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所謂運命悲劇の物語。神様によって助けられ、豪華絢爛な生活をせず、質素倹約にそれでも幸せな毎日を暮らすポールとヴィルジニーとその母。
そしてきっかけとなる出来事が起き一気に転落。
物語としてよりも文学的価値の高い作品。一読の価値あり。
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素晴らしい作品。
純愛物語であり、ただの純愛物語ではない。
ある意味シンプルな王道悲恋であるが、
自然の中に生きることこそに幸福の道はあるというメッセージなどの哲学的・人生訓的な深みが一段奥に見える作品。
18世紀から版を重ね続けているのは、何故なのか。
これほどまでに美しい恋愛や自然描写。
ハッとするほどに。
自分以外の何者かに支配されたあくせくする日々をたた漫然と過ごすようになっている者に、
この本は生きる意味を問いてくる。
それでも、まず前面に出てくるのは、
絶望的に美しい愛の物語。
良書。
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詩的な文章で、読んでいて楽しい。がしかし時折少々大袈裟…?と思うくらいロマンチックな言葉や言い回しが並ぶ。
自然に囲まれ、閉鎖的にではあるが幸福に暮らしていたポールトヴィルジニー。しかし権力や社会に巻き込まれることでその幸福は崩れていく…。
単純だけれど、自然への賛美と社会生活への批判が込められている。
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心から感動してしまった…最近こういう話によくふれているなぁ、、岡本太郎が縄文土器にひかれたこととか、草間彌生がドットによって個をなくそうとしていることとか、…自然といっしょに生きる存在であること…あぅ…もうどういう風に生きればいいのかほんとにわけわからなくなってる…自分なんてこのポールやヴィルジニーの100億分の1ほどの徳ももちあわせておらんのに、なんで彼らより長生きしてるんだろう…まだ何も徳を成していないから逆に死なせてもらえないのか…ヴィルジニーの、周りの人に対するやさしさや心遣いとか見習いたいですよね…あぁ…知識なんて身につけて、むずかしい言葉や考え方をおぼえて、世界の真理を知った気になって、周りの人より自分がえらいんだって思ってしまう…あぁ…だめだ…こわい…
『ボヴァリー夫人』でエンマはこの本のポールのような男性を夢見ていたのに、全然そんな人に出会えず、だれも心から愛することができず、不倫に身をおとして誰とも愛し合えないのがとてもかなしい。。何がエンマをそうさせてしまったのか…?今ふたたび考えてもうまく答えがでない、、
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美しい大自然のなかで育まれる無垢で純粋な愛情。
二人を引き裂く文明社会。
繊細で緻密な植物の描写は、まるで島の木々に囲まれながら太陽の光を頬に受けているかのような気分にさえなる。
社会状態は堕落、自然状態こそ自由と平和だと説いたルソーの思想の影響が強く表れ、また神こそが摂理という啓蒙的な宗教観も表れ、その考え方は現代的になかなか受け入れ難いところもあるが、そういう時代の話だからと読み進めるものである。
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マダガスカル島に隣接するフランス島は、作者が軍隊時代に赴任しており、過酷な環境を体験しましたが、あえて楽園のように理想化しています。そして、美しい自然は神の恩寵、ヴィルジニーの悲劇は神の思し召し、自然(フランス島)=善vs都会(パリ)=悪と描きます。この構図は作者の宗教観を伝えるために書かれたものでしょう。無垢で野生児のような美少女像は確かに新鮮で魅力的ですね。同じく植民地の離島育ちのナポレオンは生い立ちに重なる部分があって愛読したのでしょう。でも、この作り物そのもののお話の、どこがフランス人の琴線に触れるのでしょうね。
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恋愛小説の古典のひとつで、清らかで純粋な二人の男女の恋愛悲劇を描いた作品です。
二人のもつ心の清らかさを示すように、細かく描き込まれた風景描写は圧巻ですし、いかなる時にも「神」の存在を信じて自らを律し、他者を恨んだり自暴自棄になったりすることなく常に思いやりを持って行動するヒロイン、ヴィルジニーの姿の美しさは神々しさすら感じさせます。
互いに想い合いながらも引き裂かれてしまう二人、という構成は、今では定番ですが、1788年に書かれたこの作品はその端緒と言えるのかもしれません。
ストーリー展開は「王道」の筋道をたどりますから安心して読むことが出来ますし、ヴィルジニーがフランスに旅立った後に残されたポールが不安定になる様子(ときには神を疑ったり、自棄になったりする)ところは真に迫っていると思います。
一方で、キリスト教の死生観や宗教観が強く反映されているところも少なくありませんから、少し説教臭く感じた部分もあり、「神」や「徳」の美しさや正しさを繰り返し主張されることに少し抵抗感があった、というのも正直なところです。
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前半の自然の中で暮らす幸せな家族の物語は、大自然の情景描写と独特の価値観が相まって、現世とはかけ離れた美しさや神聖さを感じられました。小説の半分ほどがこのパートで構成されているため、これ以上にまだ幸せがあるのか…とも思わされるほどでした。ですが同時に、徐々に後半部の不幸パートへの導入だとも感じられるようでした。
後半部は先述の通り不幸パートに入るわけですが、もちろん著者の伝えたいことはここにもあるわけです。個人的には、①自然の中の生活と対比して描かれる私たちの置かれているような生活への疑問、②時代柄もあるようですが神様への崇拝を通した生き方の提示、この当たりが印象に残りました。とくに、ポールと語り部の老人との会話パートが1番力を込めて描かれているように思われます。
「よい書物はよい友人と同じなんだよ」まさにその通りだと思います。恋愛小説に終わらず、人生訓を与えてくれる小説でした。