紙の本
大いに買いである
2014/07/08 18:48
20人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wayway - この投稿者のレビュー一覧を見る
或る意味、衝撃的な新書である。
1974年以降、実物経済においては先進国が高い利潤を得ることができる
フロンティアはほとんど消滅してしまったという。
つまりは、「地理的・物的空間」の拡大は困難になり、投資をしてもそれに
見合うだけの利潤を得るという資本主義のシステムが限界に突き当たり、
資本主義が終焉を迎えたはずであったのだという。
そこをアメリカが「電子・金融空間」そ創設することにより延命させてきた。
それによりBRICS等の新興国を成長させてはいるがそのシステムも、もう
成長させる新興国自体が無くなってきているのだと。
そして、既に日本が経験をしているゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ
が、徐々に世界へ拡がっていき、貧困国へと向かうのだともいう。
ひとくちに、本書の内容を語れないところにも、また本書の
持つ意味が含まれており、新書にしておくにはもったいないくらいの
しっかりとしたロジックに支えられている。
一度、読んだだけではなかなか私には分かりにくかったので、
何度か読むことになるだろうと思うが、この内容にしてこの価格
は安過ぎる。
紙の本
「資本vs国家」恐ろしい一冊
2014/03/21 18:20
18人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とーるさん2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一気に読み終えた。
しばらく茫然として動けなかった。
歴史認識の重要性を感じるとともに、
今の為政者や資本家たちは何を考えているのかと不信感が堆積した。
現状を知らないのか、それとも知っていて見ないふりをしているのだろうか。
紙の本
500年ぶりの経済の大転換期における新システムの構築を説いた画期的な書!
2017/11/28 10:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本が世界各国に先駆けて16世紀以来続いてきた資本主義が終焉を迎えていることを説くとともに、その克服法と新しい経済システムの構築を示唆した画期的な書です。ご存知のように、ゼロ金利、低成長を続けている日本経済ですが、これは投資しても利益が出ない、すなわち、これまでの資本主義が機能しなくなっていることを意味していると同書は解説してくれます。こうした状況は、現在の日本で急速に明確になっていますが、遅かれ早かれ、他の先進国にもこの状況は現れてきます。こうした資本主義の最終局面にあって、私たちはそうすべきか、そして新しいしシステムをどう硬直していくべきかを説いた画期的な書です。
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資本主義終焉後にはどんな未来が待っているのか?
2015/09/27 10:24
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:洗濯の自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
財政出動で景気回復を狙うケインズ主義が短期的な効果しか得られなかった。それに対し、景気回復には資金量を増やす事が一番というマネタリズム。長引く不況に対する0金利政策継続は資本主義の最終局面とも言える。アベノミクスもその金融緩和の継続に過ぎず、新しい政策でも何でもない。出口が見えない資本主義経済を救済するヒントが見つからないかと思い本書を読んだ。各種景気対策の功罪や経済史の分析はとても解り易かった。但し、筆者もそれを踏まえて今後どうすべきかという答えは見付けられなかったようである。100人いれば答えが100個あるような問題に対し、どれも正解でどれも不正解だと思うので、批判を恐れず筆者なりの“不正解の結論”があっても良かったと思う。
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とても面白く一気に読みました
2015/04/09 09:34
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょびちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう地球上にフロンティアはもうないのは事実。そこで「次は宇宙開発」というよりは現実的なお話です。5年くらい前でしょうか、中小企業社長向けの経営講座で某コンサルタントが「100万円のもうけがあれば投資してください、機械や従業員に使うよりよっぽど楽に金儲けができる」という趣旨の話をしており、非常に違和感を持ちました。同じ100万円かもしれない、でもその100万円で各種社会保険を払い、従業員を雇ってそれぞれの生活をささえているわけで、それは見えない形で社会還元されているもの。たとえばたとえ零細企業で賃金が少なくても社会の末端まで雇用があるから社会不安が少ない、治安のよさにつながるなど。ただ純粋にお金の増減のみを考えるなら確かに投資かもしれないけれど、社会的責任が欠如した暴言に感じました。ここには書かれていないけれどエコや地産地消の運動が対抗できる方法の一つか.
紙の本
日本の近未来は待ったなし
2018/01/15 19:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:在外邦人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中世からの長い歴史的事象を踏まえた冷静な経済分析は説得力がある。著者は如何に個人が金儲けをするかという視点ではなく、全人類は不可能ながらも、より大多数の人間にとって選び得る最善の道を目指している。一握りの強欲が、人類と地球を危うくすると説き、残り少ない時間の中で我々1人1人が真剣に考えなければ人類は後100年程度しか生存出来ないという説を披露している。日本人が「足るを知る」という思想に立ち返れば活路はあるようだ。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の改善や消費税増税を否定的に受け止めていたが、日本がポスト資本主義へソフトランディング出来るか否かの鍵が示されており、改めて考えさせられた。緊急に必読の書。
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共産主義は失敗に終わり資本主義が勝利したように思っていましたが、以前読んだ本には「いずれ資本主義も滅びる」ようなことが書かれていて、それがずっと気になっていました。この本のタイトルと帯を見て、この本を手に取りました。
この本の著者である水野氏によれば、それは「国債長期金利の低さ」が、資本主義の死を意味するとのことです。日本の長期国債金利は長い間1%を切るという低金利で、これが日本の強さだと多くの本に書かれたように私もそう思ってきました。
この本を読んで、長期間に亘る低金利は、日本の経済が強い弱いという問題とは別に、日本では資本主義がそろそろ終わりに近づいていることを意味しているのかもしれませんね。
資本主義が終わることは必ずしも国民全体のためには悪いことではないかもしれません、どのような形がそれを引き継ぐかは、水野氏は明確に記述していないように思いましたが、その方向性らしきものはあったかもしれません。
私が社会人を引退する10年後には、その形が見えているのかもしれません、もしかしたらもっと早く多くの分野で芽生えているかもしれませんが。
この本で最も印象を受けたのは、冒頭にある部分で「なぜ利子率の低下がそれほどまでに重大事件かと言えば、金利はすなわち資本利潤率と同じだから、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していないという兆候である(p16)」、という部分です。
以下は気になったポイントです。
・利子率が低いのは17世紀初頭のイタリアで見られた、当時の著書にも、ローマ帝国衰退以来、欧州の歴史において初めて資本が提供された、これは革命である(利子率が下がっていること)と述べられている(p16)
・16世紀のイタリアは山の頂上までワインのためのブドウ畑になっていた、ワイン製造業は当時の最先端産業なので、ブドウ畑を新たにつくることがないとは、利潤を生み出す投資先がもうないということを意味した(p17)
・利潤率の低下は、設備投資をしても、十分な利益を生み出さない設備、つまり過剰な設備になっていることを意味する(p19)
・ラテン語を独占していたローマ・カトリックと俗語(ドイツ語、英語)でしか情報を得られないプロテスタントとの戦いであった(p43)
・金融緩和の有効性を主張する人達の言い分は、貨幣数量説に基づく、貨幣の流通速度は、一定のもとで「貨幣の数量が物価水準を決定する」という理論、MV=PT(M:貨幣数量、V:速度、P:物価水準、T:取引数量)、しかしこの理論は低金利のもとでは崩れている(p44)
・アメリカは石油価格の主導権を取り返すために1983年に石油先物を取引するWTI市場を作った、これは石油を金融商品化することを意味する、これでメジャーの都合のいい値段で売り買いできるようにした(p50)
・本来は1970年代で終焉の始まりを迎えたはずの資本主義を、アメリカは「電子・金融空間」を創設することで、延命させた(p57)
・1477年のピーク時を100とすると、実質賃金は1597年には、24まで下がった、1477年と同じ水準に回復するのは、1886年となる(p70)
・長い16世紀の新興国であったイギリスでも消費者物価が1477年から上昇し続けた、イギリスの一人当たりのGDPが当時の先進国のイタリアに追いついた時点で価格革命は収束した、それは17世紀半ば、同様に中国の一人当たりのGDPが日米に追いついた時点で、21世紀の価格革命は収束する。日本の成長率を1%、中国を8%として、およそ20年かかる(p79)
・1995年までは、国境のなかに住む国民と資本の利害は一致していたので、資本主義と民主主義は衝突しなかった(p82)
・日本の国内の中小企業の利潤率は1973年にピークをつけた、その時点で国内において拡大路線が終わったことを示唆している(p107)
・長い16世紀のスペイン帝国が戦争を繰り返したのは、当時のシステムが転換しようとしているにも拘わらず、過去のシステムを強化してなんとかしのごうとしたから。今の先進国の経済政策は、当時のスペイン帝国に似ている(p126)
・近代欧州の歴史を理解する上でのターニングポイントとなったのは、16-17世紀にかけて海の国イギリス(英国教会)と、陸の国スペイン(ローマカトリック)の間で起きた戦争である(p141)
・現在は、海の国であるアメリカの覇権体制が崩壊し、EU・中国・ロシアといった陸の国が台頭しつつある(p142)
・12世紀のイタリア、フィレンツエに資本主義の萌芽を認める出来事があった、1)利子を容認、利子と取るという行為は神の所有物である「時間」を人間が奪い取ること(1215年ラテラノ公会議)、2)イタリアのボローニャ大学が、神聖ローマ皇帝から大学として認められた、13世紀にはローマ法王からも認可、中世においては「知」も神の所有物であった(p158)
・知の所有については、宗教改革で、ラテン語から俗語への交代劇を実現させた(p159)
・どの時代であっても、資本主義の本質は、中心・周辺という分割にもとづいて、富やマネーを周辺から集めて、中心に集中させることには変わりは無い(p165)
・世界総人口のうち豊かになれる上限定員は15%前後である、20世紀までの130年間は、先進国の15%の人々が残りの85%から資源を安く購入して、その利益を享受していた(p166)
・日本のキャッシュフローにおいて、家計部門と企業部門を合わせた資金余剰は、48兆円であり、対GDP比率で10.1%もある、これが銀行・生保の金融機関を通じて国債の購入費に当てる事のできる金額(p191)
2014年3月22日作成
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水野氏の著書は(私にとって)山本七平に勝るとも劣らず外れなしですが、今回も得られるインプリケーションが大きく大満足。
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資本主義は終わると思っていたが、とんでもない、既に終わって30年以上経っていたなんて。
資本主義に取って代わる、皆が豊かで楽しく暮らせる社会システムを、皆で知恵を絞って考え、構築して行こうぜ。(^o^)/
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新自由主義とかグローバリズムとかに本能的に疑惑を感じている僕なのですが、この本はかなり役に立ちました。
僕はもう20年くらいクルマの広告に携わっています。クルマをつくる人達は凄いんですよ。パーツひとつ何銭単位でコストダウンして、1円安くするために寝ないで設計して。そんな思いを重ねてつくった製品を売って、利潤を得る。…でも、輸出比率の高い我が国の場合、為替相場が1円動けばそんな努力は関係なく、一瞬で数億円が吹っ飛んだりするわけです。しかもその相場を動かしておるのが、現代ではヘッジファンドと呼ばれる一私企業であったりするわけで。
どうもこれはおかしいだろうと思っていたのです。
そもそもバブル時代に、実際にモノをつくるメーカーよりも、株や土地を売買するだけのブローカーの方が何倍も儲かるという事になった時にも、ものすごい違和感を感じていたのですが、
本書によって、その疑問が解き明かされました。
「金利ゼロっておかしくね?」とか「生産拠点を中国からベトナム、ミャンマー、次はアフリカ?その次はあるの?」とか疑問に思っていたことをしっかり押さえてくれる。
やはり資本主義はそれだけでは解決できないところまできてしまった。ゼロ金利というのが、既に資本主義の賞味期限が尽きてしまったことを知らせています。これは十六世紀のイタリア・ジェノヴァ以来と言うことで、その「長い十六世紀」と言われた停滞は、まだヨーロッパ、アジア、アメリカ新大陸に存在していた空間的フロンティアの開発によって突破することが出来ました。しかし現代ではもうフロンティアは存在しません。
資本主義は「中央」に「周辺」から富が集まるシステム。そのために常にフロンティアを必要として膨張を続ける。ロシア、東欧、中国、BRICS、アフリカと来たところで空間的フロンティアは打ち止め。(アメリカは電子空間にフロンティアを求めた)その結果同じ国の中で「周辺」を作り出すことでシステムの延命を図る。それが各先進国内での経済的弱者の増加である。中産階級を貧困に転落させて「周辺」とし、経済的優位者=中央はますます富んでいく。という説明が実に腹に落ちました。
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ゼロ金利、ゼロ成長は経済の一時的な停滞ではなく資本主義がもはや正常に機能しなくなった結果だと説く。そのため、現状を打破するには従来型の成長戦略ではなく資本主義に代わる新たなシステムや価値観への転換が必要で、それは「脱成長という成長」を志向するものになる。
民主主義と資本主義は必ずしもセットではない、ということに気付かされた。それどころか経済がグローバル化する過程で資本主義が最優先された結果、知らず知らずのうちに民主主義がなおざりにされつつあるという事実。資本主義は本質的に格差を生む性格を持っている。
そんな資本主義ではあるが、私たちは成長という観念を捨ててそれに代わる価値観を持つことが出来るだろうか?
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拡大することが資本主義の本質だが、物理的空間も電子金融空間もフロンティアはもうない。新興国が成長してきたのでエネルギーを安価に入手することは困難。民主主義は価値観を同じくする中間層があってはじめて機能する。中間層の没落は民主主義の基盤の破壊。グローバル資本は国民国家を超える。などなど大変刺激的。とすると戦争でガラガラポンでやり直しって感じになるのでしょうか。そっちに近づいている気はします。
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本書は2014年3月に発行された本だが、小生は2014年4月に一度読んでいる。このほど再び本書を読み、時の流れと共にさらに説得力を増してきたと思った。
「西欧的な近代化は、途上国から資源を安く購入することで成り立っていたが、途上国の近代化によってその条件はもはや消滅した」。まさにその通りではないか。本書を高く評価したい。
以下は2014年4月に読書した時のレビュー。
『本書は,「経済書」なのか「政治書」なのか、それとも「文明書」なのか、とにかくすごい本である。
本書によると、資本主義はもう「終わっている」となる。 なるほど昨今のウクライナ情勢を見ても、本書の見解は理解できないわけではないが、はたして・・・。
本書が語る雄大な歴史的見解は、まるで著者が「マルクス」であるかのようにも思え、しばしばうなづきながらも、ところどころでは首をかしげた。
著者の今までの著作よりも、一段と読みやすく、わかりやすい「経済書?」であると高く評価したい。』
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正直、過去の著作とかなりバッティングする議論で、目新しさが無い。
噛み砕いて書いているといえばそうだが、それにしてもこれで改めて出版する必要ある?という疑問が強く残った。こういう出版の仕方には賛同できない。
考え方には非常に共感するのだが。
初めてこの人に触れるのであれば、読んでもいいとは思うが、それ以外は無駄読みになる。
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グローバル経済が現在直面している状況は、
(1)資本の増殖の為に収奪対象とする辺境は殆ど残されていない。
(2)豊かになれる上限定員は15%程度である。
以前は南北国家間格差であったが、新興国も辺境
でなくなってきたので、国家の内側に辺境を生み出す (格差の拡大、中間層の没落)。
(3)それでも足りず未来世代からの収奪をも起こしている (ツケの支払いは未来世代へ)。
(4)紙幣を増刷、増税と企業減税で資本の塊集をしても、
投資先が少なくなっている。
(5)地球の資源は無限という前提で走っている。中国・インドなどの人口大過剰国まで近代化して資源多消費国にしている。当然、地球システム自体が崩壊へ向かう
では、どう対処するかとなると、
(1)資本主義にブレーキを掛けて延命させる。
(2)財政健全化する。(あと4-5年の猶予しかないか?)
(3)猶予期間でポスト資本主義の社会を用意する。
(5)ポスト資本主義の社会がどういう社会であるか不明である。現在は企業(資本)の力が強すぎて、国家も労働者も対抗できない。G20の国家間で合意できれば世界GDPの87%を占めるので巨大企業に対応可能。