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2023.6.24市立図書館
先日BBCが企画した児童書100選にはいっていたタイトルで、この機に借りてみた。
脳性まひのため、言葉や思考は年相応(あるいはそれ以上)にあるのに、体の発達が遅れているせいでそれが表に出せずストレスやもどかしい思いを抱えた11歳の主人公キャンディの独白というスタイル。自分の来し方を振り返りつつ5年生の秋から春までの半年ほどをくわしく語っている。
支援学級での日々(先生に当たり外れあり)と、普通学級との交流(インクルージョンクラス、いろんな子がいる)。家では8歳で年の離れた妹が生まれ、自分にできないことがどんどんできるようになっていく複雑な心境。ここで主人公にとって救いなのは、理解のある両親に加えて、ひじょうに前向きに子育てを助けてくれる隣人ヴァイオレット、そして学校の移動支援スタッフとしてであった大学生のキャサリンがキャンディの気持ちを十分察して理解したうえで能力の向上や発揮をたすけてくれること。インクルージョンのための電動車いす、そして会話補助装置(メディ・トーカー)といった機器も使いはじめて、どんどん世界が広がっていくのは読む方もわくわくしてきたし、なかでもメディ・トーカーをようやく手に入れてはじめて自分の気持ちを周囲の人に伝えられた場面は感激が伝わってきた。
学校のクイズチームにも選抜され、さらに飛躍するはずのところで思いがけない展開が待っていて、終盤はいろいろつらい気持ちを味わいながら一気に読んでしまった。「普通」にあこがれる主人公とともに、理解者や文明の利器にいくら恵まれても簡単には埋まらない穴、超えがたい壁があるのだという現実を思い知った。心無い相手はともかく、寄り添ってくれている人にも迷いや弱さやのようなもの、悪目立ちを嫌う心理、そして至らぬ点はあり(それは自分にも身に覚えのあることであり)、普通より周囲に大いに頼らざるを得ない立場の主人公はやるせない。とはいえ、主人公にとってはそれもこれも5年生という年代相応のさまざまな悩みのひとつに過ぎない感じで、少しずつチューニングして乗り越えていくのだろうと感じられる。
主人公が学校の仲間や先生とどのように関係を結び直すのか続きが気になる終わり方だったが、運のいいことに、ちょうど今月、この本の続編「わたしの心のきらめき」が刊行されたと知ったので、いずれ手に取りたい。
健常な大人が事故などで脳を損傷して表現手段が失われたら「ロックトイン症候群」としてその意志をどうにか汲もうと尊重されるが、生まれついての麻痺があっても中に閉じ込められた意識があると想像し、周囲の人がそれを尊重しながら接するようになることがまずは大事だと思った。
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もしも主人公視点で書かれていなかったらここまで感情移入できただろうか。泣いた。障害を持つが故に起こる理不尽、差別エトセトラ。言葉を操るようになれた少女、そこに至った時の嬉しさよ!
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「メロディは、生まれてからずっと、さまざまな言葉や事柄をすべて記憶してきた。でも、脳性麻痺のせいで言葉を発することができず、それを知る人はだれもいなかった。10歳のとき、かわりに声を出してくれる機器を手に入れ、言葉で伝えることができるようになる。知性を証明できたメロディの人生は、大きくかわっていく。」
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『わたしの心のきらめき』が今年1番、と先輩司書さん。こちらが先に出ていると知ってまず読みました。
星10個ぐらい!?
頭の中は言葉でいっぱい。
でも、それを自分の声で話すことができないもどかしさ。
特別支援学級の子どもたち、そして日本に来たばかりの外国籍の子どもたちの顔が浮かびました。
医者や何人かの学校の先生の無能ぶりに比べ、ご両親はもちろん、ヴァイオレット、キャサリン、メロディの力を信じる周りの人々が素晴らしい。
本当に多くのことを気づかせてくれる本。
中高生以上、特に子どもと関わる人、これから子どもを育てるすべての人にとって必読書だと思います。
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ブクログの評価を見て読んでみました。
うっかり寝る前にラストを読んでものすごく後悔しました…
涙で目が!
脳性まひで体の自由がきかない主人公のメロディー、彼女の視点から物語は描かれています。
並外れた記憶力と明晰な頭脳を持っていながらも、それを表現する手段がない様子に、焦ったくなりました。メロディーはこんなに豊かな心を持っているのに!
物語が進み、やっとこさ表現手段を手に入れた!と喜んだのも束の間…。
ラスト、容赦ない展開に「本当にありえない、とりあえずディミング先生だけは許さん!」と、悲しみや怒りが渦巻きました。
(しかし、意外と現実もこんなものかもしれない…と数日後に思い至りました。
社会っていろんな人で構成されているし、巡り合わせで、辛いことが山のように押し寄せる時もあるな…と)
メロディーの気持ちを考えると、整理しきれませんが…
しかし、メロディーにはメロディーを大切に思ってくれる人たちがいます。
メロディーの心のうちをみてくれる家族、ヴァイオレット。そして学校の先生たち。
子どもにとって必要な大人って、こういう人たちやな…とひしひしと感じました。
それと犬のバタースカッチも忘れてはならない存在。
読後感は決して明るいものではありません。が、心が揺さぶられる素晴らしい作品でした。