投稿元:
レビューを見る
憲法の本質とは、「法の支配」を具現化し、国民を脅かす力を持ちうる国家という存在を抑制する砦となる存在である、ということを「憲法学」というよりも、条文を媒介にして、社会との結びつきの中で体得させていく、という難題に挑んだ講義の記録である。
タイトルは、AKB48グループのファンにとってみれば、AKB48の名曲「純情主義」とかかっているようにも見えるし、憲法学に造詣が深ければ明治時代の意訳である「立憲主義」にかかっていると思い浮かぶのかもしれない(浅学な私には到底ムリだが…)。
そんなこの講義録は、将来、日本の憲法学を背負って立つ可能性のある研究者が、元々が知性的である上に、一般的な高校教育からみれば独特な体系の公民の授業を修めたのではないか、と思える優秀な女性との対話が収めてある。
章立てとしては「法の支配」の要素の4つのうち、最高法規性、基本的人権の尊重、違憲立法審査権、の3つに軸を置きつつ、間に、国民主権と国会についての説明をいれ、最後に、上半期に巷間を騒がせた改憲についてを語る、という構成を取る。
特に、序論である最高法規性の説明については周到で丁寧な議論がされており、凡百の「憲法」の専門書より余程理解がしやすく、尚且つ深い議論の端緒が記されている素晴らしい書籍だと思う。
そうした良書であることを踏まえて尚、少々の疑問を述べたい。
結局、問題は人権の章だ。
憲法においては、人権は、統治機構と二分する非常に重要な部分を占めるし、憲法の代表的な基本書である芦部信喜氏の「憲法」は、統治機構よりも人権について多く頁が割かれているのは周知の事実だ。
しかし、南野先生は、憲法は国民に直接影響をもたらさない、という説明に留まり、実際、憲法の人権規定が個人を救う場面を丁寧に説明しない。
憲法が直接国民に適用されることは否定されているが、そもそも法律は憲法に適合することが求められた上で運用されているため、憲法の理念は法律に反映されている、という説明や剣道実技拒否事件や三菱樹脂事件の判例などを説明すれば、彼女が、たとえば所属するグループにある、と言われる「恋愛禁止ルール」の是非について、「ルールが存在する」前提ではなく、そもそも「ルールが適切か」という所から考える深いレポートに導ける可能性があったのではないか。
そして、憲法は法律では守れない、私達個人の権利を最終的に救済してくれる方法となりうる、と捉えてくれたのではないか、と思えてならない。
そういう意味で、人権の議論が淡白になってしまった点は残念だ。
しかし、それでも本書は非常に良書であることは疑いようがない。
(本書に第4の権力という俗称は使われないが)マスコミが本来果たすべき役割を明らかにし、違憲立法審査権と三権分立、そして民主主義の欺瞞、といった部分にも光を当て、最終的に、護憲、改憲、というレッテルに傾いた枝葉末節の下らぬ市井の憲法議論を鮮やかに吹き飛ばす終盤は、春に刊行されるべきだった、という悔恨さえ抱かせるもの。
最後に、慶應大学に入るから、といって「福翁伝」を読む、というほどの意欲的な少女による総括的レ��ートを引用したい。
憲法の価値とは、「その憲法が『その国に根づいているか』、『安定しているか』、『運用されてきたか』ということ」から定められる、としている。
この理解に、リーガルマインドなどという言葉とは無縁のはずの高校生が僅か2日で到達したことに、敬意を表しながら、拙文を締めたい。
投稿元:
レビューを見る
日本武道館のステージで憲法を暗唱して聴衆を沸かせた高校生(当時)アイドルが、気鋭の憲法学者による講義をマンツーマンで受けた結果、日本一わかりやすい憲法の入門書ができました!
とはいえ、「人権論」から「統治機構論」へと展開する本書の内容は、かなり本格的なもの。「表現の自由」が憲法全体に果たす役割の重さには驚きを禁じえません。また、恋愛の自由、パパラッチの問題など、アイドルなら気にせずにはいられない事象についても、真正面から論じています。さらには、今夏、国内外で注視されている「集団的自衛権」の問題についても、ガチンコで議論を戦わせている大注目の1冊です。
「大学で憲法を専門的に勉強している学生にも読んでほしい」(南野)
「基本を理解し、守り、発展させることの重要性を学びました」(内山)。
第1講「憲法とは何か?」
憲法は他の法律と比べて何が違うのか
第2講「人権と立憲主義」
アイドルの「恋愛禁止」は憲法違反か
第3講「国民主権と選挙」
質の高い代表を選出するための工夫
第4講「内閣と違憲審査制」
国会・内閣・裁判所の民主的正統性について
第5講「憲法の変化と未来」
憲法が変化する場合とその手続きについて
投稿元:
レビューを見る
AKB48の"憲法を暗唱できる"アイドル・内山奈月さんに、南野先生が
憲法の講義をしている本。
九大法卒生間でtwitterで出回っていたので、これは読まねば!
ということで。
南野先生の軽妙な語り口がご健在で、やっぱり面白かった。
そして内山さんは、マジで九大生より頭いいと思う。
法律は人を縛るが、憲法はその法律を縛る。
法律は国会によって作られた民主的な正当性があるものだが、
その法律を無効化する違憲立法審査権は民主的な正当性が弱い・・等々
改めて、日本国憲法は巧みに作られているなぁと感じました。
それでも完璧なものや確固たる答えというものはなかなか無くて、
だからこうやって研究が続けられているんだなぁ
内容は、終始きわめてニュートラルです。
9条とか自主憲法とかの話もしてるのに、ほんとにニュートラル。
すごい。万人におすすめです。
投稿元:
レビューを見る
憲法への理解を助ける本として、とてもわかりやすい。久しぶりに、高校生の頃に勉強していた感じ、のようなものを思い出した。なんとなく知っているような気になっていたことも、整理されて頭に入って、よかった。
朝日新聞の天声人語でこの本が扱われていたのは、やっぱり、あらゆる世代の人に、憲法のことを知って欲しい、考えて欲しい、という切実な願いの表れなんだろう。
無関心でいても、誰かがうまくやってくれるなんてことを信じている場合ではない。
投稿元:
レビューを見る
九州大学法学部の南野森准教授が日本国憲法を暗唱できるアイドルとして有名なAKB48の内山奈月さんを生徒に国家権力を暴走させないために憲法が存在することを易しく授業形式で説いた本です。
内容がとても良い本です。
ところで暗唱っていいですよね。
高校の古文と漢文の先生が暗唱させて原文のまま(現代語訳せずに)感覚的に理解させるタイプのひとで、私も百人一首や、短歌、そして教科書に載っている数々の序文を暗記しました。
また、昭和のドラマで左とん平が、島崎藤村の『初恋』を「 まだあげそめし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり……」とその全文を暗唱する名場面があって、今でもそのシーンを思い出すことがあります。「時間ですよ」だったかな(ドラマ自体の記憶は曖昧です)。
投稿元:
レビューを見る
憲法の基本が分かりやすく、内容がすっと頭に入ってきた。
学生時代の公民の授業で丸暗記するだけだった憲法の意味、役割、国家権力との関係がよく分かり、現政権による集団的自衛権の問題にも触れられており、この問題の本質がどこにあるのかとてもよくわかる。
AKBの内山さんの理解力、まとめる力も素晴らしく、難解な条文も必要最小限の引用になっているので、副題通り条文には書かれていない本質、が分かるようになっていると思う。
各章の最後には内山さんのレポート、さらなる学習ポイントも書かれており、構成もよく練られていた。
投稿元:
レビューを見る
怖るべきAKBの中の知的キャラである。高校までの公民の知識で結構、憲法を知っている。しかも日本国憲法103条を暗唱できる。並の国会議員より本質がわかっているのではないだろうか。
違憲審査制の所で、これまでの法令違憲判決は10件(関税法の第三者所有物没収事件判決を除くと9件)ということをはじめて知った。勉強になりました。
投稿元:
レビューを見る
憲法学者とAKB48所属のアイドルとの対話形式で進む異色の憲法本。憲法学をかじったことのある人なら知ってるような内容ばかりだが、内容の水準は低くなく、憲法の基本をおさらいできる良書。
立憲主義的な憲法における違憲審査制の重要性の指摘が印象に残った。確かに違憲審査制の担保がなければ、憲法が最高法規といっても名ばかりになってしまう。ただ、違憲審査制は民主主義の観点からは緊張をはらんだ制度であり、最高裁判事の国民審査が重要という指摘ももっともだと感じた。
憲法9条をめぐる議論の整理もよくできている。特に、これまでの政府解釈の論理構造についてよくわかった。
国民の義務を憲法にもっと書き込むべきという議論に対して、憲法は国家権力を対象にしたものであり、国民に義務を課すなら法律でやるべきという指摘があったが、実に明快に感じた。
投稿元:
レビューを見る
「私と内山さんの熱気に満ちたやりとりのおかげで、普通の教科書では読み飛ばしてしまいがちなところや、あまり詳しく扱われていないけれども憲法の本質を理解するために重要な部分は、しっかり感じとれるはずである」。統治機構論ってこんなにも大事だったのねと実感。
投稿元:
レビューを見る
憲法の入門書としてはわかりやすくとても良いと思う。AKBの女の子はあくまでも補助的な感じなので、そちらが目的のファンの方にはちょっと物足りないかもしれませんが。
人に憲法のことを話すようなときにもちょっとしたネタとして使えると思います。
投稿元:
レビューを見る
以前に読んだ「日本国憲法を口語訳してみたら」は個々の条文解釈にスポットを当てていたように記憶していますが、本書は「そもそも憲法とは?誰のため?何のため?」という根本のところ(制定の背景、理念などの大枠)を理解するのにとても解りやすかったです。
(著者の名前に引っかけたわけじゃないけど)「まず森をみてから木を見ていく」ことですんなりと読み進められました。
政治・経済履修してたのに知らないことだらけ…何も勉強してなかった気がして軽く自己嫌悪です。
それにしてもなっきーの聡明さが滲み出てて!
編集もあるのでしょうが、南野先生もとのやり取り、章末のリポートのまとめ方やその読みやすさなど「すごいなぁ」と呟きたくなる箇所が多々ありました。
48グループ好きとしては推しメンがこれでまた一人増えました。
投稿元:
レビューを見る
憲法とは何か?憲法と普通の法律との違い、役割はなにか? 日本国の憲法がどういう位置づけなのか?等 非常に平易に書かれていて、すんなり頭に入ってくる。(その分、頭から出て行くのも早いけど)
法律は国民を縛るもの、憲法は権力者を縛るもの。硬性憲法・・・・。 これまでおぼろげながら知っていたことを明確に書いてくれていて非常に為になる。また、日本国憲法中にはいろいろそれまでの他国の憲法を基にした工夫が見られるのがおもしろい。(違憲審査権等)
聞き手の内山菜月ちゃんが聡明。
投稿元:
レビューを見る
20150210 買って大分経ったが読み終わった。興味から買ったが読みやすく説明も丁寧で良かった。入門の入門に使ったり私のように昔の記憶を思い出すのにも有効だと思う。
投稿元:
レビューを見る
参考記事:
『自民党がAKB国会招致を断念した本当の理由 安倍首相と真逆の憲法思想の持ち主だったから?』(LITERA 2015.5.27) http://lite-ra.com/2015/05/post-1140.html
投稿元:
レビューを見る
憲法とは何か? 政治を動かしているのは誰か? 気鋭の憲法学者・南野森が、憲法を暗記しているアイドル・内山奈月に憲法学を講義。2日間の講義のやりとりと、内山が書いたメモやレポートを収録する。