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「ビッグデータ」という言葉はほとんど業界ビジネス上のキーワードとして流通していますが、本来そうだったはずの可能性の一端を知れたような気がします。
ビッグデータは本質的には潜在的なものであって、人間の「意識(形而上の世界)」という浅い道具で取り扱っては本来の良さが引き出せないように思いますので、著者がとられているようなコンピュータに分析させるというアプローチが正しいように思います。その中で、未知の世界が発見されてくれば面白い。
「運」ということを、「人や事象との幸福な出会い」というふうに考えれば、その良質な機会をどれだけ多く持っていて、どれだけ活かすことができるかということになり、「運も実力のうち」と言うがむしろ、実は「運こそが実力そのもの」と言うこともできるでしょう。
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ビッグデータとウェアラブルの両方を組み合わせた可能性を明確に示した一冊だと思います。
「ハピネス」や「運」といった、一見非科学なものを扱っているのも良いです。
メンタルヘルスや組織改革といったものに興味がある人が読んでも良いかも知れません。
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日立製作所中央研究所の主管研究長である著者は2006年から8年間、ウエアラブルセンサを身に着け、自らの24時間の生活を、1秒間に20回の詳細な加速度計測によって記録した。このデータにより、著者がいつ寝返りを打ち、いつ集中して行動していたかが解析できるのだが、その延長線上で、我々の人生における根源的な問い、例えば、「どうすれば幸運にめぐりあえるのか」というような問いにビッグデータが応えてくれる可能性があると、著者は言う。
ここで問題になるのが、「人の行動に科学的な法則性はあるのか」、ということだ。人はみな1人ひとりが自ら考え、自ら行動しているように見えるため、すべての人に共通する行動原理があるとは直感的に思えない。けれども本書を読み進めるうちに、自分の意思で使っていると思っている時間すら、自分の思い通りにならないことを知る。
ウエアラブルセンサとは、革新的なデジタル技術を使った、ヒト用のバイオロギングだといえる(『ペンギンが教えてくれた物理の話』参照)。ビッグデータによるパラダイムシフトを、肌で感じられる一冊。
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コミュニケーションが可視化されるのは組織改善を行う企業にとって素晴らしい事だが、働く側にとっては
管理が厳しすぎて精神的にきつい職場になるのではないかと感じた。人間の人生がITで予測できてしまうので日本人の幸福度はますます下がるのではないかと思う。
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時間は自由に使えない。ハピネス測れる。人間行動は法則化できる。運は引き寄せられる。経済を動かす人工知能。
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人間の行動を科学的に分析するための実験方法をというか、実験ツールとしてのウエラブルの活用事例を紹介し、その可能性について、人文科学の分野を対象に自然科学で解明しようという挑戦的な本。
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そっちに話が転がるのか!という展開の本。話題になるのが納得。この結果が人類に良い使い方ができると嬉しいですね。
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ハピネスは測れることに感動。人の動きはボルツマン分布に従う←統計力学、流体力学は何を記述するだろうか?
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平等なチャンスが与えられても不平等な結果は必然的に生まれる。「公平なやりとりの繰り返し」が必然的に不公平をもたらす。これは能力の問題ではなく、確率の問題。つまり、偏りは自然の摂理であり、物事には確たる原因が無くとも特徴的な偏りが生まれるもの。
人間の行動も物質のようにエネルギーによって制約されている。つまり、人の時間の使い方も法則によって制限されている。より素早い行動の時間はより静かでゆったりとした行動よりも少ない時間しか許されない。
人間は、1日の総活動量を決めると、ある帯域の動きを伴う活動に割り当てられる活動予算も決まり、それを超えたバランスの時間は使えない。例えば、1分間に60回以下の動きを伴う活動には、活動時間全体の半分程度の時間(例えば6時間の睡眠を取る人であれば、9時間。)を使わないといけない。1分間に60-120回の活動はさらにその半分の1/4程度(4.5時間)、1分間に120-180回の活動はさらにその半分の1/8程度(2.25時間)、180-240回程度の活動はさらにその半分の1/16(1.125時間)の時間を割り当てなければならない。
1日の時間を有効に使うには、自分の様々な帯域の活動予算を知って、バランスよく全ての帯域の活動予算(エネルギー)を使う事が大切。これを無視してtodolistや予定を組んでも結局はその通りにはできない。これを無視した計画は有害でさえある。なぜならこの原則を知らないと、予定をこなせなかったのは自分の意思が弱かった為ではないかと自己嫌悪に陥るから。
エントロピーとは、「乱雑さ」「でたらめさ」の尺度ではなく、「自由さ」の尺度である。ランダムから偏りが許される「自由さ」を手にした時にそれは最大化する。
エントロピーが自然に増大する事は、我々や宇宙が様々な制約から解き放たれて自由である事を自然法則が後押ししているという事。
人の時間の使い方でも、熱機関の効率限界を計るカルノー効率が適用できる。例えば、原稿の執筆業務をする時、1分間の体の動きが50-70回の幅に収まるとすると、1-50/70=0.286となり、1日の活動時間のうち、原稿執筆には28.6%以上を割くことは決してできない。人間の活動もまさに熱機関と同じ制約下にあることがわかった。
人間は、結婚したり、家を購入したり、ボーナスをたくさんもらうと幸せが向上すると考えがちで、人間関係がこじれたり仕事で失敗すると不幸になると考えているが、実際にはこれらの環境要因をすべて合わせても幸せに対する影響は全体の10%にすぎない。
行動を起こした結果、成功したかが重要なのではなく、行動を起こす事自体が、人が幸せを感じる。自らの意思を持って何かを行うという事がポイント。
従来のテクノロジーは、それまで時間のかかっていた作業をコンピュータや機械に置き換える事でユーザーを便利にし、省力化する事を役割としてきたが、人間のハピネスの為のテクノロジーの発想は、人間が新たな行動を自ら起こすようにテクノロジーが支援するものとなる。人が楽になる環境を提供する事がハピネスを高める効果は、最大でも全体の10%しか寄与しないが、人が積極的に行動��起こす事を可能にすれば、全体の40%の大きな影響を持ちうる。
仕事ができる人が成功して幸せになるのではなく、幸せな人は仕事ができる。定量的には幸せな人は仕事の生産性が平均で37%高く、クリエイティビティは300%も高い。
人のハピネスは周囲に伝播し、ハピネス増進の輪を自律的に拡げる。チームを2つに分けて行った実験で、毎週「良かったこと」を書いてもらったチームの方が、中立的な書き方をしたチームに比して、ハピネスが高まり、組織への帰属意識が高まった。それだけでなく、朝から活動量の立ち上がりが早く、帰宅時間も早まった。
ハピネスは身体活動の総量との関係が強い相関を示す。幸せな人の体はよく動く。
会話するときの身体運動の量が多い人は積極的に問題を解決する人。
コールセンターの受注率は、性格や能力の問題ではなく、休憩所での会話の活発度と相関していた。例えば同世代のメンバーを同時に休憩させる事で休憩中の活発度が10%以上向上し、受注率が13%向上した。これはどこの国でも同じ結果を得られた。結論は、活発な現場で生産性が高まる。
物理学の「協力現象(集団的な状態が自然発生的に生まれる事)」は人間にもあり、体の活発な動きやその反対の動きも周囲に伝染する。身体運動が伝播すると、ハピネスも伝播する。つまり、ハピネスは実は集団現象と言える。そして集団にハピネスが起きれば、企業の業績、生産性が高まる。
人が自ら身体を活発に動かしやすい環境を作る事が肝要。社員の積極行動が見られる会社とそうでない会社の間では、1株あたりの利益率が18%も異なる。比較的安価な方法で収益を向上させる手段である。
社員の身体運動の連鎖による活発度上昇
↓
社員のハピネス・満足度の向上
↓
高い生産性・収益性
逆に、現場の活発度を損なう副作用を伴う経営施策は、その分の収益減の効果を織り込む必要があるが、これまでこの効果は具体的に考慮されてこなかった。
今、人間に関する科学的な知見に基づく、新しいITと経営が再構築される時。新しいITは、社員の積極行動を後押しするものにしなければならない。
1/Tの法則
最後に会ってからの時間が長くなるほどますます会わなくなる。メールも同じ。行動は続けるほど止められなくなる。
行為に集中する事が、人間のもっとも自然な状態。行動に制約を受けない自然な状態が「集中」と呼ばれている状態を生み出す。
フローの頻度を上げる方法
会話、会議は立ってやる。
やや早い身体の動き(歩行時のリズムに近い)を継続、一貫して行う事。
運とは、巡り巡って回るものと考えられた為、「運ぶ」事を表す「運」の字が使われた。
運とは確率論。自分に有益な情報や能力を持っている相手といかに出会えるか。また、出会ったとしても、会話の中で両者の持つ「交点」が話題になって初めて運が効力を持つ。
運を上げるには知り合いの知り合いまでの数を増やす事。これを到達度という。
リーダーの運を高める方法は、直接つながる相手の数を増やすのではなく、メンバー間に三角形のつながりを増やすこと。組織ネットワークに三角形が多いと、リーダーが直接介入せずとも現場で自律的に問題が解決される可能性が高まる。三角形の数=現場力。
リーダーの到達度(リーダー力)と現場力はトレードオフしない。二者択一の呪縛から解放されよう。また、メンバー間に三角形が多くなると各メンバーの到達度が高まり、メンバーの運もよくなる。
「ワークライフバランス」も両者の綱引きを前提とした言葉。相乗効果の可能性を模索しよう。
コミュニケーションを分析すると言語的な要素は全体の10%以下。残りは身体運動などの非言語的な要因。全ての双方向率の最大化が生産性の最大化を生む。しかし、表面的な形の改善は無意味。両者が互いに共有できるより挑戦的な目標を設定して関わること。
ビッグデータで儲ける3原則
1、向上すべき業績を明確にする
2、向上すべき業績に関係するデータをヒトモノカネに広く収集する
3、仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる
コンピュータが仮説を作る事にこそビッグデータの価値がある。人が仮説を作るという固定観念を捨てる事。なぜならば、人が作った仮説は経験と勘に頼ったものでしかないから新しい発見は生まれない。
フレデリックテイラー以降、肉体労働の生産性は平均して年率3.5%伸び、20世紀終わりには50倍に向上した。ここで能力を高めた人をヒューマン2.0と呼ぶ。この最大の特徴は人間を「標準化」した事。これ以前のヒューマン1.0は分業によって専門化を進めた形態。今の時代ヒューマン3.0であり、この特徴は「増幅化」。
店内で売上に大きな影響を与えるのは、接客の効果ではなく、ほかの顧客と従業員が活発にやりとりしているのを見ることで賑わいを感じるという間接的なものであった。人との共感や行動の積極性が人の「幸せ」を決める。共感したり積極的だとその先に幸せが得られやすいのではなく、共感や積極的な行動自体がハピネスの正体。
アダムスミスは「国富論」と「道徳感情論」という2つの本を書いている。前者は経済的な豊かさの本質を、後者は人間らしい生き方の意味を説く。経済性の追求と人間らしさというのは両者が協調しあってうまくいく体系である事がスミスの本来の主張であった。
ホウレンソウ(報告連絡相談)に加えて「マツタケ(巻き込み、つながり、助け合い)」も必要。個と全体とを統合して共通の視点が持てる組織。
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素晴らしい本だと思います。
人間の行動を科学的・定量的に解明しようとする試みも、また、この本を読む限りでは、その解明にかなりの成功を収めている点も素晴らしいと思います。
もし、この本に書かれていることが真実だとすると、これからの人間の働き方は、これまでの働き方から大きく変わる可能性があります。
いったいどんな未来がやってくるのか、楽しみです。
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本筋からはやや外れるが、エントロピーの増大≠均一なランダムさというのが新鮮な発見で府に落ちた。
宇宙がとても不均一であることとつながった。
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目からうろこ、統計学は凄い
後半はちょっととんでも染みていたが、前半は驚く事が多かった
またあらかたの事はそこまで感覚にも反しないので、考え方として身につけよう
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大量データが好きでたまらないんだなということが見て取れる。そこはわからなくもない。データを溜め込むだけでなく、解釈してこそという意図も強く感じる。
ビッグデータの解説はえてして、分析結果の理由を問わないようにしているし、本書もその主旨に則っているように見える。ただ、難しくても複雑でも、その結果が出た理由の推測を放棄することは危険だと感じる。
「よくわからないけど、店のこの場所に店員がいたら売り上げが上がりました。よって、ここにいてください」は形を変えた思考放棄、神託の復活では。本書はそのようにせず、複合的な要因による説明の困難さを挙げているが、ビッグデータ解析がツールとなった時、データに使われ唯々諾々と従い、それだけでなく濫用するロボット社員・経営者の跳梁跋扈を怖れるものである。
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ウェアラブルを使ったソーシャルグラフの企業内展開と思って読み出したら、冒頭から人間の動きには普遍的な法則があり、ボルツマン分布と同じとのこと、すなわち私たちは自分の意思で行動している思っているが、法則に則って動かされているとのことだ。驚きと興奮で一気に読み進めた。ソーシャルグラフ理論でお馴染みの内容もあるが、他の研究者からの引用である幸福理論なども含め、人間行動とIoT,人工知能などとても興味深く読めた。
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ウェアラブルセンサーを使った先端研究の話。ウェアラブルセンサーを個人の行動を測るだけでなく、他者との関わりを測るために使ったあたりがミソか。仮説、実験、検証のプロセスはもちろん変わらないが。
未来予測、人間がやるべきこと、やらないほうがいいことなどの話も興味深い。
機械に仕事が奪われる系の本とてらしあわせながら読むとより面白いのでは。