紙の本
山本兼一氏による飛鳥時代の我が国の国造りを中心とした唯一の古代長編小説です。
2020/09/13 13:23
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『弾正の鷹』(小説NON短編時代小説賞佳作)、『火天の城』(松本清張賞)、『利休にたずねよ』(直木賞)などの傑作を次々に発表しておられる山本兼一氏の作品です。同書は、7世紀末、地方豪族を従えて中央集権の国造りを着々と進める持統天皇と藤原不比等を中心とした歴史物語です。重税と暴政に疲弊した民草を救うため、山の民の頭・役小角が秘術を用いて戦いを挑みます。壮大なスケールで飛鳥の国造りに現代日本の姿を重ねた著者唯一の古代長篇小説です。
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全1巻。
行者の祖、役小角のお話。
あとがきで、安部龍太郎先生も仰ってたけど、
「どうしたちゃったの山本先生」が、
率直な感想。
いつも、戦国後期〜江戸を舞台にされているので、
いきなり古代史はびっくり。
そして、どんな役小角になるのかと思ったら、
素直に伝説をなぞるファンタジーな仕上がりに。
もっと「人間・役小角」になると思ったのに。
結構とりとめもない印象の物語になっていて、
正直、期待はずれだったものの、
日本という国の成り立ちに鋭く切り込んだ視点には
ハッとさせられた。
隆慶一郎先生がよく書かれた
まつろわない者vs権力という構造や、
高橋克彦先生が、
蝦夷vs朝廷という視点で古代史を見つめられたのに近い。
しかも時期が建国まもない頃なので、
上記の2人よりさらに直接的。
神話に消えていった者達から見た大和は、
都合の良い侵略者でしかなかったんだろうなあ。
確かに。
もっと氏の古代史が読みたかった。
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なかなか小気味よく読めたが、自分のなかでの小角はもう少し荒々しさがないというか静かというか。それにしても、いくら個人の力が秀でていても圧倒的物量にはかなわないんだろうな。すごい人間社会だ
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『利休にたずねよ』などの作品で、歴史小説の人気作家の一人となった、山本兼一。
残念ながら2014年に亡くなってしまいました。
戦国時代前後を題材にした作品を書く作家さん、というイメージがありますが、この作品の主人公は、「修験道の祖」とされる役小角(役行者)です。
時代は7世紀の終わり。
夫、天武天皇の後を引き継いだ女帝持統天皇は、先代の意思を引継ぎ、律令国家としての国づくりを目指します。
国家運営のため、遠い国からも租税を集める、天皇と飛鳥の人々。
この動きに反発をするのが、飛鳥の周りの山々に住む、山の民たち。
もともと農作をしていた彼らですが、飛鳥の人々から追いやられる形で山に住むようになり、自分たちの食べ物を確保するにも苦労するような生活を送っています。
そのリーダーとして描かれているのが、役小角。
自分はどのように生きていきたいのか、飛鳥のやり方のどこが間違っていると、考えているのか。
山に入り厳しい修練をしながら、自問自答する役小角。
その過程と、飛鳥側との攻防の日々が描かれた、作品です。
古い神社のいくつかについて、「役行者が建てた」という話を聞いたことがあったので、神格化された架空の人物だと思っていましたが、この時代に実在した人物なのですね。
しかしそのエピソードは、のちの時代にかなり脚色されたようで、この小説ではそれらの一部と、著者のオリジナルの物語が織り交ぜられているかと思います。
そして、著者は役小角、持統天皇の行動を通じて、「人が人の集団を統率していくということは、どういうことなのか」ということを、読者に問いかけたかったのかなと、受け取りました。
資料の少ない時代を題材にしているので、史実を学ぶという意味では正確性に欠けるかもしれませんが、日本での”天皇による統治”という形の始まりについて、具体的なイメージを与えてもらえた一冊でした。
『銀の島』山本兼一
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4022647434
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役小角という人は、仙人のようなイメージだったけど、この作品では人間臭くて、印象が(良い方に)変わった。
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役小角の話。時代は推古天皇の頃だ。
飛鳥の宮に敵意を抱いて生きてきた役小角だが、生きているなら、憎むより愛そう、恨むより憐れもう、殺すより慈しもうと心が変わっていく。