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テーマを持った短編集。
◆ドライブ
それなりに仕事がある俳優・家福。若くてテクニックの高いドライバー・渡利。お互いの暗い背景と、なんとなく波長の合う感じが絶妙に書かれている。
◆イエスタディ
♪昨日は、あしたのおとといで
おとといのあしたや~♪
この意味のない替え歌を歌う男・木樽。田園調布で生まれ育ちながら完璧は関西弁を喋る奇特な男。主人公は関西から出てきて標準語を喋る早大生。木樽は自分の彼女を主人公に差し出しながらも、実はとても繊細なヤツで、勘の良い男。シュールで笑える話かと思いきや、ちょっと物悲しさががる結末。
◆独立
非の打ちどころのないプレイボーイな渡会医師。美容整形医ですご腕を持ち、あとくされない恋愛を楽しみ生きてきた。それが恋煩いでまさかの瀕死となり・・・末期に見える色々なもの。
◆シエラザード
名も知らないセフレ。千夜一夜物語の王妃の名シエラザードの名を何となく付けながらも本当のところは謎の女。主婦で子持ちでさえない容姿。でも相手の心を惹きつける話術があり、全盛はやつめ鰻という不思議な人。読みながらシエラザードの物語にドキドキしてしまった。
◆木野
どの短編集もありそうでないネーミングを付けておきながら、木野と来て、そこがツボだった。ひょんなことからバーを始めることとなった木野。なんとなく暮らしていければいいな・・くらいの感じだったが、営業する以上はお客に影響される事もある。猫がいて2品のその日のメニューがあって、手持ちのLPをかける店。お客の中でも静かに飲みながら読書をしたいという・神田。(かんだとは読まないところが、まんまの感じ)時にはチンピラを追い出してくれたり、何となく不思議な常連。そんな店から離れなくてはならなくなる。世の中から存在を消すように助言されたけれど、やっぱり寂しさがあってか叔母に自分の存在をアピールしてしまう。何故そんなことになったのか、やがてはどうなるのか・・・。小劇場の芝居の様な内容だった。
◆女のいないあなた
「ある日突然、あたなは女のいない男たちになる」
本当にこれは当たり前のようにあるし、女にも言えることだと思う。死別、別れ、もつれ・・・あらゆるサヨナラがあるだろうし、元々異性に縁がない人だっている。自分にも当てはまるし、そう思うとどの短編も他人事ではない感じがした。どれもフェイドアウトするような終わり方をしているとことも、考えさせる余韻みたいなものを残している。この最期の短編に、著者のメッセージが込められているように思えた。
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好きでも嫌いでも、ましてや最近では面白いとも面白くないとも思わなくもない村上春樹作品だけど、絶対、買っちゃう。で、そこそこのスピードで読み終わる。登場人物たちの点々とした心の闇のような部分にふれると、心地よい息苦しさを感じる。なんだかんだいって、誰よりも美しくリズミカルな文章を書くよな、と毎度思う。音楽やお酒や異性を、あんな表現で愛でてみたいものだ。実際やったらドン引きだろうけども。
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《ドライブ・マイ・カー》
「マニュアル・シフトは好きです」と彼女は冷ややかな声で言った。まるで筋金入りの菜食主義者がレタスは食べれるかと質問されたときのように。p21
《イエスタデイ》
何を言っても良い効果は生みそうになかったので、僕は沈黙を守っていた。コーヒー・スプーンを手にとって、その柄の模様を興味深そうに眺めていた。エジプトの古墳の出土品を精査する博物館の学芸員みたいに。p88
栗谷えりか「樹木がたくましく大きくなるには、厳しい冬をくぐり抜けることが必要みたいに。きつも温かく穏やかな気候だと、年輪だってできないでしょう」p93
《独立器官》
渡会医師「紳士とは、払った税金と、寝た女性について多くを語らない人のことです」p128
《シェエラザード》
おれは一人で孤島にいるわけではない、と羽原は思った。そうではなく、おれ自身が孤島なのだ。p176
愛の盗賊、と羽原は思った。まるで無声映画のタイトルみたいだ。p188
《木野》
《女のいない男たち》
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やはり春樹の短編は面白くない。
自分がいま読むべき本ではなかったかもしれない。
しばらく棚の奥にうもれてもらいます。
強いて言うなら「独立器官」が面白かったかな。
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あぁ、あのBARは、ここだったのかぁみたいな作品の微妙な繫がりもあり、面白かった。この話の続きが知りたいっと心残り感にモヤモヤする作品もあったけど、総括すると村上ワールドを楽しめたなぁと思います。
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読める、読めるぞー!
以前まで、僭越ながら村上春樹氏の作品を毛嫌いしていました。
それは処女作「風の歌を聴け」を手に取り、
読書というものを自分のものにした感覚に陥り、
その勘違いのまま「ノルウェイの森」の作品に意気揚々と突入したのですが、
これまたどっぷりの恋愛ものでして、
性描写が多すぎて過去の自分には悪心するほどのものだったので、
「もうこれ以上読まない!」と決意していたのですが、
それからだいぶ経っていたので再度挑戦してみたら、
内面描写の豊富さたるや文学的に美しいと感じました。
これは村上春樹氏にしか書けんものです。
すべての心情にかゆいところに手が届くような表現を多角的視点から取り組んでおられること妙技です。
一方では、回りくどいと批判されるやもしれません。
性描写が多いのではないかと言われるやもしれません。
そんなことはほっといて本作を読むべき。
ひとつの文学作品として面白いです。
本作に限らず世界的音楽を作品に取り込んでいらっしゃる面がありますが、音楽など知らねども大丈夫。
その情緒的世界に引き込まれます。
いい作品に巡り会えたことに感謝いたします。
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アーネスト・ヘミングウェイからとったのね。そっちは読んでないけど。
最初のと最後の話は繋がってるのかと思ったけど、どうなんだろう。
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『木野』が好き。
『ノルウェイの森』のラストに通ずる不穏な静けさ。
この感じを求めて、わたしは小説を読んでいる。
これまでの短編、特に『トニー滝谷』を読み返したくなった。
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「正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世の中にはあるのです。」
(喪失感漂うこの一冊の中でも最も難解でミステリアスな「木野」より。表紙のイラストはこの小説。BAR、柳、猫。)
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なぜか頭にひっかかる言葉を柱として書かれた一連の短編小説集。ドライブ・マイ・カー、木野。
初めからいないわけではなく、去られたり死なれたりで失っている。絶妙にシュールな。
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2021.5再読
ドライブ・マイ・カー △
イエスタデイ ▲
独立器官 △
シェエラザード ▲
木野 ▲
女のいない男たち ×
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村上春樹って死ぬまで青春してるんだろうなぁ。
好きだけど、、、、、、
いつ読んでも、、、、、
うん、ああこうだった感。
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それぞれの理由や制限によって女の人といっしょになれない男たちの短編。
ひさしぶりに、ちょっと前の村上春樹の感覚の小説でした。
切なくたゆたう。
メタファーいっぱい♪
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村上春樹を食わず嫌いしてきたのだが、多分、わたし、彼の作品好きになれるんだとおもう。表現とか、まどろっこしさとか、鼻につく感じとか好き。わたしが男だったら間違いなくハルキストになってる。
けれど、やっぱ彼が描く男が好きでない。どうしようもなく好きでないので食わず嫌いは続きそうです。
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あぁ、これこれ。この世界観こそ、村上春樹。長編も好きだけれど、短編でもしっかり心に刻まれる不思議な世界観。
「ドライブ・マイ・カー」女性運転手との会話で元妻の浮気の話をする。
「イエスタデイ」田園調布出身なのに完璧な関西弁をしゃべる変わり者の木樽の幼馴染の彼女の裏切り。
「独立器官」女性関係も含め何一つ不自由しなかった渡会医師の初恋と失恋の末。
「シェエラザード」のちょっと変わった前世の話や、憧れの男子の家に空き巣に入った話。
「木野」妻に裏切られた木野は、ひっそりとBARを始めた。柳の木と猫と蛇とカミタ。
「女のいない男たち」元カノが自殺したという悲報を受けた男の話。
いつもと変わらない日常の中でふと自分だけに静かに「おかしなこと」「普通でないこと」が起きている不思議な感覚。夢を見ているような、誰かに説明しても理解してもらえないような、虚無感と孤独感。
永遠に失われて、損なわれて、傷ついたのに、自分は何もできないでいる。それでも、世界は何も変わらず平然と回っている。
削除された幻の「イエスタデイ」の関西弁替え歌
昨日は
あしたのおとといで
おとといのあしたや
それはまあ
しゃあないよなあ
昨日は
あさってのさきおとといで
さきおとといのあさってや
それはまあ
しゃあないよなあ
あの子はどこかに
消えてしもた
さきおとといのあさってには
ちゃんとおったのにな
昨日は
しあさっての四日前で
四日前のしあさってや
それはまあ
しゃあないよなあ
この部分が大幅に削られてしまったのは、とても残念。
悲しみをないがしろにせずに、しっかり感じ切る。泣いて、叫んで、暴れてもいいから、ちゃんと自分の中で起きた感情をしっかり感じ切ること。
それを後回しにすると、ずっと、ずっと、ついてくる。