紙の本
ほの暗い濁流の一滴
2015/12/10 09:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
諜報の世界は、ほの暗い濁流の大河に例えられる。
その世界には、白か黒かと言うはっきりとした線引きは無く。
輪郭も境界も不明瞭な灰色が広がっており。
支点が安定することのない天秤だけが存在している。
英国諜報部に関係し、諜報戦の最前線を見てきた筆者だからこそかける。
ほの暗く、澱み、汚れきった濁流の大河の一滴。
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ル・カレのスパイ小説を始めて読んだ。ハンブルグに逃れ密入国したチェチェン人若者イッサ。彼は過激派なのか?イッサは、女性弁護士アナベルを代理人にし、父の汚い巨額の遺産を管理する英人銀行家トミー・ブルーを通じて遺産全額を母国チェチェンとアラブ支援団体に寄付しようとする。しかしそれらの寄付の5%はテロの武器に変わっていた。テロに対してドイツとイギリスとアメリカの諜報活動が複雑にからみ、またそのテロがアラブの虐げられた人達への支援活動と交錯していてわかりにくく、長編のためもあって少し冗長に感じた。
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ジョン・ル・カレ 「誰よりも狙われた男(A Most Wanted Man)」読了‥ぶっちぎりのエンターテインメント・スパイ小説‥もちろん☆5つ!‥83才になる御大の2008年作品‥冷戦後のスパイ小説のスパイスはイスラム世界‥年老いた銀行家ブルーの恋心に涙‥震えて読め!
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[その男、疑似餌か、本丸か]チェチェン出身のイッサという男が、不法入国の末にハンブルクにあるトルコ人の家に身を隠すことに。慈善団体の弁護士であるリヒターは、確かな身元も出自も不明な彼を救おうとするのであるが、2人は彼が携えていた手紙から、大金が収められた謎の銀行口座にたどり着き......。9.11後の諜報世界を舞台としたスパイ小説です。著者は、この分野の巨匠であるジョン・ル・カレ。訳者は、推理小説を数多く翻訳されている加賀山卓朗。原題は、"The Most Wanted Man"。
読者の心をどっかで引っ掛ける見事なキャラクター設定(特にバッハマンのそれは最高)、興味の持続を絶え間なく与えてくれる会話のやり取り、そして思いも寄らないドンデン返しと、まさにスパイ小説の醍醐味を堪能できる作品でした。グローバルな話を展開しながらも、大風呂敷をただ広げるのではなく、しっかりと人物の個性や背景に身を寄せて話が進むところに非常に好感が持てました。
訳者あとがきで加賀山氏も紹介していますが、本書の魅力の1つは人が想像も及ばない事態に陥ったときに、どう決断し、そしてその決断にどう落とし前をつけていくかという点ではないかと思います。数多くの人物の決断を巧みに組み合わせながら、緻密なストーリーを構成していることを考えると、その筆の妙に改めて感心させられました。
〜懺悔したら、そこに永遠に閉じこめられてしまう。〜
スパイ小説って本当に頭使う☆5つ
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ジョン・ル・カレの小説は、登場人物の描写かたいへん精緻です。次はどうなるのだろうという、読み手の想像力をくすぐるので、一気に読まないと気がすまない。500ページ近いのに。精緻な描写が成せる技だと思います。
舞台は、冷戦終結後のドイツで、イスラム系のテロと、過去の冷戦の遺恨を絡めた内容です。西側諜報機関の綱引きがあり、たいへんスリリングな展開です。
ただ、全体俯瞰すると、最初の複数の登場人物達の描写が精緻過ぎて、後半以降は駆け足で駆け抜けた感じでした。
もう10月公開の映画は、観る必要はないかな…
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イギリスの作家「ジョン・ル・カレ」のスパイ小説『誰よりも狙われた男(原題:A Most Wanted Man)』を読みました。
『寒い国から帰ってきたスパイ』に続き、「ジョン・ル・カレ」作品です。
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映画化! 『裏切りのサーカス』に続く話題作!
ドイツのハンブルクにやって来た痩せすぎの若者「イッサ」。
体じゅうに傷跡があり、密入国していた彼を救おうと、弁護士の「アナベル」は銀行経営者「ブルー」に接触する。
だが、「イッサ」は過激派として国際指名手配されていたのだ。
練達のスパイ、「バッハマン」の率いるチームが、「イッサ」に迫る。
そして、命懸けで「イッサ」を救おうとする「アナベル」と、彼女に魅かれる「ブルー」は、暗闘に巻きこまれていく…スパイ小説の巨匠が描く苛烈な諜報戦。
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2008年(平成20年)に出版された「ジョン・ル・カレ」の第21作… 2014年(平成26年)には映画化もされている作品です、、、
「イッサ」を追う側としてイギリス・ドイツ・アメリカが入り乱れ、登場人物が多い上に、スパイ活動では偽名も使うので、誰が誰やら、やや混乱しつつ読み進めた感じ… 序盤は、ちょーっと辛かったですね。
ドイツの港湾都市ハンブルク、同国の諜報機関でテロ対策チームを率いるベテラン捜査官「ギュンター・バッハマン」は、一人の青年がロシアから密入国しハンブルク在住のトルコ人「レイラ・オクタイ」と「メリク・オクタイ」の母子の家に滞在しているという情報を手に入れる… 青年の名は「イッサ・カルポフ」、、、
「イッサ」は、医学を学ぶために来たというが、痩せぎすの若者の身体には拷問を受けたような痕跡があり、イスラム教徒と称するものの、教えはきちんと身に付いていない… そして、イスラム過激派組織の一員として国際指名手配されている人物だった。
政治亡命を訴える「イッサ」は、慈善団体サンクチュアリー・ソースの若手弁護士「アナベル・リヒター」と知り合い、彼女を介してブルー・フレール銀行の経営者「トミー・ブルー」との接触を図っていた… 「イッサ」は、ソ連の元赤軍大佐「グリゴーリー・ボリソヴィッチ・カルポフ」の息子だと言い、「グリゴーリー」が「ブルー」の父「エドワード・アマデウス・ブルー」に預けた秘密口座の資金を受け取ろうとしていた、、、
その後の調べで、「イッサ」の目的は「トミー」の銀行にある秘密口座であると知ったドイツの諜報機関は、CIAの介入を得ることに成功し、いよいよ「イッサ」の逮捕に乗り出す… しかし、「ギュンター」は「イッサ」をあえて泳がせて、更なる大物の逮捕を狙っていた。
命懸けで「イッサ」を救おうとする「アナベル」と、彼女に魅かれる「ブルー」も、否応なくその流れに巻き込まれていく… という展開で、「ギュンター」が作戦の指揮をとることになったものの、諜報界の主導権争いに巻き込まれ、「ギュンター」の思い通りには進まず、イギリスやアメリカまでもが作戦に口を出し、、、
と、混乱しつつ展開… 物語の全体像が掴み難かったこ���や、主役級の「イッサ」や「ギュンター」、「アナベル」、「ブルー」のいずれにも感情移入できなかったこと、冷戦下の世界が舞台ではなくなり緊張感ある展開が少なかったこと等が原因でしょうか、物足りなさが残りましたね。
以下、主な登場人物です。
「アナベル・リヒター」
慈善団体サンクチュアリー・ソースの弁護士
「トミー・ブルー」
ブルー・フレール銀行の経営者
「フラウ・エレンベルガー(エリ)」
ブルー・フレール銀行の銀行員
「ミッツィ」
トミーの妻
「スー」
トミーの最初の妻
「ジョージー(ジョージーナ)」
トミーとスーの娘
「エドワード・アマデウス・ブルー」
トミーの父親
「ウルスラ・マイヤー」
サンクチュアリー・ソースの理事
「フーゴ」
アナベルの兄
「イッサ」
ハンブルクに来た若者
「メリク・オクタイ」
ハンブルク在住のトルコ人
「レイラ」
メリクの母親
「ギュンター・バッハマン」
ドイツ連邦憲法擁護庁"外資買収課"課長
「エアナ・フライ」
ドイツ連邦憲法擁護庁"外資買収課"課員。ギュンターの助手
「マクシミリアン」
ドイツ連邦憲法擁護庁"外資買収課"課員
「ニキ」
ドイツ連邦憲法擁護庁"外資買収課"課員
「アルニ・モア」
ドイツ連邦憲法擁護庁の幹部
「ミヒャエル・アクセルロット」
合同運営委員会の幹部
「デューター・ブルクドルフ」
合同運営委員会の幹部
「エドワード・フォアマン(テディ・フィンドレー)」
イギリス情報部員
「イアン・ランタン」
イギリス情報部員
「マーサ」
CIAベルリン支局のナンバーツー
「ニュートン」
CIAベルリン支局の支局員
「ファイサル・アブドゥラ」
イスラム学者
「グリゴーリー・ボリソヴィッチ・カルポフ」
ソ連の赤軍大佐
「アナトーリー」
弁護士