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幾多の戦場でこれまで無傷で帰還してきたユリシーズ号では本国からの
度重なる過剰な命令に対して士官、乗組員を問わず不満が蓄積しており
反乱の兆しさえ見えていた。
そんな中、新たに届いた命令は独戦艦ティルピッツ要撃の囮として送り
出される援ソ艦隊の護衛任務だった。
ドイツ航空隊やUボート艦隊が待ち構える極寒の北極海でユリシーズ号の
乗組員達はどの様に立ち向かうのか。
極限状態でのユリシーズ号の乗組員たちの生き様と自然の荒々しさ、
戦争の無慈悲さを描いた名作。
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原書名:H.M.S.ULYSSES(MacLean,Alistair)
著者:アリステア・マクリーン
訳者:村上博基
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海洋小説。あえて“冒険”という文字は外したい。
北の海という容赦なき猛威と、敵軍の脅威に曝されながら、任務を全うすべく進むユリシーズ号。
これはそんなユリシーズという艦の物語であり、ユリシーズを愛した男たちの戦いの物語でした。
凍える海で命を賭して彼らが守ろうとしたのは、祖国愛ではなく、無謀な軍命でもない。
それは艦と艦長に対する敬愛。恐ろしく素朴で純真、ゆえに無自覚で強固なものが、彼らとその艦を最後まで生かした。
個人的にニコラス推しです。ラストは泣いた……。
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凄絶の一言に尽きる。精緻でダイナミックな情景描写に支えられて描き出されるのは恐怖の極限での人間ドラマだ。敵の奇襲と罠、消耗の果ての事故、内紛による殺人……「ああ、生きていて欲しかったのに!」と言わずにはいられないような男たちが容赦無く死んでいく。独英双方が主力を温存し合ってる状況では彼らは捨て石に過ぎないのだ。それでも一人の男の死をきっかけに生存者が一丸となって最悪の状況に立ち向かって行く姿には胸に熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ない。間違いなく最高峰。
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タイトルだけは、聞いたことがありました。『ナバロンの要塞』の原作者が書いているというので、期待して読みました。
登場人物が多く、また人物紹介欄がないので、誰が誰だか分からなくなります。また階級だけだったりすると、前に戻って読み返しなので、読み終わるのにすごく時間がかかりました。
そのようなわけで、お話に集中することができません。ただ寒いイメージだけが残りました。
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言わずと知れた名作でずっと読みたいがチャンスがなかった。冒険小説としても楽しめるが事実を淡々と綴る歴史小説的なところもあり、それが逆に戦争の過酷さのリアリティを出している。それぞれの登場人物の個性も魅力的で爽やかな気持ちになれるのもいい。
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大昔一度ハ-ドカバ-を読んだことがあった。今回再読。ほとんど忘れていたから良かった。ユリシ-ズ号とソ連向け船団の滅びていく美学。もうメチャクチャやられるお話し。酷寒の海を感じるには、酷寒の季節に読むのが適している。それにしても、この後のソ連との冷戦を考えると、ここまでしてソ連向けに補給して犬死みたいに思えるが、ナチスドイツの敵は味方の考えだったのでしょうね。イギリスにとって皮肉なものですね。平家物語とは全く趣を異にするが、滅びの美学を書きたかったのでしょうか、マクリ-ンは。?彼の作家人生の第一作目です。記念すべき本であります。
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しんどい…精神的にかなりやられました。生き残ったニコラスの語りが誰にも伝わってないのも疲労感を増す。
あほか!と思うところもあるけど、ただただ滅びに向かっていくのがもう壮絶すぎて、苛烈すぎて、でも熱くて。
私はユリシーズには乗り込めないなぁ。
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戦争モノ読んだことがなかったので、用語も知らず分かりにくいところもあったけれど、人間ドラマ、骨太の漢の話という路線でなら語られる。難しかったし、時間もかかったし。
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海水が氷片となって男たちの顔をたたきつけた――が、大英帝国海軍の名誉にかけて、不撓不屈の男たちの海軍魂は火と燃えて、ドイツ軍のはげしい攻撃に立ち向かった! 『ナヴァロンの要塞』でイギリス冒険小説の第一人者となった作者がはなつ、英国軍艦ユリシーズ号の波瀾万丈の大冒険譚!(アマゾン紹介文)
紹介文が勇ましすぎる…。
実際の内容は、重苦しく、憂鬱で、辛いものです。
でも、頁を繰る指が止まらない。
大変に面白い一冊でした。
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北大西洋で過酷な環境の中、軍務をこなすユリシーズ号。乗り込んだ面々の苦闘が痛々しい。マクリーン処女作オススメです。
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戦争もの、艦隊ものは、想像がつきにくく、難しかった。一応自分の知識の中でのタイタニックとかで想像しながら読んだけれど、難しかった。男のロマン的なところもあるかもしれないが、やはり戦争の不条理な部分が否めない。自分が死と直面した時にいちばん人間の本性が現れるのかもしれない。それでも少年が自分の父を殺さなくてはならなかった不条理、また自分の罪を懺悔しつつ、自分の命を犠牲にして仲間を助ける選択をしたところなどは、辛すぎた。本当に戦争って意味のないプライドの戦いだとしか言えない。。。ただただつらい。
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読み始めは、なれない艦の種類や役目。当時の階級制度。ユリシーズ号の艦内配置図を見て、乗組員、総勢725名もいる仕事場に驚いたり、日付ごとの航路図を眺めたりしながら、海戦の描写にも、自分の無知で読むのにどんなに手間隙がかかるか、我ながらこれは大変だと思った。
それでもつっかかりながら、ユリシーズとともに錨地を離れ北極海に乗り出した。
何度も航海を成功させた無傷の伝説の船が、何とドイツの戦艦をおびき出す囮だった、艦長はそれを伝えるが、もう疲れ果てた乗組員は、休む間もない朝の全員配置の呼集ラッパに叛乱を起こしかねないほど苛立っていた。
戦術家ティンドル司令官。ユリシーズの魂のようなヴァレリー艦長。ブルックス軍医と副軍医のニコルス。乗組員の名前や、配置図や航路が分かったころには、ソ連向け船団と護衛官総数32隻はソ連のムルマンスクに向かっていた。
北極海の異常気象に襲われ、ER77という船団は苦難の連続であった。
ユリシーズは4個のスクリューで39ノットを越すスピードと、360度回転する最新型レーダーアンテナを装備、爆雷、魚雷の必殺戦闘火薬を積み、特殊迷彩で濃い霧の中から救世主のように現れ、長い甲板に積んだ砲台が火を噴くと、護衛船団はそれだけで常に伝説を作った。
商船団、ER77の32隻はドイツのUボートの攻撃で次第に数を減らし、応戦した補助空母も戦闘不能で帰路に着いた、駆逐艦、巡洋艦も魚雷を受けて沈没、ついに13隻から生き残ったのは7隻だった。油送船を中に商船、左右にユリシーズとサイラスを配置、背水の陣を敷く。
あと少しでソ連の援軍が来る、しかし最新のレーダーを搭載した爆撃機に対して、ユリシーズは誤爆した自己の魚雷で艦尾は水に沈み、マストが折れる。もう砲弾も残ってなく、砲手も被爆した。
沈没船から救助した後組員で 船室を満タンにしたサイラスを見ながら、ユリシーズは高く戦旗を上げて敵艦めがけて高速で突っ込んでいく。
戦いの模様は、敵はドイツ軍だけでなく、雪も嵐も身を切る凶器になる、5分で凍りつく気温と艦の頭上をで砕ける波頭の先の泡が氷片になって降ってくる。甲板は波を被るたびに凍って厚みを増し滑る。激戦と極寒の気温との戦いは酸鼻を極わめ、乗組員が撃たれ、または凍って死んでいく。
これは「熱い男たちの物語」、ヴァレリー艦長の死で甦る乗組員魂が、最後まで読ませる。それぞれのエピソードにも泣ける。そして登場人物たちの勇敢だったり悲惨だったりする最後の姿を読むと、さすがに長い年月、読み継がれてきたことに感動する。
そして本を置いて我に返ると、やはり歴史の流れは、ユリシーズも例外ではないと感じる。既にミサイルの時代、進歩したレーダー、コンピュータによる人工衛星などの高性能の探知力は、あの頃のように目視で砲弾を発射する時代ではない。
アニメやSFで見る戦闘場面や、海戦であってももう宇宙規模である。
第二次世界大戦、最後の戦艦ユリシーズが戦闘旗を掲げて十数名の乗組員を載せて疾駆する、命がけの姿に胸が躍るが、我に返るとそれは、そうしなければならなかっ��戦争のドラマの追想という思いも少し混じる。
そして、戦争の悲惨さ人命の軽さを改めて感じる
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熱かった…
正直読みにくいし少しでも流し読みするとすぐ話が分からなくなるので集中力はいるけど、ぐんぐん引き込まれた。
主人公がいないので、客観的目線から描かれているせいか、人間ドラマが押し付けがましくなく冷静なタッチで描かれてるけれど、それがよりこたえる。
敵、波、寒さ、あらゆるものが襲いかかる世界。とても怖かった。
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敗北の物語である。
そして最高のおとりの物語でもある。
勝つために負けることを強いられたユリシーズ号はひたすらやられ続ける。その中で、男たち戦い続ける。
戦争は極限の状況に人間を追い込む。それに自然の猛威が追い打ちを掛ける。
それでも男たちは戦う。戦うしかない。ここでは生きることが戦うことであり、生きている限り戦い続けなければならない。
それは戦争だろうがなんだろうが関係ない。現場ではそうなのだ。
満身創痍となったユリシーズ号も、火事場のクソ力を出し続けた男たちも最後は訪れる。
戦い続けることに理由はない。
生きていくことと同じである。