紙の本
過激なタイトルとは違う
2015/10/19 13:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:apico - この投稿者のレビュー一覧を見る
過激なタイトルにひかれて購入しました。タイトルほど内容は過激ではなく、論理的に書かれているように感じました。良い意味でタイトルに裏切られました。
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冷徹な現状認識から出発し、社会構造のシステムエラーに迫ったいつもの橘節。
○近代の啓蒙主義者は、「バカは教育によって治るはずだ」と考えました。しかし問題は、どれほど教育してもバカは減らない、ということにあります。だとしたらそこには、なにか根源的な理由があるはずです。
○ブラック企業問題の本質は、「正社員は過剰に保護されているのだから会社の無理難題を受忍すべし」という日本的な雇用慣行にあります。"世界標準"の労働制度は同一労働同一賃金で、正社員と非正規社員の「身分格差」は差別であり、サービス残業は「奴隷労働」と見なされます。
目次から
・「人間力」はうさんくさい
・マリファナも売春も合法化が進んでいる
・"ブラック政府"はブラック企業を指導できない
・「公営住宅をもっとつくれ」という奇妙な理屈をふりかざす人たち
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私達の社会には複数の正義がある。が、ヒトは心の中に正義は複数持てない。だから、衝突が起こる。
なぜか、絶望してしまった。凄く的をえていたから。そして、微かな光があるようにあとがきで書いてあったが、飾りみたいなもので、全く希望なんて持てなかった。不可能なんだから、分かり合えるなんて、ヒトがヒトである限りは不可能なんだ。ヒトが人間である限り問題は解決されない。永久に。。。
たまたまルワンダの映画も観てしまった。
それで、とどめの一発笑
バカなりに、ごまかしながら、生きていこー^ - ^
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ところどころ、自分の主張に都合のいいデータだけ(特に大学教育と格差社会のくだり)引用してさも客観的ですというフリをしたりなど、橋下徹のことなども批判しているが、橋下さんと主張の仕方が似ているところが最大の面白ポイント。経済の事に絞った方がこの人の本は読む価値がある気がした。
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ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』
「速い思考」と「遅い思考」p18
図:正義をめぐる4つの立場 p37
http://goo.gl/sIlmj1
【マリファナも売春も合法化が進んでいる】
アメリカでは医療用大麻の合法化が進んでおり、ワシントン州とコロラド州は嗜好品も合法となりました。南米のウルグアイは2013年12月、マリファナの生産・流通・販売をすべて合法化する世界初の国になりました。
売春は世界的に合法化されつつあり、ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギー、スイス、オーストリアなどでは売春斡旋業(置屋)も認可制です。売春合法化は女性の人権団体からも支持されています。国家が売春を犯罪化すると、反社会的集団にビジネスの余地が生まれ、売春婦(セックスワーカー)の労働環境が劣悪なものになってしまうからです。p94
【ゲーム理論でもっとも新車を安く買う方法】
まず、車雑誌やインターネットで調べて、どの車を買うかを、装備も含めてあらかじめすべて決めておきます(ディーラーに相談してはいけません)。
次に、自分が住む地区のディーラーをできるだけたくさんリストアップします。そのうえで、順番にディーラーに電話をかけ、購入したい車種と装備の詳細を伝え、次のようにいいます。
「この条件でいくらなら売ってくれるか、あなたの最低価格を教えて下さい。その価格を次に電話するディーラーに伝えて、すべてのディーラーのなかでもっとも安いところから購入します。なお、購入する場合はその金額ぴったりの現金しか持って行きません」
これでディーラーは、あなたの情報を何一つ知ることができないままに、最低価格を提示するほかなくなります。この戦略はゲーム理論的には完璧なので、ディーラーにあなたと駆け引きする余地はまったくないのです。Cf. 『ゲーム理論で不幸な未来が変わる!』p150
【すべてのメディアは捏造装置】
大衆が好むのは昔も今も勧善懲悪の物語で、そのためにはまず悪者を特定しなければなりません。それによって悪を糾す自分(視聴者とその代弁者としてのメディア)が正義の側に立てますし、悪者に人間味(幼児虐待や貧困、自殺未遂など)を持たせれば物語の魅力はさらに増してひとびとを惹きつけます。p183-184
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見ただけで嫌悪感を感じてしまうような辛辣なタイトルw
中身は「週刊プレイボーイ」で連載されているものを集めて、加筆したもの。
その時折の時事ネタを斬新な角度から捉え評している。
ここでいう「バカ」とは、新聞やテレビなどのメディアが流した情報をそのまま鵜呑みにし、直感的な思考「速い思考」で物事を考える者のこと。
本来人間はその多くを楽な「速い思考」をもって行動するが、その中で直感的ではなく、「遅い思考」、つまりは負荷のかかる思考をすることで物事の状況や側面を理解する事ができる者が「バカ」とは一線を画すものになってくる。
「利口」な考えが全て正しい訳ではないが、世間一般で考えられる常識には裏があり、誰かの利潤関係が渦巻いていることを忘れては行けない。
この著者はそのような普通の考え方とは別の視点で時事ネタなどを経済学や歴史などから説明している。
この本の中の多くの題材で納得する事が多く、非常にタメになる一冊であった。
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唐の圧倒的な軍事力の差を見せられ、倭国の指導者は国号を日本と定め、天皇を置き、唐と外交交渉ができるようにグローバル化した
中華帝国の朝貢柵封体制 中華に属さない蛮族の王は皇帝に貢物と服従の意を示し(朝貢)、見返りとして贈り物を受けた(柵封)
当時の日本は唐と国交を結ぶために服従する王ではなく天皇の号を用いた
中国は紀元前17世紀殷のころから文字の記録が残る
日本は8世紀まで王権の正当性を示す歴史書すらなし
そこで日本書紀、古事記の編纂が国家事業として始まる
天孫降臨の神話と万世一系の物語が登場
戦前の歴史を振り返れば、破滅へと至る最大の原因が、軍の統帥権(最高指揮権)を内閣から切り離し、天皇の下においたこと
靖国神社
明治維新の翌年戊辰戦争の官軍の犠牲者を弔う東京招魂社として建立 明治天皇が靖国と解消 靖国神社は天皇の神社だった(実際は陸軍省と海軍省の共同管理)
靖国問題 1978年に東條英機元首相などA級戦犯14柱を合祀したことに貼ります。
靖国神社は民間施設だったので、国会でも議論がなかった
その後天皇が靖国参拝を辞めた
韓国 福島の水産物の輸入全面禁止 これに対し日本は基準値を下回り安全規制に科学的根拠がないとWTOに懸念を表明 一方BSEについては科学的根拠の無い輸入規制をしている
16世紀の日本はヨーロッパを圧倒する最強の軍事国家であった。信長一万人の鉄砲隊
長篠の合戦から12年後フランスアンリ4世が銃火器を使って歴史的勝利 鉄砲隊の人数は300人
日本人だという理由だけで高給を要求するな グローバル企業の経営者である柳井氏はそういって日本社会を挑発
宝くじ 期待値5割未満 経済学者 愚か者に課せられた税金
人口構成による自殺率の変化を調整したのが標準化自殺率
地獄への道は善意で敷き詰められている
直感的に善いと思ったことが結果的に最悪の事態を招くという現実を指摘した至言
フェアトレードのおかしな現実
経済格差の元凶としてグローバル企業を敵視するのではなく、彼らの力を上手に利用したほうがいいのではないか
人道援助という巨大ビジネス
アフリカでなぜ手足が切断されるのか?
NGOの商材は「悲惨な現場」 多少の虐殺くらいではおどろかない そこで手足切断
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見渡せば極端な「右」と「左」ばかり…。なぜ言論界は「バカ」だらけになってしまったのか。作家・橘玲が、政治、経済からワイドショーネタまで、安倍政権下の日本をズバリ解説
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扇情的なタイトルだが、時事問題を斜め視点から論評している。著者は頭の良い人なので、複雑なテーマについても読みやすく書いている。政治、経済、社会、心理、というテーマで各エッセイがまとめられている。10年たってから読み返すと、2010年代の日本で何かイシューとされていたかが良くわかる本だと思う。
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「はじめに」の部分で著者が民放テレビのディレクターに言われた「僕たちは昼間に働いていないバカに向けて番組を作っている」旨のことを言われたことを引き合いに出し、今ではメディア全体がこのニヒリズムに覆われていることを憂いている。著者の定義に従えば、バカとはファースト思考(直感でしか物事を考えられない)しかできない人たちとし、真実を見れず、メディアが捏造を伝えたり視聴者に好まれる番組作りをしているなど、社会の様々な問題を紹介している。スロー思考(じっくりと問題の本質を理解し、)ができる人に一緒になりましょうと説いている本。
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【論理】
あいかわらず、なるほどと思える鋭い視点ですが、ところどころ「うん?」という部分もあります。
納得がいかない部分もありますが、全部の考え方に賛成する必要もないので、意見として参考にすればいいと思います。
さまざまなできごとに意見を述べられているので、少し煩雑になっているような気もしますが「鋭い」意見は健在です。
感情を移入した判断がないため、論理的でわかりやすいのも事実です。
すばらしい!
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マスコミのニュースとは違った視点で、なるほどという事も多く、全面的に賛成と言えない事もあったけど面白かった。
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誰も云わへんけど、この世の中には論理的にオカシイ事、倫理的に正しく無い事、一部利害関係者にとって不都合な事ばかりが蔓延しているのだと改めて認識できる。社会や世界(外的な要素)に変化や改善を求めるのは虚しいなと思った。それを求める労力をかけるなら、自分や自分の近くの大切な人達を守る事に注力した方が合理的な判断になるなと思うし、そうやって生きようと思う。
今回の本は橘玲らしい政治経済への意見が述べられていて、前著『不愉快なことには理由がある』と重複してる内容も多々あるが最新のNEWSトピックも吸い上げて述べられている。
あれこれ知れば知るほど(マーケティングで選択肢が多過ぎると選択できなくなる論と同様)何が正しいかも良く分からなくなるし、世の中に対して淋しさを憶えてしまうなぁ。あれこれ知らずに無知のままの方が、それはそれで逆に幸せなのかとも思ってしまう。
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新刊がでたら真っ先に購入する、著者のファンである。この人ほど現実の社会を鋭く分析出来る人はいないのではないか、と思う。しかもその分析が決して自己満足ではなく、他者の理論に立脚した客観的なものであり、かつ、わかりやすく解説しているのだ。
この本は歴史に始まり政治経済から心理学まで多様な切り口で今日の社会を鋭くえぐっている。エピローグで著者は言う。
「政治的・社会的問題に対してできるだけ多くの(多様な)意見があった方がいいと考えています。」
「大切なのは、自分と異なる正義を尊重することと、両立できない正義の間で折り合いをつける工夫をすることです。」
この発言に集約されているように、現代の(特に言論の)世界において、(白か黒かというような)極端な意見が多く、かつ自分(及び多数派)が認める意見と異なる意見を「認めない・受け入れない」今日的風潮があるのではないか。そういう風潮に警鐘を鳴らしているのである。
以下、印象に残った文章を備忘録的に記すので未読の方は飛ばして下さい。
・日本人は”俺”ではなく、”俺たち”を自慢しがちです。
・トレードオフの(両立しない)問題に絶対はなく、よりマシな選択をしたうえで時間をかけて修正していくしかありません。
・憲法はもともと、暴力を独占する国家から国民の人権を守るためのものです。自民党の改正草案は国家が国民に説教する(立場をとっており)のは大きな勘違いです。
・自衛隊という、軍隊でありながら軍法を持たない奇妙な組織が作られた。集団的自衛権の行使以前に、軍を統制する民主的な手続き(軍法という法の支配の下におくこと)が必要。
・戦前の軍隊は「皇軍」で、兵士たちは天皇の名の下に戦い散ったのですから、その魂を鎮める祭司は天皇以外にあり得ません。しかし靖国神社は(A級戦犯を合祀したことで)本来の祭司である天皇を迎えることができなくなっている。
・国家としてのアイデンティティを取り戻す最も安直な方法は、大東亜戦争を”民族自決の聖戦”として再定義することですが、これでは国際社会で生きていけません。かといって、戦前を全否定するだけでは、中韓からの批判にただ頭を垂れて押し黙ることしかできません。
・「失われた日本を取り戻す」と約束している自民党だが。そもそも無意味な公共投資で巨額な財政赤字をつくったのは自民党政権。
・民主党政権は、かんたんにいえば、相手を口汚く罵っていた奴が、「だったらお前がやってみろよ」と言われて責任者になったら、けっきょくなにひとつマトモにできなった、という話です。人間関係において、これほど信用を失墜させる行動はありません。
・選挙で政権が決まるようになっただけでも大きな進歩
・日本的雇用とは、会社と労働者の間で「生活保障」と「会社への従属」を交換することでした。日本の会社は終身雇用と引き換えに、正社員に対して絶対的な権力を持つことができるのです。このような日本的雇用からブラック企業が誕生し、増殖していくのです。
・日本の裁判所は、転勤などを不服として訴えた場合に「生活の面倒を見てもらっている���だから、多少理不尽なことをされてもガマンしなさい」という。
・プレゼンを聞いたうえでみんなで決めたのなら、決定を下した個人は責任を負う必要がありません。誰も責任を取りたくない社会では、プレゼンすら責任回避の道具に使われてしまうのです。そう考えれば、プレゼンによる意思決定は、どうでもいい問題を扱うときに最大の効果を発揮する。
・物を安く買う(ゲーム理論による)必勝法は、自分の情を相手に与えず、相手の情報だけ手に入れることです。
・日本の宝くじは期待値が5割未満で、世界で最も割の悪いギャンブルで、経済学者は「愚か者に課せられた税金」と呼んでいる。
・日本の組織の多くが「体育会系マネジメント」で成り立っている。日本の会社が、自己責任で行動する近代的個人よりも上司の指示どおりに動く「体育会系」を好むのは周知の事実です。上司より先に部下が帰ることは許されず、サービス産業は当たり前で、パワハラによって上司が部下を精神的に支配することが「管理」と呼ばれます。
・「体育会系マネジメント」の基本は、あらかじめ閉鎖的な社会(ムラ)をつくっておいて、そこにメンバーを精神的に監禁することです。逃げ場をなくしたうえで、愛情と暴力を交互に与えることで相手を服従させ、支配していくのは洗脳の典型的な手法で、日本では学校や会社でごく当たり前に行われています。
・「ありがとうございます」は、明らかに体育会言葉です。もともとこの言葉は、指導員と部員、先輩と後輩という上下関係(権力関係)を徹底させる言葉遣いだったのです。
・近代的な人間関係の原則は”ひとはみな平等”です。だからこそ欧米では、会社を離れれば上司と部下は対等だし、お互いにニックネームでタメ口をきくのです。それに対して日本では若者たちの言葉遣いが(ありがとうございます、という言葉を多用することで)「体育会化」する一方です。
・開かれた世界(市場)との回路を閉じてタコツボ化した組織は、必然的に腐っていきます。部外者を排除し、経歴等によって階級が上がっていくムラ社会にあるのは、仲間内の自己満足(マスターベーション)だけです。
・娯楽としてのマスメディアの限界は、真実が複雑でわかりにくいものだとしても、それをわかりやすく加工しなければ商品にならないことにあります。メディアそのものが”捏造装置”なのです。
・選択肢が多すぎると消費者は選択できなくなることが知られています。
・行動遺伝学によれば、性格的特徴(神経症傾向や調和性など)は4~5割が遺伝の影響です。能力ではこの傾向が顕著で、スポーツはもちろん、音楽や数学、一般知能は8割が遺伝によって決まります。自分が音楽家になれるかどうかは、親を見ればわかるのです。
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人間は「早い思考」と「遅い思考」を使い分けており、早い思考は直感であり脳に組み込まれたOSで200万年続いた石器時代に形成された、遅い思考はエジプトやメソポタミアに最初の文明が誕生して初めて必要になった。早い思考=直感で「正しい」と思えるものを「正義」とみなし正義の多重構造を理解・共有されていないと説き、歴史を抉り現代日本の政治、経済、社会を一刀両断する。
プロローグの「早い思考」と「遅い思考」がとても興味深く読めたのもつかの間、結局は時事放談、最初の期待とは違ったところに着地した印象は拭えない。日本の政治・経済・社会、国際問題、特にフェアトレードの裏側、国際人道援助の実態など、それはそれで読み物としては面白かったです。