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はて、何で新訳? と思っていたら、どうやら新潮文庫版は品切れになっているらしい。知らなかった……。
モームは基本的に作劇に長けた作家で、どれを読んでも面白いのだが、『女ごころ』は薄い文庫本で、手軽に読める1冊。新訳版では主人公の未亡人がやや『魔性の女』っぽくなっていて、そういう意味では好き嫌いが別れそうではあるが、主人公を取り巻く3人の男性は、新潮文庫版よりこちらの方がキャラクターがはっきりしている印象を受けた。主人公を含め、今回の新訳版は登場人物のキャラクターを立たせた訳文になっているようだ。
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表紙が可愛くて手に取った。ときは第二次世界大戦前夜。DV夫の死を機に、祖国英国からイタリアの田舎へ渡り、落ち着きを取り戻した主人公は、堅実で地位もあるオジサマと、女好きで奔放な同世代の男から求婚される。正反対の二人をあしらいつつも心を固めていた主人公だが、戦下のオーストリアから逃れてきた年下青年の登場で事態は急展開し…。時代背景もあり真面目な作品かと思いきや、内容昼ドラでした。訳がとても素敵でテンポもよく、劇のような短編でこれはこれで楽しめましたが、女ごころの描写ならサガンやコレットのほうが断然好みです。
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新訳だから現代風の言葉づかいを選んだというのはわかるものの、第二次大戦前夜のイギリス人女性が、「そうかなぁ」なんていうのはなんとなく違う気がしますw
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何故か誕生日に男性の先輩からもらったw
洋書は基本的に情景が思い浮かばないので苦手だけど、サラッと読めた。ちなみに女心はなにひとつ汲み取れず、私の心情理解能力が低いことが顕になった。
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女性が主人公で、かつ心理描写も秀逸な作品という評価軸でいえば、星4つ。映画化もされたサマセット・モームの名作中篇。
「女性が主人公」という点なら『微熱狼少女』も挙げられるが、彼方は現代日本の、自分の心の事さえうまく言えない思春期のお嬢さん、貧しいとまでは言わないが裕福とも言い難い人物。
此方は20世紀初頭、ドイツではナチスの不吉な台頭があるものの、フィレンツェに遺産で別荘を借りられる程度には金があり、元女優で美貌には自信があり、大人ではあっても愚かな『嬢ちゃん』と表現するのがぴったりな女性。
フェミニストというか男性憎悪を内蔵した読者なら、
「なんて主体性の無い女が主人公なんだろう!彼女は周囲の男たちの欲望に合わせて流されているんだわ」
とでも噴き上がる所だろうが、評者としては
「いや?案外この主人公、自分ってものをしゃんと持ってるじゃないか。傲慢で愚かだけど」
と考える。
中年の女優が主人公と言えば、モームの長編『劇場』も挙げられるが、こちらの中篇は短い故に複数の事件が絡むことなく、読者の興味を惹きつけて読みやすい。
通俗小説家として高い評価を得ているモームの作なので、当然と言えば当然。
キャラクター描写も、屑野郎のように言われながらも、どこか憎めないユーモアをもって描かれるロウリー。高潔なる帝国創設者と評されるエドガー。23歳の不幸な来歴をもつ難民カール……等々、魅力にあふれている。
ただ本作に描かれる事件の発端、犠牲者となったカールには同情を覚える。
「傲慢な美女が、自分がどれだけ傲慢なことをしているか自覚無しに、動物に焼肉を投げ与えるように、ゆきずりの男に自分を与える(ただし一晩だけ)」
という話なのだから。
人間は犬猫とは違う。感謝もすれば泣きもするし、考える頭だってついている。仮に『一晩だけですよ』と事前に言われてたら、誘惑に感謝して受け取ったかどうか。
仮に素直に帰って数日後、カールはいなくなった美女を探そうとせずにいられるかどうか。
人間は、動物とは違って、欲しいと思った物をもう一度手に入れるために、知恵を使い、言葉でもって他の人を説得し、自分の創意工夫で色々やる生き物なのだ。
相手を「若い男」ではなく、「考える頭を持った人間」と見做して少しでも想像力ってものを持っていたら……と、メアリーに説教のひとつもしたくなるのは老婆心だろうか?
そのメアリーにしても、エドガーが求めている妻/愛する女性像が、自分にとっては結局のところ、虚像に過ぎないと悟り、求婚をはねつける。
じゃあロウリーの提案に何で乗ったんだよ、というツッコミも野暮というものだろう。人物に惹きつけられるものを感じると同時に、冒険心を刺激される提案だ。
異性からの結婚に関係した提案でなくとも、
「新天地を自分たちで改善してみないか」
という提案に、
「あなたの能力を見込んで」
という言葉が添えられたら、ちょっと考えて見ないだろうか?
恋愛とは離れた所で、メアリーは自分に『美貌』以外の価値がある事を自覚し、『妻』以外の役割ができる可���性を見出し、提案に乗ったのではないだろうか。
本作は現代の女性にも味わい深い一作となっている。
ただ、金持ち連中の傲慢さ(これだけは最初から最後まで変わらない!)だけはやっぱり許し難いので、星4とした。
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ろくでなしの男が、エリート男と婚約予定の女をかつさらつてゆく話。理性と非理性との葛藤をへて、最後には己の子宮の声にしたがつてしまふ女のいぢらしさ。とまれ女性心理に通じてゐなければ書けない小説だと思ふ。一説によるとモームはゲイだつたとか。
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いるいる。こんな女の人。
周りの誰もが美しいと称賛して、自分もそれを自覚していて、武器にしている。
ひょんな気まぐれから貧しい若者を自宅に招き入れ、施しのつもりで食事をふるまい、そんな自分に酔いしれて関係を結んでしまう。当然若者は勘違いをして、絶望して自殺してしまう。
その死体の処理に、「女の魅力」をフルに発揮するわけ。
天然のようだけれど、しっかり計算されている。
彼女をとりまく男どもも、彼女の価値をうまく利用しようとするところが、双方の駆け引きなんだな。
あぁ、やだやだ。
そんな男女の駆け引きをみごとに描いているので、素晴らしい作品なのだけれど、こんな女は大嫌いなので、評価は下がっちゃう。仕方ない。
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生真面目な年長エドガー、軽薄なロウリー、哀れな青年。
登場人物といいより、"こういう種類の人間"みたいな描き方をしているように感じられる。軽薄女たらしボンボンの特徴を拾い集めてロウリーにしたような。
当時の上流階級の機微はかようだったんだなと察せられる。ドラマチックで読みやすい味付けの作品。
タイトルは直訳の「山荘にて」の方がしっくりくる気が。
・・・
ラストはロウリーと送るであろうスリルと波乱の日々を選んで終わり。
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女ごころが読めない男、読める男。それは女が求める結婚相手に迷い迷うことがあるからだ。名誉・地位か、経験豊かで金持ちだが女たらしで少々荒い性格か、それとも貧相だが若い将来の夢を持った人か、の選択を迫った時だ。この小説はその選択肢を絶妙に捉えた「女ごころ」をミステリーとして書き上げている。「乗るか反るかはやってみること」と括る。
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タイトルと裏表紙のあらすじから想像していたのとは違う展開で驚き。たしかに表紙に銃は描いてあるけどさ…。翻訳版タイトルは"女ごころ"だけれども、男性3人の"男ごころ"の動きもよく描かれており、最後まで面白かった。よくできた2時間ドラマみたい。モーム、はまりそう。
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モームの「Up at the villa」邦題は「女ごころ」。まず、この邦題はあまり気に入らない。暗黙裏に、女心の不可解さ、気まぐれさがテーマにされていて、合理的ではない女性心理の綾を文学的に描いているかのような「錯覚」を与える。読んでみると、主人公メアリーの選択は至極真っ当で(作中の3人しか選択肢がなければだが、、)、そこに意外性もなければモームもどんでん返しのような効果は狙っていない。もっというとロウリーを選ぶことが序盤から暗示されている。
原書は太平洋戦争開戦間近の1941年に出版され、邦訳は1951年に本タイトルで出版されているとのこと。女性が本を読まない時代ではなかったと思うが、「男ウケ」するタイトルにした時代背景があったのかも知れない。(男が書いた「女ごころ」という本を大多数の女が好んで読むとは思えない。モームはホモセクシャルであったにしても。。)いずれにせよメアリーの心の動きだけに注視して本書を読んでいくのは違う。フィレンツェの黄金色の風、都市的上流階層のニヒルな人生観、男女の心の揺れうごきを楽しむ小説であろう。そう考えるとタイトルは、原題通り「丘の上の邸宅で」とかで良かったのではないか。
人物造形について、メアリーの相手となる3人の男性は、男性性を因数分解したようなキャラクターであった。野心的で仕事に情熱を燃やし、自身にも他人にも誠実で真摯だが、融通の効かないエドガー。女たらしで、遊び人で不誠実だが、大胆で向こうみずで自然体なロウリー。苦労人で繊細で芸術家肌で情熱的なカール。要は、典型的な男性像を突き詰めたようなキャラクター。対してメアリーは、誰もが認める美貌を持った未亡人。飲んだくれのギャンブラーの夫を事故で失ったばかり。自分の取り柄が美貌だけであると理解するだけの知性と分別がある。挫折と苦労を知っていて、冷静に男を観る目を持っている。つまり、その人固有の特性で、ある種1人称的で典型的なキャラクターというものがない。これは、本作が一人の女性とそれを取り巻く3人の男性という構図であることから、ある意味必然の造形なのかも知れないが、モームの作品は男女の造形に常に上記のような傾向があるように思う。女性の方が人物的な奥行きがあるというか、個人が浮き立つというか。スパイとして活動経験のあるモームの人間観がよく表れているように感じる。
メアリーは、最終的にロウリーを選ぶが、決断の理由は上記のような3人のキャラクターに依っていないところが本作の肝であろう。3人には平等にメアリーを射止めるチャンスがあったと思う。唯一ロウリーだけが、メアリーの本質を理解しようとし、パーソナリティを引き出していた。
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軽やかで簡潔な文章が清々しい。
自分の気持ちに正直でいること、自分の愚かさかを見つめること、相手に理想を求めることよりも相手をよく知ろうとすること。変化を恐れず、生きたいように生きる意志を強く持つこと。
☆3.5
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甘美な感じが急展開して驚きます。
他の方のは感想にもあるように、女こごろというより、男ごころシニカルに描写しているところが印象的です。
風景描写はとても美しく、訳も読みやすいです。
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モームの最高傑作かと思う。
ナイーブな青年の自殺から登場人物は皆、不幸になってゆく。最終章でメアリーが幸せになれたのは救いだな。
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美貌の未亡人メアリーに集まってくる男たちが、人生を賭して翻弄されていく。そんな彼女の身にあんな事件が起ころうとは、、。ある種、サスペンスのような味わいのある作品である。読みながら終わり方を想像してみたが、意外な結末だった。ただ自分好みではなかったなぁ。メアリーはその後、どうなったのだろう。