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高野秀行だから、勿論面白かった。ただ、この本は二番出汁という感じ。他の仕事で行って、ついでに体験したり取材したりしたことを、イスラムと飲酒という観点からまとめた、という。
ソマリランドのいつものワイヤッブも出てくる。
この本の読みどころは、イスラムと仏教の考え方。学者が研究して書く本とは違って、実際に現地の人々と触れあって感じる宗教観なだけに説得力がある。
薬物にしろ煙草にしろ、酒にしろ、完全に社会から絶つのは不可能だし、上手く付き合えば、そう危険なものではないが、人間は弱いので、限度を超えて溺れ、取り返しのつかないことになってしまう者が必ず出てくる。だから基本禁止の建前が必要なのだな。お前はやっていいけど、お前は駄目とは言えないものね。
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高野さんのクレイジーさがよく現れている一冊。ずっと積読状態でしたが、仕事を休んで電車に揺られながら、飲んではいけないところで酒を探しまわる高野さんのはなしを読みふける優雅な休日。お酒が大好きなわけではなくても、酒とは何か考えてしまう。わたしも少しは飲むけど、お酒禁止になろうとも廃止になろうとも別に生きていけると思うけど、大丈夫じゃない人が世界にはたくさんいるんだなあ。
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基本的に「非合法」的なものに興味をそそられる傾向が強く、イスラム教の人々がお酒を飲むという、何となく、ただの違法行為よりもさらに罪深そうな行為とそのテーマを設定した作者のセンスに思わず手を出した。日本ではお酒は禁止されておらず、どこでも飲め、私自身も日曜日、コンビニで買った缶ビールを家まで我慢できずにコンビニの前で飲んでしまう事がよくあったりするが、そういう時間が悪くなかったりする。しかし他の国ではそんなことしたら逮捕される。日本ではマリファナを吸ったら逮捕されるがそれ自体が産業になり文化として根付いている国もある。嗜好品に対しての解釈はそれぞれに委ねられていて、窮屈なことも多くあるが、そこが文化の違いで面白い。完全に欧米化されている日本から見るイスラム圏に対してのイメージからは想像できない現地の人たちの脱法。どこの国も背徳感から来る美味しさに代わりはないらしい。お酒に近づけば近づくほど現地の人から遠ざかる、と言いながら、現地の人との宴会を望み、地酒を探す作者の本物を見ようとするその姿勢には脱帽する。
酒には人格がない、と言っていたのは中島らもだが、なんでもそうなのだと思う。嗜好品にはどんな規制をかけていようとも、人格は当然なく、けっきょくは人間が人間としてどこまで生きていこうとするのか、どういう生き方をしようと思うのか、そういう問題なのだ。
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イスラム教では飲酒はタブーであるのに、ある所にはあるんだな。それもこれもお酒が大好きで、どの国の人とでも積極的にコミュニケーション取れちゃう高野さんならでは。でも逮捕されてまた国外退去にならないかヒヤヒヤしました。
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イスラム圏でも酒はある。
酒好き著者のどんどん深く踏み込んでいく行動力がすごい。
イスラム圏のイメージが少し変わった。
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読後に訪れる感慨は、なによりもイスラム圏の人々も本質的に我々と同じような営みをしているのだ、という点だ。
当然、戒律により酒を手に入れたり、ましてや宴会を開いたりすることは格別に難しいわけだが
それでも建前を巧みに使いながらわりと普通に飲酒したいる姿に感動すら覚えた。
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各国で、お酒を手に入れるまでの過程、本当にワクワクした。私はお酒は大好きだけれど、お酒のためにこれだけのコミュニケーションは、絶対取れないな。
ちなみに、今回、飲みながら読書は一度もしてません。
つまみに読むのにいい?って、読む前は思ったけれど、飲まないで読んだ方が楽しかった。
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本当に面白い。高野さんの本はどれを読んでも本当に面白い。読んでいるときにワクワクが止まらなかった。勝手に思っていたイスラームの厳格なイメージを覆すような、酒(酔い)がつくる人々のありのまま姿から、人間味が伝わる。特に良かったのは、あとがきに書かれている言葉だった。
「イスラーム=前近代的で非常識」とか「ムスリム=過激で不寛容」といった偏見がまかり通っているいっぽう、「イスラームは本来寛容的な宗教である」とか、生真面目に説く。
そんな難しい話ではない。
私が出会ったのは、犬の写真を撮ろうとすると、一生懸命(イスラムでは不浄とされる)犬を押さえようとしてくれる通りすがりのおじさんとか、酔っ払っていてもお釣りをきっちり返してくれるチュニジアの田舎の人たち……
ムスリムの人たちは酒を飲む人も飲まない人も、気さくで、融通がきき、冗談が好きで、信義に篤い、
この言葉こそ、彼が伝えたかったイスラームの人々の姿だと思った。2017.5.1
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イスラームの国といっても、そこにはキリスト教徒やユダヤ教徒、ヒンドゥー教徒に仏教徒と様々な人々が住み、イスラームの中でも酒も豚肉もOKなドルーズ派があり、さらに各社会の文化によって裏表、本音と建前があり、世界は常に一面的ではないことを考えさせられる。ソマリランドとイエメンでカートの葉があれば酒を飲まずに過ごせたというのが意外だった。酒もドラッグも大体同じなのだろうか。自分で確かめる気はないが。
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これまで、ほぼすべての著書に手をつけてきた高野氏の本のなかで、数少ない未読本だった『イスラム飲酒紀行』。イスラムについては、近年様々な本が出版され、硬いものだけでなく、内藤正典氏の『となりのイスラム』や常見藤代さんの『女ひとり、イスラム旅』など、本当のイスラムの姿について理解しやすい、楽しめる本も出版されている。
高野氏によって書かれたこの本は、飲酒が(表向きには)禁じられているイスラム教の国々で酒を飲もうと奮闘する体験記だ。一見ふざけたルポにも見えるが、本気で飲もうとする姿を通して、イスラムの国々のイメージとは異なる一面が浮かび上がり、とても身近に感じられる。高野氏ならではの飄々としたユーモアを混じえて書かれ、非常に読みやすく、また楽しい本だった。
イスラムをはじめ世界を広く知りたい方々には、大変おすすめの本である。
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著者の執筆スタイルは珍しい所に行って、珍しい体験をしてそれを面白く書く事だと言う。しかし本書を含めてもうすでに著者の執筆からは珍しい所や体験をせずとも、その国の一部分を切り取る能力があるのではと感じた。
イスラムと飲酒、宗教とタブーの問題は深掘りしようと思えば出来るかもしれないが、あくまで著者は酒が好きだから探しているというスタンスを壊さない。だからこそ主義主張がうるさくならず、楽しく読める。
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最近どんどん露出が増えてきた高野氏、文章が面白いというのは何をするにも大きなアドバンテージで、毎回旅レポという訳では無くてテーマが毎回違うのでいつも新鮮です。
今回はイスラム圏の飲酒事情という斬新な切り口で攻めてきました。そもそもイスラム圏に酒あるの?と思いますが、結構みんな隠れて飲んでいるというのが良く分かりました。
そもそも酒が手に入りにくい所に行って血眼で酒を探して飲むというのが高野氏っぽいですね。
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アルコール依存症とは著者があとがきで書いているので、何と表現しようかと考えたところ「裏・高野」ではないかと思った。公には飲酒を禁じられているイスラム圏の国々で酒を求めて人格が変わる様は、『怪獣記』などの本編で見せる精力的で楽し気な筆致からは想像できない。しかし、一番驚いたのは第3章のイラン編で登場した、私の故郷・銚子で働いていたという日本語が堪能のイラン人が出てきた時だった。
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酒を飲まない私が、書きたくても書けないテーマ。
それだけに、筆者が死に物狂いで酒を探し求める様子は、最初、「盛ってんじゃないの」と思ってしまった。
しかし、筆者が求めるものが、「ローカルな場で、ローカルの人と酒をわいわいやる」ことだと知り、そこからはその疑いが消えていった。
酒、の部分に、地元の食事、とか他のものを入れれば、私も同じような事をしているのだ。
それを1冊の本にまとめられるのが、著者のスゴいところ。
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テロがあるアフガニスタンでも酒と置屋を営む中国人がいること、この民族のバイタリティーの凄さたるや。
他にもイスラム圏の人たちも酒飲むのはマレーシアの場合も知ってるのでなんとなくわかってたけど、ご当地なりの事情や土着な話が面白かった。