組織の衰退とデカタンス
2014/05/18 08:51
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投稿者:やびー - この投稿者のレビュー一覧を見る
裁判官の経歴を持つ自身が、体験を踏まえ「最高裁中枢の暗部」を語る一冊。
司法を支える裁判所のモラルの欠如、組織としての衰退。裁判官の資質の欠落を著者は2000年代から始まったと認識する。
ヒエラルキー構造で、事務総局の意向に添った判断(判決)が優先される実情。 自分の良識に従った判決が事務総局の意向に添わないと、地方へ飛ばされ出世から外される現実。
上下関係だけで無く、同僚の嫉妬を煽り、出世を競わせるラットレースな環境。
日常に行われる、セクシャル、パワーハラスメント、汚職。それを組織事隠蔽する体質など…モラルの低下。
人を裁くという権力を握る裁判官が、こんなにも幼稚で退廃的なのか?もちろん、一部の良識的な裁判官も少なからずいると説明はあるが、読んでいて本書のタイトルに納得してしまう。
その著者も、環境の中で精神を病んだ事を告白する。
別の視点で見れば、裁判官(官僚)と組織の関係性から考えてみたい。
国家を支える官僚のレベルの低下は様々な書籍を通じて語られる。官僚の衰退とは国家の弱体化でもある。
組織の衰退の原因は何か?人を裁くという、一種の権力を握ると人はその権力をどう行使するのか?
社会で働き、組織で生きる私達であっても、同じ様な悩み苦しみを本書を読む事で追体験出来るだろう。
元裁判官がその絶望的な内情を暴く
2017/01/13 03:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tora - この投稿者のレビュー一覧を見る
元裁判官らしい厳密で硬い文章だが、読みやすく、分かりやすかった。
本当にやりたかったのは社会・人文科学系の研究であり、文学や芸術やロック音楽を愛する著者が、ガチガチの官僚組織である裁判官になったことは、ご本人にとってはつらいことが多かったであろうが、一般市民にとってはそれは僥倖ともいえることなのではないか。なかなか普通の人間が垣間見ることが出来ない裁判所の内部の問題を、外部の価値観を保持したまま語れる人間は稀有であろうから。
筆者は、裁判所というものが、事務総局をトップに抱く上命下服、上意下達のピラミッド型のヒエラルキーであることを喝破している。閉ざされた世界で、ヒエラルキーの階梯を細かくきりわけ、スタートは「同期」として一応平等にし相互に競わせる。「事務総局」が望ましいと考える方向と異なった判決や論文などを書いたものは、出世させず、後輩に先んじられて屈辱を与えられたり、地方を転々とさせ単身赴任を長引かせられる。
日本的といえば日本的だが、ここまでの組織は特異なのではないか。
法の番人であるはずの裁判官の組織が、憲法の精神からかけ離れていることにも驚かされる。
今マジョリティーの裁判官が行っているのは、裁判というより「事件」の「処理」だという。当事者の名前も個性も、その願いも思いも悲しみも、彼らの年頭にはないという。
この国で裁判を受けなくてはならない国民の悲劇たるや…。
2000年代以降、特に司法制度改革・裁判員制度導入以降、むしろ上層部の腐敗はひどくなり、裁判官の劣化もひどいらしい。
近年、本邦では、様々な分野ー企業活動や政治、マスコミ等々-における劣化は著しいが、ここ数年でさらに加速している気がする。
建前上は一応掲げられていた「理想」が、「綺麗ごと」と退けられ、どんどん「本音」「現実的」という名で、理不尽なこと、不条理なことが堂々とまかり通る世になってきている。
それを準備し、先駆となったのが、この裁判官制度の構造上の問題とさらなる劣化なのか、それとも同じ現象が同時多発的に起こり、裁判官の問題もその一つの現れなのか、私はまだ答えを持たない。
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筆者はなんだかんだ裁判官を30年勤め、業績もかなり残し局付だの民事調査官だの経験されている方、だからこそ、感情的な批判本とはならずに書けた本と思う。いろんな意見はあるとは思うけれども、こういう著作物があってもよいんじゃないか。
近年就任した某最高裁判事のことや、少し調べればすぐ分かるような筆者退官時の某所長の対応、さらに某長官の話など赤裸々で単純に面白いとこもある。
裁判員裁判導入の裏側というか解釈も、手厳しいけども。
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同期での評判がイマイチな印象だから構えて読んだけど、恨みつらみもあるんだろうけど言い当ててるところも多いと思うしそう悪くないんちゃうんという感想。やたら左翼じゃないと言われるのは嫌だったけど、みんなが敬遠する理由はそこじゃないだろうし、何でだろう。
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話題のこの本、確かに興味深く、なるほどとうなずける部分が多い。ただし、批判的に見るべき箇所もあるのだろう。それと、意図せずしてか、そこはかとなく自慢話が盛り込まれているのが鼻につく読者があるかもしれない。しかし、全般的に参考になる本でした。
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裁判所の世界、こうなっているのか、という一書。これが本当だとすると(多分本当でしょう)日本の裁判所は「絶望的」です。公的、私的を問わず、組織は一度できてしまうとそれを変えようとする動きに対して自己防衛反応を起こしてしまう。本来、国民の生活感や意見を柔軟に写し取るべき裁判所がこれでは…
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過去に「裁判官が日本を滅ぼす」という本を読みました。取り上げられている判決は確かに酷いものが多く,大層憤慨しながら読んだことを覚えています。
わざわざ本に取り上げられているぐらいですから,このような酷い判決の数はそれほど多くないのが実態でしょう。
でも,上っ面だけではなく,もうちょっと当事者の立場に立って想像力を働かせてくれたら,そんな認定にはならないはずなのに…ということは星の数ほどあるはずです。
人は身をもって経験したことしか,自分の血肉になりにくいと私は思います。
その意味では,著者の提案する法曹一元制度の採用は十分に検討に値するのではないでしょうか。
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特に目新しい発見はなかった。
自慢話と他人を見下した批判ばかり。
辛い裁判官生活だったのね。お疲れ様でした。
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タイトル通り読むと裁判官に対してがっかりする。それに加えてこの本を書いた裁判官も同じだったのではないか、という気もしてさらにがっかりする。
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元判事によるある種の暴露本。しかし社会に広く暴露、というよりは、自分の身に降りかかった出来事、こんな奴がいた、というニュアンスがやや強いように感じる。ただ全体的に言えることは、裁判官の能力が落ちている、もうちょっと有り体にいうと阿呆が増えている、と。司法改革系の話は、このようにスピンアウトしてきた人からの話ぐらいしか視点を持ちづらくて、本当に中の人たちがどう考えているのかは、こういうヤメた人の話からしかうかがい知れない。著者がもし裁判をするなら、判事はスーパーマンではなく自分の能力とその限界を謙虚に認識している人に担当して欲しいという。でもスーパーマンでも謙虚でもない人が多いんだろう。日本のキャリアシステムが悪いんや、と。裁判官の嫉妬深さや幼稚性もすごいんや、と。酸いも甘いも噛み分けられるようになってから裁判官になるようにしろ、と。そうするとスーパーマンが出てきそうですな。
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一言で言うと…全く面白くない!
最高裁事務総局に支配される裁判所の体制についての愚痴が延々と綴られていて、最後の方は読むのが苦痛でした。。ただ、裁判員裁判についての提言の部分は個人的には賛成です!
自分が修習生の頃を思い出してみても、確かに刑事裁判官の方が権威的、威圧的な人が多かった気はするかな…。
これ位の感想しか持てない一冊でした。
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裏話的に興味深いところはあるが、感情的すぎるので引いてしまった。もっと冷静に問題点を指摘してくれればいい本なのに、という感じ。
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裁判所内部の雰囲気が分かるという意味では面白かったが、溜まっていた不満をぶちまけているといった印象で客観性・中立性に乏しい内容であった。
著者は気が弱く、不満があっても相手に面と向かって言えずに溜め込んでしまったのだと推察する。
裁判所、裁判官批判を展開する中で、結果的にこの程度の器の人が裁判官をやっていたのだという悪例を自ら示すことになってしまった皮肉な作品。
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33年間裁判官を努め、現在大学院の選任教授が裁判官について語る。
日本の裁判官がどれだけヒドイかを嘆く文だが、主観的になりすぎてるなと思うことが多々あり、引くし、読みづらい。
酷く自己浄化機能の働きずらい、組織なのだなと思う。
【学び】
日本の裁判所、裁判官の関心は「事件処理」に尽きる。とにかく早く、そつなく事件を処理しさえすればそれで良いのだ。また、権力や政治家や大企業も、これをよしとしており、庶民のどうでもいいような事件、紛争は早く終わらせ、冤罪事件もいくらあっても構わないと言う態度だ。
とにかく和解を勧められる「今月の新件の最低3割は和解で落とさないとキツいな」などの会話が裁判官同士で行われる。
日本の刑事司法システムで有罪無罪を実質的に決めているのは検察官であり、裁判官はそれを審査する役割に過ぎないので、日本の刑事裁判の無罪率は極めて低い。
公訴を起訴されていれば被告人、されていなければ被疑者
死亡によって遺族が得られる逸失利益(35歳、年収400万円妻子あり会社勤めの場合)
400万円×0.7(自分の生活費が控除)×15.803(死亡後の就労可能年数32年に対応するライプニッツ係数)=4,424万円これに死亡慰謝料2,800円また、自分にも過失があると認定された場合ここから過失分が差し引かれる。
法を学ぶ多くの学生から裁判官は判決の内容によって左遷されるなどの不利益を被ることがあるのではないかと言う質問がでで、全然ないよと答えられない状況なのだ。
また、ハラスメントが多い、うつ自殺も
原因として、閉じられた、息苦しいヒエラルキー構造の組織
裁判官の満身にも度しがたいものがある
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