田氏の考え方や主張は極端だなと感じる部分もあったが、中東情勢を西洋的日本価値観で見ていた自分にとって、新たな知見を与えてくれた。中東情勢は非常にややこしく腑に落ちないな〜と言う人は読んでみると理解の助けになるかもしれない。自分がどの考えを選択するかは置いておいて、自分にない知見を得ると言うのは良いものだなあと思わせてくれる一冊だった。
2021年3月