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SF。短編集。アンソロジー。
とにかく著者の顔ぶれがスゴイ。
苦手な作品もあるが、やはり高品質な作品揃い。自分にはイーガンはまだ早かった。
気に入ったのは以下の作品。
ロバート・シェクリー「危険の報酬」
近未来サスペンス。サバイバルゲーム。ブラックユーモア。
ジョージ・R・R・マーティン「夜明けともに霧は沈み」
惑星調査。非常に幻想的。情景描写が美しい。好き。
ジェイムズ・ティプトリーJr「いっしょに生きよう」
未知の惑星冒険譚。知的生命体とのコンタクト。『たったひとつの冴えたやりかた』と、オールディス『地球の長い午後』を足した印象。読後感が良い。
パオロ・バチガルピ「小さき供物」
『第六ポンプ』でも見られた世界観。グロテスクかつリアリティがあって怖い。
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シェクリイの記念碑的作品を皮切りに、これでもかという豪華ラインナップなアンソロジー。マーティン、ティプトリー、ウィリスあたりが好み。特にウィリスの「ポータルズ・ノンストップ」!!からの〜SF!みたいな。ル・グインの「孤独」もじわじわ来ます。
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知識に偏りのある私なので収録されている多くの作家が初だったが、総じて面白かった。
テッド・チャンを目的での購入だったが、他の可能性を知れた。
収録されているテッド・チャンの作品は『息吹』、先日発売された新作の単行本のタイトル作でもある。
静かだが緻密な世界が完璧に作り上げられていた。
さすがという感じで、読後の満足感が大きい。
収録順が最後というのは、実力の評価と人気が伺われるところ。
最後と同様、短編集の顔である最初の収録作品はアーサー・C・クラーク。
これもまあ誰もが納得の順番ではないかな。
作品『遭難者』は、全収録作品の中で一番短い。
余計な言葉はなく、スマート。
クラークの頭の良さが感じられる。
前述の二人以外で好きだったのは、『ホール・マン』と『対象(シンメトリー)』。
それぞれラリィ・ニーヴン、グレッグ・イーガン作。
人気がある作家のようだが、勉強不足で初でした。
SF界の巨匠との事で…、お恥ずかしい限り。
(グレッグ・イーガンはカズ・レーザーが好きと言っていた本の作者じゃないかな? (『エターナル・フレーム』))
やはり私はハードSFが好きだ。
全作品が好みななわけではないが、最初に書いた通り総じて良品。
基本音楽もベスト版よりオリジナルアルバムを好み、本もこういった寄せ集め的なものは買わない主義の私だが、これは買って良かったと素直に思う。
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普段アンソロジーものは読まないのですが短編なので軽い読み物として、また短編集初収録作品のみということもあり読んでみました。読み終わってSFは好きですがそのジャンルの広さを感じました。名の通った作者でも合わないものは合わない。以下面白いと感じた作品順です。ストレスなく読めたかどうかが主な判断基準。
「危険の報酬」 ロバート・シェクリイ
「小さき供物」 パオロ・バチガルピ
「遭難者」 アーサー・C・クラーク
「いっしょに生きよう」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
「ポータルズ・ノンストップ」 コニー・ウィリス
「江戸の花」 ブルース・スターリング
「夜明けとともに霧は沈み」 ジョージ・R・R・マーティン
「ホール・マン」 ラリイ・ニーヴン
「息吹」 テッド・チャン
「耳を澄まして」 イアン・マクドナルド
「孤独」 アーシュラ・K・ル・グィン
「対称(シンメトリー)」 グレッグ・イーガン
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自分の読解力に情けなさを感じる部分が何度か出くわしたものの、コニー・ウィリスの素敵さを知った。そして、テッド・チャンの天才感。
===
アーサー・C・クラーク「遭難者」 ★★★☆☆
• 太陽に生きる生物(ガス状の生き物らしい)が爆発によって太陽から飛ばされる。一方で、飛行機のレーダーで謎のガスの塊を見つける地球人の目線。
ロバート・シェクリイ「危険の報酬」★★★★☆
• 平凡な男、ジム・レイダーは報酬を得るために、危険な状況から脱出するというリアリティショーに出演する。
ジョージ・R・R・マーティン「夜明けとともに霧は沈み」★★★★☆
• 魑魅の栖(すだまのすみか)と呼ばれる惑星。魑魅(化け物のこと)の目撃情報や襲われた体験談はあれど、その存在自体に確証はまだない。この惑星にサンダーズはCastle in the Airを建てた。調査隊のデュボウスキーは魑魅の存在を(存在しないことを)確認しに、私はルポライターとしてその事実を記事にするために来た。
• SF的な展開よりも、サンダーズの心情(切なさ)や人間関係を描くことに重きを置いた美しい文章。
ラリー・ニーヴン「ホール・マン」 ★★★★☆
• 古い翻訳小説にありがちな読みにくさがあるもあるものの、しっかり冒頭の伏線(ある日、火星が消滅することを知っている)を回収するオチは非常に良かった。
ブルース・スターリング「江戸の花」★★★★☆
• SF感弱めな展開。江戸の花(連日の火事)を起こしていたのは魔物だった、という話だけど、この魔物の正体は「電気」ということになるのかな。外国人作家とは思えないほどちゃんと日本の明治が描かれていたのは驚いた。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「ともに生きよう」★★★☆☆
• 地球外生命体を探す地球人が訪れたある惑星にいる生命体。テレパシーで何かを伝えたり、脳内を探ったり、操ったりできる植物的な生き物の目線から始まるので、しばらく我慢が続くが、話が見えてくると気味の悪さん漂うスリリングな展開に。最後に人間とその生命体が強力的になるあたりはちょっと違和感。
イアン・マクドナルド「耳を澄まして」★☆☆☆☆
• あいにく意味がわかりませんでした。
• 世界保健機関が少年を世界の果てにあるその島に連れてきた。ダニエルが眠ると、修道士は夢に耳を澄ませる。かつて町で疫病が流行し、少年は唯一の生存者だった。島で少年は自然の音の中から音楽を見つけてしまう。
• 第三次産業革命でナノテクノロジー革命が起きた。初代ナノマシンのプロトタイプは世界中の人体に入り込んでいた。
グレッグ・イーガン「対象」★★★☆☆
• 初グレッグ・イーガン。ハードSFテイストな宇宙ものSF作品だが、字だけではなんとも脳内映像化が難しく、一体何が起きているのか頭が「???」状態になりかけたが、2回読んでなんとか話の筋が見えて来た、という感じ。
• OMAF(軌道モノポール加速度施設)で実験を行っている際に何か設備の事故が起きた模様。科学ジャーナリストのマーティンは、軌道救急サービスの待機医師であるゾーイに同行し、ホテル・テレシコワからOMAFへ飛び立つ。先に到着していた修理班の3人は行方不明。OMAFでは四次元空間が発生していた。マーティンもうっかり四次元空間に入り込んでしまい、一時は行方不明になりかけるが、なんとか帰還に成功する・・・
アーシュラ・K・ル・グィン「孤独」★★☆☆☆
• 文化人類学者である母が、兄と私を連れて、ある惑星の調査のために実際にその惑星の住民とともにその文化の中で暮らす。設定は独創的だけど、物語の展開が知らんがなと。
• P316 - 母は口を開きかけ、そしてまた閉じた。母はようやく、沈黙を選んだ人に話しかけてはいけないと言うことを学んだのである。
コニー・ウィリス「ポータルズ・ノンストップ」★★★★★
• 初コニー・ウィリス作品。美しくて、スローで、飽きない文章。それでいて、最後はしっかりサプライズもあり。
• 仕事の都合で、ポータルズという何もない田舎に立ち寄った主人公カーター・ステュアート。たまたま参加したバスツアーにて、ジャック・ウィリアムスンというSF作家が住む町であることを知る。バスガイド、トーニャが案内をする。後に、実はそのバスツアーは未来から来ていたことを知る。(未来ではジャックは有名なSF作家になっている)
パオロ・バチガルピ「小さき供物」★★★☆☆
• 初バチガルピ。異常を持つ胎児が産まれないよう、薬物によってコントロールしているグロテスク度高めな短い短篇。
テッド・チャン「息吹」★★★★★
• 肺を空気で満たし、なくなると満杯になった肺と取り替える…という書き出しから、かなりパンクなSF設定でザワザワと興奮してくる。人間なのか機械なのか(機械仕掛けの人間という感じか)が暮らす世界観。オチとしては、この世のすべての動力は(エネルギーではなく)気圧差だと発見する。そもそも、SF設定の中で新たに何かを発見したところで、普通なら「知るか」なんだけど、なぜか一緒にすげえ発見だ!と思わせるのはそれだけ設定が緻密で、読者をのめり込ませるからだろう。
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積読状態だったSFマガジン700号記念アンソロジー。今は隔月刊になったけど、そのくらいで密度的にはちょうど良いのでは?とも思えます。
創刊時から抽出された作品群は流石にどれも印象深いです。文体と雰囲気がどうも合わないと感じている作家や、何を書いているか理解出来ない作家さんの作品まで楽しめるから短編って素晴らしい。
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最近SFにハマっているのでタイトルに惹かれてよんだ。大物作家の傑作ばかりを集めた楽しい短編集!作者解説の部分でさらに読みたい作品が増える嬉しいサプライズもあった。神秘的かつ科学の視点が混じる光景、遥かなる星の世界の文化や情景など自分がSFに求めたい要素もしっかりあった。嬉しい。以下に色々気になった作品に短く感想を入れていきたい。
ポータルズ・ノンストップ
参加したツアーが未来からやってきたツアー客だった!というドンデンガエシがなかなか面白い短編。元ネタになっているSF作家についてはよく知らなかったが、シチュエーションは理解できクスっとしてしまった。
息吹
ロボットだけの世界の解剖学者の視点という設定の面白さ。ロボットの文明特有の価値観や文化が垣間見えるのも楽しい。読後で印象に残ったのは脳の表現の緻密さと美しさ、圧倒的な絶望を知りながらも未来に向けたメッセージを送り出す力強さである。短編集のラストにこの話が乗ること自体もグッときた。我々へのエール、そういったものを感じる。果たしてクロムの壁を超えてくるのは誰なのだろうか…?
小さな供物
最初の子供をのちの妊娠のため公害を一手に受ける生贄にするという内容、かつその施術をする医者なのに自身は別の方法をツテを使ってズル気味にやっている医者視点というビリリと辛辣でじっとりとした嫌さがある短編。ありえなくもない近未来の生々しい恐怖で印象に残る。また辛辣ながら随所にお人好しかつ真摯な医者の一面を見せるドミトリのキャラの良さも良い。子供達の面倒を見ていたりいつも助けを求めたら答えてくれたりと、現状をなんとかしたいという医者の善性が垣間見える気がする。
耳を澄まして
これ自体も人類の進化とナノマシン、もはや魔法な科学と楽しい要素の多いsfだったが、世界中のエンパス(共感能力者)が呼びかけに答えて出現するシーンが漫画みたいでワクワクした。ある意味で秘密を共有した個性豊かな住処に住まう人々の組織、が俺の好きなものなのかもしれない。メイン視点二人の擬似親子的な関係や、瞑想シーンの神秘とテクノロジーが同一化していく姿、進化の中間地点にいるもの独特の二つの世代を見ていく姿、エンパスというサイキッカーが進化そのものでない点なども面白い。
江戸の花
ファンタジーに近いが科学の到来を示すという意味でSF的。よく日本の江戸時代について調べてあるのも高ポイントだ。サイバーパンクの始祖的な人の作品であり新たな技術で世界が変わっていく過程というサイバーパンクらしい、そしてサイバーパンクの時代の前日譚的な内容に仕上がっていると感じる。