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『悔いているのか、憎んでいるのか、悲しいのか、それとも嬉しいのか、涙ではわからない。まして、口から出る言葉は、もっと信用がおけない。人は、いつでも、どんな言葉でも、簡単に口から出せるのだ。』
「ゼンさん。来てくれたんだ。嬉しい」
「琴の音を聴くためです」
「そういうときはね、ノギさんの琴が聴きたくて、と言うの」
「そうか。ああ、気がつきませんでした。覚えておきます」
「大丈夫なの? 鈴屋が襲われたりしない?」
「それは、その、たぶんですが、解決しました」
「え、どんなふうに?」
「また、あとで、えっと、チハヤ殿が説明してくれるかと」
「ゼンさんが、今説明したら良いじゃない」
「いえ、今は、ノギさんの琴が聴きたいので」
「あらら、なんか、ちょっと変な気もしますけれど、まあ、ええ、だいたいそれで、よろしいと思いますよ。そんな感じです」
「刀のほかに、二つある ー 一つは場数。もう一つは知恵だ」
「人は、じっと待つことができない。それはまるで、息を止めることにも似て、苦しく感じられるものだ。痺れを切らし、つい動こうとしてしまう。戦いというのは、そうして始まるのではないか。」
「拙者が果てたときには、フミは自害しようとするでしょう。そのときには、どうか止めないでいただきたい。私が願うのは、それだけです」
「俺はな、フミさんのために刀を抜く。それだけのことだ。なにか不足があるか?」
『とにかく、自分の刀を、自由に振ろう。
それだけだ。』
「まさに今、大勢の人を殺そうとしている者がいて、それを止めねばならない、という場合には、その者を殺し、多くの命を救おうとするかもしれない」
「救う命のために、命を奪って良いことになります」
「そうなりますな」
「それは、正義ですか?」
「いえ、正義ではない。ただ、しかたがないことです。さきほど貴方が言ったように、正義とは、そのような悪人がこの世に生じないように導くことではないでしょうか」
「少しくらいの濁りは、あった方がよろしい。この世にあるものは、いかなるものも、必ず無駄なものが混ざっております。なにも溶けていない水はない。なんの匂いもしない風もありません。それでも、それを綺麗な水といい、澄んだ空という。おそらくは、正しい剣、正しい刀も、そのようなものと想像いたします」
『いくら考えても、答えのない問題ばかりだ。答がないことが自分でもよくわかる。それなのに考えてしまうのだから、困ったものだ。こういうのは、人の質なのだろうか。』
『チハヤは、また声を上げて笑い、リュウがつられて笑った。何が面白いのか、よくわからなかったが、自分の心も温まった。酒のせいではなかったはずだ。』
『みんなが同じではない。それぞれが、自分の命を持っている。なにかを楽しみにして、生きているのだ。苦しみだけで生きている者は、たぶん少ないだろう。それでは生きていけないように思われるからだ。』
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結末悲しかったなー。良い方向に動いたこともありつつ、でもなぁー。うーんとか悩みつつ終わった巻でした。
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ヴォイド・シェイパシリーズのなかでもいちばん読みにくい作品だった。事情が込み入っている。人を斬りたくないが刀を極めたいという矛盾。女性と暮らすということ。という二つが軸かもしれない。
刀をふるか、刀をすてて人と暮らすか。
キクラさんが言っていた、愛しい者がいるということは、傷があるのと同じ、という言葉が心に残った。
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『ヴォイド・シェイパ』シリーズの4作目。3作目『スカル・ブレーカ』に続けて積読本を消化…。
霧が立ち込める山の中。短文で詩のような戦闘シーンの描写がいい。『スカイ・クロラ』シリーズの、空の戦闘シーンが思い出される。
今更ながら純粋で素直な主人公が可愛いと思う。真っ直ぐに世界を見つめて、新しい世界を広げながら、何故か?と問う。考えて人と話して考えて。少々理屈っぽいが穏やかに正直に人と対する姿勢は見習うべきところがある。
最終巻でようやく都行き(2作目辺りから言ってる)。4巻分の気になる伏線の回収のために明日本屋へ行こう。
160602
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再読なんだが…。
一日ゼンで楽しんだ。
あさのあつこのやつと混ざったりもしたけど。
年齢を考えるのはやめよう。うん。
再読。2021.11
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『ヴォイド・シェイパ』シリーズ4作目。今回は冒頭で斬り合いとなった凄腕の剣士キクラと仲間になり、キクラとその妻を守る為、ゼンがキクラ、チハヤとともにキクラの敵と戦う。
今回の話は二つの切なさを感じた。
ゼンと意気投合した(ちょっと言葉のイメージが違うかもしれない。笑)キクラは病床の妻を守る為、自らの出世を諦め故郷に戻ろうとしていたところであった。しかし、故郷を戻ろうとしているキクラに対し、キクラが以前に所属していた剣術道場のお家騒動によりキクラに濡れ衣を着せ、キクラを亡き者にしようとする一派が近づいてきている。ゼンはキクラに加勢することに決め、その敵と戦う。
この戦いを終え、ゼンは強い者と戦いたい、倒したいという気持ちは強くあるものの、相手を倒す、つまり殺してしまうことについて疑問を感じるようになる。
特に凄腕のキクラを倒したさらに強敵の相手に相対したゼンは「たた、戦いたい。倒したい」という気持ち、自分の欲望だけで相手と戦う。そしてかろうじて相手を倒すものの、そこで得たものについて自問自答する、そこに意味はあるのか?
その相手は自分に殺されなければもっと別の道があったのでは無いか?自分がその者の別の道を無くしてしまう権利があるのだろうか?
剣士あるゼンが相手を倒し、殺すことに疑問を持つようになってしまう。相手を倒したことにより、自分に存在価値があるのかと問うこととなるゼン、非常に切ない結末だ。
そしてもう一つの切なさは、ゼンの身を案じるノギの存在だ。
ゼンが侍であり、いつ死ぬかもしれない身であることを理解し、それでもゼンの身を案じることしかできない。ゼンのことを好きにならなければこんな気持ちになることも無かったのに・・・。
敵との対決でキクラやその妻を失ったもの、一応、無事に自分の元に帰ってきたゼンを見て、ノギは涙する。
ノギの心情を理解できるようになってきたゼンもノギの気持ちに答えたいという気持ちが芽生えてくる。
これも切ない。
ゼンの行く先には何が待ち受けているのか。次巻、最終巻をじっくりと楽しみたい。
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一度戦った人たちと共闘する熱い展開で興奮した。しかし多くの敵を斬り命を奪い、守り切れず結果手に得られたのは何だったのかという部分もある作品。
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著者の膨大な作品の中でスカイ・クロラシリーズと並んで読み終えていないシリーズの第4作目をようやく読んだ。スカイ・クロラは今ひとつのらなくて途中で挫折中だが、こちらのシリーズはどれも面白い。相変わらず切れ味のよい文体で一気に読み終えた。次作最終巻も楽しみ。