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あー、もう、本当に大満足の一冊。
身体のすみずみにまで太古の息吹が行きわたった。
二千七百年前、なんていうともう想像もできないほどの大昔と思うのだけど、親の親の親の…と30回繰り返すだけでたどり着いてしまうんだね。そう考えると、意外と近い気がする…
教科書でさらりと習うだけの縄文時代から弥生時代への変遷。それはある日突然がらりと変わるわけではなく、何年も何十年も何百年も、かけて少しずつ入り混じり行きつ戻りつしつつ移り変わっていったものなのであって。
そしてそこには今の私たちと変わらない人と人のいさかいと心の交流があったのだ、ということに改めて気づかされた。
二千七百年前にそこにいたであろう一人の若者の成長と苦悩、そして死は、「日本人の進化」、というだけでなく、国とは、国籍とは、人種とは、という今の私たちがさらされている大きな問題をも突きつける。
私たちは私たちが思っているよりもはるかに大きな世界をこの身体の中に抱えているのかもしれない。
先日の新聞で、精神病院が空いた病室、もしくは病棟全てを使って退院患者の住居とする、というのを読んで思った。
『二千七百年』に描かれている「自分や自分の所属するムラと違う文化を否定する」もしくは「自分と見た目の違うヒトを受け入れない」という問題は、今も変わらず存在していて、そこに今の日本の限界というものがあるのかもしれない、と。
島国に生きる私たちが、世界の中で平和的に生きていくために考えなければならないこと、それを考える機会をこの一冊は与えてくれた。
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2700年前、とても曖昧な縄文時代と弥生時代の狭間。巡り合った男女のロマンスを混じえながら、何千年経っても変わらぬ人間達の争いの歴史を考えさせる。
時折挟まれる「現代」の女性も人間達の争いの犠牲者。現代に蘇った人骨に想いを馳せる彼女。
作者の素晴らしい想像力に読み手の空想力を加えて完成される物語です。
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ウルクの厳しい旅の様子に手に汗を握る。2700年前が本当にこんな状況だったのだ、と心底思えるほどの臨場感。
そして弥生人たちの集落にたどり着いたときのウルクの気持ちや戸惑いがそのまま伝わってくる。
どうして人と人の間に階級があるのか、なぜ人に向けて弓をひくのか、「イクサ」ってなんだ、などなど、ウルクの疑問がとても新鮮なのだが、次第に悲しくなってくる。2700年たっても人は何も変わってない。
ウルクたちは弥生人のような争い方はしないだろうが、迷信にとらわれ、小さく小さくなって暮らしている。知識があることの良さを知らない。
ウルクとカヒィの行く末は、もうとっくにわかっていることなのだが、それでもその詳細は最後まで読まないとわからない。そして、最後まで読んだ時、哀しさと同時に希望もまた感じられたのであった。
読み応えのある素晴らしい作品だったなあ。
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紀元前七世紀、東日本―ピナイ(谷の村)に住むウルクは十五歳。野に獣を追い、木の実を集め、天の神に感謝を捧げる日々を送っている。近頃ピナイは、海渡りたちがもたらしたという神の実“コーミー”の噂でもちきりだ。だがそれは「災いを招く」と囁かれてもいた。そんなある日、ウルクは足を踏み入れた禁忌の南の森でカヒィという名の不思議な少女と出会う。
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ピナイを追放されたウルクは、南の森の果てをめざし、過酷な旅をしている途中、陽の色のクムゥを倒し、何者かにさらわれて以前であったピナイの人ではない少女カヒィの住むフジミクニに連れてこられる。容貌違い、言葉も通じないフジミクニでは、暮らし方や約束事など何もかもがピナイとは異なっていて、ウルクはなかなか馴染めないが、仕事と棲家を与えられて、なんとかコーミィのことを知ろうと、奮闘する。それをピナイに持ち帰ることをまだあきらめてはいないのだった。2011年の日本では、手をつなぎ合うような二体の古代人骨の発掘が着々と進み、記者発表されることになる。二千七百年前では、ウルクとカヒィは、お腹の子と三人でフジミクニを逃げ出し、フジィを目指すが……。2011年に発掘された二体の古代人骨の事情が読者に明らかにされるとき、切なさと悔しさが胸に迫る。途方もなく壮大で、とても身近な一冊である。
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文明とは、豊かさ、便利さと引き換えに争いの種を孕んでいる。
争いとは、欲と裏返しだ。
そんなことはさておき、作者もイマジネーションを膨らまして、楽しんで描いたような印象を受けた。
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人を魅了するものは災いのもととなってしまう運命なのか。
米、それはとても甘くて美味しい食べ物。
たくさん収穫するには、それなりの土地も必要。
ただ、その土地を手に入れるには権力も必要か。
あたしなら持ち帰ろうとせず、土地に馴染もうと安易な方法を選択しそう。
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【ネタバレ】縄文人の男と弥生人の女のラブロマンス。結末はちょっと切ないです。時代は変わっても人の営みはさほど変わらないのでしょう。つくづく人間というヤツは…。縄文時代の固有名詞については解説が欲しかったな。
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アップアップで何とか読了。
カタカナはとても苦手。翻訳物もだめだなぁ。
荻原さん大ファンなんだけど、流しナナメ読みでした。
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途中ちと飽きてきたが
終盤の盛り上がりが良かった。
現代パートは最初と最後位で十分だったのでは。
【図書館・初読・8/5読了】
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ウルクはいくつも山を越え厳しい旅をする。
フジミクニではカヒィと再会。
コーミーを手に入れいつかピナイに持ち帰りたいと思いながら
フジミクニで暮らし始める。
冒頭で結末がこうなることは分かっていたけれど
やはり切ない。
人間は二千七百年前と、ちっとも変ってないじゃないか
この先はどうなるんだろ。。。といろいろ考えさせられた。
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15歳のウルクは、ピナイ(集落の名)で父親がいないために
バカにされたりしつつ、大人と同じように狩りができるように
少しずつ腕をみがき、母や弟を大切に生活していた。
ある日、山で迷った時に大きな陽の色のクムゥ(ヒグマ)を見る。
誰も信じてはくれない陽の色のクムゥと父の死との関わりを知り、
掟を破ったウルクは追放され、戻るためには
海渡りと呼ばれる人達が持っているコーミー(コメ)を手に入れなければならない。
少年の未知への世界への冒険と、生死をかけた陽の色のクムゥとの闘い、
渡来系弥生人との出会いと恋が描かれる。
とてもゆっくりした進み方ですが、丁寧に当時の生活が伝わる細かな表現で
引き込まれていきます。
少年の心の動きが繊細で、狩りの準備をする動作のひとつひとつにも
喜びや焦りや、大人たちへの憧れとか、伝わってくるんです。
どうして自分は父親のことを覚えていないのか、とか。
いつか大物をしとめられるようにウサギやムジナで練習のように日々狩りをするところとか、
弓の大きさとか、矢に使う羽根の形とか、
描写がほんとに細かいんですね〜
そして、いよいよ死闘を繰り広げる相手、陽の色のクムゥと対峙する場面の描写は
とてもリアルで迫力があって、ページをめくる手がとまりません。
その後、弥生人との出会いがあり、
狩猟で生活していた縄文人との生活の違いが、ここも丁寧に
弥生人の農耕の生活を細かく描写されます。
容姿も言葉も全然違っていて、長であろう人ワウが贅沢な暮らしをしていることや
ウルクたちが狩りをするために使う弓矢を
人を殺すための道具に使っていることに驚くのです。
少年を主人公にしながら、
縄文人と弥生人の違いをくっきりとさせて、
壮大なスケールで描かれるアクションアドベンチャーと言ってもいいくらいの
わくわくドキドキのストーリーでした。
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現代の女性新聞記者が、記事を求めて縄文時代の古人骨と出会う。物語のメインは、その人骨が10代半ばの若者として懸命に生きていた日々。
若者が住む、武器は獣に対してのみ使う貧しい村と、進んだ文化を持つ一方で、戦いによって領土を広げようとする渡来人たち。遠い昔の話でありながら、現代にも通じる普遍的な要素も多かった。
動物や植物の名前などが特殊な形で登場するので、現代の言葉に置き換えたら何かなと、あれこれ楽しみながらも読める。同時進行する記者のプライベートな話はあくまでも添え物で、中途半端。
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ストーリー展開はあまりにも予想どおりで少し物足りない感がありました。
それでも、古代人がどんな生活をしてどんなコトバで話をしていたのかを空想することができて面白かった。
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言葉がどうやってできたのか、何となくだが分かった。
最後の展開は途中で、分かってしまったけどやはり2人の最後を思うと切ない
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2011年夏、ダム建設予定地から縄文人とみられる人骨が出土する。
推定年齢16、7歳の男性。
地方支局に務める記者の佐藤は、まだ少年のこの縄文人がどんな人生を送り、なぜここで骨になったのか思いを馳せる。
そして、これを文化面の記事にできないかと縄文時代について調べ始める。
一方、二千七百年前の日本。
まだまだ一人前の狩り人とはいえない少年、ウルク。
強い男になりたいと日々奮闘していた彼は、ある出来事をきっかけに禁足地である南の森を目指す。
縄文人の生活を活き活きと描いた画期的な作品。
長編だけどぐいぐい読んだ。
予想通りのありふれたラストなんだけど、それでもなんだかジーンとしちゃった。
単に縄文人の生活を描いただけではなく、人類は文明を手に入れ進化させるたびに何か大切なモノを失ってはないですか?という問題提起の思いを込めた作品でもある。