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社会福祉や人権に対する考え方が現実とは少し異なる日本が舞台。
生活困窮者が住む否かの施設で、一人の老人が階段から転落死する。
このことが引き金となって不穏な事件が次々と起こる。
かわいらしい装丁なので恋愛とか青春ドラマとかそんな爽やかな話かと思っていたら、かなりブラックな物語だった。
読み始め、少し影のある少年とその少年を慕う少女(装丁にも描かれている)を中心にストーリー展開するのかと思いきや、わりと早い段階から事件を捜査する老刑事が活躍し始め、少年少女の存在が薄くなってしまう。
そのため、事件解決をとしたよくあるミステリー小説という印象。
少年少女たちが絡むことで「事件解決、めでたし、めでたし」とはならない心地悪さみたいなものが残るのは面白い趣向だと思うけど、少年少女たちの影の部分がもっと全面に出るともっと面白かったんじゃないかと思う。
少年少女たちのことが途中からほったらかしになってる感じが、なんだか釈然としない。
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樋口作品、ノンシリーズ。
犯罪者の島流しと、生活保護者の強制集中居住という極端な方法で治安も経済も安定した近未来日本が舞台。
福祉施設の中にいる青年と、外から来た爺さんを中心にストーリーは展開していく。
筆者にしては大胆な舞台設定だが、中身はいつものごとく、シニカルでハードボイルドな社会派風味のミステリ。
元々雰囲気、作風は大いに好みであるが、今回はミステリ小説としてよく出来ていた。
ユーモアを織り交ぜた人物間の探りあい・小競り合い、人間臭いホワイダニットを軸とした謎解き、大いなる諦観と僅かな救済を織り交ぜた着地…あたりは樋口有介真骨頂であるが、これがよく活きていたと思う。
2014年上位作。ゴリで推したいエンターテイメント作品。
5
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どこかの市長さんの目には、理想に見える世界観の下でのミステリー。
パラレル・ワールドかと思うと、笑いも引っ込む。
ただ、訝しく思うのは、せっかくのこの設定は、はたして謎解きには必要だったのかということ。
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生活困窮者の施設、希望の家が舞台。恵まれない環境で育った主人公の由希也と階段から落ちて亡くなった老婆の事件を捜査しに来た捜査員の孫娘、みんなに愛されて東大に通う明るい孫娘とどうなるのか気になったけど、キーパーソンは由希也を思い続けてる妹のような蛍子。恋愛もふわ〜としたままミステリー性もふわ〜としたまま。樋口ワールドでした。
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生活保護法は廃止され、刑務所が激減された代わりに島流し制度など、架空の設定でのミステリー。廃校を利用した、元生活保護者が生活する施設で起きた1人の老婆の転落死。事故死で片付けられた事故から、日本を揺るがす大事件へ発展する展開がとてもおもしろかった。ただ、全体的に間延びした雰囲気で、スピード感がなかったのが残念です。探偵役のおじいちゃんと孫娘の会話が楽しかった。
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12月-11。3.0点。
近未来が舞台。収入の少ない家庭は、生活保護が廃止され、
希望の家というハウスへ。
そのハウスで、老婆が死亡。用務員が誰かに押されたと目撃証言。前の用務員も変死。果たして殺人なのか。
うーん。広げた風呂敷がイマイチ回収されていない。
あの女子中学生の、もっと深い事情やその後が必要かな。
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『亀と観覧車』『刑事さん、さようなら』そして本作と順不同で読んだ。
これらは実はシリーズとか?
もっとも古い『刑事さん、さようなら』では、作者得意の「なくもない」が要所で出て来て、軽妙さがあった。
『亀と観覧車』では、「生保」家庭でしかもほんわかしているのに、奇跡的に純に育ったヒロインに、ちょっと安心した。
が、本作では、救われる人が居ないんじゃないか?
表紙の右下の一番良い位置を占めている人かな。
裏の人の立ち位置が微妙だった。
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*社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、夏休み中の孫娘・愛芽と共に、老婆の死亡事件が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死で片づけるはずが、クセのある施設の人々と接するうちに幸祐の刑事根性が疼きだして…ノスタルジックな夏休みの情景に棄てられた人々の哀しみが滲む傑作ミステリ*
一言で表すならば「ぎっしり」。これでもか!と言うくらいに色々なネタや仕掛けがぎゅうぎゅうに詰め込まれている感じ。近未来の設定も、まさに今起こりうるような展開も面白かったし、樋口ワールドも堪能したけど、ネタが多すぎて収束しきれていないのがもったいなかった。とは言え、さすが樋口ワールド、蜃気楼の向こう側に揺れるようなラストが心地いい。
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図書館の本 読了
内容(「BOOK」データベースより)
社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、夏休み中の孫娘・愛芽と共に、老婆の死亡事件が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死で片づけるはずが、クセのある施設の人々と接するうちに幸祐の刑事根性が疼きだして…ノスタルジックな夏休みの情景に棄てられた人々の哀しみが滲む傑作ミステリ。
これでいいのか?
人が殺されても、そんなもんで済むの???見たいなところもあって怖い部分もあるけれど
一番怖いのは北朝鮮が発射したロケットで日本が大きく変わったという設定。ラストも中国せめて来るし。
ストーリーより設定が怖いっていうのも珍しい。
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2018.1.2 読了
なかなか 話が進まなかった割に
進み出したら 事件のオンパレード!
主役の元老刑事にまで
恋愛は 絡めてほしくなかった。
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北朝鮮がミサイルを撃ってきた後の世界
生活保護施設での転落死から
事件が思わぬ方向に転がって…
話の動き出しが遅いし、
最後までモヤモヤした感じで終わった気がする。
そんな終わり方でいいの?
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予算削減を名目に社会福祉や刑事罰などで、大胆な改革が行われた日本の近未来が舞台。元刑事で捜査を依頼された一之瀬は、生活保護廃止に伴い設置された「希望の家」での死亡事故を調査する。すると次々と犯罪が明らかになっていき・・・
社会改革、恋愛、領土問題、経済問題など、風呂敷を広げすぎの感も。なんとなくすっきりしないまま読了。
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樋口センセの作品を上梓順に読んでるわけでは無いし気にしても居なかったから今作に触れるのがたまたま2018年の終わりになったワケなんだけど。
しかし今作で描かれる作品背景がフィクションなんだけど妙に生々しく感じてしまう世界情勢との符号か。
創作だと絵空事だと捨てるのも簡単だけど、少しでも針が振れたら今作のような日本もあり得るのではないかなー…というあたりが巧みなのかそれとも自分の政治信条と近しいのか。
自分が触れてきた樋口センセの作品にしては、推理役が真面目に推理しているなぁ…という。
そりゃ「元刑事」なら当然でもありますか。
刑事ってのは元が付こうが、作品の中では勘が働いて不整合や不条理が気にくわないものなんですよね。
センセらしい「考えが多い」未熟な男子も登場するのですが、主に引っ張るのはその老いた元刑事ってのも自分には新鮮でしたなあ。
さらに幾つかの事実が交錯しながら積み上がって、結局のところ誰ひとりとして「全体」の姿には辿り着けてないというのも面白い。
真実を知っているのが読者だけという。
舞台劇なんかにしたら面白いんじゃないですかね。
それでも、小狡いことをしたヤツには罰が下っているし、主人公サイドはベストじゃ無くてもベターな幕引きを向かえているので、こういうのは自分には合ってますね。
少しだけ苦かったり酸っぱかったりするのが樋口有介センセの作品って感じがして。
…作品の感想とはズレるけど、所長の山本夜宵。
幾花にいろセンセの絵柄でキャラ像つかんでたわー。「演色」の大高さんあたりの。
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不思議 不思議な感覚の本
今の時代から ありえそうな仮定のミステリー
善人 普通の人 犯罪者 社会不適合者
区別をして社会を構築する
面白かったんだけど
感動とは違う 何かを感じた
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生活保護が廃止された近未来。「希望の家」という低所得者の収容施設で起きた殺人事件を巡る物語。まずその、生活保護が廃止された社会という世界観が独特で、事件以上に目を引いてしまう。ここにあるのは格差社会のリアルさではなく、昨今の世論の息詰まるような閉塞感から感じる「そうなってもおかしくない」というリアリティのほうが強い。かなり悪夢的な世界観で、事件より設定のほうの異質さを感じる作品だった。反面、事件そのものは大したことはなく、ありふれたつまらない殺人事件ではあるのだが、それが逆に異様さを伴っているのが空恐ろしく、返って非常に不気味に映った。異常な社会の中での普通の殺人は文字通り黙殺され、探偵役の初老の刑事やその周囲も、適当に済ませ穏便に片付くことを望んでいる。そこに倫理観や正義感はなく、その命の軽さが異常な社会と相まって一層不気味に感じるのだ。殺人事件の扱いがそのまま作品の舞台設定の世相を反映しており、命の価値や値段などに優劣が付いているというのがミソで、あえて主人公側を単純な正義の人間にしていない辺りに、隠されたリアリティがあるのだろう。異常な社会で暮らせば、価値観は揺らぎ、それを貫こうにも、貧困から漂う諦観が作品全体を包んでいる。単純な施設の隠蔽というわけでもなく、ありがちな個人のエゴや保身による隠蔽ではなく、都合の悪いことを押し包む個人では対抗できないシステムの指示、つまるところは世間からの要請が隠蔽の背景にあるというのは非常に恐ろしい。読後感はやや人を選ぶものの、風刺的ではあるが教訓や警句めいたものは無いので、そのあたりの作者のバランスの匙加減を楽しめるか否かでこの作品の評価は変わるだろう。個人的には、貧困は同情や正義感、倫理観ではなく、無情なまでのリアリズムと、単なる善悪の二項対立では計れない闇の深さを感じるので、その部分を丁寧に描いたこの作品には好感を持てます。加えて作者特有の「身振り」の描写が非常に上手く、風景描写も相まって、非常に文章力は高く感じる。各登場人物の台詞回しなどもウィットに富んでおり、冗長ながらも流れるように読めた。ミステリとしては真犯人の断罪がないのは非常に判断に迷うものの、罪の適用範囲や社会そのものが狂っている状況では真相やその罰に価値があるかという根幹的なことまで考えてしまう。ひそかに行方不明の女児のミスリードなどは上手く、そこは引っかかってしまった。