紙の本
梅棹忠夫氏が、生態学から文明学、情報学へとその研究分野を広げていく転換期に当たる書です!
2020/03/23 09:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、我が国の文化人類学のパイオニアであり、「梅棹文明学」とも称されるユニークな文明論を展開して多方面に多くの影響を与えてきた梅棹忠夫氏が著した興味深い一冊です。彼の有名な書としては、『モゴール族探検記』、『文明の生態史観』、『知的生産の技術』といったものがありますが、同書は、それと同等、否、それ以上に素晴らしい作品と言っても過言ではありません。1957年の第一次東南アジア探検の後から1961年の第二次東南アジア探検を始めるまでの4年間の間に、彼が向けた我が国・日本について、これまでの探検で培った比較文明的、巨視的手法を使って自ら国家を対象化した一冊が同書です。同書は、彼が生態学から文明学、そして情報学へとその研究分野を拡げていく上での転換点でもあり、非常に魅力的な書です!
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北海道に独立論があったのをはじめてしった。しかも、梅棹先生は、ヨーロッパとアメリカやオーストラリア、ニュージーランドとの対比で、本州に対する北海道を論じている。おどろきである。本書のなかでもっとも興味深かったのはもちろん、「高崎山」だ。日本の霊長類研究についてそのなりたちから論じている。伊谷君とか河合君とか、君づけでよんでいるところがたのしい。波にのまれて船がひっくりかえり死にそうになっても研究ノートの入ったカバンをはなさなかった伊谷君はえらい!ほかに、出雲大社と結婚式の歴史とか、日本の道路事情とか、しかしまあ興味のはばがひろい。いまから50年以上もまえにかかれた論考である。それがいまになって文庫化される。これは著者がまだまだよみつがれている証拠だろう。というか、いまだからこそ梅棹をよまなければいけない。つくづくそうおもう。時代がやっとおいついてきたのだ。
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突然の梅棹忠夫マイブームで。カラコラムや東南アジア、モンゴル探検を通して「文明の生態史観序説」というダイナミックな文明論を展開した著者が海外と同じように国内を歩いて考えた論考集。 「なんにもしらないことはよいことだ。自分の足であるき、自分の目でみて、その経験から、自由にかんがえを発展させることができるからだ。知識はあるきながらえられる。歩きながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながらあるく。これは、いちばんよい勉強の方法だと、わたしはかんがえている」この宣言がかっこいい!1964年のオリンピック前に変わりゆく日本を現場から感じています。自分としてはバックツトゥーザフューチャーみたいに現在の日本になる前の日本を探検するように梅棹忠夫の探検を追体験する二重の旅としての読書でした。探検場所のチョイスもセンスいいです!「建設の論理、存在の論理」みたいな提示の仕方にも物ごとを見つめる視野の大きさと視点の高さと視座のユニークさを感じます。もっとも2017年現在の日本は存在の論理の再構築が求められているような気がしますが…これから「文明の生態史観」に戻ってみます!