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“お嬢様は、だいじょうぶでしょうか……。
ふだん、体を動かす機会がほとんどないお嬢様にとって、雪の山道を急ぐというのは、かなりきびしい状態だと思われます。しかも、いまは、とても動きにくそうな着物すがたなのです。
雪や水で地面はすべりやすくなっていますし、転んだりしては大変です。
そう考えて、ぼくはお嬢様の手を取りました。
「なっ、なにをするの、執事……。」
一瞬、おどろいたようすで、お嬢様はこちらをごらんになりました。
しかし、手をふりはらおうとはなさいません。
お嬢様の手は、ひんやりとしていました。”[P.125]
6巻目。
最後の雰囲気だと、ありすはゆきが言った言葉の裏を理解していて、理解されていることをゆきも分かっていて、って読み取れるけれど合ってるかな。
杖の件はあまりにもあっさりだったけれど、嘘付いてたりって思わないの?前にも何かしら伏線あったっけなぁ。
HACCANさんの絵は本当良いなぁ……。
“「それから、もうひとつ、お嬢様にお願いがあるのです。」
まるで、他人の声のように、その言葉は耳にひびきました。
「どうか、ぼくをクビにしてください。」
お嬢様を裏切らないために……。
ぼくは、お嬢様の執事でいることを、やめなければなりません。
「執事、あなた……。」
なにか言いたげに口を開いたお嬢様でしたが、くちびるをかんで、うつむくと、軽く肩をすくめて、おっしゃいました。
「もちろん、そのつもりよ。あなたなんて、執事失格だわ。クビよ、クビ!荷物をまとめて、さっさと出ていきなさい!」
片手で追いはらうようにして、お嬢様はぼくに命じます。
「わたしは、待たないわ!ぜったいに、あなたがもどることを、待っていたりはしないのだから!」”[P.193]