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この世界観に入れればとても面白い。クリント・イーストウッドのダーティー・ハリーもこんな感じで昔から好きだな。
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先に『ロング・グッドバイ』で感動してしまったので、正直物足りなかった。
あまり引き込まれもしなかったし、期待したほどではなかった。ざっと読んだので、ハードボイルドを読みたくなったら、もう一度じっくり読んでみたい。
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私立探偵フィリップ・マーロウは、莫大な資産家であるスターンウッド将軍の娘が脅迫されている事件の依頼を受け、脅迫状の差出人で怪しい書店を経営するガイガーの家を訪ねる。
がマーロウが周囲を調べている間に、屋敷の中で三発の銃声が轟いた。銃声を聞いてマーロウが部屋に飛び込むと、そこはヌード写真の撮影現場で、ガイガーの死体と裸身で放心状態の将軍の末娘カーメンの姿が…。
孤高の騎士フィリップ・マーロウを主役にしたシリーズの第一作であり、
チャンドラーにとっても記念すべき長編第一作の村上春樹による新訳版。
アメリカ 『タイム』誌「百冊の最も優れた小説(1923~2005)」や仏「ル・モンド」紙「20世紀の名著百冊」にも選出。
いやぁ~、20数年ぶりに読み返したけど
村上春樹の新訳が妙に馴染んで新鮮な気持ちで最後まで読めた。
当時は1956年に出版された双葉十三郎の訳しかなく、
高校生の僕には言葉遣いや文章のあり方が古臭くて、殆ど頭に入ってこず、
傑作と名高いその魅力を十分に堪能できないのが本当に悔しく思っていた。
そんな経緯から、
村上春樹が「長いお別れ」を翻訳することになった時に
僕が一番に読んでみたいと思ったのが
このフィリップ・マーロウシリーズの第一作「大いなる眠り」だった。
それだけに読了後は感慨もひとしお。
陰鬱な雨の描写と哀しき悪女たち、人を殺めてしまったマーロウの心の揺れ、キザ一歩手前のロマンティックなラブシーン、お約束の(笑)殴られ痛めつけられるマーロウ、そして意外な真相とラストで分かるタイトルの意味など読みどころは沢山あるが、
個人的には冒頭スターンウッド家に初めて訪問するマーロウのくだりが粋で面白かった。
豪奢な扉にはめ込まれた、
騎士が縛られた女性を助けようとしているステンドグラスを見て
自分ならこうするとマーロウが心情を重ねるシーンは、
お節介でお人好しのマーロウが
これからやっかいな事件に巻き込まれていく暗示ととれて、思わずニヤリとしてしまった。
今回再読して一番に感じたのは、
村上春樹の指摘にもあるように
デビュー作とは思えないほど
すでにこの時点でチャンドラーの唯一無二の文体が完成されていたことだ。
マーロウの目と感覚を通して捉えられた一人称の語り。
絢爛たる比喩表現を駆使した詩的でストイックな文体。
腐敗したロサンジェルスを舞台に
社会批判を盛り込んだ深い文学性。
小気味いい会話の妙味と
主要キャラから脇役にいたるまで忘れがたく記憶に残る登場人物たち。
あふれるリリシズムと
散りばめられた宝石のような名言の数々。
酒とコーヒーとキャメルのタバコとチェスを愛し、
シニカルでいて、他人の気に障る冗談を好んで口にし、
どんなに痛めつけられても『痩せ我慢の美学』を貫き、警察や権力に屈しない、
孤高の騎士・ 私立探偵フィリップ・マーロウのキャラクター造形も
すでにこのデビュー作から1mmのブレもない。
(ただマーロウもまだこの時点では33歳の若僧なので、「長いお別れ」や「プレイバック」と比べるとヤンチャさが目立つところは御愛嬌)
チャンドラーの小説は犯人探しや本筋のストーリー展開以上に
キャラクターの魅力と会話や文体を味わうためのものなので(笑)、
ミステリーとしての驚きを期待して読むと弱さは否めない。
(コナン・ドイルやアガサ・クリスティーやダシール・ハメットと比べると物語の筋立てやプロットが弱いという弱点がある)
中でもこのデビュー作は
シリーズ中、もっともストーリーが二転三転し、実にややこしい。
なのでチャンドラー入門編にはオススメしないけれど、
「ロング・グッバイ」「さよなら、愛しい人」「リトル・シスター」と翻訳を続け、チャンドラーの文体が染み込み
同化してきた感のある村上春樹の魅力的な文章により、
紆余曲折を経て真実にたどり着くマーロウの姿は鮮烈に胸を打つし、
小説家としてのチャンドラーの魅力は充分過ぎるほど伝わる傑作だということをあらためて知らしめてくれた。
(チャンドラーの村上訳を読むと、いかに村上春樹がチャンドラーの文体に影響を受けているかが如実に分かるのも面白い)
それにしても今作が後のハードボイルド小説に与えた影響は計り知れないし、
ハードボイルドに限らず幾多の作家がチャンドラーのスタイルを模倣してきた。
村上春樹の初期の作品も本人が公言するようにチャンドラーの影響を受け、ハードボイルド小説の構造をとってきたのは周知の事実だ。
僕のようにかなり昔にチャンドラーにハマり、久々に読み返してみたいと思った人にも、
村上春樹の作品のカラーが好きな人にも、
いろいろと新しい発見に出会える意義のある新訳シリーズだと思う。
(毎作ごとに巻末に書かれたチャンドラー愛溢れる村上春樹の解説がまた素晴らしい!)
なお余談だが、名匠ハワード・ホークス監督が映画化し、
「マルタの鷹」でサム・スペードを演じたハンフリー・ボガートが、今度はフィリップ・マーロウに扮した
本作の映画版「三つ数えろ」も見応えある傑作!
(ボギーは確かにカッコいいが男っぽさが過ぎるし背が低いし、マーロウのイメージではないだろう。チャンドラー自身はケーリー・グラントがイメージに近いと言っていたらしいが…)
★ローレン・バコールが美しい!
映画『三つ数えろ the big sleep』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=0uaNG3xd9gs&feature=youtube_gdata_player
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『落書きのある壁の陰になった角には、青白いゴムの避妊リングが落ちていた。それを片付けるものもいない。実に心温まるビルディングだ』
チャンドラーを読んでいたのは二十代。三十年程前のこと。シニカルな言い回しに惹かれていた。あの頃はミステリーマガジンも読んでいた。もっともエンゲル係数の高い生活をしていたので日比谷図書館には随分と世話になった。
シニカルには二通りある。何に対しても否定的な態度で返すやり方。これは誰にでも真似ができる。思春期の子供にでも。もう一つは思っていることと反対のこというやり方。これは比喩が冴えていなければ芯を捉えることは出来ない。往々にして言った方にも言葉の持つ力の反作用で負荷が掛かる。目の周りの青黒い痣と冴えた頭が無ければ決まらない。「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」。
チャンドラーの言い回しはどれも冴えている。しかしそれが活きるのは都市という背景の中だけ。それも決して表通りではない。ブリキのゴミ箱が転がる薄暗い裏通り、雨が降っていれば尚よい。そこでずぶ濡れとなって頼まれ仕事をこなす。マーロウに魅せられはするが、そんな風に「撃たれる覚悟」は自分にはない。それが妙に苦しくてミステリーから遠ざかっていった。今、再び手に取るのは村上春樹の翻訳だからということもある。だがそれ以上に人生の、少なくとも宮仕えの終わりを意識するようになったことと関係しているのだろう。
シャーロック・ホームズに本格的な推理がないように、フィリップ・マーロウにあるのも二転三転する推理の面白さではない。両者に共通するのは、ひょっとすると日本人が遠山左衛門尉に、あるいは水戸黄門に感じる爽快感と似たものだ。ジェームズ・ティプトリー・ジュニア(と言っても男性ではない)ではないけれど、それがマーロウの「たった一つの冴えたやりかた」であるから人は惹かれるのだ。何故なら皆解っているから。「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」、と。
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私立探偵フィリップ・マーロウの登場する最初の長編作品。双葉十三郎訳で昔読んだのだが、内容は全く忘れてしまっていたので、最近の村上訳で読み直してみた。やはり素晴らしい作品。
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待望の新訳!丁寧で整った訳のおかげでわかりづらかったところも読み取れるようになった。表裏一体だった冗長さも本作では気にならない。しかしギャルゲ―かと思うくらいガンガン来る娘たちだ……(だからこそそれを捌くマーロウが引き立つのだが)。
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フィリプ・マーロウは元警察官の私立探偵。ハリウッドに住むスターンウッド将軍に、とある脅迫事件について調査を依頼される。
将軍には二人の娘ヴィヴィアンとカーメンがいるが、ヴィヴィアンの夫ラスティ・リーガンは1ヶ月前に行方不明になっている。将軍はその件についても気にしていた。
マーロウが脅迫写真ガイガーを追い始めると彼は古本屋を隠れ蓑にして猥褻写真集の貸し出しを生業にしていることを知った。
ガイガーの店から彼の車を尾行して自宅を突き止めたがそこへカーメンがやってきた。
その後、発砲に気づいて屋内に飛び込むとガイガーの遺体と全裸のカーメンを発見した……。
1939年発表のチャンドラーの最初の長編だそうです。
訳は村上春樹。
少々読みにくいかな、といった感じでした。
これは訳の問題なのか元々の話の運びのためなのかちょっとわかりません。
ガイガーの死の真相が分かった時点でもう話は終わるのかな、という雰囲気になったけれど、まだ本の半分くらい。
将軍からはラスティ・リーガンの行方を調査して欲しいとも依頼されていないので、一体これからどんな展開になって行くのか皆目見当がつかず。。。
しかし、後半からがぐっと話の濃さが増してきました。
ガイガーの脅迫からどんどん転がっていって、ラスティが一体どうなったのか、どうして行方をくらましたのかということがわかり。
誰も幸せにならない結果で、余命幾ばくもない父親を案じたヴィヴィアンの気持ちは痛かったです。
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今さらレビューは不要の名作。それだけに難癖をつけたくなる気もするけれど、やっぱり面白いものは面白い。好き嫌いは当然あるだろうけれど、チャンドラーの、あるいはマーロウの世界像と村上春樹さんの文体は非常によくマッチしていると個人的には思います。
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名前だけは聞いたことのある私立探偵フィリップ・マーロウ。
村上春樹翻訳ということもあって読んでみました。
読んでいくうちから映像として流れるような文章は初めてですね。
ミステリーだが、アクションが多めでテンポもいい。
何よりマーロウがとてつもなくかっこいい。
容姿の描写はあまりないが、芯の強さを表現する行動がとても真っ直ぐで淀みない。
登場人物のほとんどが裏社会に通じている中、マーロウは通じていても染まらないというか、自分のラインを決めて行動して結果を出している。
女性には嫌われるようだが、それはきっとマーロウが女性の思い通りにはならないからだろう。
それでも惹かれる。
シリーズ制覇したい作品。
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マーロウシリーズ2作目。こちらが先に書かれてものだったけど、後になってしまった。
ロンググッドバイに続いて。
そうか、こういう調子というか、書き方というか、雰囲気なのね。
ふむ。
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ストーリーが錯綜して読みにくいなと思ったら、解説でチャンドラーが以前書いた短編をまとめて長編にしたて直したと書いてあり納得した。
謎解きを楽しむのではない、文体とストーリーの展開を楽しむ本。
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老いた富豪の元に届いた借用書。
この強請りを解決するよう依頼された
フィリップ・マーロウが
複雑に絡み合った事件に挑む。
噂には聞いていたが、
ミステリとして特別インパクトが
ある訳ではなかった。
むしろ粗が目立つ程。
だがとにかく文章が魅力的。
マーロウの台詞、スタイルが
格好良くて痺れる。
情景描写、比喩の表現が多彩で
これを村上春樹が訳す事で
翻訳のロスを最小限に止め、
本来の魅力を最大限に引き出して
いるように感じられた。
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村上春樹翻訳作品を読みたくなって手に取った一冊。割りと刑事ものは好きなんだけど、そこまで刺さらなかったなぁ。登場人物の姉妹がどうも好きになれないというか。新宿鮫的な話のほうが好きな自分はどうなんだろう。
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村上春樹氏の翻訳が出版されるようになって、チャンドラーを改めて読み直したりしている。昔読んだ時とかなりイメージが違う部分があって、翻訳が異なるせいか、自分の年齢のせいか、はかりかねている。
といっても、この作品は初めて読む。チャンドラーの長編第1作である。
マーロウが若いな、というのが第一印象。30代前半だから当然なのだけど、もっと老成していた印象をずっと持っていた。作者の描き方なのか、翻訳の雰囲気なのか、僕の年齢なのか。これも判断に迷うところだ。
話がするすると発展していく上に、マーロウ自身が何を考えているのかさっぱり語ってくれないので、映画のシーンを観ているように、マーロウの心に映る世界をじっと眺めている感じになる。時にはそれがまだるっこしくて仕方がない時もあるけれど、自分の気分にぴたりとはまる夜には、いつまでもその世界にいたくなる。
どちらかといえば地味な事件である。だからこそ、登場人物の印象がくっきりしている。それぞれがそれぞれの不幸を背負って生きていて、マーロウの動きに添って、じんわりとブレンドされ発酵していくような。
読書を楽しむというよりも、鏡を見つめているような気持ちになり、まるで試されているような気分で読み終わった。
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余白のある面白さというか、何度も読み返したくなるのがチャンドラーの本という感じがします。話も楽しめますが、本を読むことが楽しい本ですね。