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ドライブ•マイ•カー
シフトチェンジを感じ取れないような静謐な物語。
家福とみさきの会話も同じように心地良い。心踊る展開ではないけど、安心して乗って入られてこそのドライブ。
イエスタデイ
ノルウェイの森のように、清潔で孤独な三角関係に、小気味良いクールでリズミカルな会話。ハルキスト垂涎の短編。個人的にすごい好きなタイプ。
独立器官
独立器官なるものがあったら、便利なのか不便かわからない。知らぬ間に誰しもが持っているものとも言えるし、女性だけのものかもしれないし。
シェエラザード
謎を残す展開は次を期待してしまう。でもきっと全てを見えないからこそ生まれる欲望もある。シェエラザードも羽原も謎が多すぎて未消化。
純粋な心も時に狂気になる。
木野
青山の都会的で静謐なイメージは村上春樹的世界観に合致する。それを味わえるだけでこの物語の価値がある。青山、ジャズ、バー、謎、女。最高。
女のいない男たち
人は何かを失いながら生きている。大事な人だったり、大事なモノだったり、大事な時間だったり。静かに、そして決定的に失い続ける。失うことがテーマなだけあって、それぞれの短編の主人公たちは、女を失っている。様々な形で。でもこうして読者として、その喪失の物語を読むことによって、何かが得られると思っている。心躍らせる物語はないけども、ふと心を休ませたい時にもう一度読みたいと思う。
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『多崎つくる』から一変、今作は素晴らしかった。これでもかという春樹節。80年代後半から90年代前半(つまり、『世界の終り』、『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥』あたり)の一番好きな村上春樹のカラーがとても出ていると思う。独身者であったりDINKSであったり、扱うテーマは至って都会的であって、言葉一つ一つの置き方もすごく丁寧で適切。
シェラザードがMONKEYに掲載されたときはん?って感じだったけど、こうして一つのテーマを軸とした短編として見ると完璧に一つのピースとして収まっている。
それぞれ素晴らしいが、『イエスタデイ』は『ノルウェイの森』の雰囲気にかなり近い。そしてなんといっても『木野』。『ねじまき鳥』かと思うぐらい完成された素材であって、次第に回転率を上げて行って最後は高速回転のまま一気に弾けて終わる。短編がそのまま膨らんで長編になることがよくあることを考えると、このままでは終わらないだろう感じ。自作に繋がるであろう気配がすごくする。
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内容紹介
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」から1年、
村上春樹、9年ぶりの短編小説集。表題作は書下ろし作品。
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文藝春秋とかMonkeyなどで読んでいたので,実はこの本で初めて読むのは「女のいない男たち」と巻頭の「まえがき」だけであった。ただ「ドライブ・マイ・カー」などは,タバコのポイ捨てに関するクレームなどがあって,修正が加えられているので,初出のものとは微妙に違っている部分もある。
どれもリアリティーもありながら村上春樹の独特な世界が描かれている短編で面白い。「恋しくて」の中に収められている短編「恋するザムザ」もすごく面白いのだけど。
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「女のいない男たち」
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年から1年、 9年ぶりの短編小説集。
本書「女のいない男たち」は、以下を収録している。
・ドライブ・マイ・カー
・イエスタデイ
・独立器官
・シェエラザード
・木野
・女のいない男たち
を収録している。
個人的に一番気に入ったのは「イエスタデイ」。いつもの世捨て感が無い感じが新鮮でキャラクターもコミカル。よく分からんことを言っている様で、一理あることも言っているだし、終わりはセンチメンタル且つ味わいを残す。
また「独立器官」も割りかし好み。村上春樹の小説において愛や恋絡みを描く場合、主題ならば尚更、SEXを繰り返していることが多いが、それらに比べると文学的な恋煩いだった。
よくよく読むと青年でも少年でも無いいい年した男の恋煩い、しかも後ぐされの無いドライな経験から生まれたものなのだから、そんないいおっさんが何を言うか!?となる。なるんだけど、一方で、男は幾つになっても恋を初めてしたらこんな感じになるだろうね、うんうんとうなづけたりもする。恋の病に犯される恐怖は、大変共感しやすいものだし、村上春樹の小説ではあまり登場人物に共感や同情などが感情が傾かないんだが、死に様を含めてこの遅咲き初恋病とでも言うのか、その病に罹ったおっさんからは目を離せなかった。
面白いのは「木野」。上記の二つよりは、村上春樹らしさを感じる。女に苦い思い出があり、世間や自らに対して悲観的、又は無感情気味になっている世捨て感を漂わせる主人公が登場する。「おれは傷つくべきときに十分に傷つかなかったんだ」と後悔するシーンでは、何故そこまで考えれるのか。そう考えてしまうことが、悲観的な人格であることを示しているかも知れないが、それが辛い。
普通に考えれば、不倫を同僚としていた妻に非があるはずだ。男はその事実に傷ついているはずなのに、謝ったんだからチャラにしようと妻を許す。本当は、その時に十分に傷ついた気持ちを表すべきだった。でも、男って割りかし感情は表に出さないことがある種の美徳になっているから、なかなか上手く出来ないよなぁとも思うのだ。
全短編は、男向けを狙った書かれた訳では無さそうだが、男だったら登場人物達の気持ちを汲み取り易いと思った。
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前書きが、ファンが言う「ハルキ節」というのが一番伝わってきて面白かったです。
短編が6篇入っていますが、どの作品にも様々な種類の喪失感が漂っていて、さらっと読んでも何か引っ掛かるし、深読みすればするほどどっぷりハマるんだろうなぁという作品ばかり。
個人的には、『独立器官』が一番好きでした。
あらすじだけで考えると思わず「乙女か!!」と突っ込みたくなってしまうお話ですが、なんかきゅんとさせられてしまった…。
『イエスタデイ』のまっすぐだけどどこか寂しい感じや、『木野』の不思議テイストも面白かったです。
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村上春樹は、長編よりも短編のほうが好きだ。日常生活の中で感じる心の情景が、上手く言葉で紡ぎ出されている。切なく物悲しく。「木野」が特に印象に残った。
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あっと言う間に読んでしまった。
村上春樹の作品は普段、特に比喩が好きで読んでいるのだけれど、ストーリーにも魅力があった。
特に良かったのは「シェエラザード」次に「木野」。短編集「カンガルー日和」と同じくらい良いと思った。「色彩をもたない〜」より好き。
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既に文藝春秋で発表されていた作品群に比べ、書き下ろしの表題作はちょっと感覚が合わなかった。
読後の満足度が得られなかったので☆2つ。
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『ドライブ・マイカー』『独立器官』
『イエスタデイ』
ひとりの女性を心から愛した男たち…
女性の立場から言うと、こんな風に愛されたら
いいな…でもちょっと怖い、、
なんて思いながらどっぷりはまりました。
上記三作品が私は、お気に入りかな。
満足満足でした!しばらくして再読します。
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店頭に並んでまで買うようなハルキストではないが、話題作でもあり、嫌いではないので土曜日に店頭に平積みしてあったので購入。
彼の作品は、いわゆる純文学に属し、それは、ある意味、アートなので、読者に問いかけるようなところがあると思う。今回の「女のいない男たち」にも、その問いかけがあると思うし、人によって答えは違う。
今回は、彼の作品らしく、それぞれの作品を通して、彼は「箱のような閉じられた空間」をモチーフにしている。それが、自動車だったり、風呂場だったり、ハウスだったり姿は変えているのだが。その箱の中と外とを描いているこの本は、自分も「女のいない男たち」なのではないかと考えさせられる。まあ、ご一読あれ。
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いつも通りの村上ワールド。短編で読みやすい。
村上ワールドは好き嫌いが別れるでしょうが、個人的には大好きです。
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それぞれの話に、それぞれの真実の心が潜んでいて、切なく悲しい。
とりかえしのつかない、行き場のない心。
痛む心。
その痛みが、じんわりと広がる。そんな作品集。
最後の作品だけは、内容の割に表現が少ししつこい感じがした。
2014/05/10
空白を感じる物語ばかりだった。
一貫して虚無感が漂っている。
そして、それは、ちっとも特殊なことではなくて
生きている限り、誰もが体感する虚無感であり
誰もが内包している空白なのだ。
まっさらでは生きてゆけない。
しみができ、傷痕ができる。
ベッドに丸まって震えながら、時が経つのを祈るしかない。
大人の心の弱さが浮き彫りになっている、そんな小説だと感じた。
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喪失感。「なぜ?」という問いがわきあがり、考えても「せんないこと」(関西弁かな?)と切り離すがそれはジワジワと自分の一部を(かなり、大事な)作っていく。
これが、この本を読んだときの僕の経験とシンクロしたこと。くわしいことは書けないけど。
作者自身も書いていることだけど、一つのモチーフをめぐって、「いろんな手法、いろんな文体、いろんなシチュエーション」が使われている。それらを読み返して味わうのも楽しい。
そして、比喩。いいなあ。個人的には「イエスタデイ」がいい。関西弁を使わなくなった、僕としては。
「独立器官」は年齢が近いため、ドキッとさせられる言葉がたくさんあった。
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村上春樹久しぶりの短編集。
1つ、1つ。大事に読んだ。
この短編集の、各々のストーリーに共通しているのは
表題作の通り、自分の大切だった、もしくは大切のように
みえる女の人を失ったという点。
そのとき、自分を損ない失うほどの痛みを伴ったもの。
痛みを抱えて生きていくもの。
それぞれあれるけれど、この人の小説を読むといつも
誰かを強く求めることの難しさ、危うさを感じる。
重く充実した時間、やっぱりこの人は、違う。
比喩表現も変わらない。