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昔、向ヶ丘遊園にある大学に通っている人とお付き合いしていたので、思い出してなんだか懐かしかった。心臓破りの坂とか、本当に懐かしい。
廃園になった遊園地の跡地。
そこは様々な花が咲き乱れる動物のための霊園だという噂がある。そしてそこには霊園を管理する若者がいて、彼に自分が一番大切にしているものを差し出せば、それと引き換えに、この霊園にペットを埋葬してくれるのだという。
わたしは去年から猫を飼い始めて、ペットという言葉を口にするたびに少し違和感を感じるようになった。餌という言い方にも。一緒に暮らしていると、ペットという領域を超えて家族という意識が強くなるのかなと思う。
さて、この本は5つの章から成る。
ひとつ目のゴールデンレトリバーの話はなかなか面白かったので期待して読み進めたが、ビッグフットの章でボルテージが急激に下がってしまった。有名な某小説を彷彿とさせるこの話は、なんていうか、心に訴えかけてくるものがない。言いたいことは分かるけど、登場人物の温度を感じることができなかった。
墓守をしている謎の青年がなぜここにたどり着いたのか、青年に嘘をついたものが酷い目に合うという噂は本当なのか、謎の回収ができないのもちょっと物足りなくて、中途半場な感じが否めない。
でも文章は美しく、特に夜の描写はとても印象的だったと思う。