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著者の川畑嘉文氏は、1976年生まれのフリーのフォトジャーナリスト。
私はフォトジャーナリストの活動に興味があり、これまでも山本美香氏、長倉洋海氏らの多数の著書を読んできたが、本書には、通常は表に出ないフォトジャーナリストの姿(お金がない、取材地で病気にかかる、戦場が怖い。。。)が赤裸々に語られている点で、少々趣を異にする。
なにしろ、本文の第一行目が「カ、カネがない……」で、そのあと「はっきり言ってぼくの生活はカッコ悪い。・・・1980年代後半の流行語「危険、汚い、きつい」の3Kに、「カネがない」と「カッコ悪い」を加えた5K生活を送っているのがフリーランスの現実である。ぼくの場合、「カアチャンにいまだに頭が上がらない」を加えた6Kとなる」と続き、自虐的ながらも真実を描いた表現が随所に登場する。。。
しかし、その著者が「世界各地で起きていることの「真実」を伝える、それがぼくの仕事だと思っている。それに、リアリティのある文章表現にも可能なかぎり努力したつもりである。ぜひ、今回記すことになった「真実」を五感を通して感じていただきたい」という、紛争地・震災地・国際社会問題の現場を取材した記録は、世界の現実を我々の目の前に突き付け、様々なことを考えさせるに十分である。
具体的には、9.11後の米国によるアフガニスタン侵攻、カンボジアでの内戦時に埋められた400~600万個の地雷の除去、2010年のハイチの巨大地震、東日本大震災、2011年のトルコの大地震、9.11米国同時多発テロ(著者は当時NYに住んでいた)、(オバマ大統領による関係改善が進む前の)キューバ、干上がって消滅しつつあるアラル海などが取り上げられている。
多数の印象に残るモノクロ写真も掲載されている。(もっと大判だと更によかったが)
等身大のフォトジャーナリストの姿・活動を知るために、一読の意義はある一冊と思う。
(2014年9月了)