紙の本
もっと話題になってほしい1冊
2020/02/13 23:47
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投稿者:うれい - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃のラスト。作中に出てくる天盆は将棋のようなものだが、将棋を知らなくても楽しめる。むしろ天盆の対局を楽しむというよりは天盆に生涯を捧げた人の生き様や、民衆の叫び、家族とは何かといったことが主題。終盤の少勇の言葉に胸を打たれる。――衆は、天盆で最も非力な駒。民を虐げ、支配下に置き、私利を貪る“天”の槍に、凡天は衆を捧げる。それは民衆の祈りそのもの。独特の文体だが、半分読み終わればあとはあっという間。蓋の名が地図から消えようと、歴史から消えようと、そこで暮らした民のことをいつまでも覚えていたい。
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(No.14-18) 架空の国、架空の盤戯なので、ジャンルとしては架空歴史小説になるのかな?
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」に長けた者。
人々は立身を目指して研鑽に励むが、もう何十年もの間、平民から征陣者は生まれていない。
そんな中、貧しい食堂に暮らす13人きょうだいの末子・凡天が激戦を勝ち進み・・・。
その疾走感あふれる筆致で、選考会を席捲した快作登場。』
これ、中央公論新社のC★NOVELS大賞の応募作なんですよ。みごと特別賞を受賞して、ノベルスでなく単行本で出版の運びになったという作品です。
ライトノベルではちょっと考えられない渋い装丁に驚いたのですが、読み終わって納得。内容にすごく合ってるわ。
これを受賞させたこと、単行本にしたこと、中央公論新社はなかなか懐が深いと感心しました。
架空の盤戯「天盆」は将棋を連想させるので、盤がどうなっているのかはっきり分からなくても何となく分かった気になれます。
天盆を勝ち進んで上に行く国の仕組みは、中国の科挙みたい。
すでに分かっているものを読者に思い浮かべさせ、無駄な説明なしに一気に物語を進める作者の工夫なのかなと思いました。
紹介にも「疾走感あふれる」とありますが、ほんとにこの内容が一冊に収まっているのはすごいと思う。
約10年間の出来事で登場人物も多数なのに・・・。
果物をぎゅっと搾って、さらに濃縮して、200%ジュースにした感じ。
がーっと読み終わって、本来なら空しい寂寥感が漂うようなうラストなのに、なぜか私はすがすがしい風に吹かれている気持ちで本を閉じることができました。
家族のあり方が揺らいでいる現代。家族って何なの?にひとつの答えがあって感動しました。
久し振りに、「みんな読んで~」と呼びかけたい本に出会いました。
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将棋に似た「天盆」という架空のゲームで頂点を目指す者達を描く。
ナボコフのディフェンスをもっとよりエンタメ色を強くした感じ。
天盆の試合の描写と主人公の天盆に傾ける想いが心を高ぶらせてくれる。
主人公と天盆の試合も魅力的だが、それ以上に血の繋がっていない家族の心の絆が、そして更に大きな家族と言える一国の民の絆が心震わせてくれる。
なぜ家族になるのか、父は答える、「理由がなきゃいけないのか」、何気ない言葉だが、この作品には大きな意味となる言葉となる。
余計なイラストもなく、この世界観にグイグイ引き込まれ、読む手が止まらなかった。
ただ一点、他国に滅ぼされるラスト、あれはあれでいいのだが、あっさりし過ぎ、消息不明でも構わないが、登場人物達がそれまでにどうなっていったかもう少し長めに描いて欲しかった。
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ファンタジーである。が、ドラゴンも魔法使いも出現しない。
かつてあった「蓋」の国は国民こぞって天盆という盤戯に熱中し、民は塾に通い、賭けをし、政も天盆の勝者によってなされるという国であった。
小勇と静の夫婦に13番目の子ととして拾われた凡天は幼い頃から天盆に熱中し、やがて蓋国一の天盆師となるべく天盆陣へ挑む。
盤戯を通して「家族とはなにか」「勝つとはなにか」を描く。
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古代中国風の蓋という国が舞台。
赤ん坊の時に拾われた子供・凡天が主人公。
凡天はほとんどしゃべれない時から将棋に似た国戯である「天盆」に非凡な才を見せる。
天盆という架空の遊戯の描写が見事で、全編それなのだが、本当にある盤ゲームかと思えるほど詳細で多彩。最後まで一気に読み切れる。とても面白かった。
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国、時代、登場人物 そして主題となる天盆というゲーム、全てが架空又は非設定の小説。そのジャンルを分類するのも難しい。
よくこんな架空のゲームで、これだけの臨場感のある盤上ドラマが書けるものだと感心した。将棋がベースなのは確かだが、このような架空のゲームとして設定することで時代や背景の制約なしに、自由に描くことができるという新しい試みが面白い。ストーリーの展開もスピーディーで見事。作者のこれからの作品が楽しみだ。
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中国の春秋戦国時代を彷彿とさせる時代,天盆という将棋のようなゲームに治世を絡めて,一つの国の終焉を描いた物語.また,血の繋がらない家族の物語でもある.説明,描写はかなり少ないが,簡潔な会話の中などに,家族への思いが溢れるようだ.とても面白かった.
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肉付ければもっと重厚に出来たであろう内容を、さらりと終わらせる潔さがあった。兄弟たち一人一人の造形が良かったのと、血のつながらない家族の在りようが全体を通してあたたかくにじんでいたのも良かった。面白かった!
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時代設定は南北朝にちょっと似てるかも、天盆のやり方は象棋というより将棋かな… 血の繋がらない家族の絆もぐっとくる。
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ドラゴンボール(全巻読んでないけど)みたいだなと思った。紹介文からもっと壮大な話を想像していたがそうでもなく、でも潔い終わり方だなと感じた。文章は読みやすくて好きなテイストでした。
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一度目、読了。
頭の中に疾走感が残る。
「天盆」のルールを知らなくても、描写に惹きつけられてページを捲る手が進む。
『ヒカルの碁』を読む感覚と似ている感じがした。ゲーム自体違うし、天盆も将棋に近いものと読んでいたが、文章の奥に盤面を挟んで向かい合う人物とその周りの世界が見えてくる気がした。
文庫で新刊が出ると思って探したら旧作があったので、早く手に入るこちらを手に取った次第。
以前囲碁をやりたいな、と思ったことがあるが、また再燃しそうな気も。
将棋がわかればなお一層読んでいて面白いかもしれない。
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09/03/2017 読了。
図書館から。
文庫版の表紙を見て気になったので、
図書館で見かけて借りた。
この著者は初めて読む。
さくっと読める。
架空の盤上ゲームだけど、あったら面白いだろうなっていう。将棋っぽいですが。
(コロヨシ!とかも好きだったしなぁ)
国の争乱と盤上が絡みつつ、ですが、
家族の話だと思う。
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とても面白く、三日で読破した。
これが一番じゃないのはレーベルの問題だろうか。他の作品も気になるので読んでみたい。
カテゴリも中国にしたけど架空の国なのであくまでイメージ。
主人公は凡天だと思うが、テニスの王子様みたいな書かれ方。
戦国時代の江戸に思いを馳せたり、ヒカルの碁や北条氏綱の言葉を思い出したりした。
やっぱり小説は面白い!!と思わせてくれた小説。
この作者さんにオリジナルの戦国の戦記物を書いていただきたいと思った。
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血はつながらずとも家族愛は成立する。
*****
「あいつらのお陰で,どれほど俺の人生は楽しかったか。毎日毎日,やらかしてくれるあいつらを見ているだけで,どれほど俺の日比は面白かったか。その礼に,この命くらいならいくらだってやるさ」(p.226)
「天譜[棋譜のこと]など,何ほどでもない。それを受け継ぐ者がおるかどうかじゃ。たった一人の新たな一手を紡ぐ者こそ,この世のすべての天譜よりも尊い」(p.243)
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将棋によく似た天盆の才がある子の話。単に子の成長だけではなく、家族の物語でもあり、国の在り方の話でもある。
兄弟が多くて最初は誰が誰だかわからなかったが、それぞれ個性があってよかったが、せっかくそれぞれ個性があるのに目立たない子もいてちょっと残念だったかなー。
最後の天上戦は面白かった!
国の政治の仕組みも、天盆と絡んでいるがもっと詳細な説明も欲しかった。ページ数の関係で難しいかな?
世界観や、背景などがすばらしかったので、これはぜひシリーズとして続けて欲しいと思う。