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”匿名性を原則とする都市と、有名性を原則とする小集団が接する臨界面”を描く短編集。
私の感覚では、「そこ」というのは匿名性から見た有名性なのだけれど、本来どちらを不気味に感じるべきなのだろう。
>遊園地
匿名性を保ったままの夫、純一郎。
そんな彼に「家族」という有名性の関係を求めたら…。
>ガラスの学校
母親の事故死の理由と、離婚を切り出した夫の真意。
よく知っている存在だと思っていたけれど、相手のなにを理解していたというのか。
>病院
母親の入院をきっかけに、「僻地」のクラスメイトと距離を縮めた「都心」の僕。
匿名性のこれまでと有名性の現在。
知っている、ということの性質の違い。
ところで、紀之と生方英治が売ろうとしていた川沿いの家の意味は?
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短編集とは知らずに、題名に惹かれて購入
どの作品も最後はどうなったのか?分からずじまいで終わる。
読者に考えさせようとする意図なんだろうけど、ん?んん??で?どーなるのさ、的な、消化不良で終わるため、どうもスッキリしない。
何が言いたい⁈ 私には合わなかった
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人生は、自分が主役だと信じて疑わない方がラクなのだろう。不安と期待で覗いたパラレルワールド、「そこ」で立ちすくむ人々の姿が描かれて、緊張を強いられる短編集。
世界がふわりと回転する「病院」の清々しさに救われる。
龍くんは素敵な一人前の男だと思う。
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あるある、こういう、この線を越えてもいいことは無いとわかりきっているはずなのに、越えること。ただし、できれば大学生とか、若い大人のうちに済ませたいこと。それも経験のうち、と笑える。大人になっても一緒かな?こういう、曇り空が似合う話を否定も肯定もしないで書くのがこの人はうまいなあというイメージ。曇り空なのに、暗すぎないのがすごい。
最後の話はあまり越えてはいけない話の気がしなくて、終わりに希望があったので、意外だった。読み終わりを良くするためかな。いや、後味いいからいいんですが。バラバラに掲載されていたものを集めた短編集だから、話のトーンは揃ったけどオチは揃えなかったというだけかもしれない。
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相変わらずクズな男を書かせたら天才的だと思う。
今回も出てくる男はみんな揃ってクズである。
短編が7話掲載されているが、前半3つが面白かったから後半少々ダレた。
『遊園地』
40を過ぎた主人公には内縁関係の男がいて、男との間に出来た小学生の息子を育てている。
芸能関係の仕事をしている男は出張がちで母子の住む家にほとんど帰ってこない。
ある日、主人公の家に電話がかかってくる。正体不明の女から聞かされた、男には妻子がいるという話の真偽を確かめるため、彼女は教えられた団地に向かう。
そこには自分の”夫”だと思っていた男の若い妻と幼い子どもがいて、彼女は真相をただすことができずに悶々と日々を過ごす。
『ガラスの学校』
別居中の夫から離婚を迫られているが、のらりくらりと逃げ続けている主人公。
ある日母親がバス事故で死んでしまう。
母と住む妹夫婦とは折り合いが悪く、母の死をきっかけに決定的に決裂してしまう。
夫と妹、両方との関係がこじれてしまった主人公が悶々とする話なのだが、どの人物の悪意も心の動きもまっとうでリアルである。
『ベルモンドハイツ401』
中学を卒業してからも20年以上仲が続いている男女5人。とある出来事を境に関係が微妙になり、どう整理するかそれぞれが模索する。
現在と過去の関係を行ったり来たりして、若干こんがらがる話である。
出だしとストーリーのイメージが違いすぎてびっくりである。
『サークル』
同じ大学に通うイケメンシンガーの取り巻きをしている3人の女子。彼のデビューが流れたことを嘆き、生活の心配をし、励まし、勇気づける。
3人はみんな就職活動がうまく行っていないが自分のことよりも彼のことを心配している。
その中のひとりがメインで話が進むのだが、ラストに彼女達がただの取り巻きサークルではないことがわかる。
男の見事なクズっぷりがすごいし、でも音楽周りってこういう関係ばっかりなんだろうな、と思わされた。
『団地』
編みぐるみが趣味の平凡な主婦が様々な悪意に触れ気を病んでいく話。
精神ホラーなタイプだが、結局何の話だったのか中身が乏しい。
『野球場』
とある野球場の受付の女と、野球チームの男達の話。
男同士の猥談に終始した感。
『病院』
毛色の違う一作。
中学1年の男の子の成長と淡い恋の話。
どれもストーリー展開としては淡々としているのだけれど、味わいのある文章なのである。
登場人物の心理描写が細やかでリアル。
ストーリー性は高いとは言えないのだけれど(あらすじを書くとなんか薄い)、読ませる文章というあまりいないタイプの作家だなといつも思う。
どこがいいのかはっきり言えないけれど味わいを感じる。
裏を返せば合わなければとんと魅力はわからない系。
解説が非常に小難しいことを語っていた。
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7つの短編集。
どの短編も「そこ」という描写に通じるものがある。
では、「行くな」にどういう描写が通じるのか、
理解する読解力が自分にはなかった感がする。
全編通じて、心理描写や日常風景は秀逸で引き込まれる。
しかし、結末がそこで終わりと不完全燃焼な分が多く、
個人的には苦手な作品だった。
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初めの話は面白かったから期待したのですが、ほかの話はあまり…
驚く展開でもなく、【なんだ、そう終わるのか】という感じでした。
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どこか奇妙ででもきっと幸せではない展開が予想できるようなそんなはなしでした。最後の「病院」という短編を読んでなんだか救われました。それがなかったら救われなかったです。
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裏表紙の作品紹介から抜粋すると
「平穏な日常から足を踏み外す男女を描いた7つの短編集」 。どのお話も まるで曇天のよう。それぞれの闇を垣間見る感じだが、不覚にも?ふと共感してしまう感情もあったりなかったり。終始ドキドキするような高揚感は一切ないが 退屈することもなく読了。
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結末があえてはっきりせず、読後の後口に苦さを感じさせる作品が多い。モヤモヤとした怖さが気持ち悪いかな。
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最後の病院は泣けました。なんだか切なくて中学生の頃のなんとも言葉に出来ない色んな気持ちを思い出しました。
全体的に面白かったんだけどせっかく面白い話なのにほとんどの物語が12話連続ドラマの
第一話だけ見せられた感じで物凄くモヤモヤが残るのが残念でした。
ぜひそれぞれの物語の続きが読みたくなりました。
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ありふれた日常から本の少し境界線をはみ出た人々を描いた7つの短編。
行ってはならない、見てはならない「真実」に引き寄せられ、平穏さから足を踏み外す過程が、荒野さんらしい温度を感じない言葉で描かれ、ザラリとした皮膚感だけが残る。「団地」は鳥肌が立ちそうだったが、ラストの「病院」が少し明るさを帯びていて救われた。
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人には言えない秘密を抱えた男女を描いた短編集。
そんなに過激ではないし、登場人物の関係が複雑な感じでもない。でも表現力なんだろうか、心に響く作品もあった。
最後の病院という作品だけは異色。でもこれが個人的には一番良かった。生と死、都市と僻地。成長することは、誰かと別れることなのだ。
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第六回中央公論文芸賞受賞作。
場所がタイトルになっている、七編の短編集。
賞を受賞されているということで、手に取りましたが、期待が少し外れました。
「遊園地」は三人も女性がいる男性。うちの二人には実子がいて籍を入れているのは一人。スマートで優しそうな普通っぽい人なのに、「アフリカに出張なんだ」と言って28日間も家を留守にしたりとか感心してしまいました。なんでこんなにひょうひょうと浮気を何年間にも渡ってできるのか不思議でした。この話は他人事として読めば面白かったです。
「団地」は不穏な空気間の、なんか怖い話だなあと思ったけれど、最後の主人公の女性がいきなり「今日はエイプリルフールよ」と言って突拍子もない嘘をつくのが一番怖いと思いました。
最後の「病院」の中学生の話は、人の死が絡んではいますが、唯一最後にほっとできる話でした。
正常な価値観というものがあるとして読むと、みんな怖い話だと思いました。正直読むのがつらい話もありました。この短編らを面白がって読む度胸は私はなかったです。
タイトルは「そこへ行くな」ですし、世の中健全な話ばかりではないし、読後感のいい話ばかりではなく、作者がプロとして仕事をされているのはわかりますが、行ってはいけない世界の入り口のようなお話ばかりだったように思います。
また、こういう話が好きな方もいらっしゃるかもとも思います。
作者の、未読の作品には期待しています。
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井上荒野作品、初読。
短編7話でどれも読みやすいけど、ほとんどの終わり方が、え?ってところで終わってしまうのはなんだか少しモヤモヤして気持ち悪い。けど、それが癖になりそうなモヤモヤ感でもあったりする?
「遊園地」と「病院」が個人的には好きでした。