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何もかも奪われた者視点で淡々と書かれた復讐譚。一昔前にライトノベルで流行したRPGファンタジーよりは昔ながらのヒロイックファンタジーに近く、国や魔法の体系が凝ってない(良く言えば原始に近い、悪く言えば別れているだけで踏み込みがない)。
長い歴史が関わるので国の興亡や権謀術数やら出てきそうなものですが、そこはあくまで個人の復讐に終始しており、 原初の因果の規模も規模。登場人物も感情が足りず、ドロドロしそうな所業にも関わらず全体的にさらーっと進むので、ちょっと物足りなかった。終わりはいかにも女性が起因した終わり方。宝石とか本の装飾とか人形とか、小物が綺麗。文調は静謐で、さらーっといく原因の一つでもありますが、私は好み。
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これは…すごいものを読んでしまった。
コンパクトながらしっかりしたストーリーもさることながらその描写力、設定にびっくりした。
モモとか、なんだろう、そういう児童文学のファンタジーを大人用に昇華させたような読み味がすばらしいです。この、世界にぐいぐい持っていく力は小野不由美レベルかもしれません。
あらすじを書くと、どこからがネタバレになるのか悩むが、一言で表すと「復讐」だ。
主人公カリュドゥは月石を右手に、左手に黒曜石、そして口の中には真珠を持って生まれてきた。この三つの品には大きな意味があるのだが、そのために母からも気味悪く思われ魔道師エイリャに育てられる。小さな田舎の村で膨大な書物と、いろんなことを教えてくれる育ての親に囲まれて成長するが、ある日、エズキウムの国の魔道師長アンジストが現れカリュドゥの目の前で幼馴染のフィンとともにエイリャを無残に殺してしまった。カリュドゥはアンジストに復讐するため、魔道師の修行をしようとエイリャの遺言であるパドゥキアに向かうことにする。そこで師匠のガエルクのもとで修行を積むが、ある事件により、魔術とは別の力を知る。そして「紙に触れるだけで」殺してしまうことも出来るという「夜の写本師」を目指し、アンジストの暗殺を試みるが、実はアンジストとカリュドゥには知られざる因縁があった。その因縁とはなにか、カリュドゥの生まれながらに持っていた三つの品との関係はなんなんのか…。
とにかく面白いです。
細かな描写がまた美しいんです。
繊細なレースを編むような、丁寧な始まりで、話が大きく動き出すまではむしろ描写の美しさばかりを見てしまいます。丁寧に、ゆっくり読みたい。
そして魔術や、カリュドゥが使う写本師の戦いの描写もすごい。残酷な描写も見られますが、この世界での「魔術」というものは明るさだけではない、闇も苦しみも恨みもあっての魔術なんだ、ということなのでしょう。ちょっと怖いです。
最後はなんとなく切ないけどすてきな終わり方で、悲しくないのに泣きそうでした。
映像化して欲しいようなしてほしくないような。
井辻朱美さんの解説もいいです。
魔法を扱ったファンタジーの代表作を挙げながら、この作品の良さを再認識させてくれます。
シリーズ物の1巻とのことなので続きも追いかけたいです。
ただ文庫化されたのはまだこの作品だけのようなので、ハードカバーで続編を読むかは悩み中です!
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ライトノベルとも児童文学とも違う正統派ファンタジー。
作者は日本人だが、イギリスやアメリカの作家と言われても違和感のないレベル。
三つの証を持って生まれてきた天才少年が、大事な人たちの仇をとるために最強の魔術師を追うという王道。
さらに輪廻転生のおまけつき。
思わず引き込まれる強さを持つ物語だが、惜しむべきは魔術師の女に対する恐怖の説明が中途半端でわかりづらかった。
主役を4人にしたのは飽きさせなくていい演出だが、その分ひとりひとり、特に中心人物である写本師の存在が薄くなってしまっている気がする。
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ストーリーも人物的魅力も薄い内容だけど不思議とぐいぐい読んでしまう。世界観というか、設定となの魅力があるんだと思う。魔法がどちらかといえばおまじない?呪術?のようの怪しく暗いもの。ありそうでなかった魔導師の姿。写本師の修行をしているところはわくわくしてしまった。
ストーリーとしては、1000年前から続く復讐劇といったところ。名前が覚えずらかった。
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緻密な世界観の作り込みと言葉でしか表現できない描写。ファンタジー小説の復権。3つの力、月と海と闇を野心家の魔術師アンジストに奪われた少女の1000年にわたる生まれ変わりと戦い。最後に男として生まれた主人公は奪われた力を取り戻す為、夜の写本師になる。
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ハードカバー版(図書館から借りた)も読んだけど、文庫になったので購入。
月、闇、海の三つの印を持って生まれたカリュドウは、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにする。復讐を決意したカリュドウは・・・
二度目だけど、ぐいぐい引き込まれる。
前よりは登場人物の把握ができたので、より話に引き込まれたのかも・・・
常に闇を背負う魔道師。
宿敵アンジストと千年にもわたる因縁。
そして、アンジストの秘密・・・
ダークな部分ばかりだけど、ラストは爽やかに感じる。
詩的な文章は最初苦手だったけど、それがダークな部分を払拭してより引き込んでくれるのかも。
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本屋に平積みで表紙に惹かれて買いました。
このお話しを知ることができて良かった。
テンポよく、最後まで飽きさせないです。
展開が若干早いかなー、とは思いますが。
シリーズになっているそうなのですが、この一冊でお話しとしては完結してます。
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ページをめくる手が止まらなかったということは、つまりそういうことなのだろう。
ただ作者は、主人公が感じたものを表現するにはこの時点ではいくらか力量不足だったようにも思う。うまく表現できないが、もっと深いどろどろしたものを捉える能力があるのに使っていないような印象を受けた。
ただ最近の直接的すぎる、飽き飽きするようなものにくらべれば本書は優れているとも言えるかもしれない。
大人に読んでほしいファンタジー、と帯にあったが、子供向けなのだろうか。それならばいくらか納得がいくのだけれど。
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世界観というか文体というか、作者が力を入れて描いている部分がなかなか好みで、楽しく読めた。
復讐の話であるにも関わらず、抑制のきいた文体とテンポの早さで読みやすい。
展開の早さ、詰め込まれ感が人によっては物足りないかもしれないけれど。
それでもよくまとまっていて、個人的には不足感を覚えなかった。余白は自分の中で補完すれば済むだけのこと。
感情よりも単語や事象を楽しむファンタジーかも。
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ファンタジー小説の新たな旗手だそうで。図書館でなんとなく背表紙を眺めていたら、この方のはどれもそれっぽい凝った作りの装丁で非常に目を引きまして読んでみることに。
SFと同じでこの手の小説って設定が呑み込めるまでにちょっとひと手間あるんですが、辛抱強く読んでみましたらわりとすんなり読み進めることができました。
ストーリーだてが結構しっかりしてるので冗長なところも少なかったですし、過去の話から終盤に至っては盛り上がりとそのテンポが大変によかったと思いました。他の作品もそのうち読んでみようと思います。
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ファンタジーは苦手だけど、表紙、紙質、文章の美しさに引っ張られて読み切れた。東京創元社は高いけど雰囲気が好きで買ってしまう。
世界観は壮大なのだろうが、1冊の筋としては単純というか正統。後半は特に勢いがあった。もうちょっと人類普遍的じゃないドロドロがあってもよかったけどなあ。
魔導師同士の戦いがカッコイイ!
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悪の魔道士に対抗する夜の写本師という構図が斬新で面白いです。千年もの時を経ながら紡がれる話をこの1冊に納めてあるので、場面の切り替わりが早くものたりないと感じる描写の所もありますが、どんどん読めるので気にならない程度です。
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果てしれぬ輪廻。大いなる許し。
すべてを奪われ、復讐のために何度となく転生を果たす女魔道師たちの暗い望みは、女でも魔道師でもない者の手で、また復讐という形でもなく果たされた。
そうして、その壮大な歴史の輪廻の予兆が暗示されて物語は終わる。
しかしそこにはもはや忌まわしさはない。
女を女として敬い、男がただの男として振舞う新しい時代には、もはやすべてを手に入れようとすることでしか癒されぬ孤独を抱えた者は存在しない。
互いを支え、互いを信じることの価値を知った世界では、もはや紫水晶を分かつ存在も生まれないだろう。
まだ生きることの喜びを知らぬままにその肉体を滅ぼした、たった一人の子どもが新たに生き直すための輪廻。そう信じたい。
闇、獣、人形、そして書物。それぞれの儀式に使うものは異なってはいても、どの魔道師が操る魔法も、呪文を唱えることでしかその力は生まれない。
しかし写本師の魔法ならぬ魔法は、文字そのもの。そうして魔道師の力に対抗できる唯一のもの。
この設定は、言葉を仕事にしている私を魅了した。語られる言葉と綴られる言葉。男と女。この偉大なファンタジーにおいて拮抗するものとして語られた存在は、いずれも互いの力を奪いあうことなく、それぞれがそれぞれの存在のままであり続けることで最も素晴らしい力をこの世界に生み出すのではないだろうか。
少しずつ、本当に少しずつ噛み締めながら読み終えました。上質の物語です。
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大魔導師アンジストの手によって育ての親のエイリャを殺されたカリュドウ。カリュドウはアンジストへの復讐を誓いエイリャが生前言い残していた地へ向かう。
魔法や呪い、魔法の力を宿した本や輪廻転生などの設定が練りこまれた王道ファンタジーです。
そしてそうした設定を支えているのが美しい文章と魔法の描写。自然の描写はもちろんのこと魔法や呪いが使われた際の描写や設定の描写がとても書き込まれていて、設定だけに頼らない、文章の力でも勝負できるファンタジーになっています。
ストーリーも復讐が一つのテーマになっているだけあって、カリュドウの運命のすさまじさが印象に残りました。辛いシーンも非常にしっかりと書き込まれているのが分かります。
それだけにカリュドウの心理描写とラストの対決にもう少し読み応えが欲しかったかな、と思いました。
ただ本当に文章が美しくて、評価の高さには納得しました。ファンタジー作品好きなら読んで損はないかと思います。
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いやぁ~、面白かった!
逸る気持ちを抑えながらページをめくり続けた。
いわゆるファンタジー小説というジャンルが苦手な自分が
コレほどハマったのはホンマ珍しいし、
その新人離れした描写力と、物語が持つ力を読む者に改めて知らしめてくれる、ストーリーテリングの巧さよ。
数千年の時を越え
本の中の世界を行き来する主人公と同じく、
読んでいる僕自身も緑豊かな海沿いの街を、彼、彼女らの生きた世界を、
本を開くことで追体験できる至上の喜び。
「ああ~、これが小説だ」と思える何事にも代え難い充実感に感謝!
( 開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんて本しかないし、極上のファンタジー小説があればタイムマシーンなんていらないのである笑)
右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠を持って生まれてきた主人公の少年カリュドウ。
14歳のある日、女を殺しては魔法の力を奪う大魔道師アンジストに
育ての親である女魔道師のエイリャと優れた魔力を持つ少女フィンが目の前で無惨に殺され、
不甲斐ない自分を呪い、復讐を果たすための孤独な旅を描いた
大人のダークファンタジー。
まったく何にもないところから
新しい国や社会を創造し、読む者を今ある現実から異世界へと一気に連れ去るファンタジー小説という特殊なジャンルだけに
そこに何がしかのリアリティがないとただの絵空事となって
物語に入り込めなくなってしまう。
けれどもこのファンタジー小説のスゴいところは圧倒的な描写力と緻密な設定によって違和感なく読む者を引きつけ、
小説というただの紙束からまだ見ぬ新しい世界を出現させるのだ。
主人公の少年カリュドウは
大魔道師アンジストへの復讐のため、
彼を倒す魔法を習得するのに必要不可欠な「写本師」の修業をしていく。
印刷技術がまだなかった時代には、それぞれの本はこの世に一冊きりしかなく、古くなったから棄てるなんてことはできなかった。
だからこそ古くなった本を新たな紙に書き写し、新しく蘇らせる写本の仕事はなくてはならないものだった。
使いこまれボロボロになった本を一字一句同じ筆跡で書き写し、高品質で一生使用に耐えうるために紙の素材やインクにもこだわり、決められた期限内に仕上げる写本師という仕事のなんと高技術で魅力的なことか。(製本すれば隠れてしまうページの端には花や剣など写本師だけの好きな印を入れられる)
そして写本師からレベルアップして「夜の写本師」になると、自分が書きしるしたもの自体に魔力を宿らせることができ、なんとその本を読んだだけで呪いがかけられるのだ。
この力を使ってアンジストに復讐を誓う主人公の執念が切なくも胸に沁みる。
写本工房での修行のパートは、本好きならヨダレタラタラになること間違いなし。
装飾文字を書く者、細密画をほどこす者、本文を筆写する者、周囲に飾り模様を入れる者など仕事は分業化されていて、
一冊の書物が出来上がる過程が疑似体験できる。
(印刷技術が普及する以前の本は
宝石や貨幣よりも貴重な��的財産として大切にされていたことが解ります)
修行が終わり成人になったカリュドウは自分の出生の秘密が記され、アンジストを倒す鍵となる深紅の革表紙の本「月の書」を手に入れ、
逃れられない宿命の戦いへと誘われていく。
この小説を読むと、物語が持つ力とともに「言葉の力」や「言霊」について改めて考えさせられる。
愛情を持って育てられたペットは手並みの艶や目の輝きが違うように、
ちゃんと一ページ一ページ、人の手と目が触れて、息がかかり可愛がられた本は、
活字がやわらかくなり、そこに込められた人の思いをじかに感じられるようになる。
今、簡単に死を選ぶ人や
夢を信じられない子供が増えてるけど、
そんな時代だからこそ、ファンタジーが必要だし、
ファンタジーを信じることこそが悪意の拡散を防ぎ抑止する作用があるのだと思う。
夢を信じる心をつくるのは
ファンタジーの世界をいかに信じきれるかどうかにも通じると思う。
たった一冊の小説が、ときには誰かを救うことがあるように、
大好きな作家の小説の新刊が気になって今はまだ死ねないでもいい。
そう思わせてくれる不思議な力が物語には確かにあるし、
そんな小さなことで人生が繋がっていく感じが人間の一生であって欲しい。
徹底的な闇を描きながら
かすかな希望を見せて締めるラストも深い余韻を生む、
物語の力を忘れた
今の大人にこそ読んで欲しいダークファンタジーだ。