投稿元:
レビューを見る
病気のせいで顔や体に跡が残り、
親や友達にすらまともに顔を見てもらえず、
何度も自殺を試みた鈴木誠。
社会との唯一の繋がりは洋楽専門誌でマニアをも唸らせるビートルズ評論。
その評論の関係で鈴木誠はある日、
モデル美縞絵里と運命的に出会う。
分厚いこの本をずっと不快感で読み続けていく事になるのだけど、
ゆっくりと鼓動が早まり、
ある瞬間を境に膨らんだ水風船が一気に弾ける。
引用~
「犯罪は国が決めているんです。
国の都合で、いや誰か、とっても偉い人たちの都合と利益が、それが犯罪かそうでないかを決めるんですよ。あるいは多数決で。
多数派(マジョリティ)と言う怪物を知ってますか?
この世の中で僕が一番恐れている怪物です。
正義や道徳と言った世の中のルールを決めている人達です。
僕は彼らと対極にいる人間なんですね。
僕のような少数派(マイノリティ)は彼らの格好の標的です。
彼らは少数派を弾圧し排斥し絶滅させようとします。
そして同時に彼らは少数派を保護しようとするのです。
自分達が絶滅の危機に追いやった少数派を今度は一転して守ってあげようとするんですね。
もちろんそれは自分たちの心の広さをアピールするための見せかけなんですけどね」
投稿元:
レビューを見る
2022.4.29
7年ぶりくらいに再読。
ラストを覚えていなかったので楽しめた。
親からも目をそむけられる容貌を背負った鈴木誠が恋に落ち、ストーカー化する。そのストーカーぶりが日に日に増していく様子がおもしろかった。
関係者がそれぞれ事情聴取で独白していくという形をとっており、同じ場面を何人もが振り返ることで、事件の概要が頭に入りやすく、臨場感もあふれている。
この事情聴取という形がラストでは鍵となる。再読だというのに、まんまとミスリードにはまりました。真実がわかると、せつない。最初からまた読み直したくなります。
投稿元:
レビューを見る
ストーカーというものの心理をすごく生々しく表現してて、いい意味ですごく気持ち悪かった。そして最後まで読むことでわかる真実、という感じですね。結構おもしろかった。
2014.07.18
投稿元:
レビューを見る
そーきたか!
と、言いたいとこだけど、なんと言うのか、ここまでひっくりかえると、「えっ!!」ってなる。
投稿元:
レビューを見る
特異な外見のため引きこもっていた男がストーカーと化していく。その様子が男の視点、ストーカーされる女の視点、その他関係者達の視点で描かれる本作はとてもスリリングで、結構なボリュームがありましたがそれを気にさせない吸引力があって、比較的早めの速度で読了。
ルックスに難があり、友達もいなくて、唯一音楽——とりわけビートルズ——だけが生き甲斐みたいな鈴木誠。最初はその境遇に同情しましたが、身勝手な思い込みからストーキングや殺人を犯す様を見続けるうちに、強烈な嫌悪感を覚えるように。
鈴木誠は無駄に金持ち設定で使用人まで抱えており、そいつも結託して三縞絵里こと、三島江利子を付け回す様子は心底キモくて病的。自分たちがやっていることを全く悪びれない語り口は、読んでいてイライラしてしまうほどでした。
そんな文章が600ページ以上続くので、心境的に「絵里チャンカワイソス」「鈴木誠憎し!」「ブサメンだけど同情の余地なし」っていうメンタルステータスが完全構築される訳です。
それが故に、真相——なのかははっきりしていないけど、恐らくは真実——が分かったときの驚きと行ったら…「ラバーソウル」というタイトルに込められた意味――ビートルズがポップアイドルからアーティストへと変貌した作品(アルバム)――が本作の内容とリンクして、驚きのあまり意味不明なうめき声を漏らしそうになりました。
そうなると今まで抱いていた主要人物達の印象が文字通り180度変わってしまいます。もちろん、鈴木誠がやったことは正しくないので、彼に対しては120度ぐらいの微妙な印象チェンジでしたが、三島江利子に関してはプラス印象がすべてマイナスに転じるほど印象が変わりました。
どんでん返し後がアッサリしすぎていて、個人的にはもうちょっと「その後」を描いて欲しかったかな。とはいえ、ここまで惹き込まれて、さらに驚かされる作品に久々に出会いました。しばらくこの作家さんの作品を追いかけてみようと思います。
投稿元:
レビューを見る
最後のどんでん返しが凄いっていう評判を見ていただけに、鈴木誠がただの気持ち悪いストーカーではないんだろな…という見方で読んでしまった。
構成が登場人物の事情聴取と、鈴木誠一人称の部分からなる。この時点で東野圭吾の『悪意』を思い出してしまった。この校生に何かしらの叙述トリックが隠されているな、と。
さらに、同じく東野圭吾の『容疑者Xの献身』から、ストーカーに思わせて…っていう叙述トリック(?)が頭から離れない。
どのように自分を驚かせてくれるんだろうと期待しながらラストを迎えたのに…。
たまたまかもしれないけど、どっかで見たことある小説になってしまった。
ただ、ビートルズの『ラバーソウル』を物語と重ね合わせる技巧や、江島が高校時代にしょーもない男と付き合うような人間であったというオチは見事。
ビートルズの趣向は、自分も含めて全く門外漢な人からしたらその凄さは理解できないけれど。
投稿元:
レビューを見る
ややこしい叙述トリックかと思ったらひねりは最低限。文章自体でぐいぐい読ませてくれる。謎解き部分も簡潔だし、この人は上手いね。
投稿元:
レビューを見る
「うへぇ~」となる気持ち悪さから「えぇ~」という混乱へ。消化しきれなさも残るけど、思わず唸る覆り方。読みながらの違和感も腑に落ちた。『価値はぼくの中にあるんです』という揺るぎない強い言葉がこちらをたじろがせる。でも、この愛を理解するのは難しいなぁ。そしてとても悲しい気持ちになる。
金山氏の微に入り細を穿つ献身が最後まで好印象。
投稿元:
レビューを見る
ラストの展開には驚かされた。仕掛けは単純なものだが、見抜けるものでもない。ただ、全体として長い中で最後がものすごい駆け足で終わってしまいあっけなかった。いや、これくらいがいいのかも。なるほどと思うと同時にぽかーんとさせる、そんな最後。
投稿元:
レビューを見る
女性はちょっと怖いかも。
物ごころつく時から友達はいなかった…。
病気のため、化け物のような外見、ゴミが詰まったような声、そして奇妙な歩き方。
治療も諦め、親からも見放され、友人もおらず、友達と呼べるものはビートルズ。
そんな主人公がある日、雑誌の撮影の大事故に巻き込まれ、モデルの女性と出逢う。
その出会いが運命を…変える!
人物像がリアルで、そしてそれぞれとの問答で話が進んでいくためストーリーも吸収しやすくサクサク進む。
そして最後のどんでん返し…!
やっぱり井上夢人の作品は魅力たっぷりだわー、と嘆息してしまった。
投稿元:
レビューを見る
いくつかの本屋さんでオススメされていたので読んだ。…特に心が震えるわけでもなく。長々と伏線があった割りにラストがびっくりでもない。その伏線もあんまり気持ちの良いものではなかった。私には合わなかったということです。
投稿元:
レビューを見る
あー…そう言う事かぁ。
読みながらもぞもぞしてた感じがすっきり。内容的にすっきりする訳ではないけれど。
初めて読んだ作家なので、どう言う雰囲気の話を書かれるか知らず、先入観なしに読めた分楽しめた。
すっきりした最後だったけれど、今迄読んできた部分の長さ故、ちょっとさっぱり終わってしまった感が…
それでも、複雑なトリック等ではなく、シンプルな構成なのに読ませる文章は面白く、凄いなぁ…と。
投稿元:
レビューを見る
執事?の金山さんが、とてもいい味を出している。
私としては、主人公に、こんなバカ女を「特別」に感じずに、能力を正当に評価してくれた編集部の大人たちにこそ、応えてほしかったなぁ。
仕掛け自体は、この設定でこのまま主人公がただのストーカー犯人なわけがないという予測と、書き方の形式と主人公のキャラが二通りなので、片方が創作なんだろうな、と読み始めから見えてしまった。あの形式の違いは、無しにすれば良かったのに。
投稿元:
レビューを見る
井上夢人氏の作品としては2冊目、岡嶋二人作品は後期の3部作を読了、主な執筆は井上氏だったようであり、トータルではそこそこ読んでたということか…以下ネタバレあります、ご注意ください!
ずいぶん前に読んだ「オルファトグラム」でも顕著であるが、つくづく世界観の創設で勝負する作家さんだと思う。今作においても独特の世界観の中でストーリーが進み、これでもかというくらいに気色悪い主人公に、純情可憐なヒロインがどのように毒されてしまうのか?読者はその一点に注力して読んでいくのだろう、しかしながら見事な反転の結末となり、「気色悪い」が「純愛」に昇華していた。その純愛も自分からすれば気味悪いものであったが…
予備知識があれば楽しめる作品というのがあるが、今作はまさにそれに該当する。ビートルズとりわけアルバム「ラバー・ソウル」をもっとよく知り聴きこんでいれば、さらに楽しめたようだ。
投稿元:
レビューを見る
ストーカーと化した、化け物のような容姿を持った男とモデルの女の話。ああああ、すっかりやられた!大好きな小説、「容疑者Xの献身」を彷彿とさせる衝撃と読後感。このテの話には弱く、泣きそうになってしまった…。モデルが時折見せるはすっぱな口調がやや気になってはいたが、この展開には気付かなかった。お見事〜。