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紙の本

ドイツ・ロマン主義の源流とカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

2022/10/31 15:38

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る

国立西洋美術館「自然と人のダイアローグ」に行った。コロナ禍で機会がなかったが、久々の展覧会であった。「フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」とドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までを展示する企画。印象派とポスト印象派が中心であるが、お目当てはドイツ・ロマン主義絵画の巨匠カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774-1840)の『夕日(朝日)に立つ女性』である。なぜCDFかというと、クラシック音楽CD解説書デザインにCDFの絵画が使われることが多く、ベックリンとともに気になる画家なのである。保有CDを調べたところ、CDFの絵画は25作品が、ロマン派作曲家のCDで使われている。使われる絵画は定番が多いが、毎月の新譜でも時々登場する人気画家なのである。
これを機会に「積読」2冊のCDF絵画論を引っ張り出して読んだ。本書ともう一冊『C. D.フリードリヒ《画家のアトリエからの眺め》-視覚と思考の近代』(仲間裕子2007三元社)。後者は絶版でhonto登録はないので、ついでのレビューとなる。
小林CDFは、CDFの絵画論というより、近代ドイツのロマン主義思想の展開を論じる著作のようだ。「ようだ」というのは、序章で哲学者ハイデガーと精神分析学者フロイトという20世紀を代表する二人の思想家に共通する「不安」と「死への志向」が、19世紀に胚胎し現代に至るまで脈々と流れるロマン主義の源流であることを論じるという。ハイデガーは、既に「100分de名著」で少しかじった程度だが、単純に言えば、「不安」を感じる人間は、「死」と向き合うことで、そこから脱し「本来性」を回復することができる、と理解しているので、著者の問いかけは理解できる。小林CDFはこの「不安」の源泉をロマン主義に求め、その歴史をたどり、最終章にその答えを出している。そしていわばCDFの風景画を「水先案内人」として、同時代の思想家・文学者・科学者などの思想とCDFと関連付けながら見ていく、という構成。したがってCDF絵画論がメインではない。序章と最終章を読まなくとも、ロマン主義の展開をコンパクトに知ることがきるのである。そこではライプニッツの思想、シェリングの自然哲学、ゲーテの色彩論、また、カントの「批判書」など数多くの思想が扱われ、近代合理主義へのアンチテーゼとしてのロマン主義を位置づける。では、なぜCDFが「案内人」なのか?それはタイトルにあるように、ロマン主義思想の根本は「無意識」であり、それが同時代のCDFの風景画の中にも現れているということのようだ。そうすると、そもそも序章と最終章はなくともよいようにも思えるのだが。
一方の仲間CFDは、「近代という思想的に開かれた時代、神への信仰心の基づく新しい世界観が追及された時代、多様な視覚体験を可能にさせた時代、対ナポレオン解放戦争に触発された愛国的な時代」の画家として、CDFの特異な風景画の制作手法・思想を中心に論じていく。驚いたのは、実際にその場で写生したのではなく、既にスケッチした素材「断片」をコラージュとして構成して描くということ。著者はそこに、展覧会にも展示されたリヒターのような20世紀ドイツの美術を先取りする視覚体験の実験が行われたとしている。また、小林CDFではあまりふれられていないが、ナチス・ドイツ時代には、「民族共同体」を表象する絵画として賞揚された不幸な時期についても整理している。
小林CDFでは、ゲーテの色彩論などから、ロマン派の色は青である、とか、観者を圧倒する神秘性、宗教性、内面性を感じさせる「崇高」理念といった、CDF風景画の観るキーワードを思想史・科学史的で論じているので、併読すると理解は深まるだろう。

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2024/02/20 22:20

投稿元:ブクログ

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