投稿元:
レビューを見る
パリダカ取材のTVクルーがペットボトルに自分の名前を書いていたら「こんな奴とは働けない」とイスラム人が怒ったという話がイスラムとは何かを象徴しているようでとても印象的。生死と共ににする旅仲間でそんな事しちゃマズイだろうってのは自分でも感覚的にはわかるのだが、占有意識の高い日本人はやっちゃうんだね。
神を同じくする一神教でも、3つに分裂した宗教の違い。各々が正当性を主張するのだろうけど、本著では基本的にイスラム押し。よって中立性には欠けている。
魂のキリスト教は神と人間が近い、知のユダヤ教は神と人間が離れてる、イスラムはその中間。告解制度がある内面重視のキリスト教は一神教としては異質。ノマドのイスラムとユダヤは近い。他方キリスト教は定住。ここに共有と占有の価値観の違いが出てくるという説明はなるほどという印象。
結局西欧の帝国主義支配がイスラム圏をズタズタにし、それが今日の混迷に繋がっている。が、グローバリズムという観点では非イスラムでは国民国家の解体、イスラム圏では国民国家の強化によってイスラムの団結を阻むというダブルスタンダードが展開されているというのは斬新な解釈で興味深い。
イスラムでは自然状態を「万人の万人に対する闘争」であるホッブスが間違いで、「自然権が実現された平和状態」と考えたロックが正しいというのはわかりやすい説明ではあるが、昨今の少女誘拐等々の過激な事件を目の当たりにすると、ちょっとどうなんだろ?という気もしないでもない。がこれも反欧米のジハードと言ってしまえば説明がついてしまうのだが。
イスラムの事は全く知らなかったのでいろいろと勉強にはなったのだが、本書がイスラムの真実と断定してしまうのも危険な気がする。
それにしてもイスラムの混乱状況と比較して、日本の植民地支配はうまく行き過ぎたのがあらためて不思議に思えた。それが「菊と刀」の成果なのか?元々宗教が根付かない土地柄・国民性なのか?この辺ももう少し考えてみたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
内田樹氏とイスラム学の第一人者であり
本人もムスリムである中田考氏の対談集。
イスラム関係の本を数冊読んだ後だったので
イスラムとはということがおぼろげながらわかった
気がします。
イスラムの考え方と内田氏の反グローバリズムの
考え方は少し違う部分もあるのではと思いましたが
そこに対しての対立はあえてなく、最終的には分かりあえた体になっていて、ちょっと不満が残る感じ
イスラムの考え方ってどうしてもその表現が
過激な気がして。本質はそうではないのでしょうが。
中田氏のあとがきにも『万死に値する』とかという
言い回しがちょっと気になりました。
投稿元:
レビューを見る
「イスラーム、キリスト教、ユダヤ教」となっているが、イスラームの内容が濃い。なんといっても中田さんご自身がイスラームでいらっしゃるので、イスラームのことが実感としてよく理解できた。形式的な概論というより、実感としての宗教論という感じ。
とにかく複雑でよく分かんないなーと思える世界情勢だけど、とにかく今何が起こっているのか、それは歴史的にどういう関わりがあるのか、実際にその世界に身を置く人はどう考えているのか、などがよく分かったし、それに対してなにが出来るというわけでもないけど、そういうことを知っておくことだけでも大切だな、と思う。
内田先生はいつでも私が漠然と思っていることを的確に言葉にしてくれるな~と、心の中で深く頷きながら読みました。
投稿元:
レビューを見る
ブログに掲載しました。
http://boketen.seesaa.net/article/390019991.html
イスラームを内側からのぞく初めての経験
イスラーム信者にしてイスラーム神学・法学者の中田考と、思想家・武道科内田樹の対談。
面白い。
なによりも、イスラームの世界を内側から語ってくれるその話が、ことごとく初めて知ることばかり。
16億人もの人々が信仰し、信者が今も増え続けている唯一の世界宗教といわれるイスラーム。
ちょっとした解説書を読んだくらいでは、ただ不思議感が増すばかり。
ましてイスラム過激派の自爆テロや、シリアの内戦報道の悲惨さ。
身近に信者の知り合いがいて、ものの見方や感じ方を知る機会のあるキリスト教とは、距離感が違う。
投稿元:
レビューを見る
宿無しムスリムの中田考氏と内田樹氏が、イスラームを中心とした一神教と国家の相性の悪さ、遊牧民のイスラーム、農耕民のキリスト教、そもそも国家って何?(これは「おどろきの中国」とかいう新書にも出てきた問いだ)などをすごくわかりやすく対談している形式の本。
内田氏がいろいろな本に書いている「資本主義の最終形態」の恐ろしさ、これがこのような本に出てきてよかった。これがイスラームに何の関係が?と思うかもしれないけれど、そういう恐ろしい世界を回避するのに役に立つ考え方がイスラームには多く含まれていますよ、ということ。
あと国家や宗教を考える時に、漠然とまず国家という枠組みを思い描いて、その中にどのような民族がどれほどいて、そのうちのどれほどの人間が○○教徒であるという国家を上位に置いたトップダウン的な考え方をする人が特に日本人では多いと思うのですが、そういう考え方ではいつまでたってもあの中東のごたごたは片付かないのだと知った。話はほとんど真逆だったのだ。
第一章は「イスラームとは何か」で、年表的な解釈ではなく中田氏の生き方を紹介するような形で語られているので、とっつきやすかった。
投稿元:
レビューを見る
中田先生は東大在学中にムスリムに改宗し、現在はカリフ制再興を唱える変わった先生です。
ので、先生の語る宗教観や中東情勢にはそれなりのバイアスがかかってますが、ニュースで見聞きするポイントのつかみづらい話よりはずっと深く理解しやすいです。
そういう私も、西欧化された現代社会で無意識に生活するなかで今の社会システムやものの考え方を当たり前に感じてしまってるわけです。
(議会なんてのが神のアナロジーだとか考えませんわね、ふつう)
そして日本も、アメリカ主導のグローバリズムが提案する人間と社会のありように飲み込まれつつありますが、
その点イスラーム圏の価値観は良い意味で全く異質です。
自分が当たり前であると感じていた価値観が、別の視点からみると違って見える。
イスラームについて学ぶことで得られることは多いでしょう。
カリフ制再興が成るかはわかりませんが、イスラームが今後の世界の動向のカギを握っているのは間違いなさそうです。
投稿元:
レビューを見る
内田さんだからと読んでみたけど、自分は宗教の話はあまり好きではないことがわかった。
イスラムのひとたちが自分のものをあまり占有しない、おおらかなひとたちであることは印象的。
投稿元:
レビューを見る
いま起こっている事象についてたいへんわかりやすくしかも歴史的経緯を踏まえて論じてあるので、イスラームに対する表面的な印象を拭い去り、その本質から理解する出発点まで連れていってくれる好著。
投稿元:
レビューを見る
日々、漠然と感じていたグローバリズムや資本主義に対する危機感への解決が、イスラム教にあったとは…。
中東情勢なんかもあり、つい色眼鏡で見てしまいがちなイスラム教に対する見方が変わります。
やはり、世界宗教になるだけあって深い。
それだけに、いまの歪んだ状態がなんとかならないものかと思います。
投稿元:
レビューを見る
先日読んだ本で経済における「利子」というものについて考えると、「利子」を禁じているイスラームというのはどういう考え方なのかを知りたくなりました。世俗化する前のイスラームは利子を禁じているだけではなく、貨幣というのは基本的に金貨、銀貨であり、それ自体の価値を超えるものではないそうです。交易によって生き延びてきた砂漠の民にとって、マネーはぐるぐる回すものであり、決して退蔵してはいけなかった。彼らにはマネーがマネーを生む、という事の危険性がわかっていたのでしょうか。そんなイスラームの世界も世俗化が激しく、資本主義的な考え方をする人が増えてきました。しかし資本主義に対するオルタナティブとして、イスラームという十六億人の人口を要する文化圏の存在意義は大きいと思います。本来イスラームというのは国民国家を超越した大きな概念であるそうで、国境線とかとはどうも食い合わせが悪いようですね。
投稿元:
レビューを見る
内田:たしかに今子供を学校に入れたりしている人たちって、目的は何かというと、外国で箔をつけて日本に帰ってきた時にいいポストにつかせようという、ごくドメスティックな考え方ですからね。日本で「グローバル」って看板を背負ってるとすげえと思われるからとか。アメリカの学校で学位取っても、アメリカの友だちができても、アメリカ社会でアメリカ人と競争する分には何のアドバンテージにもならないわけですからね。グローバルであることがアドバンテージになるのはドメスティックな局面においてだけである、と。(P.159)
内田:しかしアメリカって占領国の経営がヘタだなあと、しみじみ思うのです。イスラームの伝統と文化をちゃんと研究したのか、基本的に同害報復という考え方があるのですから、一人殺したらエンドレスになるとなぜわからないんでしょうね。(中略)第二次世界大戦の時、アメリカは日本のことを研究しましたよね。国務省がルース・ベネディクトを使って、この国民はこういう国民性だから、こういう統治の仕方をしなければならないと。成功したのは日本とドイツだけでしょうね。それ以降のアメリカの占領政策はまったくダメですね。ベトナムでも、アフガニスタンでも、イラクでも、ひどいことになった。占領するなら、それだけの準備がいると思うんですけど、アメリカのインテリジェンスも劣化しましたね。(P.176)
投稿元:
レビューを見る
イスラーム学者と思想家の対談形式で、イスラームの本質に迫る。中東情勢の背景がおぼろげながら見えてくる。
投稿元:
レビューを見る
イスラームの世界とアメリカの世界がどのような構図で対立しているのか、その根っこのところをしっかりと見せてくれる
投稿元:
レビューを見る
内田樹がやや話し過ぎの感がある。
普段彼の言っていることを話しすぎて、Blog読者や彼の本を読む人には飽き飽きする内容もないことはないのだが、
内田氏のはなしと日本人ムスリムでイスラム神学者という異色の経歴の持ち主である中田考氏の意見が見事な化学反応を起こしている。
内田氏自身もユダヤ教の専門家であるため、「一神教」というものへの理解に関してはぜひおすすめできる。
また「国家」と一神教、とりわけイスラームとの関係も目からうろこの知識や視点が多い。
日本人には見えにくいイスラームや一神教に基づく世界情勢をクリアーにしてくれる一冊。
投稿元:
レビューを見る
内田樹さんと、ムスリムでイスラム学者の中田考さんの対談本。
イスラーム文化圏のことは高校・大学でも習ったし、すでに聞き覚えのあることも少しはあったけど、中田さんご自身がムスリムというのがよかったのだろうな、新鮮でした。
相手の人格や内面云々じゃなく、砂漠で飢えている人がいたらとにかく食べ物あげるでしょ、という感覚が面白かった。すごく生命と直結してる、生きていくための法なんだなぁ、イスラームの教えって。この人たちは政治も学問も経済も、全部神様との約束がベースなんだから、政教分離や国民国家なんてのは押しつけても仕方ないように思う。それにしても、現地の人にしてみればタリバンのが米軍よりはよかったかもしれないなんて、ただニュース見てるだけじゃ思いつきもしなかった(もちろん、どちらも見方のひとつでしかないけれど)。
お金に利子がつかないとか、ケチ(吝嗇)と強欲は違うとか、いろいろと目から鱗でした。砂漠の遊牧民の感覚っていうのは、我々日本人にはなかなか知りがたきもの。