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幕藩体制=武家社会が崩壊した明治初頭における武士たちの生き様を描いた短編集であり、浅田次郎独特の人情・人の機微が貫かれている。
2016/11/30 10:02
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕藩体制=武家社会が崩壊した明治初頭における武士たちの生き様を描いた短編集であり、浅田次郎独特の人情・人の機微が貫かれている。私が気に入ったのは、映画化(c2014:日本/119分、監督:若松節朗、出演:中井貴一、阿部寛、広末涼子)もされた『柘榴坂の仇討』であるというか、映画を観てこの短編集を知って読んだのだが、短編ながら実に味わい深い作品であった。次いで、『西を向く侍』は太陰暦から太陽暦への改変、『遠い砲声』は西洋定時法(時計)の導入と、この2編はいずれも時間に関するものであり、『西を向く侍』はオチが面白く、『遠い砲声』では音が伝播するのに時間がかかるため、遠い場所では距離/約340m分の時差が生じることをさり気無く記述しているのが興味をそそられた。また、『箱館証文』は少々出来過ぎといった感は否めないが、戦場で武士Aの命を千両で買った武士Bが取り立てにやってくると、その前に武士Bの命を千両で買った武士Cが現れ、更にその武士Cの命を千両で買った武士Dが現れと連鎖する話であり、幕末の武士の複雑な心境と言うか立ち位置の微妙さを描き、大団円の結末と合わせて笑いを誘う。その点、冒頭の『椿寺まで』は全体としては面白いのだが結末の悲しさが少々気になる。短編集の標題にもなっている『五郎治殿御始末』は、正に幕藩体制=武家社会の終焉を描いた作品であり、実直だけが取り柄のような一武士の立場での「けじめ」のつけ方として興味深いが、話としては地味で余り面白味は無い。なお、聞き語りと言う形を取っているが、その表現からしてかなり真実味があり、もしや著者・浅田次郎自身のご先祖さんの物語なのかなとさえ思わされる。
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全1巻。
明治という時代に取り残されてしまった侍たちの短編集。
江戸から明治に時代が変わる中、
スポットが当たるのは当然、維新で活躍した元勲達で、
時代に対応できなかった侍たちは
「負け組」という端役で紹介され、
物語から退場することが多い。
今作はそんな「負け組」にスポットを当てた群像劇。
短編集はあんまり好みじゃないけど
これは良かった。
考えてみれば、
時代の変換に上手く乗れた人と同じくらい、
適応できなかった人もいた訳で、
そしてそんな人たちにも、その後の人生はあった訳で。
哀しく、可笑しく、美しい、
不器用な侍たちの人生が染みる。
今や歴史の1ページとして
当たり前に思ってしまうけど、
とんでもない変換だよなあ。
江戸から明治って。
ちょんまげを落としたことだけでなく、
時間や暦、生活スタイル全てにおいて、
別の国に生まれ変わる程大きな変化があったことに
改めて気づかされた。
結構、目から鱗。
収録作のうち、
『柘榴坂の仇討』が映画化。
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明治維新.激動の時代,自らの誇りとともに幕を引いた侍たちの全6編からなる物語.はるか昔の出来事に思えるけど,玄祖父ぐらい前なら幕末だろうか.そう考えるととても不思議.一風変わった時代小説でとても面白かったです.なぜかフォントがとても大きいのに戸惑った.熟年向け?
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江戸から明治への時代はまさに大転換期だった。
侍たちの翻弄される姿が具体的で引き込まれた。
浅田次郎さんの本は初めて。
久しぶりに読んでわくわくした。
他の本も読んでみたくなった。
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「柘榴坂の仇討」が映画化され、観てきたので読んでみました。
あまりにも短くてびっくり。
仇討の相手に対する気持ちが、いまひとつ分からなかった。映画の方が納得できたストーリーでした。
「椿寺まで」が良かった。
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明治維新と言えば、偉人などの華やかな活躍が題材になることが多い中で、そういった時代に翻弄されたであろう市井の人々にスポットをあてている。というか、当時の人々のほとんどが本書に描かれたような人だったのであろうし、こちらこそが本来の日本の姿だったのではないか。教科書には載らない歴史を学んだ気分。
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明治維新により仕えるべき「公」を失った武士たちの最後の生き様を描いた物語。6つの短編に描かれている男たちはみな哀しいほどに真面目で不器用だ。そもそも滅私奉公していたのだから、公が失われたときの苦悩は想像に難くない。それでもなお、滅私を貫き世のため人のためであろうとし続ける彼らに頭が下がる。
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「椿寺まで」、「箱館証文」、「西を向く侍」、「遠い砲音」、「柘榴坂の仇討」、「五郎治殿御始末」の6編からなる短編集。
映画化もされた「柘榴坂の仇討」が収録されている。
どの話も明治初期、維新後の武士にフォーカスし浅田次郎さんらしい作品になっている。刀を捨てなければならない武士の苦悩がよくわかる。
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『柘榴坂の仇討』『五郎治殿御始末』の二つは泣けた。
特に『柘榴坂の仇討』は絶対歌舞伎向きだと思ったら、案の定、中村吉右衛門と浅田次郎の対談が巻末についていた。
私も大分と歌舞伎慣れしたものだ(笑)
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江戸から明治。有史以来大きく世の中が変わった当時の様子を名も無き市井の人々の視点にて描き込む短編作品集。特に”柘榴坂の仇討”。敬愛する井伊直弼を助ける事ができず、仇討ちを決心した近習の物語。斬って逃げた側と、追う側の江戸から明治を駆け抜けた心の葛藤を見事に描ききる。時が止まったかのような男が最後に自分で精算できたわけは。。
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明治維新により変動した世の中を、武士社会との違いに戸惑いながらも、生き抜く6つの短編。
元佐幕派の商人。官吏。改暦に抵抗するもの。西洋時刻に戸惑う砲兵。桜田門外の変を防げなかった護衛。桑名藩のリストラ役となった武士。
変わってしまった価値観の中、各人なりに受け入れていくところが良い。
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江戸から明治、世の中が無理矢理に変えられていくとき、それぞれの始末をつけた人たちの話です。
表題の「五郎治殿御始末」と「箱館証文」「遠い砲音」が特におもしろかった。
表題作の「私」は浅田さんなのかなあ。じんわり温かくも悲しかった。
この中の「柘榴坂の仇討」は映画になっていて、井伊直弼役の中村吉右衛門さんと浅田さんとの対談、あと解説も読み応えありました。
結構おすすめです!
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明治維新での武士たちの物語。
淡々と読み進んでしまいました。
本作は6編の短編から構成されており、それぞれに、その時代を生きた武士の生き方、戸惑い、葛藤、悲哀が描かれています。
椿寺まで
箱館証文
西を向く侍
遠い砲音
石榴坂の仇討ち
五郎治殿御始末
の6編です。
「椿寺まで」は丁稚を椿寺までつれてきたその真実
「箱館証文」は戊辰戦争の中に交わされた証文の本当の意味
「西を向く侍」では太陽暦の採用に伴う御従士の行く末
「遠い砲音」では西洋時計の採用に伴う戸惑い
「石榴坂の仇討ち」では映画にもなりましたが、桜田門外の変で井伊直弼を守れなかった御駕籠回りの近習役の思い
「五郎治殿御始末」は孫のためにとった老武士の行動、そしてその始末
いずれも、それまでの制度や価値観がまったく変わっていく時代の中で翻弄される武士たちを描いています。
歴史の教科書では明治維新の一言で片付けられるその時代を武士の矜持をもったまま生きていた生き様と武士の時代の終わりを感じれるストーリでした。
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時代が変わるっていっても 昭和が平成になったのとは、大きく違い 何もかも変わった時
戸惑っただろうなぁ
幕末物は好きで 何冊か読んでいましたが
まさにこれが幕末ですよね~
戸惑いながらも 何かしらのけじめをつけて 新しい時代に折り合いを見つけていく すごい時代ですね。(^_^;)
箱館証文が一番好きです。
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「西を向く侍」が好き。
明治維新という歴史の転換・事件ですが、市井の人々にとっては、この話のようにいつもの日常が変わるということこそが、一大事だったのだろうと思いました。
お上がとってかわったことよりも、直接的な変化の方がこたえる、という。
短い月の語呂合わせの覚え方「にしむくさむらい」。この話のラストの、そこに秘められた想いがまたオチとしてきいています。
好きですねぇ。