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ありそうでなかったタイトルの本。
スマナサーラ師が日本の現状取り巻く世界情勢と起こりうる未来を語ります。
高僧が語る、仏教から一歩踏み出した話がどんな内容か、興味を持ちました。
世界中で起こってきた宗教戦争。
「人間を殺してやるぞ」という思考を作ったのは、政治ではなく宗教だというのはなかなかの衝撃でした。
自己正当化の結果、排他的になるということでしょうか。
NGO活動とは、自分の営利を顧みずに奉仕的意識で行うことだと思いますが、西洋のNGOは自分の宗教を教える目的があるのだそうです。
強引さが伴われるため、その国の文化を破壊する可能性もはらんでいるとのこと。
海外では、よその国からのNGO団体の評判は悪いそうです。
ただ日本のNGOは純粋にボランティアとしての活動を行うため、感謝されるのだそう。
日本人は、明確な宗教への信仰心がないためだと師は説きます。
たしかに、神道も仏教も、あまりに日本文化や生活の中に融けこんでおり、わざわざそれを広めようとする気持ちは起こりません。
目下、イスラム教徒が宗教戦争を広げていますが、他教徒の私たちには宗教分布図がよくわからないところがあります。
特に、さまざまな宗教が混然としている南アジア地方。
インドとスリランカは、イスラムではない、民主主義の国。
パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンはイスラム教の国で、独裁主義かもしれないとのことです。
人と戦うことではなく、人を助けることが仏教的な勝利者の道。
奪い取るのではなく、分け合うことでお互いの壁が消え、本当のおもてなしとなるのだそう。
とはいえ、マイナス面なくしては何も成り立たないというのも仏教的な解釈だといいます。何かを壊すことで何かが作られるというのが世の必定。
無から何かを作ることは、キリスト教の神様以外はできないそうです。
パンダが繁殖しにくいのはお互いを敵だと見る動物だからだということや、中国は音速より五倍ほど速く飛ぶミサイルを作ったことなど、メインとは逸れる箇所にも役立つ内容がありました。
いかなるときにも悩みにとらわれず、落ち着いて生きることが、将来を迷走させずに済むことなのでしょう。
過去や将来に影響されず、いつも「今」に向き合い続けることが大事だと述べる本でした。