紙の本
読み込めば益々面白く、示唆に富んだ<刺激>が堪らない
2021/03/17 16:37
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の核心部分は、名参謀さがしの第5章と名参謀の資質に触れる第6章にある。
第1章から第4章までは、軍師・参謀の役割や制度変遷を中世からの歴史に辿り、軍師、参謀たる条件を検証する、言わば“前哨戦”にあたる。武将や補佐役の人物談義が面白いが、封建下の藩制度や君臣関係、身分の階層を“実感”できない時代の話は、所詮は昔話に過ぎない。
その点、明治以降は「情報、社会、権利、攻勢、奇襲」など新概念の身近な造語もあり、部隊の兵士編成や洋装化、給与体系にも関心が向く。
「昭和の参謀本部は情報を軽視していた」(230頁)とズバリ指摘する一方、「混乱する戦場でも素早くわかるようにさまざまな情報を、暗号や信号として記号化し」、制度設計により「日本海軍を実戦においてきちっと戦える組織にした」明治期の参謀、秋山真之を著者は高く評価する(234~236頁)。
私は、日露戦争で総参謀長の児玉源太郎が、満州派遣軍の司令官(乃木希典、野津道貫ら)四人の手綱を締め、現地で直接指揮を執った経緯に惹かれる。
元勲の大山巌元帥を動かし、対艦攻撃用榴弾砲を投入し大苦戦する旅順要塞攻略(二〇三高地奪取)を成功裡に導いた手腕に驚嘆した。近代国家で参謀の”親玉”が現地軍の指揮を振うのは珍しい。
早期講和での幕引きをはかる大局観と信念をもった児玉総参謀長を現地指揮官に据えた明治日本の「幸運」は、後世に“教訓”としては引き継がれなかった。
何故なのか、半藤が答える。「困ったことに、参謀というポストがやがて出世のための踏み台になってしまった」ため、「いざ実戦となったとき、参謀長や司令官にふさわしくない人物がその任についている」からだと(228頁)。
「見識」や「大局観」を欠いた「優等生が、軍令部・参謀本部という中枢組織に入って参謀になっていき」、「学校を出たときの成績順位が、ずっとついて回る」組織硬直化が顕著となる。半藤が挙げた日本海海戦や機動部隊第一航空艦隊での成績順配属の実例(247~249頁)に、唖然、暗然となる。
「自分の意見、導き出した結論を述べて、あとはすべてを指揮官に任せる」か、「とり得る方策を徹底的に考えて、選択肢を二つか三つに絞り、そのメリット・デメリットを示して指揮官に採択を任せる」かで、参謀のタイプ、即ち「提言の仕方には二種類ある」から、「参謀というのはやっぱり指揮官の性向をしっかり見極めなくてはいけません」(254頁)とは、面白い。
指揮官も含め最悪を考えたくない人間にあって、参謀は最悪の事態を常に想定する必要がある存在で、「これだけは言える。悪い報告をこそ伝えなければいけません」(256頁)とは、まさに至言。
「無謀な戦争の開戦前夜に、まさにそれ、最悪を想定した議論をやろうとした」“最後の海軍大将”井上成美の「鋭い洞察」(艦隊決戦に替わって航空兵力での戦いとなる)を例に、磯田は知識・発想力・洞察力の三つの能力を参謀の条件に挙げる(260頁)。
「若いころからの教育や鍛錬が必要となるから」「洞察力を得るのが難しい」訳だが、「ただ知るのと合点するのは違う」ので「脳がちぎれるほど思考せよ」との記述(264~265頁)に、本書の価値(単純にして明快な真理)を見出した。
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◼︎2014/06/03読了。
◼︎吉備真備から秋山真之まで、日本の軍師・参謀を対話形式で論じたもの。
◼︎リーダー一歩手前の人、企画部門の人が参謀のあり方を歴史に学ぶことに最適。
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夏期休暇の家族旅行の合間の読書で
読み終わり。
歴史上の軍師・参謀と言われている人たちの
話を対談のような形で展開。
黒田如水・勝海舟・大村益次郎・山県有朋・
秋山真之とうとう
組織の中でのナンバー2というか参謀・軍師の
歴史的な成り立ちや、日本という国の中での形成された
位置づけなど。。。半藤氏と磯田氏の含蓄や思いが
いろいろ出てきていてそれなりに面白い内容だと思います。
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松平信綱を松平定信と取り違えるという、痛恨の誤植(目次、本文見出しの双方で)には目をつぶって★5つ。
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軍師、参謀的な役割について様々な状況、時代背景を踏まえて分かりやすく書いてある本。有名な軍師からこの人軍師的な動きをしていたんだと今さら気づくことの多い本です。
二人とも本音トークのような感じで気が合えば楽しく読めます。
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半藤氏と磯田氏の軍師像に関する対談である。
歯に衣着せぬ感じの軽快な論評が展開されるが、幕末以降は半藤氏の好き嫌いが論評に色濃く反映されているので、その辺は加味して読んだ方がいい。例えば、大村益次郎の所はその一番良い例である。花神などでは場の空気を読んでくれない大村益次郎を風物詩のように楽しむ感じであるが、嫌なやつで片付けてしまっているので、少し残念である。長州人材を半藤氏は嫌っているので致し方ないが、軍師は一般の人とは求められる人材像が異なるので、そこは割り切ってもらいたかった。
全体的には色々な話が出て来て面白いと思う
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半藤一利と磯田道史と言う夢のコラボが実現しただけでも欣喜雀躍なのだが、さらにこの二人が軍師、参謀論を語るのを読めるなんて! ポプラ社グッジョブ。
二人の歴史オタクの豊富な知識にも驚かされるが、示唆に富む洞察が溢れていて最近読んだ本の中ではピカイチ。
曰く参謀に必要な能力は願望と現実を見極める能力、曰くコチコチの愛国者ほど国をダメにする者はいない、曰く日本で成功率の高い改革法は母屋を残したまま別館を建てる、曰く参謀として最もやってはいけないのは少ない情報で判断すること、等々。
日々の自分を顧みて反省することしきりである。
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磯田道史✖︎半藤一利という歴史探究者2人の夢のタッグ!図書館で借りて読んだのだが、購入し手元に置いておきたくなる1冊。
歴史のお勉強にもなり、仕事においてのアドバイス書にもなる。
対談方式の本書だが、半藤さんが磯田さんに負けじと知識を披露し、磯田さんが気を使っているような場面が所々にある。笑
古代中世では天体・陰陽道などの知識も求められるなど、時代によって参謀・軍師のあり方が違うが、いずれの時代においても情報収集と作戦計画の立案が求められたとのこと。
面白かった箇所は、薩摩人の気質について「起きてもいないことで動く・自分の仕事でもないことに手を突っ込む・頼まれてもいないのにやる」。
身近な人間に当てはまっており笑う。
お節介気質のようだが、スパイ・諜報活動に向いているとあり、そうなのかと驚いた。自分の頭で考えることを鍛えられる郷中教育の「詮議」は自分も日頃行わないといけないと思う。
私がこの本を読んでのキーワードは「反実仮想力」「大局観」「洞察力」
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参謀に必要なのは、知識、洞察力、発想力という。このうち、一番難しいのは洞察力。どうやったら、洞察力を身につけられるだろう。まぁ、俺は別に参謀になりたいわけじゃないけど。歴史に深い知識を持つ二人の対談だけに、知らない名前も多々出てきた。西郷隆盛や織田信長だけじゃない。歴史とは、多くの、それに知られていない優れた人たちの働きがあって、積み重ねられていること感じたね。刺激的で、面白い本だった。
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半藤さんと磯田さんの対談形式で進む一冊。
お二人とも知識豊富で出てくる話、一つ一つが面白い…!全てメモしたくなる感覚。
前田家ファンとしては、加賀前田家の生き残り策を取り上げてくれているのが嬉しかった…
利常は前田家の言わば取締役会に徳川家参謀の息子を連れてきていた。それは「謀反を企ててもすぐわかる」というメッセージ。
そこから工芸などを盛んにして、財力を全面的に文化の方面に遣るのもさすがだよなぁ。
それが御二方曰く「大局観」で、そこが直江兼続は欠けてたってのは私も同意見。
何でそこまでして?という答えを、とにかく越後を奪い返したかった、というのも面白い。
山を越えないとどこにもいけないからこそ、秀吉は会津に上杉を閉じ込めた。元々上杉が大事にしていた越後だけでも取り戻したい、という想いはあったのかもしれないな。
参謀に必要な能力は、知識・発想力・洞察力。
知識があってもピースを結びつけて大事な何かを発見しないと意味がない。
現代にも繋がる大事な考え方がたくさんあった一冊。参謀は最悪の事態を想定し、悪い報告こそ先に伝えるというのも今に繋がると思う。
最後の海軍大将・井上成美がその辺りに長けていたのに、昭和史があんな風になってしまったのは本当に悔やまれるなぁ………。
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「軍師たちの日本史」とタイトルを変えて最近増刷。対談形式で読みやすい。いろいろな参謀が出てきますが、軍師官兵衛、勝海舟、秋山真之の3人の評価がとても高い。「大将の仕事は人事」「願望と現実を見極める能力」「チャンスは貯金できない」など仕事でも活用できるワードがたくさん。歴史はもちろん、人生の指針にもなることを勉強できました。江戸時代に詳しい磯田さん、太平洋戦争に詳しい半藤さんという印象。
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対談を盛り上げるためか、推測が多いし人物を好き嫌いで面白おかしく語っている印象だが、軽い読み物と考えれば悪くはない。直江兼続が処刑されなかった理由について、史料が存在していたのは知らなかったので参考になった。
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2人の知識量半端ない。参謀にはこれに発想力、洞察力が必要。半藤一利さんの勝海舟好き、長州嫌いは相変わらず。
黒田官兵衛、小早川隆景、真田昌幸、本多正信、勝海舟、大村益次郎、川上操六、秋山真之、児玉源太郎…