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入り込むと、あっという間に読み終わる。
すぐ読めたけど、濃い時間だった。
渡会医師の話が印象的だったかな。
6 短編は、二週間に一本。3,4ケ月で単行本一冊のペース
9 若手文芸誌MONKY
115日々何をすればいいかもわからず、思い描ける将来のビジョンもなかった。
→たしかにそういう時期があった。
125渡会に素敵な時間を、彼女たちの人生の貴重な一部を与えてくれたのだ。それだけでも心から感謝しなくてはならない。
→こういう書き方がたまに村上春樹に出てくる。
女性としては、ありがたい表現。
128 紳士とは、払った税金と、寝た女性について多くを語らない人のことです。
231 人間が抱く感情のうちで、おそらく嫉妬心とプライドくらいたちの悪いものはない。
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『イエスタデイ』が特によろしいかと。
珍しくも直ぐに読み直しました、短編の良い所はこういうところにあるかな。
関西弁が眼障りとならずに物語に溶け込み、風変りな幼馴染みの男女とおそらくは「普通」の男の一瞬の邂逅が描かれている、そして解釈が読者に解放されているところも当方好み。
それにしても当たり前だが全編村上春樹の世界ですか。
妙なセックスへの拘りについては、どこかの作家が噛みついていた記憶があるが、確かに分からなくもない。
この点は何か違和感を感じずにはいられない、まぁ作家はそれをわざと読者に撒き散らしているような気もしますが。
2021/9/27追記
「ドライブマイカー」映画化を機に、この短編だけ英訳本と見比べつつ再読。色々考えさせられますなぁ。特にみさきの存在がこの小説では想像を膨らませてくれる存在で。ちょっと映画も見たくなってきました。
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「紳士とは、払った税金と、寝た女性について多くを語らない人のことです」とあるとき彼は僕に言った。
「それは誰の言葉ですか?」と僕は尋ねた。
「私が自分でつくりました」と渡会は表情を変えずに言った。「もちろん税金の話は、ときどき税理士相手にしなくちゃなりませんが」(p.128)(独立器官)
渡会は言った。「彼女より容貌の優れた女性や、彼女より見事な身体を持った女性や、彼女より趣味の良い女性や、彼女より頭の切れる女性とつきあったことは何度かあります。でもそんな比較は何の意味も持ちません。なぜなら彼女は私にとって特別な存在だからです。総合的な存在とでも言えばいいのでしょうか。彼女の持っているすべての資質が、ひとつの中心に向けてぎゅっと繋がっているんです。そのひとつひとつを抜き出して、これは誰より劣っているとか、勝っているとか、計測したり分析したりすることはできません。そしてその中心にあるものが私を強く惹きつけるのです。強力な磁石のように。それは理屈を超えたののです」(p.137)
思うのだが、その女性が(おそらくは)独立した器官を用いて嘘をついていたのと同じように、もちろん意味あいはいくぶん違うにせよ、渡会医師もまた独立した器官を用いて恋をしていたのだ。それは本人の意思ではどうすることもできない他律的な作用だった。あとになって第三者が彼らのおこないをしたり顔であげつらい、哀しげに首を振るのは容易い。しかし僕らの人生を高みに押し上げ、谷底に突き落とし、心を戸惑わせ、美しい幻を見せ、時には死にまで追い込んでいくそのような器官の介入がなければ、僕らの人生はきっとずいぶん素っ気ないものになることだろう。あるいは単なる技巧の羅列に終わってしまうことだろう。(p.166)
「傷ついたんでしょう、少しくらいは?」と妻は彼に尋ねた。「僕もやはり人間だから、傷つくことは傷つく」と木野は答えた。でもそれは本当ではない。少なくとも半分は嘘だ。おれは傷つくべきときに十分に傷つかなかったんだ、と木野は認めた。本物の痛みを感じるべきときに、おれは肝心の感覚を押し殺してしまった。痛切なものを引き受けたくなかったから、真実と正面から向かい合うことを回避し、その結果こうして中身のない虚ろな心を抱き続けることになった。蛇たちはその場所を手に入れ、冷ややかに脈打つそれらの心臓をそこに隠そうとしている。(p.256)
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イエスタデイが、とても好きだ。素直な作品だと思う。
全体的に、過去の短編を思い出させるトーンだった。柔らかく優しく、物憂い物語たち。
やはり、「喪失」はいつでも春樹さんの中にあるんだなぁって思う。ただ、少しずつ、けれど確実に変わっていってるんだなぁっても、同時に思う。
この本を過去の作品の焼き直しだという人もいるだろうし、その意見を完全に退けられるとは思わない(大体、誰かの意見を完全に退ける権利を持つ者などこの世界にいるだろうか? とか春樹さんなら言いそうだし)。
でも、たとえ焼き直しであったとしても、この本がこの時代に焼き直される意味は十二分にあると感じた。
女を失った男たちが、いつか平穏な心を取り戻せるように、切に祈る。
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全ての話に共通して感じたのは、圧倒的な喪失感と、やり場のない寂寥感です。
クセになって、立て続けに2回読んでしまいました(笑)
孤独と沈黙と寂寥を受け入れることができない、男の、と言うか人の弱さを突きに突く、そんな本でした。
結構好きです。
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読んでいると回転木馬のデッドヒートとか中国行きのスローボートとか、あの頃の短編ににた匂いがする。ドライブマイカーはレイモンドカーヴァーの短編みたいで良かったし、イエスタデイはノルウェイの森のパラレルみたいな世界で面白かった、そしてノルウェイの森と違って救いがある。他の作品も過去の小説を思い起こさせる。熱心に小説を読んでたあの頃を思い出して、ちょっと昔の短編を読み直したくなった。
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回転木馬のデッドヒートに一番近い感じだったかな。アフターダークもしくはカフカあたりから続く伝奇感というかなんというかは取れてた、明るめな雰囲気。内容については似たモチーフを何度か書いてるのは何かの実験なのだろうけどどうかね。まあとりあえず一読ではこんな感じ。
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多分まえがきのせいだと思うのだけれど、収録されている短編の内、最初の4編を読んだあたりでは、なんだかサクっと書いた感じだなー、スゲーなぁくらいの感想でした。
なんていうか普通のことを普通に書くのが文学だとオレは思っているので、この短編もそういう感じなのかー、なるほどねー、みたいな。
でも、終わりの2つの短編を読んだら、そんな固定観念というか、思い込みが吹き飛びました。
最近、村上春樹の文章を理解した気になっていたけれど、この終わりの2編に関しては、「何言っちゃってんの?」って感じで、そういえば村上春樹って作家はこういう作家だったんだ、ということを改めて思い知らされました。
全編通しての感想としては、タイトルの「女のいない男たち」が表すとおり、って訳でもないけれど、ストーリーの中にフワ―っと女絡みの話が編み込まれていて、その内容というか関係性がどうにも後味が悪い感じな上に男主観の話なので、男向け小説かなーって思いました。
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女のいない男と言っても非モテの短編集ではなく村上春樹文学でしばしばメインテーマとして扱われる「喪失」がこの短編集の根底にもまた流れている。そんな短編集。
しかし不思議と今作は暗いとか重いというネガティブな読後感を覚えなかった。テーマからしてももちろん明るくはないのだけれど、暗くない。この差は登場人物、主人公達の成熟にあるのだろうと思いながら私は読み終えました。つまり作品の終わりが再びはじまりに戻っていくようなループを繰り返すノルウェイ等と違い、悲しみのやり場、逃げ場を獲得しつつあるような成熟を感じましたが、どうでしょう。
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2014年19冊目。
「いない」のではなく、「いたものを失う」の方が、
一見収録された6つの短編を貫くテーマとしては合っているかもしれない。
だけど、描写されているのは「失う」瞬間以上に、
やはり「いない」という時間の中で現れる心情だったりするから、
タイトルはこれでいいのだと納得したり。
人はいつだって、「過ぎ行く出来事」を生きる以上に、
「出来事に対する瞬間瞬間の解釈」を生きるもの。
それが人を苦しめもするし、豊かにもする。
読後ものすごく余韻に浸るかと言われたらそんなことはなかったが、
なんだかんだで一気読みしてしまった。
「色彩を持たない・・・」のタイトルもそうだが、
概してこれといって見た目や性格が際立たない人物こそ、
変化を起こしたり何かを引き出す触媒になるのが面白い。
触媒ってそういうものだな、と。
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今までの村上作品で、謎のままに
されてきたことの「答え」が
だいぶはっきりした言葉で
近くに見えてきたような…
そんな気持ちになりました。
そう、いつも「続き」が知りたかった。
自分では予想もできない「続き」が、
自分の深い所につながっていく「続き」が。
そのもどかしさが、少しクリアになって、
また、新しい「続き」が楽しみになった。
そんな感じです。
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『1Q84』以前の濃密なハルキらしさからは少し離れた『つくる』に引き続いてさらっとしたハルキ作品だった。ただ、後半に行くほど、少しまた深くもぐっていきそうな感じはある。なんだかんだで一番最初の『ドライブ・マイ・カー』がいちばんよかった。少し前に『風の歌を聴け』を読んだからかもしれないが。
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どの話も生臭い。短編が続けば続くほど生臭くなる。さらに村上春樹のわかる人だけわかればいい的な傲慢さが出てくる。ケチがついた作品を集めた感じが、取って付けた表題作に結集して終わる。だからこそ最初の期待して読んだ短編のある種のストイックさが気持ちよく感じられた。面白かったかと聞かれればイエス。楽しかったかと聞かれればノー。ちなみに読み終わったのがちょうど一時過ぎだったが、電話は鳴らなかった。
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成熟して厚みを増した男たちの話。
村上春樹は短編だろうが長編だろうが、なんでもいいからとにかく読みたい作家の一人。
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やはりこの人は長編より短編の方が個人的には好みのようだ。
イエスタディと独立器官が好きだった。あとは、木野。自分の感情から目を背けない。