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戦後アメリカの統治下にあった時代。
通常ならばアメリカ軍と沖縄の住人が仲良くなることはない。
しかし、軍医と沖縄の画家が通じ合い、親友となる。
それを結び付けるのは「絵画」。
敗戦国と戦勝国という大きな壁があっても、絵画を通じて、徐々に近づいていく心情が鮮やかに描かれている。
その中に、いまだに続いている沖縄問題があり、アメリカ軍の都合、統治されている沖縄の状況、両者の観点が書かれ、考えさせられた。
テンポの良い文体で、あっという間に読めた。作者は広島出身であるが知らなかった。他の本も読んでみたい。
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音楽は国境を越える、とはよく聞くが、確かに芸術は国境や時代を越える。
魂のこもった力のある表現物や表現者は、見る者の心に直接働きかけるからだろう。
理屈も理由も考える暇なく、感動を呼び胸を震えさせる。
戦後すぐの沖縄の米軍基地に軍医として派遣された新米精神科医エド。
ニシムイに美術村を作り、画家として生きるために描くタイラ。
自らも画家志望だったエドは、ニシムイの画家たちの描く絵と、純粋に創作に向き合うきらきらした瞳に惹きつけられる。
巡り合うとは夢にも思っていなかった彼らが、巡り合い、国も立場も越えた友情を育む。
しかし、戦後間もない時代の沖縄という特殊な場所にあって直面する現実は、タイラたちニシムイの画家に厳しく、エドたち米軍の軍医に苦いものも多かった。
物語終盤の別れの気配と、ニシムイの画家の一人である描くために生きるヒガに降りかかる不条理な悲劇の辺りから、鼻の奥がツンとなる。
エドの怒り、画家たちの誇り、お互いに対する信頼と友情。
胸が熱くなり、沁みたものは堪えきれず目から零れ落ちた。
沖縄を去るエドが大事に抱えた二枚の肖像画。
チカッ、チカッ……。七つの光の棘。
眩い太陽を集めた光の棘は、小さいけれど強く、胸にほんのり温かい痛みを残す。
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わーやっぱり実話ベースだったんだ。
と言うのが、読み終えて、すごい説得力とともにひしひし感動したところ。
終戦間もない沖縄、当時はまだ日本ではなくアメリカの占領地でした。
在沖縄アメリカ陸軍の従軍医としてやってきた新米精神科医師のエドと、ニシムイ・アート・ヴィレッジの芸術家たちとの交流を綴っています。
沖縄といえばもはや楽園リゾート的イメージで、戦中戦後の沖縄といっても、ひめゆりの塔がおぼろげな史実として浮かぶくらいで...なんか日本人としてすごく情けないと言うか申し訳ない気持ちになりました。
アメリカに占領されて制圧された沖縄で、絵を描くこと、絵を鑑賞することで救われる人たちが、眩しくもあり悲痛でもありました。
どんな過酷な状況でも、そういう人たちがいたと言う事実に、いまの私たちも救われると思う。
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戦争直後の沖縄での、地元画家とアメリカ軍医の交流がテーマ。
印象深い表紙2つの肖像画。
絵が訴え問いかけるものを作品化する著者の筆力はすごい。
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占領下の沖縄に実際にあったニシムイという芸術村、本格的に美術を学んだ沖縄に多い名前の画家たちと占領軍にアメリカから派遣された若き軍医たちの友情の話。
芸術家には、良き理解者、パトロンが必要。
全てを失った沖縄の地で、絵を描く日本人の理解者がその土地を廃墟としたアメリカ人・・・その若きパトロンの理解に打たれた日本人の原田マハさんが描いたお話し。思い入れのピンポン球打ち返し~また打ち返し~、みたい ^^
太陽の棘。太陽は恵みも生むし、人の肌や感情に突き刺す棘にもなるということかな? 突き刺さって温かい記憶に留まることもあるようだ。
どの程度、サラリと書くか、粘って熱く語るか・・・表面サラリと奥底で熱い・・・そんな話しが好き!
次の作品にも期待して星4つにとどめます。
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子供の頃から何度も行った沖縄は明るくてちょっとアメリカンなイメージしかなく、小学校の先生に戦争の話を聞いたけれどピンとこないままでした。この本はアートを入り口とした終戦時の沖縄の記録。実際にあったニシムイ美術村のことをアメリカの軍医の目線で実話を元にして書いたストーリーです。勝者と敗者、加害者と被害者、占領者と非占領者の関係はアートを媒介として友情へと発展していくことができるのですね。
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アメリカ統治下の沖縄で絵を描くためだけに生きる画家たちとアメリカ人医師の交流を描く。
実話をもとにした話し。
なけなか太くて濃い話しで後半になるにつれ引き込まれてしまった。
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人と人との出会いは不思議。
仲間とドライブに出かけていなければ、ニシムイ・アート・ヴィレッジの看板に気づいていなければ、画家たちと出会うことはなかったのだから。
美術に関心があったということも大きいとは思うが。
表紙になっているような絵を描く画家かぁ。
絵を見ただけでしびれて、何度も何度も通いつめてしまいそう。とても魅力的な絵なんだもん。
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原田マハさんすごすぎる
美しいだけじゃなくて激しくてリアルで辛くもあった
あの時代の沖縄を私は本当の意味で知ることなんて一生できないから、本を読んで感じ取るしかないんだと思う
それをたかがフィクションで、なんて批判はあるだろうけど、それでもこの描写はあまりにも現実的で、当時の人たちに想いを馳せずにはいられない気持ちになる
見ることは決してできない絵を、文字で言葉でこんなにも表現できる人はいないだろうなぁ
いろんなジャンルの原田マハ作品を読みたい!
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戦後のアメリカの統治下にある沖縄での、アメリカ軍医の物語。絵が好きな日系人の主人公は、画家が集まる集落に出会う。
共通する熱い絵への思いで距離が近くなっていく。のんびりとしたペースで話は進むが、締め方はさすがといった感じ。
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原田マハの美術シリーズで、最高傑作だと思う。
楽園のカンバスみたいに、変にミステリー仕立てにせず、淡々と物語りを綴ったことが手法として正解だったと思う。
戦争の真の悲惨さと、真の被害者は誰なのかは書かなくてもどっしりと読んでいる方に伝わってくる。
阿部さんのせいか、世代のためか、太平洋戦争を顧みる作品が増えてきている。本作もビジュアルで、是非映画化して欲しい。
作者は今回も直木賞を狙ってるんだろうな。とって欲しい。
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読んでる途中で、無粋とは思いながら、ニシムイ芸術村について、検索をしてしまいました。史実とフィクションの部分の融合具合が絶妙。
ニシムイの画家たちがしばしば、ゴッホやゴーギャンに対比されて描かれるように、オキナワの、タヒチのような「楽園」の日差し、空気が鮮烈。
一方で、占領下の沖縄の叙述は生々しくも厳しく、今現在に至っても続く沖縄の置かれる立場、特殊性が、きっちり描かれているのも、見逃せないところ。
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沖縄画壇の史実を基にした原田マハさん絵画シリーズ第3弾。
戦後数年間 沖縄アメリカ陸軍基地に勤務した精神科医と
ニシムイ美術村の芸術家たちとの交流を描いた作品。
最後の別れの場面が切ないけど 終戦後にアメリカ人と
沖縄の人が こんな絆で結ばれていたというのが
うれしく 清々しい。
表表紙、裏表紙の2枚の肖像画が 読後 改めて感慨深い。
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沖縄ニシムイの絵画村の画家達とアメリカの精神科医との魂に触れる交流が素晴らしい。別れの場面は唐突にやってくるが、彼らがきらめかす鏡の光が、とても美しく感じられた。そして表紙の玉那覇正吉の絵が素晴らしい。この作品で知る事が出来たのも良かった。
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期待していただけに残念というかもったいないというか・・・。
実話を基にしていることが逆に足枷になっている感が否めない。
完全なフィクションだったらもっとのびのびと描かれていたのかなと。
しかし「ジヴェルニーの食卓」も事実と虚構が入り混じっているはずなのにずいぶんと楽しめた。
と言う事は受け取る側の問題と言うことかもしれない。
異国の地が舞台だったらすんなりと小説として受け入れられる。
しかし舞台が沖縄となると身近な場所だけその戦後たどってきた道をどうしても思い浮かべてしまう。肩入れしてしまうというか。
米軍医師と日本人画家の友情。
彼らの間柄は特別なものであったのは間違いない。
だからこそ表紙の二枚の絵がこうして時を経て表舞台に出てきた。
でもそこに物語で描かれるような友情があったのかと言われるとどうなんだろう。
物語が一貫して米国人医師の立場から書かれているせいだろう。
画家のタイラの目線がここに入ってくればもっと深みが出てよかったんじゃないかな。
占領下にある沖縄の人々の悔しさを掘り下げてほしかった。
ちょっときれいごとで終わっているところが残念。
ひねくれ者なのでこんな感想になってしまった。
いや、十分楽しめたんですけどね。
マハさんだったらもっと書けたんじゃないかなと。
辛口になってしまいました。