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ガンツウの設計をされた堀部氏の本です
建築専門の本ですが、自分のようなシロートも読み物として楽しめました
松原家の歴史は、建築専門の方だったら、興味の少ないところだったかもしれません
自分は、親しみのある土地が出てきたし、時の流れが感じられてよかったです
交換日記のような構成で、両方の立場がわかります
特に見た目だけではない思想の持って行き方が参考になりました
職人さんたちをはじめ沢山の人達の協力があるからできていくんですね
ドキュメントというよりか、ドラマのようでした
このような本を読んで実際の建物を見に行ってみたいです
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戸建ての家に住んだことがなかったので、これを読みながら「そうか、中古って選択肢もあるのか」と思ったりなど。いつか戸建てに住むときは設計士さんとかとこんな良好な関係を築けたら幸せになれそうだなぁ。
それにしてもユニークな形で、模型の写真はしげしげと眺めてしまった。
いくつかの仕事を並行して進めると双方にいい影響が、という堀部さんの言、なんとなくわかるような気がした。
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一万冊の本と仏壇を収めるための書庫の建築に関し、その施主と建築家が綴った一冊。
こう書くと、限られたスペースをいかに効率よく活用して書庫を建てるか、といった内容の本に思えるが、さにあらず。本書は、施主であり学者である松原隆一郎の、自分の家の歴史の説明から始まる。決して良好とは言えなかった父親との関係を赤裸々に語り、祖父ら先祖の生きた証として仏壇を残したいと考える。それゆえの本と仏壇なのであり、これが単なる書庫建築とは一線を画しているところなのである。
そして、本の後半は建築家・堀部安嗣による卓越した手腕が展開されるのだが、これはもうただただ驚嘆する。建築家が生み出すデザインの妙の裏には、ハッとするような着想があることがよく分かる。例えば、人を取り巻く世界には『世間』と『自然』という二つの世界があり、建築とはこの二つの世界を行き来して繋ぐものである、という主張。また、墓地と図書館はどちらも死者との対話の場所であり、記憶を引き出し、継承する場所である、という指摘。今回の書庫建築は、深い洞察に裏打ちされたものであり、デザインの技術を身に付けただけの建築家には到底成しえなかった仕事だっただろう。
ちなみに、この書庫の住所は施主の住まいにほど近い阿佐ヶ谷。西荻・荻窪で育ったワタシにはなじみ深い地名や場所が本書のあちこちに。もちろん、近いうちにこの書庫を見に行くべく、阿佐ヶ谷に出かけてみようと思う。
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書庫を設計した建築家と依頼者が交互にそのプランについて執筆をしている。建築家がどんな風に考えてこういう設計をしたのか、が良くわかり、本を開くのが楽しみでした。素敵な書庫の写真にうっとりしました。
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急ごしらえでとりあえず作ったものというのは時間が経つと納得のいかない部分が必ず出てくるものです。それは性能を満たしただけの建物に近いからでしょう。法律や松原さんの要望から即物的に生まれたプランには生命感と根本的な魅力が欠けているのです。設計者が自分で心の底からいいと思うもの、生悪化しているものを何度も心のフィルターを通して検証して形に落ちつかせて行かなければ生命感のある、血の通っている空間生まれないのです。この極めて個人的な孤独の葛藤の後にしか、建築に生命観を開かれません。
施主の要望をしっかり聞き、咀嚼した後に、その要望を一旦忘れるのです。言い換えれば施主の要望を言葉として捉えることをやめて、もっと抽象的で身体的な感覚としてとらえるトレーニングを開始するのです。言葉で言い表せない、言葉では誤解を生んでしまう本質的で大事なことがその言葉の奥に住んでいます。
信頼して任せているのだから、堀部さんがいいと思うことを受け入れるしかありません。
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家族の想いと書物を収めた書庫を、著名な建築家が様々な創意工夫で作りあげていくドキュメント。自分のこだわりの本棚を作る、書斎を作るのも十分大変だが、丸ごと書庫となる家を作るのはなかなか出来ることではない。実際にどういった人がどんな目的で建てるのか。とても興味深い。
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書庫を作る魅力に惹かれ読み出したが、全く違う点が気になってしまった。
まず、設計士の話は興味深く面白い。
しかし施主の話からは、家父長制に縛られた人生の苦しみが1番に感じられる。また、自身に染み付いた長男の呪いを理解しない「家内」に向けられる癇癪のような感情の発露が、読んでいて苦しい。
大学教授をされているというわかりやすい語り口と冷静さが、仏壇の件になると失われるようだ。祖父の言葉がそこまでさせるのか。